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幕間 終

遅くなってごめんなさいm(_ _)m

これにて幕間終了です

「なんで、逃がしたんですか?」


あたしの口が勝手に動き、そう言葉を発していた。

そのことにあたしは少し驚いたけど、これは本心で思ったことだから、寧ろちょうどよかったのかもしれない。


あの男、ヴァンは許されないことをした。

人を殺したのだ。

ただ自分の為だけに、人を何人も殺したんだ。


その罰は、その罪は、

償わなければならないのに、

裁かれなければならないのに、


終夜さんは、あたしの瞳を真っ直ぐ見据えている。

でも、あたしの感情は止まれない。止まらない。


「あの人は許されないことをしてきたんですよ?その罪は償わなきゃいけないのに、裁かれなければいけないのに、なんで逃がしたんですか!?」


あたしはふらつく身体を何とか支え、立ち上がり、終夜さんに怒鳴り散らした。


本当はこんなことしたくない。

大好きな人に怒鳴り散らすなんてこと。

でも、あたしは許せなかった。

あたしは信じられなかった。


罪を犯した咎人をなんの裁きも与えずに逃がしたことが。


「確かにあいつは、ヴァンは許されないことをした。けど、俺は裁きの執行人でも裁判官でもない」


終夜さんは、あたしの瞳を見てゆっくり言葉を紡ぎ出す。


「ただヴァンにもうこんなことは止めてもらいたかっただけだ。誰かの命を弄ぶようなことは」


あたしは終夜の言っていることが理解できない。


「たった…それだけ、ですか?」


「ああ、そうだ」


「ふざけないでくださいっ!!あいつは何人もの人の命をすでに奪っているんですよ!!あいつの、たったあいつ一人の為にたくさんの人が悲しんだのですよ!!」


頭の中の理性が必死にブレーキをかけるが、上手く作動はしてくれず、あたしは更に大きな声で怒鳴り散らしていた。


「確かにあいつは、取り返しの付かないことをしてしまった。だけどな、あいつに裁きを与えて、何になるって言うんだ?亡くなった人達が帰って来るのか?悲しみが消えるのか?」


