第七話 人との初交流
「(初めての交流は大成功だな。)」
初めての交流で意思疎通をしっかりとこなせたことに大満足だ。
「な・・・な?」
こちらを見て指差す人間に怪我は無さそうだ。
そっちの木に倒れ掛かった男も枝の上にいる男も大丈夫そうだな。
先を急ごう。
「(・・・そういえば別れ際に声をかけるのが人間の常識だったか。)」
クネからの教えを思い出し一声掛けてから出発する事にする。
「じゃあ気を付けてな。」
「待て!お前は何者だ!?」
ニコは思い出す。
クネに人間と会った時はこう言うのよ?っと教えられていた言葉を思い出した。
「(クネはこうなることを見越してたんだな・・・さすがはクネだ。)」
クネが母親で本当によかった。
「初めまして、ニコと申します。」
「え?ジャックです?」
「では失礼します。」
「待て!待ってくれ!話しをしないか?」
「・・・わかった。」
人間の事を森から出る前に知れるとは僥倖だな。
まずリザードマンと三対一で勝てない彼らが人間の中でどれほどの強さなのか。
そして人間社会の常識を・・・あわよくば学校がある王都という所への案内もお願い出来ればいいのだが。
そんな事を考えていると枝の上で弓を構えていた男が降りてくる。
「こちら俺達を助けてくれたニコ君だ。」
「ブランだ・・・助かった。」
「初めまして、ニコです。あのリザードマンはどうする?」
「君が倒したんだ。君の者だ。」
「分かった。」
いつも通りに縄で吊るし血抜きをする。
なぜか俺の行動を見つめるジャックとブラン。
「(命に別状は無さそうだが気絶したもう一人の男をほっといていいのか?)」
そんな事を考えているとジャックという茶髪の熊みたいな男が木に倒れ掛かった男に駆け寄っていた。
「やはり少し時間が経ちすぎたな・・・」
血の出が悪いので、リザードマンの心臓がある場所を乱暴に殴って無理矢理血を巡らせて血抜きをする。
血が出なくなったのでマジックバッグに放り込みジャック達の下へと歩み寄る。
「グレイ!グレイ大丈夫か!」
「ブラン揺さ振るな!心臓は動いてる!」
「どいてくれ。」
無茶苦茶な蘇生を試みていたので、治癒魔法をかけて覚醒させる。
「はっ!?俺は・・・生きてるのか!?リザードマンは!?」
「グレイ!グレイ俺を見ろ!リザードマンは大丈夫だ!」
「そうだ!そこのニコ君が倒してくれた!」
「はぁっ!?子供?やはり俺は死んだんですね・・・」
気を失っていた男性は何やら混乱しているようだ。
遅めの朝食にハッピーの料理を食べながら三人が落ち着くのを待つ事にする。
ハッピーの料理を食べ終わっても三人は言い合いを続けていた。
「おい。俺は先を急ぐ。行っていいか?」
俺の言葉に三人が同時に目を見開いてこちらを見るが返答は無いので行っていいという事だろうと背中を向けると呼び止められる。
「待ってくれ!」
「なんだ?お前らを待ってる時間が惜しいのだが。」
ずっと待たされた上に何も情報を得られてない・・・イライラするのも当然である。
「ニコ君は何者だ?」
「人間だが?」
「リザードマンを一刀で倒す子供が人間な訳あるかっごぶっ!」
ブランが突然喚き始め、そして面白い顔になって気を失う。
ブランの体を見るとジャックの拳がブランの鳩尾に埋まっている。
「失礼しました。ではニコ君の目的は?どこへ行きたいのかな?」
「人間は八歳になったら学校に行くのだろう?王都に行って学校で学ぶためだ。」
「お前のような化物が王都へ!?そんなの許される訳がないでっフゴッ!」
先程と同じように喚きだしたグレイも突然面白い顔になって気を失う。
グレンの体を見るとやはりジャックの拳がグレンの鳩尾に埋まっている。
「し、失礼しました。ニコ君はどこで育ったのかな?」
「・・・俺も質問をしてもいいか?」
おそらくこの森で育ったと言うのは拙いだろうと思い話を変える。
「ど、どうぞ!」
「お前達は人間の中でどれくらい強いんだ?」
「・・・我々よりも強い人間はいくらでもいるとだけ。」
「そうか俺は少々非常識だ。」
「・・・」
「人間の常識を教えて貰いたい。」
「常識とはどこから?」
「それがわからないから困ってる。」
「ではまず!人間の子供。ニコ君くらいの子はリザードマンは倒せない。」
「絶対に?」
「絶対だ!天地が引っくり返っても!」
「天地が?」
「次にだな、この森を歩く子供はいない。」
「これも天地が引っくり返ってもか?」
「天地が引っくり返ったら入るかもな。親に捨てられた子供か気狂いだろうが。」
「なるほど。俺がここから出るのを見られるのは拙いのだな?」
「森の出口には魔物が出て来ないように兵士が見張ってるから、ばれずに出るのは不可能だ。」
「じゃあ最後だ。俺は人間と仲良くしたい。手伝って欲しい。」
