第九話 体が非常識
「では王都へのキャラバンを調べましょう!」
「キャラバン?」
「乗合いの馬車の事です!」
「ほう?馬車なら乗っていかねばな?」
ルルとクネの話しでは人間は自分で移動せずに馬車という、乗り物を馬に引かせて移動するのが常識と聞いた。
それならばキャラバンとやらで王都まで行くのが常識的だろうし、なにより迷う心配がなさそうだ。
「じゃあこっちです!」
ジャックに案内されるままに村の端っこの馬と箱のような物がたくさんある空き地へと連れて行かれる。
「(あれが馬車という物なのだろうか?)」
などと考えて立ち止まっているとジャックに手を引かれ小屋の中に入る。
小屋の中には先ほどと同じようにカウンターの奥に人間が立っていた。
違うことと言えば人間が老婆だ。
ジャックが直行して話しかける。
「王都までの直行便はあるか?」
「直行便かい?リブロ経由なら今から出るよ?」
「こんな子供が乗るんだぞ?直行便だ!」
「なら・・・四日後だね!」
「どれくらいで着く?」
「直行便だからね!予定は二十日間だよ!」
「わかった!一人分くれ!ニコ君?カードを出してくれ。」
「ん?あぁ。」
老婆にギルドカードを渡すと何やら処理をして木の板と一緒に返してくれる。
「朝出発だから遅れないようにしな?」
「了解だ!ありがとな!では宿に行くぞ?」
「宿?って何だ?」
ジャックに付いて歩く。
「ジャック?宿とは何だ?」
「着いてくれば分かる!」
「・・・ベッドという物がある場所か?」
「何も言わなかったけど、やはりベッドをわかってなかったんだな?」
「おそらく俺も使うものだろうと思って楽しみにしようと思ってな。」
「ハッハッハッハァ!それがいい!行くぞ!」
「わかった。」
ジャックの後ろを付いて行くと一軒の建物に入る。
「こっちだ、宿よりも先に飯にしよう。」
「わかった。」
建物の入口のスイングドアを抜けてすぐの所でカウンターでニコニコとこちらをみる女性の前を通り奥へ進むとたくさんの机と椅子が並ぶ部屋に入る。
その中の一つの机を囲んでブランとグレイが椅子に座って手を振っている。
「なんだ?ここは・・・」
「やはり始めてなんだな?食堂だ。」
「ほう?料理を食べるところか。」
「ほう?食堂と言う言葉は知っているんだな?」
「あぁ、知っている。」
「さぁ!あいつらが注文してくれているはずだ!席に着いて待つぞ?」
「わかった。」
ジャックと共に席に座ると同時に女性が見た事もない料理を机の上に置いて去って行く。
「これはなんだ!?これもなんだ!?」
「とりあえず食べてみろ!」
ジャックに言われ食べてみる。
熱い!驚いて目の前に置かれた透明な容器に入った明るい色をした液体を口に含む・・・甘い!美味い!
そして落ち着いてからもう一度冷ましてから先程の料理を食べると美味い!
手が止まらない。
「ハハハ!こうやって見るとただの子供だな?」
「そうですね。目を輝かす子供ですね?」
「ニコ君?それはピザと言う料理でそのコップに入ってるのはオレンジジュースだぞ?」
「魔物の肉を使っていないのにこんなに美味いとは・・・キマイラの肉を使えばもっと美味くなるな。」
「前言撤回だ。言ってる事は無茶苦茶だ。」
「ですが顔は子供のはしゃぐ可愛い顔ですよ?」
「ハッハッハッ!ニコ君はこれからどんどん学んでどんどんすごい人間になるぞ?」
三人が何か言ってるがピザと言ったか?始めての魅惑の料理に夢中になってしまい無我夢中で食べてしまう。
「うん!ジャック?俺は馬車を出るまで何をすればいい?」
我に帰り、咳払いをしてジャックに尋ねる
「とりあえず明日冒険者としてのいろはを教える!」
「ん?冒険者とは魔物を倒してギルドで売るのだろう?」
「それだけじゃない!常識的な冒険者の振る舞いを教える!」
「そうか。だが馬車が出るまで四日もあるのだろう?大丈夫か?」
キャラバンを手配してもらった時点で彼らに頼んでいた用件は全て完了している。
明日からは別行動と言わるだろうと予想していた。
「我々ニコ君が王都への馬車が出発するまで手伝うつもりだが?」
「すまんな・・・ありがたい。」
三人は笑って料理を頬張り始める。
夕食が終わり部屋へと案内される。
「ではこの部屋で明日の朝迎えに来るからな?トイレはあそこだからな?」
「トイレ?とは何だ?」
「・・・実演を交えて教えよう。」
ジャックにトイレを教えてもらう。
実演を交えた説明はフェルの百倍分かりやすかった。
「教えて貰って無ければ、村の外に出て用を足していたな・・・」
「言っててよかったな。」
「じゃあまた明日の朝に頼む。」
「私は左隣の部屋なので何かあれば声をかけるんだぞ?」
「わかった。」
