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第2話 5

高速で空を飛行する終夜と狐の仮面の男。

終夜の下に見えるのは緑一色。

つまり、森の上。


仮面の男はズボンのポケットの中からあるものを取り出し、終夜の腕に刺した。

だが、終夜は動じることなく手の力を決して緩めない。


しかし、終夜に刺さったあるものは注射器だった。

手に力がこもっているのにも関わらず、注射器にはみるみるうちに終夜の血液が溜まっていく。


そして、血液がある一定の量になった途端、その仮面の男は注射器を引き抜き、再びポケットにしまった。



(あれ?俺は一体今まで何を…?)

しかし、終夜は注射器に刺された痛みで意識が戻った。

終夜は辺りを見回す。

遠く後ろには街が見える。

終夜の下には森が広がっている。

そして、終夜の右手には、狐の仮面の男。

そこで、全てを思い出す。

あのデパートの惨状を。



街からは遠く離れている。

再び、街に戻せばまたあの惨状の繰り返す。

そのことを理解した終夜はこの仮面の男をここで止めることにした。


「うおぉぉぉぉ!!」


終夜は叫びながら急降下。

辺りの木をなぎ倒しながら、仮面の男を地面に思いっきり叩きつけた。

終夜は理解していた。

仮面の男も《人間》ではないことを。

仮面の男が叩きつけられた場所は大きくめり込み、クレーターが出来ていた。


終夜は直ぐに先ほどなぎ倒した木の枝を2本拾い終夜の力を流し込む。

すると、ただの木の枝は形を変え、羽のような剣となった。


終夜は先ほど自らの手で作ったクレーターを見る。

そこは砂埃が舞い仮面の男の姿が見えない。


急に響き渡る発砲音。

終夜は慌ててものすごい勢いで飛んできた鉛玉を撃ち落とした。

しかし、先ほどのデパートで落としたものよりも、桁違いの威力だった。


砂埃がゆっくり晴れていく。

仮面の男は怪我一つなく立って終夜に大型の拳銃を構えていた。


「弾丸の威力…調整完了…」

そう言うと、仮面の男は躊躇いなく終夜へ銃口を向け引き金を引いた。


あまりの速さのため回避は不可能。

なので終夜はその弾を打ち落とすのではなく、グローブのプレート面で受け流そうと考え、右手を構える。



弾がグローブのプレートに当たり終夜から弾は逸らすことは出来た。


が、弾がグローブに当たった瞬間、プレートが粉々に砕け散り、終夜の右手は後ろに大きく仰け反る。


(威力が先ほどよりもさらに上がっている?…ヤバい!!)


