第八話 村に到着
「では見張りは我々に任せてニコさんは寝てくれよな?」
「そうだな!俺達に任せて子供は寝な!」
「少しは大人らしい所を見せないと駄目でしょうしね。」
「ん?みんなは寝ないのか?」
「魔物に襲われたら危ないだろ?」
「そうだそうだ!魔の森だぞ?」
「一瞬でも油断すれば死ぬ森ですよ?」
「認識阻害魔法をかけてるから大丈夫だぞ?」
この三人は何を言っているのだろう?
夜寝るのに認識阻害魔法もかけずに眠るつもりだったのだろうか?
不思議なことを言うものだ。
「なん・・・だ?それ?」
「認識?阻害?なんだそりゃ?」
「私はそんな魔法は知りませんね。」
「聞いたとおり外から見てもわからなくなる魔法だ。」
「ニコ君?それは非常識だからな?」
「・・・そうなのか?」
三人がぶんぶんと首を振る。
「じゃあ解除して見張りをお願いしよう。」
「待っ!」
「ちょっと待て!」
「今日だけはそれで行きましょう。」
三人に必死に言われそのまま四人で就寝する。
「本当に何も無かったな・・・」
「何度か目が覚めたが大丈夫だったな。」
「んーっ!よく寝た!」
「朝食を食べて昼には森を出るぞ。」
二人が起きてホッと一息吐き、ブランが一人大きく伸びをしている。
ジャックが手早く料理を作り朝食を食べる。
熊のような見た目の割には料理が美味く俺の質問にもしっかりと答えてくれる、面白い人間である。
朝食を食べ終わり森を走って進む。
予定通りに太陽が真上に来る前に森の切れ目に到着し。
森の外であろう平原には鎧を着た人間が見える。
「おい。あの鎧を着たのが兵士か?」
「そうだ!」
「お前らはあの建物を抜けるんだな?」
「・・・そうだ!あの屯所を通って出るぞ。」
「ならば先に行って待ってる。・・・あ。キマイラとマンティコアの生息地の調査だったな?地図を出せ。」
「はい。」
ジャックが慌てて森の地図を出す。
「こことこことここがキマイラのこことここがマンティコアの発生地帯だ。他にもあるかも知れんが。」
森の全体像は昔ルルに飛んで上空から見ているので大体分かっている。
お礼代わりに指で指して教えてやる。
「おい!メモしたか?」
「キマイラはした!」
「マンティコアも大丈夫です!」
「じゃあまた後でな?」
「後で会おう!」
「ニコ?あんがとな!」
「これで調査依頼も成功で文句なしです!」
満面の笑みで三人が森から出て行く。
「俺も行くか。」
自分に認識阻害魔法をかけ森から出て行く。
魔法の効果で俺よりも魔力の低い者からは視認出来ず、匂いや気配も感じない。
接触するか余程の音を立てない限りは気付かれることは無いはずだ。
あとドアを開けるなどをするとドアだけが開いてるように見えるので物に接触も出来ない。
普通に森から出て歩き、魔物が出た時のためだろう、大人三人分の高さの塀があるが問題無く飛び越えて近くの森へ行ってジャック達が出て来るのを待つ。
ゆっくりとハッピーの料理を食べているとジャック達が屯所と言っていた建物から出てきて、キョロキョロしながら歩いている。
顔を出したいがこんな近くで顔を出して兵士に見つかっては馬鹿と思われても仕方がない非常識な行為な事はわかっているのでしばらくジャック達を見失わない程度について歩く。
初めての山や地平線など二時間ほど周りの景色に目を奪われながら尾行してから、ジャック達の前に姿を現す。
「よかった!兵士に捕まったかと心配したぞ?」
「な?こいつが捕まる訳がないって言っただろ?」
「ハハハ。ブランのは言うというよりは自分に言い聞かせてたが正しいと思うよ!」
「心配かけたな。次の村か?まではどれくらいだ?」
「村だな。今日中には着くだろう。」
「早く行こうぜ?報告してベッドで寝てぇよ!」
「そうですね。僕もベッドで寝たいです。」
二人が言うベッドとは何だろうか?
