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第2話 終

「私の出来る事はもうない。ならば」

青年はおもむろに呟き、両膝をついた。

そして、首の前で両手を合わせる。

その両手に握られていたのは青年の中に残っていたナノマシンで作られた短剣。

それを勢いよく首へと突き立て…


「何をやっているんだ、あんたは」


れなかった。

終夜がその短剣の刃の部分を握り締めていたから。


「何故止めるのだ。私は何も出来なかったのだぞ。やはり誰かを救うことなど無理なのだ」


「確かに何も出来なかったかも知れないけどな、何も死ぬことはないだろ」


「そうだよ。死んだら何もかも終わりだよ」


いきなり聞こえた声に多少終夜は驚きながらも声のした方を見ると涙目の結衣が立っていた。


「死んだら、話をする事も出来ないし、温もりを感じることも出来ない。何もかも終わっちゃうんだ」

結衣は青年の横に中腰になり青年の握り締めている短剣の指を一つ一つ外していく。

「終夜は誰かの為に生きろって言うけど、私はそうは思わない。私はただ生きていて欲しい。誰かの役に立たなくても。誰かを救うことが出来なくても。ただただ生きていて欲しい。それが…」


「私の願いかな」

涙目を両目に堪えながら微笑む結衣の顔はただただ美しかった。




(ごめんな、結衣。それでも、俺は…)


結衣の言葉一つ一つは目の前の青年にだけ向けられたものではなかった。

その言葉は終夜にも向けられていた。

それを理解していた終夜は心の中で1人謝っていた。


「それでも、私は…」

「…それなら」

青年が否定の言葉紡ぎきられる前に結衣は再び話し始めた。


「私達のために生きて。あなたが死ぬと私達は悲しいの。だから、お願い」


結衣は、青年の手を取り目の見る。

青年の瞳は動揺が広がっていた。


「私の名前は結衣って言うの。ねぇ、あなたの名前は?」


「…type01」


「そうじゃなくて、本当の名前は?」


「…いや、私は博士にずっとこう呼ばれていたから本当の名前など分からない」


「…はじめ


「「えっ?」」

2人の声が重なる。


はじめなんていいんじゃないか?」

終夜は何故か納得した顔で話していた。


「なんではじめなの?終夜?」

突然提案した終夜に結衣は理由を訪ねるが、


「…なんとなくだ」

ボソッと終夜は呟いた。

適当な感じを醸し出している終夜を結衣はジトッとした目で睨み付けていたのだが、

はじめか…分かった私はそう名乗るとしよう」


とうの本人である銀髪の青年は気に入ったらしい。


「なら、ハジメさん」

少し誇らしげな顔をしている終夜の顔見て、はぁ~っと軽く溜め息を吐き、再び気を引き締めながら話し始める結衣。


「あなたはこれからいったい何がしたいの?」


結衣の質問にハジメは眉間にシワを寄せ考えるが、

「私にはやりたいことがない。それどころか、何をすればいいのか分からない」

ハジメの頭は自分のことを考えることが出来なかった。

今までずっと博士と呼ばれるあの男の言うことをひたすら聞いていたおり、常に博士のことを、成果のことを考え続けた。

その結果自分のことを考えることを止めてしまった。



「ならね、一さん。私達と一緒に暮らしてみない?良いでしょ、終夜?」


「ああ、別に構わないぞ。居候が1人が2人になるだけだ」


ハジメの顔が驚きに染まる。


「ひどい!!わたしは居候なんかじゃないよ!!…あっ、あとついでに絶のこと忘れちゃ駄目!!」


「立派な居候だろうが。後、絶は人言うよりハサミだろ。というかお前、絶のこと殆ど忘れてたよな」


「そ、そんなことないもん…で、どうハジメさん」


軽口を叩き合う結衣だったがすぐに本題に戻す(話題を逸らす)結衣。


「…何故お前たちはそこまでする。仮にも私はお前を殺しかけたのだぞ」


「そんなの関係ない」

「終夜がそう言うのなら私も気にしない。それに、私達はハジメさんのしたいこと、やりたいこと、つまり生きる意味を一緒に探したいの。だって名前教えあったらもう私達はもう《お友達》だもん」

結衣は屈託のない笑顔でそう語った。


「ともだち?友達とはいったいなんだ?」

ハジメは首を傾げる。


「う~ん。友達の定義ってよくわからないけど、」

結衣はハジメに微笑みかける。

「私は一緒に支え合って、一緒に楽しく生きることが出来るそんな存在の人のことだど私は思うよ。だから、私達がハジメさんを支えてあげる。一緒に生きる意味を探してあげるの」