終夜はすぐに残された左手を構える。

しかし、銃弾は飛んでこない。


右手のグローブのプレートを修正しながら、仮面の男を終夜は見た。



仮面の男は銃弾を放った瞬間にその銃の反動で右手が後ろに大きく持っていかれ、そして、拳銃を握り締めたままの右手がぷらんと力無くぶら下がっている。


仮面の男の右肩は脱臼していた。

終夜はその光景を目の前にして驚くことしか出来なかった。

それだけの反動のあるものを躊躇なく放ったことと、

そして、自分の肩が脱臼しているのにも関わらず、平然としていることに。


仮面の男は左手をおもむろに右肩に手を置いた。

そして、とても大きな骨のこすれる音を何度も上げさせながら右肩を入れ直した。


「右肩の調整…完了。引き続き、データ収集に入る」

あまりにも事務的に仮面の男はそう言い、再び、拳銃を両手で構え、終夜へ向き直した。


両手で持つことにより、反動を小さくするらしい。



そして、再び仮面の男は拳銃の引き金を引いた。

呆気に取られていた終夜は咄嗟のことに行動が遅れた。


先ほどと同じように、銃弾を逸らすことはもう不可能。

先ほどと同じように右手を持っていかれる

弾を連射されたら、右手は間に合わないだろう。


「頼むから、保ってくれ!!」

終夜は両手に握られていた双剣を交差させ構える。

終夜の右手の剣の腹に銃弾が当たる。

終夜の剣はガラス細工のように粉々に砕けた。


しかし、左手の剣は罅が入る程度に済んだ。


だが、仮面の男は拳銃を再び構える。

両手で持っていたため、先ほどよりは反動を消すことは出来たが、それでも、大きく頭上に大きく仰け反る。

終夜はその隙を見逃さず、一気に横に駆け出した。あの拳銃の威力はとてつもなく高い。

あれほどのものを何度も何度も受けるのは不可能。


そう考えた終夜は全力で地面を蹴る。


全て、避けてしまえばいい。


どんなに威力が高くても、当たらなければ意味がない。

さらに言えば、相手の武器は銃だ。

銃である限り《弾》が存在する。


終夜は木々の間を駆け抜けながら、新しい木の枝をまた広い、羽の双剣を作る。


もうスピードで駆けながらも、仮面の男からは離れすぎないようにしなければならない。

何故なら、仮面の男が標的を終夜からまた、あの街の住人へ移す可能性があるからだ。

「本当にやりにくい相手だな」

終夜は思わず、率直に思ったことを口に出してしまった。


その時、終夜の背中に嫌な汗が流れる。


終夜は高速移動を止めた。


その直後、発砲音と共に終夜の目の前にある木々が粉々に吹き飛んだ。


先ほどよりもさらに威力が高まっている。

そして、恐るべきところは、

終夜の動きを完全に読み、正確に打ち抜いていること。

たまたま今回は運良く当たらなかったが、次、避けられるかどうかは分からない。


「なら、」

終夜はそう呟きさらに速度を上げる。

木々を蹴りながら縦横無尽に駆け巡る


終夜の身体は普通の人間の動体視力では捉えられないほどの速さである。


終夜はその速さを保ったままなるべく、音のしないように走る。


そして、しばらく走りまわった後、終夜は高い木の上で仮面の男が今どんな状況かを見る。


恐らく、終夜の位置は特定されてはいないだろうと思ったからだ。




終夜が仮面の男を見た時、

終夜と仮面の中の目と目があった。


そして、また躊躇い無く引き金を引いた。

間違いなく、仮面の男は終夜の動きを全てを見切っていた。


思考の海に溺れていた終夜に弾丸が迫る。

終夜はそのことを思い出して再び双剣を目の前で合わせる。


しかし、今度は両方の剣がガラス細工のように簡単に砕け散った。


それでも、なんとか弾丸を逸らすことには成功したようだった。何とか逸らすことが出来た弾丸は終夜の横の木々を薙ぎ倒していった。

肩で息をする終夜だったが、直ぐにあることを思い出す。


先ほどとは違い両手で拳銃を撃っているということを。


仮面の男は反動で上に持ち上がっていた両手を再び構え直し、終夜に銃口を向け引き金を引く。


終夜の眉間を狙った弾丸。

終夜をそれを、頭を後ろへ逸らすことでギリギリの所で避ける。


終夜は頭への一撃を避けた後に仮面の男を真っ直ぐ見つめ、動きを止める。


また仮面の男は構え直し、引き金を引き続ける。

胸、足、手、肩、至る所へ狙いをつけ引き金を引く。

終夜はそれを全てギリギリの所で避ける。

弾丸は真っ直ぐにしか飛ばないのだ。

つまり銃口の直線上にしか飛ばない。

弾丸の速さと威力はとてつもなく高いが、連射することが出来ないこともあり、終夜なら、ギリギリ避けることが出来る。


走り回るのを止めたのは、その動きをなんらかの方法で仮面の男が読み取っているからだ。


ならば、避けることに全神経を傾けて、相手の弾切れを狙う。


しかし、何発避けても拳銃の弾がなくなる様子はなく、何発も放ち続ける。


終夜の頬に嫌な汗が流れる。

(まさか、弾切れを起こさないのか!?)


