その日 木と紙は
「それでは、部活を始めたいと思います」
普段てんでバラバラ、各自やりたいことをやりたいように始める部活動だが、昨日の一件の熱が覚めやらないまま、今日も一致団結、自分の指示を待っている状態。
今日の参加者は自分とジョン、カーラとリーナに爆破三兄弟と梅々コンビにアルとカウズ先輩。この辺はほぼ毎日参加するメンバーで。
不定期メンバーのフェリシア先輩とアンナ先輩、いてもいるのかわからないアランは本日不参加。なんとなく最近は参加、不参加がそろってきていて、フェリシア先輩達のうち一人が部活にくると、アランもいる感じだ。
もしかしたら、商会のほう、商いにおいて何らかのそろったタイミングがあるのかもしれない。
学園の生徒であると同時に神殿にも勤めているエドの出席率は、やはり少ない。
それでも、暇を作っては参加してくているようで、個人的には「無理すんな」と声をかけたいが、言ったところで「してないです」と言われるだろう。
あと、エルフ先生は相変わらず、居る。
禁書庫であるフラの管理上あたりまえなのだが、最近はこちらも操作になれ、質問も減った。そうなるとほぼ椅子に座って読書? しているだけなので、置物のような感じ。
それでも、頼めば顧問を引き受けてくれるあたり、ありがたいが。
・・・もしかしたら今回の件も頼めばなんとかしてくれるのかもしれない。
でも、フェリシア先輩しかり、頼ってばかりではダメな気もするので、なんとかなりそうなもモノは、自分等で努力しよう。
「まずは、・・・アル、エドに昨日の一件を説明してやってくれ」
久々にきたら、他のメンバーがやる気に満ち満ちている。
おっとりとした神官様は、それでも必死に空気を読もうとしてくれているが、ここは事情を知っておいてもらったほうがいいだろう。・・・説明にアルを当てたのはその身の内に秘める熱量に期待しているのと、あともう一つ狙いがあるから。
「計画が前倒しっス」
「?」
「やらなきゃいけない理由があるっス !」
「??」
「皆のド肝を抜いて、見るもの見せてやるっス !!」
「???」
うん。もう一つどころか、最初の的にすら当たってないが、そこはフォロー ───昨日の二人がまた説教に───入りそうなので。良いに違いない。
じーっ。
まずは、こちらに注がれている熱い視線に対応しなくては。
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ロケットを作るにあたり、前作業として、二つの乗り物の作成が計画には組み込まれている。
厳密には一つは最終的には無人になるので乗り物ではないのだが、これはフラの言うことがどれだけ信頼できるか、全部信頼できないのなら、どれだけ手を加えなければいけないかはかる為にやっておかねばならない手順であり、予定ではほぼ一年、十ヶ月をあてていた。それを五ヶ月でやりとげ、九月末の学園祭で披露しようというのが昨日決まったことだ。
「最初の最初は単純なので、全員でかかる必要はない。材料の買い出し後、何班かに別れて、各々作ってみよう」
「「「はいっ!」」」
異論が出るようなところでもないので、返事はそろった。
・・・ここで人付き合いが苦手な人がいると、ポツンと孤立してしまうのだが、その時は自分が誘おう。
「じゃ、ジブンひとっ走り行ってくるっス!」
「一人じゃ持ちきれンかも。俺もいく」
「なら拙者も」
あれ? ジョンとアルとカウズ先輩が。
エドはカーラとリーナ、というかスラリスのチームに入るようだ。
となると・・・。
大丈夫。
今日の工作は一人でも可能だから・・・。
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「ニカワです!」「小麦粉糊です!」
お料理なぞ、月に行くのに何の関係が? と思われるかもしれないが、きちんと材料を計って、切って、火加減を、という技能は案外他のことにも役にたつものだ。むろん、月旅行なのだから、美味しいお食事でも、貢献度は高いが。
「これに炎系の魔石を入れて。これだけっスか?」
アルが一つ目の工作物に対して、簡単過ぎて拍子抜けって顔をしているが、ホムの言うことはどれだけ正しいのか考えていない。
「外側の素材が紙なんだから、発熱体に魔石だと燃えないか?」
「そうだな。フラの説明だと発熱体ってだけ書いてあるだけで、本来は別物なんだろうな」
「紙が燃えないようにする手段か・・・」
「制御魔方陣だな」「錬金的出力補正を・・・」「燃えない物で包めば」
それまで仲良く進んでいた爆破三兄弟のチームに不穏な空気が流れ始める。
「魔方陣を書くのには専用インクがいるだろう? バカ高い」
「錬金的出力補正って何時間かかるよ? 調整に」
「燃えない物ってなんだよ? 石か? 重さ考えてるか?」
うん。殴りあうようなら止めよう・・・。
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もう一つの工作はやや複雑だ。