「…私は人間ではない。アンドロイドだ」

「そんなの関係ない。俺だって《バケモノ》だ」

終夜は自嘲的な笑みを浮かべながらそう言うのだが、


「もうっ!!2人ともそんなこと言わないで!!私から見たら人間だし、それにそんな些細なこと関係ないよ」

結衣の逆鱗に触れ、いそいそと小さくなる終夜。


「で、どうかな?ハジメさん、一緒に暮らしてみない?」


直ぐに怒りを落ち着かせハジメに右手を差し出す結衣。

しかし、


「…断る」

「えっ!?」

結衣の手は握られることはなかった。


「…なんでっ!?ハジメさん!?」


「…友達だからだ」

理解が出来ず、首を傾げる結衣と終夜。



「友達だからこそ、私は結衣達に迷惑はかけられない」


「そんな迷惑だなんて…」

「それに…きっとこの《現状》を知った博士が私の元に来るだろう。恐らく私は破壊するために」


博士の考えたナノマシンによる核爆発はサクヤの力によって免れたが、それを知った博士は再びハジメの元に訪れ、何があったのを聞き出し、ハジメを破壊するだろうとハジメは考えた。


「私は友達である結衣達をもう巻き込みたくない」

そう言うとハジメは地面を勢いよく蹴り後方へ飛び、木の枝の上に乗る。


「そんなっ!?ハジメさんっ!?」


「だが、安心してくれ」


「私はきっと生きる意味を見つけ、ここに戻って来る。それまではさよならだ」

そう言ったハジメの顔はどこか微笑んでいるように見えた。


そして、次の瞬間に再び跳躍し森の奥へとハジメは姿を消した。


「バイバイ…ハジメさん。また会う日まで」

軽く涙を両目に抱えた結衣がハジメの行った方向を見つめ小さく呟いた。




「終夜」

突然の声に終夜は声の主の方へ振り返る。

そこには、片手でサクヤを抱きしめ、もう片方の手を振りかぶる優一の姿があった。

その次の瞬間、終夜の視界はぶれ、尻餅を付く。

目の前の優一は恐らく身体中が疲労していたのであろう、肩で息をしていた。

その時終夜は理解する。

優一に殴られたのだと。


「なんであんなことをしたんだ!!」

優一の精一杯の怒鳴り声。


あんなこととは、ハジメが優一へ攻撃した時に終夜がその間に入り、自分の胸にハジメの持っていた剣を突き刺したこと。


「確かに僕は助かったよ!!でも、終夜は下手をすれば死んでいたのかもしれなかったんだ!!」


優一の豹変に結衣も優一の名前を呼び落ち着かせようとするが、優一の叫びは続く。

「終夜が死んだら、残された結衣は、絶は一体どうするつもりなんだ!!どれだけ僕達が悲しむのか分からないのか!!」


「ゆ、優一」

終夜はただただ呟く事しかできない。


「君の、終夜の命はそう簡単に捨てて良いものじゃないんだよ…」

最後の優一の声は掻き消えてしまいそうなほど小さかった。

そして、優一の頬には光る雫が流れていた。


「…優一の気持ちはよく分かった」

終夜の声に優一と、また優一と同じ思いであった結衣が終夜の顔を見る。


「…けど、駄目だ。俺はまた目の前で死にそうな、殺されそうな人をみて、見捨てることが出来ない。きっと自分の身体を盾にしても守るし救うだろう」


「な、なんで、終夜」

驚くべき発言を聞き、すでに涙声の結衣。

「何故なら、人を救うこと、人を守ることが俺の夢なんだ。」


そこでいったん区切り、


「《バケモノ》である俺の生きる道なんだ」


終夜はきっぱりと言い放った。


「でもだからって自分の命な投げ捨てなくたっていいじゃんか!!」

優一は再び吠える。


「終夜の命は一つしか…」

「それにな、優一…」

優一の声を横切り、終夜は言葉を続ける。

話す終夜の右手には、羽をかたどったような一振りの剣が握らていた。終夜はその剣を逆手に持ち替え、自らの胸に深く突き刺し、引き抜いた。


「「っ!?」」


突然目の前に起こった出来事に2人は声をあげることすら出来ない。


終夜の胸には死を逃れられないほどの傷があり、今なお終夜の命の源である血液が滝のように流れる。


「何をやっているんだっ!!終夜!!」

いち早く、状況を飲み込んだ優一が吠えながら、終夜へ歩みよる。


「…いや、いい。黙って、見てて、くれ」

しかし、終夜は優一を血まみれの右手で制する。

優一がそんなのお構いなしと終夜へ近づいていこうとした時、終夜の身体がどこから出たのか分からない炎に包まれる。


真紅の炎は終夜を包み込むとさらに勢いよく燃え上がり、渦を巻く。



「終夜!!」

悲鳴に近い結衣の声が辺りに響く。

その時、終夜の右手が炎の渦の中から飛び出し、右手で炎を薙祓い、炎を消す。


「心配するな、俺は大丈夫だ」


「大丈夫なわけあるもんか!!あの怪我で大丈夫なわけない!!早く傷を…」


優一は終夜へ駆け寄り終夜の身体を見て、息を飲み込んだ。


「傷が…消えてる…?」


終夜の身体にあった死を逃れられないほどの傷はきれいに無くなっていた。

とは言うもののあの出血量では到底助からないはずなのだが、終夜は元気そのものの出で立ちだった。


死が確定していたにも関わらず、終夜は死ななかった。

つまり終夜は、


「…《不死》の身体。死ねない身体に俺はなってしまったらしい」

終夜はすっかり髪が長くなってしまった頭を掻きながら答える。


「俺は死なない。それなら、俺の命なんて軽いものだろう?俺の命と比べたら、周りにいる人達の命の方が俺から見たら大切なんだ。だから、俺はどれだけ傷付こうとも、どれだけ死のうとも、誰かを救い続ける。そのためだけに俺は生きている。それが俺の生きる意味だ」


