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幕間 7

地面を蹴る音がしたと同時に紅い光が駆ける。


あまりの移動速度にあたしの目には捉えることができない。


ほぼ一瞬で終夜さんの動きに合わせるように、ヴァンが真っ直ぐ構えステッキで突きを繰り出す。


あたしはヴァンの放った突きが終夜さんの身体を貫く光景が頭に浮かび、恐怖し目を瞑る。


しかし、あたしの耳に入って来た音は軽い金属音だった。


恐る恐る目を開けたあたしの目に映るのは、逆手に持った羽根の剣の刃の部分で上手く相手の突きの軌道をそらした終夜さんだった。


ヴァンのステッキが終夜さんの剣の上を滑る。

それを見た終夜さんはもう片方の剣を振り上げる。


そして、空気を切り裂く音と、カラン、と地面へ落ちた音が聞こえた。



終夜さんが切り落としたのはヴァンのステッキ。


切り落とされたステッキは、本来の半分の長さにまで縮んでいた。

コレではステッキとしても、武器としても使えない。


つまり、ヴァンの持っていた唯一の武器を破壊したのだ。


「これで、あんたは何も出来ない。大人しく降参するん…っ!!」


終夜さんが話している途中に響く轟音。


終夜さんの身体が浮かび上がり、吹き飛ぶ。


一瞬の事であたしにはよくわからなかったけど、拳を突き出しているヴァンの姿を見て、殴り飛ばされたと言うことを理解する。


終夜さんは空中で一回転すると、両足で地面に着地。

それでも威力を消し切れなかったようで、数メートル後ろへ足を引きずられる形でなんとか動きを止めた。


「残念でしたね。私は《こちら》の方が得意でしてね」


そう言ってヴァンがあたし達の方へ見せたのは、自らの両手。

先ほどまではあたし達、人間と同じような手をしていたのだけど、ヴァンの両手は少し変わっていた。


爪がずいぶんと伸び、両手全体を血のような赤色のオーラのようなものをまとっていた。


「まさか、あの攻撃を防がれるとは…ですが、あなたの武器はずいぶんと脆いですね。もうそちらの剣は使い物にならないようです」


ヴァンの言葉を聞き、あたしは終夜さんの剣を見た。


終夜さんの剣は至る所に罅が広がっており、今にも砕けてしまいそうだった。


でも、終夜さんは落ち着いていた。


「そうか…なら、俺も本気を出させてもらうとするか」


そう言うと、罅の入っていない剣をヴァン目掛け投合。


いきなり武器を投げた事にヴァンも驚いたのか、物凄いスピードで飛行する剣をヴァンは身体を捻りなんとか避ける。


終夜さんはヴァンが体制を崩したことを確認すると、先ほどよりも早い速度で駆け寄り、もう一つの剣を振り下ろす。


「なかなかの攻撃ですが、まだまだですね」


ヴァンの余裕たっぷりの声が聞こえたと同時に、硝子が砕けるような音と共に終夜さんの剣が粉々に砕かれる。


「だから言ったでしょう?あなたの武器は脆いの…ッ!!」


ヴァンの言葉が途中で途切れた。

気が付けばヴァンは身体をくの字に曲げ宙へ浮き上がっている。


そして、ヴァンのお腹には終夜さんの右手がめり込んでいた。


終夜さんが右手を引き抜くと同時に苦悶の表情をして前に屈み咳き込むヴァン。


「…やってくれましたね、ですがこの程度なん…ガッ!!」


ヴァンが喋りながら顔を上げた瞬間に、ヴァンの横顔に終夜さんの蹴りが入り、派手に転がりながら吹き飛ばされる。


それでも、ヴァンはなんとか体制を立て直し、何とか地面に着地するが…


「悪いな、俺は実はこっちの方が得意なんだ」


ヴァンの目の前に移動していた終夜さんの両手には、紅い色をした金属製のグローブが付けられていた。


紅い閃光が走り、ヴァンの顔が大きく歪み壁へ打ち付けられた。



まさに圧倒的。

早さも、力も、何もかもが終夜さんが圧倒している。


「畜生っ!!私は最強なのだ、最強の存在になるのだぁっ!!」


終夜さんの連続攻撃を食らい完全に冷静さを欠いたヴァンが荒々しい口調で

身体を起こして、終夜さんに疾走する。


そして、終夜さん目掛け拳を突き出す。


終夜さんもそれに合わせるように拳を突き出し2人の拳が轟音を出しながらぶつかり合う。


「あんたは最強になんてなれない」


お互いの拳がぶつかり合い、拳を合わせたままの状態で終夜さんは語り出す。


「なにっ!?」


ヴァンの顔にすでに余裕など感じられないが、終夜さんの言葉にすぐに返した。


「あんたは人の血を奪うことで確かに力を手に入れた、だけどな…」


終夜さんの拳に更に力が入り、じりじりと押しやる。


「それはあんたの力なんかじゃない、あんたが奪った人達の力だ。…誰かの力に頼った時点であんたは最強になんかなれないんだよっ!!」


その言葉を言い終えると同時に終夜さんの拳が紅く輝き、ヴァンの拳に纏われていたオーラを吹き飛ばした。

ヴァンの顔が驚きに染まったと同時に終夜さんの拳が顔面にのめり込み、終夜さんはそのまま、地面に叩きつけた。


終夜さんはその後直ぐに新しい鉄パイプを手に取り、再び剣を作り出して、ヴァンに突き付けた。


「…さぁ、どうする?あんたがもう誰も襲わないと約束するなら命だけはとらない。だがな、まだ止めないと言うとなら……今ここであんたを、殺す」


手に持った羽根をかたどった剣の刃が光り、ヴァンを照らす。


「……分かりました。もう、誰も、襲いません」


ヴァンは悔しげに顔を歪めながら、そうゆっくり呟くように言葉を吐いた。


その言葉に満足したのか、終夜さんは剣を下げ、ヴァンを解放した。


その後、ヴァンはノロノロと立ち上がり、終夜さんへ背を向けた。


「約束は守れよ。俺はあんたも殺したくはないんだ」


「……分かってます。それでは、ごきげんよう」


ヴァンはそう言うと、姿を消した。



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