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第十話 始めての冒険者活動

村を出て一時間で目的の場所に着いたようだ。

三人がそれぞれに動き始め、今はグレイに平原に生えた薬草の事を教えてもらいながら集めている。


両手で抱えるくらいの量を採取したのでグレイの下へ戻る

「グレイ?これくらい集めたがまだいるのか?」

「この短時間でそれだけの量を?」

「森育ちだからこういうのは得意だ。」

「すごいですね・・・それだけあれば問題ないでしょう!では次の薬草です!」

「何を探す?」

「サルノコシカケという茸を探しますよ?」

「これか?」

途中で見かけたので採取してあった植物をマジックバックから取り出してグレイに見せる。


「なんですと!?」

「森育ちだからこういうのは得意だ。」

「植物採取の依頼は完了ですね。」

「じゃあマジックバッグに入れておこう。」

そう言って採取した薬草をマジックバッグに入れる。


「ではジャックとブランを探しましょうか?」

「こっちだ。」

「場所がわかるのですか?」

探索魔法(サーチ)で場所はわかってる。」

グレイを連れてジャックとブランのいる森の中を進んで行く。



十分ほどでジャックとブランのいる場所に着く。

「お前ら何してるんだ?」

「ニコ君?」

「おいおい!薬草採取してろよ!」

「終わったんですよ。」

「ゴブリンとか言ってたな?あっちにある洞窟の中だ。」

「必死に足跡を辿っていたのが馬鹿みたいだ・・・」

「俺のスカウトとしての存在意義が・・・」

「ニコ君はなんでも出来るんだな。」

「だが、俺はゴブリンを食べたくないから殺したくないのだが?」

「ニコ君?役割分担だぞ?」

「そうそう!俺達は狩る人!食べる人は他の人!」

「それにゴブリン達は繁殖のために他の魔物に比べて積極的に人間を攫うので倒さないと被害が出るからな。」

「役割分担か、なら問題無い。」

「血抜きもしなくていいぞ?あれをすると魔素濃度が上がって魔物が発生しやすくなるからな!」

「そうそう!俺達が食べるわけじゃないから血抜きはいらねぇ!」

「わかった。待ってろ。」

三人に言われ、ゴブリン達がいる洞窟へと走る。



あえて穴の前で見張りをするゴブリンに見つかる。

そうする事によって洞窟の中にいたゴブリン達がわらわらと出てきて醜く喚いて粗末な剣でウッドシールドを叩いて俺に対して威嚇をしている。

洞窟から全員出てきたのだろう、総勢二十近くのゴブリンが一斉に俺へと襲い掛かってくる。

俺は魔法の雷を生み出しゴブリンへと投げつける。

一体のゴブリンに当たるとゴブリンに光の筋が伝播して行き、白い煙を上げながら順番に倒れて行く。

すぐに最後尾のゴブリンが地面をごろごろと転がりながら息絶える。


「は?もう終わったのか?」

「動かねぇな?」

「今のは雷魔法でしょうか?」

「心臓が止まって血抜きが出来なくなるから普段が使わないが、ゴブリン程度の相手ならこれが一番楽だ。」

ジャック達が何やら驚いているが構わず息絶えたゴブリンをマジックバッグに入れて行く。


「これで依頼は終わりか?」

「あ、あぁ。次が最後だ。」

「次が最後?」

「失敗してもペナルティが無い依頼だから余裕があればと受けたやつだ。」

「何だ?」

「この森の魔物生息域の調査だ。」

「ふむ。じゃあ行って来る。」

「待て!常識的な調査を教える!」

「・・・後々必要になるかもしれんな。」

「そうだろ?四人で調査だ。」

「わかった。」

これから同じように依頼を受ける事もあるかもしれない。

非常識な行動をしないためにもジャックの提案はありがたい限りだ。