竹、なる素材を細くした物をあぶって曲げなければいけないし、大事なパーツは削りだしだし、肝心の動力源の素材も不明。
さらにいうと、きちんと出来上がったとしても、それがなぜそういう挙動をする、出きるのかわからない、逆に言えばそれが書かれた通りに動けば、一気にフラの信憑性が高まる。そんな代物である。
「た、竹ひご?」「できましたー!」
本当に細かい加工だと頼りになるコンビだ。
自分達の工作を後回しにして作ってくれた材料を配り終えると、洗い物までしてくれるのだから感謝、というか、それぐらいは自分が。
「殿方はかえって」「邪魔だからいいです」
そうですか。
「あっ?!」
じっくり、じっくり。
竹ひごをロウソクの火で曲げていたカーラが燃えた。いや、本人ではなく材料が。
「あっ?!」
リーナのほうは、炎が遠すぎるのか、パキッ! という小さな音と共に折れてしまっている。
「・・・」
足して二で割る、というわけではないのだろうが、この加工はエドが上手だ。
・・・何も起こらないので無言だし。
「この、ぷろぺらって、何がプロなんっスかね?」
「そりゃあ、ぺらのプロなンだろ? 名前からして」
「ぺらのプロってなんでござろうな?」
どうでも良さそうなことを話ながら、一個でいいのに同じ作業をしているのは、ジョンのグループだ。
どうやら難しい加工を複数同時にすることで、失敗したときの時間ロスを少なくするつもりらしい。
「あ、先輩。そこひねり逆っスよ?」
「そうござるか? 拙者こういうのは・・・」
「いやジョン先輩、って、あれ? カウズ先輩も?」
「二人が同じなら、アル、お前のほうが間違って、いないような・・・?」
「裏返えして見れば、一緒じゃないんっスかね?」
「ひねりが逆だから、反対回転で、ござるな」
「あ、アルお前上と下でひねりが逆じゃないのか、それ?」
と、言うことは・・・。
「「「「やり直し」だな・・・」っスね!」でござるな」
・・・あっはっはじゃないよ。あっはっはじゃ。
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「では、みんな。準備はいいか?」
結局、ボッチになった自分は作成には参加せず(できず)。
最初っから監督ですが何か? みたいな顔で、号令をかけてみたりしている。
「・・・いいですよー」
意外なことにそう返事したのはエルフ先生で。
実験を目的としたこの部屋は防火性能が高いそうだが、それでもに備え、水魔法で作った水球を体のまわりにぐるぐるさせて、万が一に備えてくれたりしている。
「では、一番! 行くぜ! 魔石、起動!」
ジョンの掛け声と共に少し離れたところに置いた紙袋の中がちょっと光り。
案の定、予想通りに袋自身が燃え上がる。
「えっ? あれ? なんで?」
「やはり、温度が高過ぎでござったな」
どうやらカウズ先輩は気づいていたようだが、あえて黙っていたらしい。
「まあ、次は頑張るでござるよ」
それは、他の二人に向けた言葉か、自身の独り言か。
「はぅっ!」「きゃっ!」
梅々コンビの袋は燃えなかったが。
ぱぁぁぁん!
その代わり? 破裂した。
「「「ナイス! 爆破 !!」」」
とある一部部員には大変好評だったが、やはり失敗と言っていいだろう。
「「「ナイス! 密閉 !!」」」
その流れで爆破三兄弟が失敗理由を言い当てた。さすがにそう名乗るだけあって、爆発の原因には詳しい。
どうやら加工が上手過ぎて、熱によって膨張した空気の逃げ道がなくなったのが、爆発の原因だったようだ。
「・・・」「・・・」「・・・」
その三兄弟の作品というと。
うんとも、すんとも。
どうやら、膨張した空気を逃がす工夫はしたが、燃えないよう魔石と紙袋との断熱に使った材料が重すぎるようだ。
「・・・」「・・・」「・・・」
ぱぁぁぁん!
・・・もしくは、失敗したとき用の自爆装置が。
いらないものは着けないでほしい。
「ま、ざっとこんなものよ!」
最後の最後、成功と呼んでいいのはカーラ達の気球だろう。
そう、気球。
温めた空気を内包することで浮かび上がる代物が、一つ目の工作物だ。
「起動です!」
リーナの掛け声の、のち。ふわりと浮き上がったのは、エドの所属する神殿のお祭りでも似たようなものを飛ばすからか。
「スゲーな。どうやって防火したんだ?」
「それはリーナが」
素直に誉められれば、カーラも悪い気はしなかったようだが、担当が違ったようだ。
「濡らしました!」
えっへん! とばかりに発案者が胸を張った。
「・・・もう一度言ってもらえるかな?」
嘘だと言って! と、言いたいところだが、そういうと「ウソです!」と言われるだけだろう。
「作った袋を濡らしました! それだけです!」
そうかぁ。それだけかー。
いや、一番簡単な防火手段だけどね。
皆が見つめるあいだにも、だんだん袋の色が明るく、・・・乾いていくように感じる。
そして。
エルフ先生の水魔法は、やはり、お上手だったと思いました。




