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その日、女子部員が入った 2

「あなたは、もう! 行動に移す前に! 口に出す前に! 何かはさみなさい! クッションとか!」

「えー。そんなのもってたら邪魔ですよぅ?」

「精神的によ! 何も、実際に持って歩けとは言ってないわ!」

「ならそう言・・・」

 ギロリ!


 当事者でなくとも、付き合いが短いというか、ほぼ初対面でもさもありなんと納得できるほど、沢音リーナは素直だ。

 ・・・見ていて危なっかしいほどに。

 兄妹の多い瀬渡カーラが、たぶんこの学園に入学し、初めて彼らの世話から切り離された彼女が、それを見過ごせないのも、あたりまえと言えよう。


「それで? 子作りっていうのは?」

 ギロリ! 再び。

 こちらに向けられた瀬渡カーラの瞳が無言で言っている。「お前もか?! これだから男は!」と。

 ちょっと待って欲しい。自分を横で脇腹を抑えているジョン(バカ)と一緒にしないで欲しい。これは聞かないと、聞いておかないと、話が進まないじゃないか。


「この子のです!」

 沢音リーナがお腹のポケットに両手を突っ込むと、どん! とばかりに机の上に従魔を置いた。

 スライムってつかめるのかと思った瞬間、デロン! と形を崩した軟体動物? 軟体魔物が机の大部分を覆い、端から垂れる。

 ・・・書きかけの入部届けと筆記具をまきこんで。


「あー! スラリス、それはご飯じゃないです! ペンも!」

 植物由来の紙と、動物由来の羽根ペンがぽこぽこと、透明なスライムの内部で泡をたてながらほどけるように形を無くしていく。


「だから、何かする前に考えなさいって・・・」

 まったく同意見である。

 ・・・こっちにも似たようなのがいるしな。


「アッチ!」

 溶けかけの入部届けを救出しようと、補食中のスラリスに触れたジョンが、パッと手を引き、冷ますように振っている。

 普段は無害なスライムも物を消化する時は酸を分泌するのは常識だし、触れちゃいけないのもよく知られている。


 どんな人物でも人手ではあるけれど、な・・・。


<□[≡ <□[≡ <□[≡


「・・・なんかこう、すまないわね」

 どこか疲れた様子の瀬渡カーラが長机に頬杖ついて、入部届けに記入している。

 本来なら動かないよう押さえる左手の代わりに文鎮よろしく、紙の端に座っているのはワシタカ。その面はまさしく猛禽類なのだが、足をしまって座っているとなんんだかかわいらしい。

 ・・・つつかれそうなので撫でようとは思わないが。


「それで、本当に入部するのか?」

 横から声がかけられた。


 自分としてはなんでもいい、たとえその目的が従魔のスライムの分裂に必要な魔石の入手のためでも構わないのだが、ジョンはそうでもないようだ。

 どこか納得してから入部してほしそうなのは、なぜだろう。


「仕方ないでしょ。リーナは入る気満々出し。それに、ちょっとは興味があるしね。だって月よ、月。実際に行けるなら、ううん。行く手伝いができるなら素敵じゃない」

 はい。書き終え、まだインクも艶やかな入部届けがこちらへと渡される。

 先に書き終えた沢音リーナの物と合わせて二枚。

 初回、一人。二回目、二人。

 倍々で増加するなら、全校生徒が入部する日も近いに違いない。

 まあ、そんな日はこないだろうが。


 色々どたどたした結果、西の空が赤くなり初めている。

 メインターゲットである新入生は、もうほとんど下校したようで、賑わっていた前庭に残っている長机も少ない。

 今日はここまでだろう。


「明日は二人も勧誘に参加して欲しいんだけどいいかな?」

「はーい!」

「いいけど、せまくない?」

 勢いよく手を上げる沢音リーナの横で、瀬渡カーラが懸念を表す。確かに長机とはいえ四人並べるほどのスペースはない。三人がやっとだが、そうなると、入部希望者が一人だった時、圧が生じてしまいあまりよろしくないだろう。


「そこはほら。二人に受付をやってもらって。自分たちは勧誘看板やビラを・・・」

「いや、それはよくないな」

 キリッ! とした顔のジョンから異論が出た。


「今日一日見ていてわかったンだが、女子だけのところは、男子に冷やかされることが多いようだ。トラブルを防ぐためにも、ここは男女ペアを提案する」

 おお。ジョンにしてはまともな意見だ。


「・・・その心は?」

 瀬渡カーラの目は細められたが。


「せっかく女子部員が入ったのに、なんで男同士、つーか、単独行動なのよ。ここは一つ共通の目的に邁進して、仲を深めるところだろう?!」

 おお。あの短い時間でそこまで考えたのか。

 ジョンに対する評価、主に知力のパラメータを上方修正する。・・・(異性が関係したとき)という条件付で。


「あんた、えーと」

「俺は栄本ジョン! ジョンって呼んでくれ!」

 自己紹介はしたはずだが、一回で覚えてもらえるとは限らない。


「栄本は一生外回りね」

「あれぇ?」

 受け入れてもらえるかも。


「じゃあ、明日もこの場所で」


 このままだと、いつまでもたっても解散できなさそうなので、強制終了。


 沢音リーナは、ニコニコと微笑んでいた。


ポイントを頂きました。

入れて頂いた方、ありがとうございます。

これを励みにがんばります。

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