「じゃあな?」
ジャックが扉を閉め俺は一人で部屋の中を眺める。
部屋の中は机と椅子、用途がわからない籠がおいてあり、更に用途のわからない長方形の白い布袋が乗った木の台。
この中に「寝る」と言う言葉が出来る物は一つしかない。
籠で寝ようとするとおそらく壊れるだろう、ならばこちらの長方形の布袋だ!意を決して長方形の布袋へと飛び込む。
俺は正解だったようだ。
とても柔らかく心地よい感触に包まれる。
寝そうになるがベッドから出る。
「(今日の魔力操作の鍛錬をしておかねば。)」
まだ外は明るいのだが鍛錬を終え布袋に包まって気持ち良くなり眠る。
翌日ジャックに起こされて四人で朝食を食べて宿を出る。
ブランとグレイが楽しそうに先導する。
「なぁ?どこに行くんだ?」
「お風呂って知ってるか?」
「知らん。」
「だろうと思ったぜ!気持ちいいことしに行こうぜ?」
「ふむ。」
ジャック達に着いて一軒の建物に入る。
「親父!大人三人子供一人だ!金置いとくぞ!」
「あいよ!」
馴れた手付きでやり取りをしてジャック達は立ち止まる事無く店員という職業の人間だろう。
の隣を歩いて通路を歩いて行く。
少し歩くと棚がたくさん置かれた部屋に入り、ジャック達が服を脱ぎ始める。
「ニコ君?服を脱いでタオルを持って行くぞ!」
「・・・わかった。」
言われるままに服を脱ぐと、ジャック達が俺の体を凝視する。
「・・・なんだ?俺の体まで非常識とか言うのか?」
「ニコ君?その魔法陣は何だ?」
「ひゅー!その歳で彫り物かよ・・・」
「見た事ない形式の魔法陣ですね。」
「ん?人間の魔法師は体に魔法陣を刻まないのか?」
「刻みません。」
「少なくともニコの歳で入れてるのは始めて見たぜ?」
「これで精霊を呼び出せるのか?興味深いな・・・」
「ならば隠すようにしよう。」
俺は体までも非常識だったようだ。
認識阻害魔法で魔法陣を隠すと、ジャックはほっと息を吐いて、グレイがとても悲しそうな顔をした。
「じゃあニコ君行こうか!」
「あぁ。」
ジャックに促されるままに、椅子に座ると液体をかけられる。
「なんだ?これは?」
「目を瞑ってな?」
「痛い!目が痛いぞジャック!」
「だから目を瞑ってなって!」
いい香りのする液体をかけられ体中をごしごしと擦られ、最後にお湯をかけられる。
気持ちいい。ただ目が非常に痛い。
「ほら終わったぞ!そこの湯に入ってな?」
「ふむ。」
ジャックの指の先に石で出来た湯が張られた場所がある。
「肩まで浸かるんだぞ?」
「お湯に入るのか・・・」
水浴びなら何度もしたことあるが、人間はこうやって体を綺麗にするのか。
ルル達は洗浄魔法で体を綺麗にするが・・・手間をかけるのもいいものだな、湯に浸かるのは気持ちがいい。
しばらくするとジャック達も風呂に入って来て愉悦の声を上げている。
「ニコ君どうだ?風呂はいいだろう?」
「そうだな。これは気持ちがいい。」
「ハッハァ!知れてよかったな?」
「ニコ君?もう一度魔法陣を見せてくれませんか?」
「グレイはニコ君を詮索すんな!」
「これは王都にもあるか?」
無くても魔法で作ろうと思うが一応聞いておく。
「王都はもっと立派で大きい風呂があるぜ!?」
「そうそう!大理石を使った大浴場だ!」
「んむ。百人が入っても余裕の広さだよ?」
「それは楽しみが増えた。」
ジャック達の言葉に安心して風呂を堪能する。
風呂から上がり、ジャック達とギルドへと行く。
「ギルドだと?」
「ギルドは登録と売却するだけの場所じゃねんだぞ?」
「あったあった!薬草の採集だ!」
「こちらにはゴブリンの討伐がありますよ?」
ブランとグレイが壁に貼ってある紙を剥がして言う。
「何をしてるんだ?」
「あれは依頼ボードといってニコ君でも受けられて、手っ取り早くこなせる依頼を探してるんだ。」
「ほらニコ!この紙を持ってアマンダのところに行ってきな?」
「ニコ君!この紙もですよ?」
「わかった。」
二人から紙束を受けとり受付嬢のアマンダへカードと一緒に差し出す。
「・・・ニコ君?初日で張り切ってるのはわかるけどこの数を受けるのは・・・」
「大丈夫だ!俺達がサポートするから!」
「ジャックさん!?ならわかりました!」
アマンダがカウンターの奥で何やら作業をしてカードを返してくれる。
「じゃあニコ君?ジャックさん達の言う事を聞いて頑張ってね?」
「わかった。」
「じゃあニコ君行こうか!」
「ゴブリン探しは任せな!」
「私は薬草探しですね。」
「色々と教えてくれ。」
ジャック達と村を出て近くの森へと向かって歩く。
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