第十一話 始めての報告と買物
ジャックが荷台を引き、夕暮れ時にリオルゲンのギルドへと到着する。
「でだな・・・ミノタウロスが・・・東の森で・・・」
「それは要調査ですね。」
「なんとか討伐できたが異常事態だ。」
「わかりました、早急に調べます。」
ジャックがアマンダにミノタウロスの頭部を見せて経緯を説明している。
アマンダが目を白黒させて報告書を書きながらジャックの話を聞いている。
話しが終わりアマンダが俺に向き直って笑顔で手を差し出す。
「ではニコ君?カードを預かります!報酬はカードでいいかな?」
「頼む。」
アマンダにカードを渡す。
なにやらカウンターの下でごそごそしながらアマンダが口を開く。
「さすがは銀級冒険者と一緒だとすごい成果ね!」
「ハッハッハッ!ニコ君が頑張ったんだよ!」
「にしてもジャックさん達もミノタウロスを倒せるなんて金級は目の前ですね!」
「あ、あぁそうだな。そうなると嬉しいな。」
狼狽するジャックを見て、意味がわからない様子のアマンダは人差し指を顎に置いて首をかしげる。
「ん?私何か言っちゃいました?」
「な、なんでもない!ニコ君?明日もがんばろうな?」
「そうだな。」
「ではカードのお返しです!これからも頑張ってね?」
「ありがとう。」
カードを受け取りジャック達と一緒に風呂に入り宿で夕食を食べる。
「・・・!?美味い!」
「ハッハッハッ!今日のはほうれん草のパスタだ!」
「ほらほら二コ?口にソースが付いてるぞ?」
「こうやって見ると可愛い子供ですね。」
グレイが笑いながら俺の口をナプキンで拭いてくれる。
「すまんな。是非とも覚えて自分で作りたいものだ。」
「ハッハッハッ!ニコ君ならすぐに作れるようになるだろうね?」
「おいジャック?ニコは読み書きが出来ないんだよな?」
「出来ないな。」
「出来ないってよ?」
「なら明日は買出しに行かねぇか?二コの勉強用の本も買いたいしな?」
「ブラン?少々本は値が張ります・・・」
「そうだ!俺達の予算的にきついぞ・・・」
「ふむ。俺のカードじゃ足りないのか?」
俺のカードにはどれくらいかはさっぱりだが、結構な額の金額が入っているはずだ。
「十分だが・・・」
「ならそれでいいだろう?」
「ニコには世話になったからな・・・俺達で買ってやろうかとな・・・」
「いらん!色々常識を教えて貰えてるだけで十分すぎだ。」
何度も思う。
ジャック達に出会ったのは僥倖だったと。
夕食を終え、鍛錬をしてから魅惑の布団に入る。
「(そうだ!追加で金貨を出してもいいから布団も買っておかねば!)」
そう決意して意識が一瞬で夢の中へと飛んで行く。
「ニコ君?二コ君?」
「はっ!?」
ジャックに揺さぶられて目を覚ます。
「疲れているところ申し訳ないが朝だぞ?」
「布団が気持ち良くて。・・・そうだ!今日の買い出しでは布団も欲しい!」
思わず布団から飛び出してジャックに掴みかかって言う。
ジャックの顔を見るに驚かせてしまったようだ。
「・・・布団?」
「やはりこんな気持ちのいい物は高いか?追加で金貨を出すか?」
「いや!問題無く買えると思うぞ?任せろ!」
「ならよかった。」
「じゃあ朝食を食べるぞ?」
「わかった。」
身支度を整えて朝食を済ませ、三人に連れられて村を歩く。
通りを歩くと露天商という人間達が色々な物を地面に置いている。
「ジャック?あの白いのは何だ?」
「塩ですな。丁度いい買いましょう。」
ジャックが露天商と話しをして塩と金を交換する。
「ほう?買物とはこうやってするのか。」
「そうだぞ?店ではカードを出せば問題ないがな?」
「勉強になる。」
その後もジャックとブランとグレイは各々金と交換しながら色々な物を買って行く。
そして一軒の建物へと入って行く。
「ニコ君?ここは商店という所で何でも揃っている店だぞ?」
「ほう?」
「ジャック?二コの勉強はこの本がいいんじゃねぇか?」
「ジャック?文字の勉強用に白紙の本とペンとインクも要りますね?」
「お?いいんじゃねぇか?」
三人が四角い箱のような物を持ってあれこれと話している。
「それは何だ?」
「これが本だぞ?」
そう言ってジャックが目の前で箱を開けると中身の紙をパラパラと捲る。
中には昨日俺が使ったトイレをする絵や料理をする絵が描いてあり、隣に文字が書かれている。
「これはトイレと書いてあるのか?」
「そうだぞ?幼児用の学習本だ。」