「それはそうですけど、あたしには分かりません!!犯した罪は裁かれるべきです!!あなたがそう言うのならあたしが、あいつを裁きます!!」


あたしはそう言うと、ヴァンの去っていった方へ歩き出そうとする。

が、終夜さんが両手を広げあたしの行く先に立ちふさがる。


「なんですか?退いてください」


「退かない。俺はあいつを、ヴァンを信じているんだ」


「信じる?信じたところで罪は消えません」


「…なら俺があいつの罪を償う」


終夜さんは確固たる意志を込めてあたしに言った。

あたしには訳が分からなかった。


「訳が分かりません。あなたは何を考えているんです?」


「何も考えちゃいないさ。俺は俺の本能のままに動いている」


「ああ、そうですか!!ならあなたの心に直接聞いてみるとします!!」


あたしはそう言うと両目を朱く染め上げ、サトリの力を使い、終夜さんの心の中を見る。

あたしの目の色が変わったことに終夜さんの顔が驚きに染まるが関係ない。

あたしは終夜さんの心の中を覗いた。


その瞬間、あたしの目の前は真っ赤になり、そしてその後、終夜さんの心の中があたしの中に流れ込む。


でも、あたしの思っていたものとは違っていた。

普通の人達に比べ、終夜さんの心は違っていた。

普通の人に比べて、遥かに多すぎる思いが、強過ぎる思いが、あたしの頭に流れ込む。


悲鳴を上げる間もなく、あたしは両膝を着き前に倒れ込む。


そして、あたしは意図もたやすく意識を失った。




*****


頭にひんやりとした物が乗せられて、あたしは意識を取り戻した。


取り戻したものの、おでこに乗せられたひんやりとした物、恐らくタオルなのだと思う物が予想以上に気持ちが良く、なかなか目を開けられなかった。



「あれ?あたしは…?」


それから、何とかだらけたい気持ちに打ち勝ち目を開け、あたしは何故、眠ってしまっていたのか、首を傾げる。


とりあえず、周りを見渡してみる。

天井があることからどこかの建物の屋内であることが分かり、あたしの寝かせられていたベンチと同じベンチが規則的に並んでいる。


良く自分の記憶を漁ると、一つだけ思いたる節がある。


「あ、ここ、デパートの休憩所かぁ」


「ああ、そうだよ」


思わず呟いた独り言に対し、あたしの真後ろ、それもすぐ後ろから返事が返って来たことにあたしは驚き、身体が跳ね上がる。


その時にあたしの頭に鈍痛が走り、思わずあたしは頭を抑える。

手で抑えた時にあたしの頭に包帯が巻かれていることに気が付いた。


「大丈夫か?頭を強く打ったんだ、少し安静にしてろ」


言葉は少しぶっきらぼうだけど、その声はどこか優しさが滲み出ていた。


「あ、はい、大丈夫で…」


恐らく、頭の手当てをしてくれたであろう人の方へあたしは身体を向ける。

あたしの真後ろにいたため、全く気付かず、今までのあたしの行動を見られていたことに少し恥じらいを覚えながらも振り向いた。


そして、あたしはすべてを思い出した。



「おい、そんなに痛むのか?」


「なんで、ですか?」


「だって、お前涙が、」


そう言われて、あたしは涙があたしの

頬に流れているを知った。


「いいえ、違い、ます」


若干、しゃっくり混じりの声で何とか返す。


「じゃあ、なん」

「なんであなたは」


相手の言葉を切り、あたしは話を続ける。


「そんな風に生きているんですか!?」


あたしの一言に相手は驚き、立ち上がる。


あたしが意識を失ったのは彼の、終夜さんの心を覗いたから。

あまりじっくり覗くことは出来なかったけど、あたしは理解した。


終夜さんの思いを。


「…やはり、見たんだな、俺の中を」


それを言うと、終夜さんは再びあたしの横へ腰掛けた。


「見てしまったことはごめんなさい。……ですけど、あなたはつらくないんですか!?どうしてあなたは、そこまで出来るんですか!?どうしてあなたは…」


そこからあたしは言葉を発することができなかった。

あたしの両目からは涙が溢れ出し、まるで子供のように泣きじゃくった。


あたしが意識を失う直前に見た思い、それは、深い悲しみと、その思いだけでその人を殺してしまうぐらいの怒りと憎しみだった。


そして、その怒りと憎しみの向けられている先の全てが、



終夜さん自身に向けられていた。



普通の人なら直ぐに自ら命を絶つだろう。

だけど、その思いを鎖で締め付けている思いもまたあった。


誰かを助けると言う思い。


その思いだけが今の彼を、終夜さんを生かしている。


生かしていると言っても、それは脆い鎖で、すぐにでも壊れてしまいそうなぐらいの物。


誰かのためなら、終夜さんは自ら命を捨てる。


自分の命の価値なんて無いものだと考えている。



あたしは、その事が悲しかった。

そんなに苦しいのにその事を一切表に出さずに過ごしている終夜さんがとても悲しかった。



あたしの涙は止まらない。

何度も涙を拭っても次から次へと涙が溢れる。

それと同じように、声も溢れ出す。


そんな時だった。

あたしの身体が背中から何かに押され、前に傾く。


あたしの目の前には、終夜さんの胸があった。

その事から抱きしめて貰っていることに気が付いたけど、あたしは終夜さんの胸で泣くことしかできなかった。






「もう、大丈夫です」


そう、あたしが言うと、終夜さんはあたしを離してくれた。


あたしは終夜さんの目と向き合う。

泣きながら、あたしはある決心をしたんだ。


「悪いが、俺は、この生き方を変えることは出来ない。俺にはこの生き方しかできないんだからな」


「…分かってます。終夜さん、あなたは何言っても聞くような人ではないですからね」


あたしの言葉に終夜さんはホッとした顔を作る。


「だから、あたしが永遠に終夜さんのそばで支え続けます。ですので、終夜さん」


終夜さんの顔がみるみる変わっていくけどもうあたしも止まれない。

あたしの気持ちを聞いてもらうんだ。




「あたしと結婚してください!!」




終夜さんの顔が固まった。

あたしの顔は恐らく真っ赤っかだろうな、なんてあたしが思い始めてから終夜さんの再起動が終了した。


「あ、あのなけ、結婚って言うのは好きな人とする事で」


「あたしは終夜さんのことがずっと前から好きでした!!」


「だけども、お互いのことも何も知らない訳だし、」


「それは追々知っていけば良いとあたしは思います!!」


これは全部あたしの本心。

あたしは終夜さん以外の人と結婚する気も、お付き合いする気もない。


あたしの勢いに完全に終夜さんは押されてる。

このまま押し切るんだ!!

頑張れ、あたし!!


その時、デパート内の放送が響く。


「天城終夜様、お連れ様が一階サービスカウンターでお待ちです。至急お越しください」


「悪い、呼ばれたから行くな!!」


終夜さんはそう言うともうスピードで走っていった。


頭を強く打ったにも構わず大きな声で話していた反動かあたしは終夜さんの動きに反応が出来ず、終夜さんは人混みの中へ消えていった。


「絶対、諦めませんから」

あたしは独り呟く。

これはあたしの決意。


こうやってまた出会えたんだからまた、出会える。


「理沙〜、はぁ〜やっと見つけた」


聞き覚えのある声にあたしは振り返る。


「もう、急にどっかに行っちゃうんだか…って頭どうしたの!?」


「ええっと、ちょっと派手に転んじゃって。でも、ちゃんと手当てしてもらったから大丈夫だよ、お兄ちゃん」


そう、この人はあたしの大切な家族、あたしのお兄ちゃん。


「なら、良いけど。んじゃ、そろそろ帰ろうか?」


「うん!!」


あたしはお兄ちゃんの手を握り歩き出す。


「ずいぶんと機嫌が良いね。何かあった?」


「んふふ〜、秘密」


あたしの大切な人、未来の旦那さんが出来ました、なんてまだ言えない。

終夜さんの説得が終わってから全部話すから、それまで待っててね。





優一お兄ちゃん。





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