終夜がそう考えた直後、仮面の男の動きが止まる。

来るべき時が来たと終夜は全力で地面を蹴り仮面の男へ近付く。


「一つの銃で駄目ならば、二つにするまでだ」

仮面の男はそう呟くと右手のみで拳銃を構える。

そして、いつの間にか現れた二つ目の拳銃を左手で構える。


右手の拳銃から弾丸が飛び出す。

突然の出来事と前進していたこともあり、胸目掛けて飛んできた弾丸を身体を無理やり捻ることでなんとか避ける。


しかし、直ぐに左手の拳銃から弾丸が飛び出した。

この崩れた体制から避けることは不可能。

双剣も破壊されている。


「保ってくれ、俺の右手!!」

終夜は叫びながら右手の弾丸の前へ突き出す。

弾丸が右手のグローブへ触れた瞬間プレートが吹き飛んだ。

その衝撃を受け右手から血が溢れさせながら反動で後ろへ回される。


しかし、なんとか銃弾を逸らすことが出来た。

終夜は右手の痛みを歯を食いしばって耐え、前へ踏み込む。


(チャンスは今しかない!!)

速度を一気に最大まで上げ、駆け出した。


仮面の男は銃の反動で両手は上へ持ち上げられている。

左肩は脱臼しているが、右肩は何とか脱臼せずにいる。


上へ持ち上げられた右手を下ろし、再び構え直し引き金を引こうとする。



「うおぉぉぉぉぉっ!!」

構え直した右手を終夜は右足で回し蹴りで終夜から標準を外し、そのままの勢いで左手を打ち出す。


打ち出された左手は仮面の男の顔へ食い込み、木々を巻き込みながら後方へ吹き飛んだ。


吹き飛んだいった仮面の男の周りは砂煙で見えない。


「何とか、なったか…」

終夜は肩で息をしている。

何とか一撃を当てることが出来た。

全身全霊の込めた一撃を。


はぁ、と息を吐き出しながら終夜は座り込んだ。

最初の地面へ叩きつけた時よりも遥かに強い力を仮面の男へ叩き込んだ。

恐らく、もう二度と動くことはないだろう。


「俺は、《また》人を殺してしまったのか…」

終夜はそう呟くと、両目から一筋の涙が流れる。


例え、無差別に人を傷つけ、殺した人間だとしても、命を取って良いことはない。


例え、自分自身が殺されるかもしれなくても。

終夜は全てを救ってみたかった。

全てを救いたかった。

だが、自分自身の手で《再び》命の根を摘み取ってしまった。

自分自身の手を《人殺し》という風に汚してしまった。


「やはり、俺は《バケモノ》。人間の近くにいてはいけない存在なのかもな」

終夜はそう言い、涙を流しながら自嘲気味な笑みを見せた。


「このままいっそ、何処かへ消えようか」その時、結衣の泣き顔が目に浮かんだ。

結衣との過ごした日々が頭に浮かんだ。


バケモノである終夜自身に再び幸せを与えてくれた結衣の顔が浮かんだ。


その時だった。



「各部損傷は有り。しかし、戦闘続行可能。高周波ブレードによる攻撃を開始する」

あの仮面の男の声が辺りに響いた。終夜はその声に驚き、声のする方を見る。

砂煙が晴れていき、そこには仮面の男が立っていた。

頭から血を流しているが、それに全く動じる様子なく佇んでいる。


そして、仮面の男は両手を前に突き出した。


小さな銀色の粒子が集まり、気が付けば仮面の男の両手には、片手で持つには大き過ぎる剣が握られていた。


終夜は一瞬、相手が死んでないことを喜んだが、直ぐに再び木の棒を2本握りしめ羽の双剣を作り出す。



あのままの男はあの剣を《高周波ブレード》と呼んだ。

《高周波ブレード》とは刃が物凄い速度で振動を起こし、切れ味が普通の刃よりも遥かに超越する。



仮面の男は先ほどのダメージをものともせず、終夜へ向かって駆け出した。

そして、振り上げた右手を終夜へ振り下ろす。

終夜はその攻撃を逆手に持った剣で受け流そうとするが、受け流す前に仮面の男の刃が終夜の剣をまるでバターにナイフを入れるかのように、ゆっくりとかつスムーズに切っていく。


