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その日、勧誘は熾烈を極めた。そして

 女生徒二人と別れ、ジョンと長机とパイプ椅子を返却し、食堂へ。

 入部届けを提出したら事務員さんが、やたら驚いていたがなんだったのか? もし、入部者がいたことの対してなら失礼なことだ。


 別れるタイミングを双方失い、ジョンと、今日あったことをとりとめもなく話ながら、メニューの一番上のセットを胃の中へ片付け、やっと別れてから自室に一旦戻り着替えとタオルを持って、大浴場のシャワーブースへ。

 奥にはその名のとおり、大きな湯船と体を洗う場があるが、いままで実家暮らしだったので裸の付き合いは、なんか気恥ずかしい。

 水場はここしかないので歯を磨き自室に。


 長かった一日が終わる。


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 寮は二人部屋。

 入ってすぐ左右にクローゼット、次にカーテン付きのベッド。

 その先に本棚にはさまれた、ちょっとした空き空間があり、壁をほぼ横断する大きな窓際には備え付けの机が二つ。

 同室の生徒は同じクラスで、顔を合わせた瞬間「げっ、こいつかよ!」という顔(見慣れた反応)をされたので、月旅行へ勧誘してみた(・・・・・・・・・・)。


 ・・・案の定、嫌な顔をされ、それ以来、あまりこの部屋には居着かない。寝る時しか彼がいないので、実質この部屋は一人部屋だ。


 授業自体が復習だったし、明日もなので予習、復習は───、ちょっとだけペラペラとめくる教科書の内容で、月旅行へ使えそうなモノがないか読むでもなく見ていると時間が溶ける。寝不足でいいことなどなにもないので、電気照明を消す。暗くなった室内はされど闇に満たされず、カーテンの外から青白い光りが届いていた。


 満月。いつものBGMは聞こえない。


 自分は行く。必ず、あそこに。


 その為には───。


 <□[≡ <□[≡ <□[≡


 一人が、二人。二人が四人、四人が八人。

 倍々に増えれば、全校生徒を入部させるのも不可能ではないはずだったが、そううまくもいかず。月旅行部の入部希望者は初日以降現れず、ビラ配りや、放課後時間がありそうな生徒に声をかけたりする度にかえって避けられるよくない流れが発生していた。


「はい! 魔法研究会、まほけん!まほけん!まほけん!」

「騎ー士! きしきし、剣術部! けんじゅーつ!」

「・・・(ダブルバイセップス)! ・・・(サイドチェスト)! ・・・(モスト マスキュラー)!」

 ・・・魅力的? な、部活は他にもあるから、仕方ないね?


 部活への勧誘が激しさの極みに達しているのは最終日だからだ。今日まで提出された入部、退部届けを元に部員数が算出され、人数と、活動実績に見合った部費が割り当てられる。


「入部届け書いてってー! 幽霊でもいいから!」

「ここ! ここだけの話し。ゴニョゴニョだから! ゴニョゴニョ!」

 もうなりふり構っていられないところもあるようだ。

 幽霊部員、その部に籍だけおいて活動に参加しないのはまだ合法だが、ゴニョゴニョ、聞き取れない声で長机まで連れていって幾ばくか握らせる=部費のなんパーセントかをキャッシュバックし、残りを懐に入れるなんてのはアウトローがすぎるだろう。

 案の定、風紀と生徒会の腕章を着けた取り締まりの生徒がくだんの部スペースを取り囲み、よせばいいのに相手が抵抗したりしたものだから、予想外の大立ち回りなんかが発生している。


「いいのか、あれ?」

「ああ」

 心配そうな、ともすると乱闘に参加したくてウズウズしているジョンに、なぜか騒ぎの中心にいるのに巻き込まれない旗持、幟を持った生徒を指差してやる。


「なるほど。演劇部・・・」

「えー! あれ劇なんですかぁ?」

 カーラも納得し、幸いにしてリーナの大声(ネタバレ)も劇に夢中な連中には届かなかったようだ。


 取り締まり(良いもん)側が勝っても、演劇部(悪者)側が勝っても、すっきりしなさそうな殺陣をどう終らすのかと注目して見れば、正解は半端、というわけなのか、ちょうどクライマックス、生徒会役員のリーダーと収賄側のボスがさあ一騎討ち、の場面で種明かしされたのだった。


 なるほど、そういう終らせ方もあるのか。

 なんだ、なんだと集まった野次馬はさり、何かしら心に残った観客の幾人かは入部届けを書くようだ。上手な勧誘と言えよう。


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「えっ?!」「はい?」

 五日ほど顔を合わせていれば、役職と部名しか知らずとも、顔見知りにはなれる。

 今日も今日とて、長机とパイプ椅子を借りに行けば、担当の職員さんに怪訝な顔された。

 ・・・昨日まではにこやかに対応してくれたのに。


「今日も勧誘するの?」

「はい。むしろ、今日からが本番です」

 昨日まで前庭にあふれるほどいたライバルはこの分=職員さんの反応からすればいないだろう。

 机を出すスペースも昨日までは使えなかった場所が空いてるだろうし、何しろ目立つ。


「うわー。本気でやる気よ、あいつら」

「うわー、です?」

 若干二名ほどこちらを遠巻きにしている部員、同好会員がいるが、いいだろう。

 元々二人で始めた活動だ。


「それにしても考えたな」

「ああ」

 正直、月に行くには金がかかる。

 それこそ学校の予算から支給される部費なぞ、誤差になる規模の膨大な金額が。

 ゆえに必要なのは、集めなければならないのは人手。

 だからこその反則? 想定外からの一撃である。


 校舎から通常出るのに使われる玄関脇の一等地。

 ガリガリと印刷したビラ。

 余った分を余計に使わせてもらった幟。


 そして、とっておきの入部特典。


 いざ、勝負!

 

 


 


連休終了のため、通常投稿に戻ります。

次回投稿は二十五日零時の予定です。

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