「命を助けて貰ったんだ!出来る限りの事はしよう!」
「有難い。」
「で、だな?手伝うためにも森の外まで案内してもらっても?」
「わかった。俺は学校に行きたい、間に合うか?」
「王都か・・・ギリギリだな。」
「じゃあ急ごう。」
ブランとグレイに治癒魔法を施して覚醒させる。
「お前ら!ニコ君に従って森を出るぞ!」
「行くぞ。」
俺が進むとジャックがぴったりと着いて来て、ブランとグレイもジャックの後ろに付いてくる。
三人に合わせて木の上を飛ばずにいつもの半分くらいの速度で地上を歩いているのだが、後ろの三人は枝に引っかかったり足元の草に足を取られたりしていて表情に余裕は無さそうだ。
「この速度が限界か?」
「・・・正直きついな。」
「お前ら人間の中でも強い方なのだろう?」
「俺達と同じ歳でもっと強い人間なんて星の数ほどいる!」
「そうか安心した。なら俺もお前らくらいの歳まで成長すれば普通だな。」
「「「(それはない!)」」」
何か失礼な事を言われた気がしたのでわからない程度に速度を上げる。
数時間進んで日が暮れたので夜営する。
「今日中に森を抜ける予定だったんだがな・・・」
「お前は余裕だろうが俺達は全力だよ!」
「明日体が動くか心配です・・・」
「お前ら!ニコ君に失礼な口を聞くな!」
「いい。気にしてない。それでジャックさっき言ってたが学校とは金がかかるのか?」
「はい。学校に行くのは貴族です!六年行くとして大体六百万ゴールドはかかるかと。」
「それがどれくらいかわからん。これで足りるか?」
そう言ってルルから預かった金貨の入った皮袋を取り出す。
「これは・・・」
「うおっ!なんで大金貨なんて持ってんだ!?」
「十枚ですか。」
三人が皮袋の中身のコインを見て驚いている。
「どうだ?学校には行けるか?」
「問題ないと思うぞ!」
ならば金の心配は要らないなと皮袋をマジックバッグに入れる。
話しが一段落してジャックが木の棒をまわし始める。
「何をしてるんだ?」
「火を起こしてる。」
ジャックの前を見ると木の枝が重ねられている。
その木に魔法で火を点ける。
「なんと!?火属性を持ってるのか!?」
「火属性?あぁ精霊魔法の話か。火を起こせないと困るだろう?」
「火属性は珍しいからな!ありがたい!」
「ほう?じゃあ俺は珍しいんだな。」
「ニコ君は稀有な才能を持った子供だ!」
「意味がわからん。」
しばらく待っているとジャック達の料理が完成したのだろう、縦長の器に入ったスープと茶色い柔らかい物を渡してくる。
縦長の器は側面に取っ手が付いていてとても扱いやすい考えられた形状をした器だ。
「これはなんだ?」
「芋のポタージュスープとパンだが?」
「なんだ?始めて見るのか?」
「ふふっ!どんな生活をしていたのやら・・・」
一口食べて更に疑問が生まれる
「スープに入ってる肉は始めて食べるがどんな魔物の肉だ?」
「ハッハッハッ!牛肉を干したものを入れてる!」
「魔物の肉や血なんて貴族くらいしか食べれねぇって!」
「我々も毎食魔物の肉を食べて魔力を上げたいものですね!ハッハッハッ」
「何を言ってるんだ?」
「ニコ君?平民は魔物の肉なんて高くて食べれないんだよ?常識だ!」
「そうだそうだ!ゴブリンやコボルトなら売らずに食べるけどな!ヘッヘッ」
「そうですね。リザードマンの肉なんて食べる前に売りますもんね。血や魔石を食べるなんて夢のまた夢ですね。」
「なんだと?それじゃ人間はどうやって魔力を上げるんだ?」
「ニコ君?常識を教えとく。よく聞いてくれ?」
ジャックが何か教えてくれるようだ。
「魔物を食べれるのは貴族や商人の金持ちだけ!我々平民は魔物を狩っても生活のために全て売り払うんだ。」
「何!?」
「まず貴族とは何かわかるか?」
「わからん。説明してくれると助かる。」
その後ジャックからの説明を受けるが、ルルの説明の十倍わかりやすかった。
「つまり、貴族が領地を運営し、魔物が出たりすれば魔力の高い貴族が解決して領民が貴族に感謝して尊敬し、領民が更に頑張り領地内に金が回って貴族が更に魔物を食べ強くなる。そしてそれを纏めるのが王で、俺が向かう王都に住んでいるって事か?」
「その通り!」
「なるほど。人間は魔物を一部の人間に集めることによって突出した精鋭を作って魔物から人間を守っているのか。」
「まぁ概ねその通りだ。」
「では俺が大衆の前で魔物の肉を食べるのは非常識だな?」
「そうだな。」
「ジャック達に会えたのは僥倖だったな。」
ジャック達と会っていなければ、森を出る時に兵士と争い貴族と戦っていた可能性もあった。
これからはもっと慎重に動かないと駄目だなと決意も新たに意気込む。
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