その様子を見た終夜は慌てて左手の剣を横薙に払おうとするがそれも仮面の男の左手の剣によって防がれ、さらに切り込まれていく。


ちっ、と短く舌打ちをして終夜は切り込まれていく双剣から手を離し、両手で相手の腹に向かって打ち出す。


仮面の男はその衝撃で後ろ方向へ吹き飛ばされるが、空中で一回転をして着地をする。


高周波ブレードに終夜の双剣はバター当然の状態である。

もし、あれで切り裂かれれば恐らく死に致るだろう。



終夜は切れ込みの入った双剣を仮面の男へ投合し、一気に駆け出す。

仮面の男はその飛んできた双剣を両手の高周波ブレードで捌く。

捌ききった瞬間、終夜は一瞬で仮面の男の後ろへ周り込み、回し蹴りを浴びせ、吹き飛ばした。


その間に再び双剣を作り出す。


高周波ブレードには終夜の双剣は適わない。しかし、あの高周波ブレードは少し大き過ぎる。

なので、あの刃を全て回避し、手数で押し切る方法をとる。


そして、隙があれば重い一撃を当てる。

それが終夜の考えた作戦だった。終夜は仮面の男へ向け全力で地面を蹴る。そして、一気に間合いを詰める。


それに合わせるように仮面の男も右手を振り下ろすが、終夜はそれを紙一重で回避する。

終夜が回避したと同時に仮面の男は左手の剣で横薙に払うが、終夜はその剣の刃の横、つまり剣の腹に両手の双剣を叩きつける。

刃の部分でない所を叩いたにも関わらず、終夜の双剣は粉々に砕け散ったが、なんとか叩き落とすことを成功した。


そして、右手の双剣の残された柄を投げ捨てる同時に身体を半分捻り、その戻す勢いを使いながら、仮面の男の腹に右手を打ち込む。


全体重と捻りの反動を使った拳は物凄い力を纏っており、仮面の男は身体を「く」の字に折り曲げたまま飛んでいった。


そして、何本もの木々をへし折りながら吹き飛んでいき、木を折る勢いがなくなると、木に叩きつけられズルズルと地面へ降りてきた。



終夜は双剣を作り直しながら仮面の男へ近付く。

今の一撃はよほど効いたのか、仮面の男はすぐに起き上がろうとはしなかった。



「何で、あんなことをしたんだ?」

終夜は仮面の男の前に立つとそう切り出した。

もしかしたら、何か特別な理由があるかもしれないと思ったからだ。


しかし、終夜の思いも打ち砕かれる。

「データ収集だ」

あくまで機械的に何の感情も表さず口にする仮面の男。


「データ、収集だと?」


「そうだ、今、私達が行っているプロジェクトには必要なデータ、つまり私の戦闘データが欲しかったのだ。本当は日本の警察相手で採るつもりだったのだかな」


「そのためだけに、関係ない人達を傷つけたのか?」


「ああ、私達にとってはとても大切なデータなのだ」


「…お前は、悪いことをしたと思わないのか」


「思わない。いや、何も感じない。私はあの御方の望み叶えるだけだ。ただそれだけのために生きている」

「…ふざけるなっ!!」


感情の抑揚も何もない、まるで何の感情もないような話し方で自分の考えを述べる仮面の男に終夜の感情は爆発した。



「たったそれだけのためにお前は人達を傷つけたのか!!罪悪感も何も感じずにっ!!」

「俺はそんなの認めないっ!!認めてたまるかっ!!」


終夜は右手を力いっぱい握りしめ、仮面の男の顔面へ叩き込んだ。

その衝撃で狐の仮面は砕け散っていった。

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