ジャック達の調査をしっかりと観察して常識的な冒険者を勉強しよう。



と思って付いて行き数時間森を歩く・・・暇だ。

ただただ地図を見ながら歩くだけなのだ。

魔物を見つければ地図に書き込み、見つからないように離れてまた歩くの繰り返しだ。

「なぁ?さっきの森林狼も逃げずに狩ればよかったんじゃ?」

「狩れば血が流れます。そうすれば血により魔素濃度が高まり新たな魔物が出てきます。」

「さっきから言ってるが魔素濃度って何だ?」

「ふむ。そこからですか・・・」

「魔物が生まれる場所は魔力が回復しやすい事に関係してるのか?」

「空気中の魔力を魔素と言う。森の中や洞窟の中には魔素が流れずに溜まる場所があるんだが、そこを俗に魔素溜まりと言う。その魔素溜まりで生まれるのが魔物なんだ。」

「ふむ。」

「そして魔物の血が空気に触れると急速に魔力が空気に溶け込んで魔素となって魔素溜まりの濃度が上がって更に強い魔物が生まれる可能性も出るわけだ!」

「ほう?俺なら血を流さずに仕留められるが?」

「そこで我々の調査結果を元に別の冒険者が討伐に出るわけだ!」

「役割分担か。」

「そうです!魔の森で俺達がしてたのもそういう事だ!」

「そういう事なら我慢しよう。」

「そうだ!俺達よりも弱い人間の稼ぎ口を確保してやるのも仕事の一つだからな?」

「肝に銘じておこう。」

まさか魔物の事で教えられる事があるとは思ってもいなかった。

ただただ感心してジャックの話に聞き入ってしまう。

「(やはりルルの百倍わかりやすいな。)」

ジャックの評価はかなり高い。


「ならあれも狩らずに報告でいいんだな?」

ジャックに言うと三人が言葉を失っている。

「どうした?地図に書き込まないと駄目だろ?」

「ミ、ミノタウロスだとぉ!?」

「俺達じゃ対処出来ねぇ!帰って報告だ!」

「ブラン待ちなさい!ここは森の浅い所だ!ミノタウロスがいつ森を出てきてもおかしくないぞ?」

「ん?書き込まないのか?」

「ニコ君?あれは退治しないと!村を襲えばかなりやばい魔物だぞ?」

「ミノタウロスなんて俺達じゃ無理だって!」

「ですが・・・このままじゃリオルゲンの村が・・・」

俺達がいた村はリオルゲンの村というらしい。

ジャック達が覚悟を決めた顔をしている。


「狩るのか?多分あいつには俺の雷は通らないぞ?」

「ニコ君でもきついのか・・・」

「そりゃそうだ!ミノタウロスだぞ?」

「なぜこんな森にいるのか不思議ですね。」

ゴブリンのようには倒せないと言ったつもりなのだが間違って伝わってしまったようだ。

誤解を解こうとするが、ジャック達はすでに走り出していて誤解を解く暇が無かった。



その場に座って眺める。

ジャックがミノタウロスの拳を受け流して地面にクレーターが出来ている。

ミノタウロスが地面を殴っている隙にブランが矢を放ちグレンが魔法を放っているがミノタウロスは意に介した様子は見られない。

どう見ても劣勢だ。


ジャックは一発喰らえば死ぬ状況で必死にミノタウロスの攻撃を受け流してブランとグレイは必死の形相で攻撃している。

「(やはり手を出せば三人の名誉に傷が付くんだろうな・・・)」

俺が手を出せばすぐに首を刈り取れるだろうと思うのだが、三人の名誉のためにもグッと我慢する。


「ニコ!?見てないでお前も手伝え!」

「いいのか?」

ブランの言葉に思わず立ち上がってしまう。

「ニコ君!君も手伝ってくれれば勝てる相手だ!頼む!」

「なぜそこで見ているのですか!?みんなで力を合わせねば勝てる相手ではありませんよ?」

「そういうことなら任せろ。」

一足飛びにミノタウロスへと地を蹴る。

ミノタウロスが地面に拳を突き立てたのでミノタウロスの肩に飛び乗り、そのまますれ違いざまに居合い切りで首を切り落とす。