「分かりやすくてありがたいな。」
「だが紙は高級品だからこれで覚えるのは貴族の子供くらいのものだがな!ハッハッハッ!」
「なら俺がこれを使って勉強するのは非常識じゃないのか?」
「目立つが非常識とまでは行かねぇよ!ただ盗んだ物だと勘違いされるかもしれないから気を付けろよ?」
「わかった。」
三人が選んだ品々をカードで購入して商店を出る。
「次は寝具店ですね。」
「グレイ?その前に飯にしようぜぇ?」
「そこに美味い飯屋があったろ?」
「美味いのか?楽しみだな。」
ジャックの案内で一軒の店に入る。
席に座ると同時に頼んでも無いのに料理が運ばれてくる。
「ん?誰か頼んだのか?」
「この店はこの料理だけなんだ。」
「二コ?うんめぇぞぉ?ヘヘヘ」
「さぁ食べて御覧?」
運ばれてきたスープを一口食べると口の中に甘辛くそして不思議な風味の料理だった。
とても美味しい。
すぐに皿の中身は空になってしまった。
「この料理は?」
「牛の内臓を煮込んだ料理だぞ?」
「ほう?あんな臭い部位をここまで美味しく出来るのか。」
「この店でしか食べた事ねぇから多分秘伝だぜ?」
「そうだろうな。」
三人が勝ち誇った顔でこちらを見てくるのが気に入らないが、あの臭い内臓をこんなに美味しく食べられる日が来るとは、森から出て本当によかったなと思って思わず笑みがこぼれてしまう。
ジャックが机の上に金を置いて、そのまま店を出て寝具屋へと向かう。
寝具屋という所は布団や枕がたくさん並んでいた。
「ジャック?これは何だ?」
「これは寝袋ですよ?」
「ほう?俺が持ってる寝袋に比べて、いや比べようもないくらいに暖かそうだな。」
「あぁ、あの寝袋は材質は最高だが中綿が入ってないしな。」
「これは高いのか?」
「この数字は二万ゴールドと書いてる。」
「20000で二万と読むのか。買うべきか?」
「買っておけば便利だな。ニコ君はマジックバッグの容量は気にしなくてよさそうだしな?」
「ならば買おう。」
信用するジャックがそういうのなら買わない手は無い。
「二コ?この布団なんかいいんじゃないか?」
「少々高いですが羽毛ですよ?」
「なぁ二コ?思うんだが布団は王都で買った方がもっと質がいい物があるぞ?」
「ふむ。ジャックがそう言うならそうしよう。」
「ならその寝袋買ってやるよ!」
ブランに寝袋を奪われる、どうやら会計をしてくれるようだ。
ありがたいがもう少し丁寧にして欲しいものだ。
「ほらよ!使うたびに俺達の事を思い出せよ?」
ブランが会計が終わった寝袋を満面の笑みで投げつけてくる。
「ありがとう。」
「お?二コは素直だねぇ?俺達こそありがとよ!」
「じゃあ最後にあそこに行くか。」
「そうですね?ニコ君には必要ないかもしれませんがね?」
「どこに行くんだ?」
ニヤニヤと笑う三人に案内されるままに付いて行くと、武具がたくさん並んだ店に着く。
「ほう?剣と弓しか見た事なかったが、色々な武器があるのだな?」
「二コ君?これを振ってみな?」
ジャックに両刃の大きい刃の付いた武器を渡してくるので、受け取って素振りをする。
「両手斧を片手で振るか・・・」
「分かっていましたがさすがですね。」
「面白半分で渡したがやっぱり振れるんだな。」
どう扱うかわからないので適当に刀と同じように素振りをしていると、三人が呆れた顔で見てくる。
「ん?非常識か?」
「子供は片手では振れないな。」
「そうですね。振れません。」
「ニコ君なら・・・いや馴れすぎだ!非常識だ。」
渡してきたジャックが自分を殴りながら何か言っている。
「坊主?その刀見せてもらっていいか?」
突然カウンターの奥のハゲ頭の男が話しかけてくる。
「あぁ問題ない。」
そう言ってカウンターの上に刀を置く。
ルルが持っていた魔剣を真似て作ったエドの自信作だ。
その刀を抜いて店主が目を輝かせて魅入っている。
「坊主?この剣売らねぇか?」
「大事な物なんだ、売らない。」
「一千万だ!どうだ?」
「いくら積まれようと売らない。」
「一千万じゃ安すぎるか・・・それにこれ魔力を纏ってるな?」
「魔力付与を施しているからな。」
「ま、ま、魔力付与!?」
ハゲ頭の男が驚いて立ち上がる、ジャック達も目を見開いて俺を見ている。
どうやら非常識だったようだ。
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