終夜は笑顔で答える。


終夜は歪んでしまっている。

誰よりも自分を下に置き、自分のことを後回しにし続ける。

そして、《不死》の体になったことにより更に終夜の思考は歪んでしまった。

歪みきってしまった。


余りにも歪んでしまった終夜に結衣達はただただ立ちすくむだけだった。


「無理、よ。今のあなたには、無理」


突然の喋り声に3人は声の主の方を見る。

「あなたは、誰も、救えなんかしない」


先ほど、優一の手によって寝かされていたサクヤが頭を起こして、息を絶え絶えの状態で喋っている。


「…どういう意味だ?」


終夜は苛立ちを隠さず、周囲に撒き散らしながらサクヤに理由を求める。


「自分の事を、自分の命を軽く考える人に誰かを救うことなんて出来ない。あなたのその行く先で待っているのは、《真》の絶望。それにあなたは…ゴホッゴホ」

そこまで言うとサクヤは咳き込んだ。

優一がその様子見ると同時に駆け出し、サクヤを抱き上げる。


「サクヤ、大丈夫かい?」


「…うん、って言いたいけど、そろそろ、限界みたい…だから、優一の中で」


「うん、分かった。ゆっくりおやすみ」


そして優一の中に潜り込んでいくサクヤ。

何故だかよく分からないが、優一の精神世界の中の方がサクヤの回復が早い。

サクヤ曰わく、愛の力だとかなんとやら。

そしてサクヤは何かを思い出したかのように身体を引きずり出し、優一の耳元まで口をもっていき、小声で囁く。

「終夜はこのままいけば必ず《真》の絶望に出会うことになると思うよ。終夜がもし《真》の絶望に出会うことになることになると…」


そこでサクヤは一旦言葉を区切り、呼吸を整える。

「終夜は恐らく耐えられない。きっと死を選ぶと思うの。」


「っ!?」


思わず息を呑む優一。

そんな優一の顔見て、サクヤは微笑みかける。

「だから私達で終夜を支えていこう。終夜を救うの、優一」


そう言い終わるとサクヤは優一の中に潜っていった。



「…そうだね、サクヤ」


優一は固く握り拳を作る。

身体中の異常的な疲労で身体ふらつくがそれに揺るがない、強い誓い旗を優一は立てた。


「終夜を、救うんだ…!!」





「…終夜」

優一がサクヤの元へ駆け寄って行く姿をただ見ていた終夜は突然の声に多少驚いた。

正確には、声がしたことに驚いたのではない。

その声が余りにも震えていたことに驚いた。


「どうして…そんなこと言うの?」


終夜は声の主は見なくても分かっていた。

結衣である


だが、決してそちらの方を向こうとはしなかった。

どんな顔をしているのか分かっていたからだ。


「ねぇ、終夜。応えてよ」


「どうしても何も、俺はこの不死の身体になっていなくても、同じ生き方を選ぶ。同じ道を選ぶ。あの言葉は俺の本心だ。俺の命は、バケモノである俺の命は…っ!?」


突然の受けた背中の衝撃に終夜は思わず言葉を切る。

結衣が背中側から抱き付いたのである。


「やめてよぅ。そんな言い方しないで」


長い髪の生えた終夜の背中に顔を押し付けているからか、声は若干どもっていた。


「終夜の命はそんな軽いものなんかじゃない。終夜は、私からしたらとても大切なの。他の何かとは比べられないぐらい大切なの。だから、そんな生き方しないでぇ」


しゃっくり混じりの話し声に、背中が濡れてきていることから結衣が泣いていることを理解する。

結衣の泣き顔は終夜は嫌いである。

結衣と対立して、結衣が泣いてしまった時、大抵の場合は終夜の方が折れる



「それでも、俺は変わらない。俺は俺の選ぶ生き方をする」


だが今回の終夜は折れなかった。