ジャックに気を取られていたので思い通りに事が進んだ。

「(一対一での勝負ならこんなに上手くは行かなかっただろうな。)」

そう思いつつ剣を一振りして刀に付いた血を飛ばしてミノタウロスの血抜きを開始する。



「ニコ君?攻撃が通らないと言わなかった?」

「ゴブリンみたいに雷は通らないと言った。」

「ニコ?なんで手を出さなかった?」

「お前らの名誉を傷つけると思って我慢していた。」

「ニコ君?そのミノタウロスは食べるのですか?」

「食べるつもりだから血抜きしている。」

三人の質問にしっかりと答えて血抜きを済ませたミノタウロスをマジックバッグに入れる。



なぜか三人は俺を見て固まっている。

「(もしかして討伐証明部位とやらがいるのか?)」

そう思って俺は三人に声をかける。

「なるほど。討伐の証明に体がいるのか?」

「・・・ミノタウロスは頭部の角があれば討伐証明になる。」

「ならば問題ないな。調査を進めるぞ。すまんが教授を頼む。」

「・・・そんな話しだったな。飯にしようや・・・」

なぜか表情を失った三人と昼食を食べてから森の調査依頼をこなして行く。



「みんなあれか?ミノタウロスの肉が欲しいのか?ちゃんと四等分にするから安心しろ。・・・だが魔石は砕けるから四等分は難しいな。」

討伐証明部位の心配は無いと言うので、みんなが自分の肉の取り分を心配をして心ここに在らずといった様子なのだろうと思い言う。

「もういい。もういいんだ。」

「ニコが倒したんだ。ニコが全部持って行け。」

「二人の言う通りです。ニコ君が全部食べるべきです。」

「なんだ?言いたい事があるならはっきり言わないと駄目だぞ?」

無表情で三人が言うので俺が言うと三人が迫ってくる。


「ニコ君!?ミノタウロスの首を一刀両断する剣なんてどこで手に入るんだ!?」

「おい二コ!名誉とかじゃねぇよ!さっさとお前が狩れよ!リーダー死ぬ所だぞ!」

「ニコ君?ミノタウロスの肉を売れば二百万・・・いや血抜きを済ませた肉なら全部食べられるでしょう!倍の値段になりますよ!」

三人がすごい剣幕で食ってかかられ、思わず呟きが漏れる。

「騒がしい奴らだ。」

「「「お前のせいだ!」」」

三人が声を揃えて言う。

あまりにも同時になので普段から練習をしているのだろう。

「(人間とは不思議な事を練習するのだな・・・)」

また一つ勉強になった。



「日が傾いてきた。村に帰るぞ。帰っていいんだろ?」

「そうだな。帰ろう!」

「じゃあ帰ってギルドに報告だな。」

「リーダー!ニコに常識を教えないと!」

「そうだ!ニコ君?ギルドでの報告で出す予定の物を出してくれ。」

ジャックに言われるままにマジックバッグから出す。

両手で抱える程度の量の薬草・ゴブリン二十体の死体・そしてミノタウロスの頭部と昼食の間に剥いだ皮。


「いいですか?常識のマジックバッグの容量は・・・この頭部が入れば大きい方です。」

「たったそれだけだと!?」

「俺じゃあそのミノタウロスの頭部は入らねぇぜ?」

「魔法師兼剣士の僕でもその頭部が三個が限界ですね。」

「という訳で森の入口に台車を用意してるから引いて行くぞ!」

「なんという事だ・・・不便にもほどがある!」

思わず叫んでしまう。

ジャック達は笑いながら今日一日の戦利品を荷台に載せている。


「ニコ君?村に帰るぞ?」

「さっさと帰って風呂に入ろうぜ!」

「ブラン?賛成です。」

「・・・リーダーが荷台を引っ張るんだな?これも常識か?」

「非常識だ!あいつらは非常識な事を俺にやらせている!」

ジャックが荷台を引っ張って村へと帰る。

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