第2話 4
「ふんふ~ん♪」
鼻歌混じりにスキップをしながら歩く結衣。
その横で両手に紙袋をぶら下げた終夜と優一。
3人は今、少し大きなデパートで買い物中である。
ちなみに、サクヤは優一の《なか》である。
終夜のお手製ラーメンをお腹いっぱいになるまで食べた後、優一の精神世界に潜り込み眠っている。
終夜と優一の両手にぶら下げている紙袋の中身は勿論サクヤの服である。
…と何故か結衣の服も入っている。
「だから、俺は嫌だったんだ」
そう言いながら、終夜は大きなため息を吐き出した。
前にもこのデパートに来たことがあった。
その時は、終夜と結衣の2人だけだった。
理由は今回と同じ様なもので、結衣の服を買いに来ていた。
その時、終夜は嫌と言うほど思い知らされた。
女性の買い物は長いということを。
「結衣。俺達は少しあそこのベンチで休んでていいか?」
デパートなどによくある休憩所みたいな雰囲気を放つスペースを指差しながら終夜は結衣に聞いた。
「えぇ~、うーん、まあ、いいよ」
結衣はしぶしぶながら終夜の要求を呑んだ。
「よっしゃ」と、小さくガッツポーズを取りながら、そのベンチに一歩踏み出した。
その時だった。
時計の針が2時を指したのは。
まるで何かが爆発したようなとても大きな轟音と共に、終夜達の足元を揺らした
終夜達は顔を見合わせた。
「終夜、今のって!?」
「落ち着け、恐らく《下》だ」
終夜達の居るフロアは二階。
先ほどの音と振動の原因は恐らく一階。
「でも、今の感じだとここの真下ぽくなかった?」
「ああ、恐らくそうだろうな。だけどな一階と二階の間には分厚いコンクリートがあるから、ここまで被害があるわけじゃない」
「でも、デパート全体で危ない感じで充満してるけど」
現に、終夜達の周りの人達は急いで避難をしていた。
店員も必死に客の避難させるため誘導している。
「こういう時こそ、慌てるな、だ。それじゃ、俺達も避難する…」
その時、結衣の後ろ側の床に罅が入るのを終夜は見た。
その瞬間に結衣の手を引き抱き締める形でその場所から離れた。終夜と結衣が離れた瞬間に床の罅が大きくなり、人一人通れるぐらいの穴が空いた。
「優一、結衣を頼む」
「えっちょっと、終夜!?」
終夜は優一に結衣を渡すと、優一と結衣の前に一歩出て、構えた。
勿論、紅い翼はまだ出していない。
人がまだ大勢居るからだ。
終夜は《バケモノ》であることを不特定多数の人物に知られたくない。
たくさんの人に知れ渡った時、終夜はこの町を出て行かなければならなくなる。
「まだ、人がいたのか…」
終夜の前に空いた穴の中から、狐の面を被った背の高い男が出て来た。
手には何も持っていない。
ということは素手で高さ2メートル以上ある天井にジャンプしてコンクリートを殴りつけて穴を開けたと、いうことになる。
(人間離れはしているが、俺よりは上回らないだろう)
しかし、その考えている時間がまずかった。
目の前にいる狐の面の青年の右手には、日本ではまず手には入ることはないであろう武器、《銃》が握られていた。
銃は銃でも、連射性能、威力共に申し分ないほどのアサルトライフルである。
そして、その銃口を自分の右側へ向け引き金を引く。
ものすごい発砲音が耳をつんざく。
そして男は、その銃を発砲し続けながら銃口を右側から左側へ動かした。
つまり横に薙払うように、銃を放った。
完全な通り魔的な犯行。
完全な無差別な攻撃。
終夜はその男の行為を直ぐに予測し、《あの紅いグローブ》取り出し、球を撃ち落とした。
しかし、その後ろにいる人達までは守れなかった。
「痛い…」
「誰か、助けてくれ」
「なんで、こんなことに…」
終夜の耳に入る悲鳴や助けを求める声。
(俺は、また守れなかったのか…?)
その時、終夜の頭にとある情景が浮かんだ。
遠い幼少期の記憶。
どこを向いても辺り一面火の海。
その火の海の中に助けを求める人達の姿や声。
そして、目の前で嘲笑う犯人の顔を。終夜には、目の前にいる男の付けている狐の仮面があの時の犯人と重なった。
「お前が…お前がぁ」
その時の犯人は、沢山の人達を巻き込んで既に死んでいる。
しかし、終夜の頭は混乱していたため理解が出来ていない。
終夜は溢れんばかりの輝きを纏った紅い翼を出現させ、思いっきり地面を蹴った。
「終夜っ!!」
結衣が悲鳴にも似た声を出して名前を呼ぶが、終夜は止まらず、
そのままの勢いで男の頭を片手で掴み、そのまま、壁に叩きつけた。
が、終夜はそこで止まらなかった。
叩きつけたのにもかかわらず、そのまま壁に押し込み、轟音を轟かせながら壁に穴を空けそのまま外に飛び出した。
優一と結衣は終夜の後を追いかけ、終夜の空けた穴をから顔を出し、終夜を捜す。
「終夜…どこに行ったの?」
声を震わせながら結衣は必死に終夜を捜す。
ここは二階である。
いくら、二階であるとは言ってもそこそこの高さがある。そんな所から飛び降りて無事であるわけがないのだ。
「あ!!あそこだっ!!」
そう言って優一が指を指すのは下ではなく上の方向。
そこには紅い輝きを纏った翼で羽ばたきながら、高速で移動する終夜だった。
まだ、男の頭は離していない。真っ直ぐ飛んでいく方向は、今朝の森の方向。
「終夜、もしかして誰も巻き込まないために…」
終夜の頭は完全に混乱していた。
現に、終夜の本気の力で男を掴んで壁を打ち抜いた。
だが、混乱していながらも、誰も巻き込まないように身体が勝手に動いていた。
「結衣、終夜の行った場所分かる?」
「うんっ分かる。早く終夜を追いかけよう」
優一は頷き、結衣と共に駆け出した。
デパートのとある部屋で男が1人いた。
「何があった。状況を報告しろ」
「いきなり背中に紅い翼を生やした少年に捕まり、そのまま移動中です」
「紅い翼…だと?もしや《あれ》と同じような存在か?」
「恐らく、そうだと思われます」
「ふ、ふははははは。実に良い!!お前の力その少年で試すとしよう」
「了解です。博士」
「では私もそちらへ向かう。…《あれ》と同じような存在か…楽しみだ」
不適な笑みを浮かべながら、博士と呼ばれた人物はノートパソコンを手に取り、部屋を出た。
あらゆる思いが、一つの場所へ歩みを進め始めた。




