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第1話 4

ベタベタっと顔に何か液体が付く感触で優一は意識を取り戻した。

手で拭き取りそれを見た。

赤い色をした液体だった。


それが、血液だと気が付くまでにそう時間は掛からなかった。

ただどこから飛んできたのか分からず、1人パニックに陥っていた優一は正面に立っている人物に気が付かなかった。


「もち、づき、だ、いじょうぶ、か?」

途切れ途切れの紹介の声。

優一は前を見上げた。

「ぶ、じだな、よかっ、た」

荒い呼吸をしながら終夜が立っていた。


「何が…何がよかったんだよ!!」

優一は叫んだ。

終夜の肩の辺りから深々と巨大なハサミが突き刺さっている。

優一の顔に付いた血液は終夜のものだった。

今もなお、その傷口からはおびただしい量の血が流れ出ている。


「これ、で、いい、んだ」

途切れ途切れに言葉を紡ぎ出す終夜。

「傷付、くのはバケモノ、の、俺のやく、めだから、な」



終夜の言葉に優一は愕然とした。

自分がバケモノだから、人間である自分を助けた?

この目の前で意識を保っているので精一杯の、

自分と同じ学校のクラスメートを、

そして、自分を命がけで助けたくれた少年を、

「バケモノ」なんて呼ぶことなんて出来ない。


優一はこの惨状を作り出した少女を見た。

少女はガタガタと震えているだけであった。


(お前が…!!)

優一の中で黒い何かが溢れ出した

黒い何かは胸の中でぐるぐると渦を巻き、やがて手に移り更に集まり始めた。

優一は何かをその黒い何かから取り出した。

それは、黒く塗りつぶされた酷く湾曲した一本の剣。

優一は何かに取り憑かれたかのような目で一歩足を踏み出した。その剣は《黒》でできていた。


その剣は何よりも《黒》かった。

その剣から新しく《黒》が生まれ、

全てを《黒》く染め上げていた。


全てを闇に葬る剣。


現に少しづつ部屋の中に闇が広がり始めていた。



ストンと少女は膝を落とした。

身体が動かない。

動くことを許さない。

先ほどの終夜の殺気を当てられた時はまだ動けた。

だが、今回は動けない。

終夜とは比べられないほどの殺気。

ただただ純粋の殺気。

まるで心臓を握られているかのような感覚。


少女はただ、震えることしか出来なかった。



優一の顔からは表情が消え去り、

目は光を失い、濁りきった目をし、

先ほどとは別人でもあるかのように、

人間では有り得ないほどの殺気を放っていた。


右手に握られていた黒の剣の引きずりながら優一は一歩前に踏み出す。

黒の剣が通った所は、

まるでそこには何も存在しないように、

存在出来ないように、黒く塗りつぶされていた。


優一の濁りきった目は少女に向けられていた。


ゆっくりとかつしっかりと、

優一は少女に近付いた。

この惨状を引き起こした犯人を殺すために。

この惨状を引き起こした犯人の少女を壊すために。優一の頭の中は黒い感情で覆い尽くされていた。


ヤツヲユルスナ

ヤツヲコロセ

ヤツヲコワセ


そういった言葉で頭が埋め尽くされる。

いつの間にか握っていた剣に何の疑問も持たず、

少女を切り裂くためだけに、優一は一歩ずつ近付く。


ある程度少女に近付いたところで優一の身体が止まる。

いや、止められた。

「天城…」

優一は呟いた。

優一の片手を握り、引き止めたのは他ならぬ満身創痍の終夜であった。


優一の目に少し光が灯る。

だが、それは一瞬の事だった。


「その手を離せ、天城…」

低い声で脅すように言った。

「離さ、ない」

相変わらずの声は途切れ途切れだが、強い口調で言った。

「何故だ?ヤツは殺さなければならない、ヤツは罪を重ね過ぎたのだ。」

優一の口調が今までとは変わっていた。

そして、先ほどよりも強く言った。

「分かった、んだ。何もかも。だか、らここは、俺にまか、せてくれ。」

終夜はゆっくりとだがしっかりと言った。

「だからなんだ?ヤツはもう許されないのだ。救う価値などないのだよ。」

優一は終夜の言葉を一蹴した。

終夜は優一の手を離した。

そして、

「っつ、うおぉぉぉぉ」

肩に突き刺さったハサミを握り締め、引き抜き始めた。

肩に深々と刺さったハサミが抜けていくと同時に血が止めどなく溢れ出す。

「何をやってるんだ、天城!!」

優一も終夜の突然の行動に慌てふためいた。

そこには先ほどの濁りきった目した優一の姿はなかった。

そして、優一が握り締めていた黒の剣もいつの間にか消えていた。「ああぁぁぁぁぁ!!」

優一の制止も聞かず、終夜は一気にハサミを引き抜き、そのハサミを地面に投げた。

終夜の肩からは止めどなくなく血が流れ、地面に血溜まりを作る。

「なんで、こんなことを…」

優一は先ほどとは別人のような姿で、終夜に訪ねた。


「救う、んだ、何もかも、俺は、そのた、めに、生きて、きた、んだから」

肩で呼吸をしながら終夜は唱えるかのように言う。

「俺は、約束、したんだ、全てを守れる、ように、救える、ようになるって」

声は小さいながらもしっかりと響く声で

「だから、ここは任せてくれ」

終夜は言い放った。


優一は言葉が出なかった。

何故他人のためにここまでするのか。

終夜自身を殺そうとした人間までをも何故救おうとするのか。

優一には到底分かることが出来なかった。



終夜がゆっくりと少女に近付く。

少女はまだ身体を震わすのみで動くことが出来ない。

ただ頭を左右に振ることしか出来ない。


そして、終夜は少女の前にたどり着いた。少女は目からは涙が溢れ、

身体を震わすことしか出来ない

声も発することも出来ない。


終夜の右手が持ち上がる。

それに反応し少女はぎゅっと目を閉じた。

そして、終夜は、持ち上げた右手を少女の頭の上に置いた。

「すまなかったな、もう大丈夫だ。」

少女は目を開き、終夜を見る。

そこにはとても優しい表情をした終夜の姿があった。

そして、終夜は両手で少女を抱き締め

「もう独りにはさせないから、俺がそばに居てやるから」

優しく、優しく少女に言った。少女には何が起こった理解が出来なかった。

自分を殺そうとし、少女自身も殺そうとした人間に今、抱き締められている。

そして、こう言った。

「もう独りにはさせないから、俺がそばに居るから」

少女は訳が分からなかった

何故彼は優しい表情をしているのか。

何故彼は私を抱き締めてくれているのか。

何故彼は私を救おうとしているのか。

何故彼は、私の苦しみを、理解してくれて、それでいて、一番欲しい願望を、叶えてくれるのか。


「うわぁぁぁぁぁ」

少女は泣き出した。

それは、ハサミを振り回していた時の狂気に満ちた顔ではなく、

年相応の少女の顔だった。

終夜はひたすら、なだめるように少女の頭をなで続けた。

まるで、壊れ物を扱うかのように、優しく、優しくなで続けた。




しばらく、少女は泣き続けた後、まるで全てを洗い流したような顔をして眠っていた。

終夜はゆっくりと、少女を地面に寝かせた。

そしておもむろに立ち上がり、あるものを探し始めた。

短めでごめんなさいですm(_ _)m


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