きっと口調からするに当たり前の物だろう。だからあえてジャックに聞かずに楽しみにしよう。
それよりも常識だ。目立たないように知識を蓄えねば。
そう思って村までの道中色々と質問する。
ジャックはそれに森の中と変わらず一切嫌な顔をせずに答えてくれる。
「(やはりジャックとの出会いは僥倖だったな。)」
そんな事を思いながら村へと歩を進める。
「村が見えたぞ!」
「やっほー!報告はリーダーに任せたぜ?宿は任せろぉ!」
「ブラン待ちなさい!」
遠くに建物が見えブランとグレイが走って行く。
「なぁジャック?」
「全くあの二人は・・・どうした?」
「俺が金貨で買物をしたら非常識なんだよな?」
「・・・非常識ではないがかなり目立つな?」
「そして俺が魔物の素材を売るのも非常識なんだな?」
「どんな素材かによるな?」
ジャックの言葉に合間に剥いでいたリザードマンの肉と魔石以外の素材とキマイラなどの素材を取り出して地面に置く。
「この毛皮は?」
「キマイラの毛皮だ。」
「この鱗は?」
「リザードマンの鱗だ。お前らと戦ってたリザードマンのも含むぞ?」
「・・・非常識だな。」
「ならこれを売って金にするのも駄目か・・・」
「だが俺が売るなら?なんとでも言い訳も出来るな!」
「そうか?頼んでもいいか?」
「もちろんだとも!」
「あれもこれもすまんな。」
「命を救って貰って、森からも脱出させてもらったんだ!これくらいでは返せると思ってないぜ!」
「すまんな。」
「ハッハッハッ!じゃあ行こう!」
ジャックに付いていき村へと着く。
村はルル達の作った家にそっくりな建物がまばら並び、色々な人間が歩いていた。
「ニコ君?こっちだぞ?」
「ん?あぁ。」
ジャックに促され一軒の建物に入る。
外見はルルとエドが作った建物と相違なかったのだが、中に一歩入ると中は小分けになっており、見た事もないものが一杯だ。
ジャックに小声で聞く。
「ジャック?あの女性の前にある机はなんだ?」
「あれはカウンターという物だぞ?」
「じゃああの道具は何だ?」
「あれは後でわかるだろう。」
カウンターの上に置いてある水晶玉の事を教えてもらえなかった。
何に使う物なのだろう?気になっているとカウンターの奥にいる女性が口を開く。
「あ、ジャックさんおかえり!今日も魔物の売却かしら?」
カウンターの奥にいるお下げ髪の女性がジャックに気付いて声をかける。
「おうアマンダ!調査以来の報告と・・・森の中で大物を見つけたぞ?」
そう言って魔物の素材をカウンターの上に置く。
俺が渡した素材以外にも色々置いているようだ。
「これは・・・キマイラですか?」
「魔の森で偶然死体を見つけてな?ラッキーだぜ!」
「それは幸運でしたね!査定するので待ってくださいね!」
「おう!ついでにこの子の冒険者登録をお願いするぜ!」
「ん?人攫いですか?」
「ハッハッ!冗談きついぜ!山奥に住んでた爺さんが学校に行かせたいってんで預かったんだ!」
「へぇ?ジャックさんって見た目によらずいい人ですよね?」
「見た目もいい人のつもりなんだがな・・・」
「ウフフ、かしこまりました!」
アマンダが素材をカウンターの奥に持って行き、ニコがジャックと話す。
「ん?なぜ登録なんかしないと駄目なんだ?」
「ニコ君?身分証は作っておかないと駄目だぞ?」
「そうなのか?」
「大きい町に入るにも身分証。買物するにも身分証、全部身分証だ。」
「なるほど。それは難儀だな。」
「それに身分証があれば色々と便利だ。んでもって一番簡単な身分証が冒険者証なんだ。」
「本当にジャック達に会えたのは僥倖だったな。」
「まだまだ恩を返しきれてないがな?」
ジャックと話しをしていると
アマンダと呼ばれていた女性に呼ばれる。
「えっと・・・ニコ君?おいで?」
「文字の読み書きは出来るのかな?」
「出来ません。」
「じゃあ代筆ね。質問に答えてね?」
「はい。」
「お名前は?」
「ニコ」
「お歳は?」
「八歳」
「性別は男の子ね・・・最後に属性を調べるからこの玉に触ってもらえるかな?」
「はい。」
アマンダに言われるままに水晶玉に手を当てる。
「・・・魔力無しっと!」
透明なままの水晶玉を見てアマンダが淡淡と記入用紙に書き込みをしてカウンターの奥へと消える。
「え?火属性・・・」
「なんだ?これは?意味がわからん。」
突然の出来事に呆気に取られる、ジャックは何やら驚いた顔をしている。
「これはだな。」
ジャックが水晶玉に触れると茶色く光り始める。
「こういう風に人の魔力に反応して何属性を持っているのか調べる道具だ。」
「ほう?俺はなぜ光らないんだ?」
「さっぱりだな。」
「まぁいい。身分証とやらが手に入ればいいんだ。」
「そ、そうだな!」
アマンダが皮袋と一枚のカードを持ってやってくる。
「ではジャックさんには素材代金と依頼報酬に明細書です。」
「おう!ありがとうよ!」
「ニコ君はこっちね?血を一滴垂らして?」
「分かった」
くすんだ銀色のカードに指先を切り血を垂らすと、カードに染み込んで行き血が消える。
「へぇ?血が消えた。」
「これでニコ君以外には反応しないよ!」
「ほう?反応しないとは?」
「ギルドにお金を預けるとね?このカードで買物が出来る様になるの。」
「ほう?」
「もちろん、登録してないお店では使えないけど大体の店で使えるよ?」
「ふむ。」
「(金と言う概念がよくわかってないのだがな・・・)」
意味が分からずに困っているとジャックが目の前に皮袋を置く。
「アマンダ。これだけニコさんのカードに入れてくれ!」
「え?ほとんどですがいいんですか?」
アマンダがとても驚いた顔をしているので、かなりの額なのだろう。
ジャックは笑顔で頷いている。
「ニコさんの爺さんとの約束だからな!」
「わ、わかりました。」
「この金は引き出そうと思ったら引き出せるのか?」
「どこの冒険者ギルドでもカードを出せば引き出せるよ!」
「よくわからんが便利なんだろうな。」
処理を終えたアマンダからカードを受けとる。
「そうだ!アマンダ?ギルドで文字の読み書きを教えてなかったっけ?」
「うーん来週の水曜日ですね!ニコ君のですね?予約しておきますか?」
「そうか・・・じゃあ無理だな。すぐに王都に経たねばならんのだ。」
「それは残念です。」
「じゃあニコ君行こうか?」
「あぁ。」
ジャックに促されギルドを出る。
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