「なんでぇ…なんでよ。何がそこまで終夜を動かすの?」



「…誓ったんだ。俺が、俺が《あの人》の変わりにあの人の目指した夢を追いかける。あの人の分まであの人の生き方をする」

終夜の声は余りにも真っ直ぐで強かった。

誰の否定も受け付けない

そんな語彙も含まれていた。


「でも、でもぉ」

終夜の背中で結衣は泣きじゃくる。

終夜は溜め息を吐き、

「分かった。分かった。なら結衣の前だけではその生き方をしないことにする」

そう言い終夜は結衣の身体を正面に持ってくる。

結衣の顔は涙で目の周りが赤くなっていた。


「本当?」


「ああ、約束するよ」

ポンポンっと終夜は結衣の頭を叩き結衣の身体を離し、優一の方へ歩いていく。


「…ならずっとずっと一緒にいるからね、終夜」

結衣は終夜には聞こえないぐらい小さい声で呟いた。



終夜は優一の横まで歩いて寄るがサクヤの姿は既になく、凄く疲れていた様子から優一の中に入り休んでいることを終夜は知る。

サクヤの先ほどの発言、つまり《真の絶望》について聞いておきたかった終夜は少し残念そうな顔をするが、もう一つ気になっていたことを確認することにした。


「…優一、身体の方はもう大丈夫か?」


優一は終夜が倒れていた時にハジメと闘っており、終夜が止めに入った時には既に優一の身体はボロボロだった。


特に筋肉の疲労が激しく、優一の身体のいたるところの筋肉が震えている。


しかし、そうなるのも無理はなかった。

ハジメと闘った時の優一の動きは人間の出せる力を遥かに凌駕していた。




終夜が声を掛けたのにも関わらず、優一の反応はない。

筋肉の疲労で震えている右手を握りしめ、何かを呟いている。


「おい、優一!!大丈夫か!?」


終夜は心配になり大きい声で優一に呼び掛ける。


「…あ、終夜。…うん、僕は大丈夫だよ。」


そう言い、優一は立ち上がろうとするが前につんのめる。

倒れる寸前のところで終夜は優一を掴み、肩を貸す。


「…無理するな、俺が肩を貸してやる」


「…もう貸してもらっちゃってるけどね」

優一は苦笑いで終夜に返す。


「…で、終夜。そろそろ翼しまったら?」

「ああ、そうだな」


ずっと出しっぱなしだった翼を終夜は身体の中に収める。

どのように収まっているのかは誰にも分からないらしい。


そして、翼が終夜の中に収まりきった瞬間に終夜の髪の色はいつもの色に戻り、更に長くなってしまった髪も元通りになっていた。


「…なんか終夜の身体って面白いね」


「確かにな、俺も髪まで元通りになるとは思っていなかった」

いつの間にか、終夜の横を歩いていた結衣が終夜の身体の変化に思わず呟いた。

終夜自身も髪まで元通りになるとは思っていなかったらしい。


「それじゃ帰ろっか」


優一の一言に2人は頷き、歩き出す。


「ねぇねぇ、買い物の続きはぁ~?」


「…知らない」


「知らないじゃな~い。またいつか埋め合わせしてもらうからね」


「あれ?もともとサクヤの買い物じゃなかったっけ?」


「というか、買った服はどこにやったんだ?」


「やばっ置いて来ちゃった!!」


「あのなぁ…」


軽口を叩き合う3人だったがそれぞれの心に確固たる誓いが出来ていた。

それぞれの願いが出来ていた。

第2話、これにて終了です(`∇´ゞ

これでストックがきれてしまったのでこれから先の更新はさらに遅くなるかも…です(滝汗)

でも、必ず書きますのでこれからもよろしくです( ̄∀ ̄)


ご感想、ご批判いつでもお待ちしておりますm(_ _)m

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