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第十二話 魔力付与をする

魔力付与とは、自分の魔力を物に留まらせる技術だ。

効果は付与する人の魔力によって、それぞれで俺の無属性で魔力付与をすると、その物の性能を強化する。

エドの刀なら切れ味や耐久性を。

クネの服なら炎や冷気に対する様々な耐性を強化するし勿論服としての機能も強化される。



「二コ君!?宿に帰るぞ?」

「あっ?えっ?なんだ?」

ジャックが突然俺を小脇に抱えるように持上げる。


「店主刀は返してもらう!ブラングレイ帰るぞ!」

「「おう!」」

刀を奪い取り店から飛び出しそのまま宿の部屋へと村を走りぬける三人。


部屋に着くと同時に床へと落とされる。

「どうした?もう少し丁寧に扱って欲しいものだ。」

「二コ君?常識を教える。」

「そうだな?常識を教える。」

「常識中の常識ですね。」

「はい。お願いします。」

三人の視線に殺気を感じる。

思わずその場に正座して返事をする。


「あのな?魔力付与師・・・エンチャンターだな?そんな人間はこの国には一人しかいない。」

「そうだ!しかもそのエンチャンターは天才と名高い神銀(ミスリル)級の冒険者だ。」

「ちなみにその人に魔力付与してもらうには一生遊べる金額がいります。」

「今までのお礼代わりにお前らの武器に魔力付与しようか?」

俺の言葉に三人が目を見開いて驚きながら笑って喜ぶと言う器用な表情をする。


「俺の魔力付与は性能強化だから余り期待するなよ?」

三人が首が取れそうな程に首を縦に振って武器を両手で差し出してくる。

とりあえずジャックとグレイの剣に魔力付与を施す。

やり方は至って単純。

魔力付与したい物に魔石を触れさせてに魔石が武具に定着するまで一定に魔力を纏わせるだけだ。

一分もするとジャックのロングソードに魔石が溶け込んで行く。

一定と言うのが大事で一定で無いと魔石は溶け込まない。



「魔石が溶けて無くなったたぞ?」

「ジャック、リーダーの剣と一体化しましたね?」

「俺の弓も魔力付与したらすごい事になるんじゃねぇの?」

三人が何か言っているが気にせずにグレイの剣にも魔力付与を施す。

「・・・終わったぞ。ブラン?弓にも魔力付与するのか?」

矢だけでなく弓を差し出すブランに言う。


「駄目か?」

「俺の魔力付与の効果は性能強化だ。弓の弦も強化されるから滅茶苦茶硬くなるぞ?」

「・・・使いこなして見せるさ!」

「ならいい。」

ブランの弓と矢を魔力付与を施して行く。

矢は五十本を一纏めにして持っていたリザードマンの魔石で魔力付与を済ませる。




弓矢が終わったのでジャックの鎧に手を当てる。

「二コ君!?何を?」

「お前らの鎧も強化しておく。」

「そんな・・・いくらするんだ・・・」

「二コ?もしかして俺達のもしてくれんのか?」

「いやいや!懐いてるジャックだけですって!」

「あ?お前らも後でするから待ってろ。それか装備を置いて出て行け。」

俺の言葉に鎧を脱いで土下座する二人。

そして頭を下げたままその場から動く気配は無い。


不思議に思ってジャックの鎧に魔力付与を行いつつ問いかける。

「何をしてるんだ?」

「金が無いから・・・お願いしてる。」

「金が払えないなら頭を下げるしかないでしょう?」

「金よりも大事なものを貰ったから問題ない。普通にしてくれ。」

この三人がいなければ今頃兵士と戦い国と争うことになりルル達を巻き込んでいたかもしれない。

そう思うと感謝しかないのだ、俺が出来る魔力付与で感謝されるのなら言う事は無い。





「おい!ちょっと村から出て効果確かめようぜ!」

「そうだな!俺もそう思ってた所だ!」

「珍しい!私もそう思ってました!」

魔力付与を終えると三人が立ち上がり鼻息を荒くして言う。

仕方が無いので三人と一緒に村から出て近くの森へと行く。

森に着いた時点で日が傾き始めている・・・早く宿に帰って本を読みたいものだ。



森に着くなりジャックとグレイが試し斬りで木を横一文字に振りぬく。

魔力付与により、切れ味が増した剣は木にすんなりと入って行き、木を一刀両断する。

木は静かにずれて倒れる。

「なんて切れ味だ・・・」

「これなら先日のリザードマンでも剣が通ったかもしれませんね?」

「通ったかもだな?」

「次は俺だな?・・・ンググググググ!・・・」

ブランが弓を構えるが、一向に引ける気配がない。


「ブラン?やっぱり無理なんじゃないか?」

「・・・そのようだな・・・ニコの弓を貸してくれ!」

「すまんが多分その弓よりも弦が硬いぞ。」

そう言って自分の弓を渡すと、ブランが構えるが先程の弓では数ミリは動いていた弦がビクともしない。

クネの糸をよって作った特別製の弦だ、かなり硬い。


「ブラン?私の予備の弓を使って矢の魔力付与を試しては?」

「そ・・・そうだな!二コ?この弓を使えるお前はやっぱり非常識だ!」

グレイが腰にかけていた小弓をブランに渡し、ブランが非常に不愉快な事を言いながら弓を返してくる。


ブランが木に向かってグレイの弓を引き矢を射ると矢は木を貫通してその奥にある木に刺さって止まった。

「・・・おいおい、この小弓でこの威力かよ・・・」

「私の魔法はもう必要ないのでは?」

「そんな事ねぇ!グレイがいるから俺とブランは纏まってるんだ!」

「もういいだろ。日が暮れるぞ?」

「ちょっと待て!まだ検証だ!」

そう言ってブランが腰に差していた剣でグレイとジャックを切りつける。


「ブラン何を!?」

「・・・リーダー?鎧は無傷だぞ!?」

剣で斬りつけても無傷の鎧を見て呆ける二人。

ブランの剣は出されて無かったので魔力付与はしていない。


「こりゃすげぇ!」

「ニコ君のおかげだぞ?二人とも忘れるなよ!?」

「ブランじゃないんです!忘れません!」

「喜んでもらえて何よりだ。帰るぞ?」

「今日は俺達のおごりで二コ君の送別会だ!」

「そうだな!有金全部使っちまえ!」

「今回ばかりは止めません。」

「煩い!さっさと帰るぞ。俺は本を読みたいんだ。」

三人が頭をワシワシと撫でて来るので、振り払って言う。

俺は本を読みたいのだ。


「子供のワガママに付き合って帰ってやるか!」

「そうだな!ニコ君のためにも帰って飯にしよう!」

「そうですね!早く帰りましょう!」

「子供・・・もういい。帰るぞ。」

ブランの言葉にイラッとするがそれよりも本を読みたい気持ちが勝ったので穏便に済ませて村へと戻る。




村への道中ニヤニヤと武器を構えたり、眺めたりする三人。

「おい。非常識だろ武器をしまえ。」

村の門の前に着いたので三人に言う。

「そ、そうだな。非常識だ。」

「そうですね、浮かれすぎですね。」

「ニコに言われるとはな・・・」

ブランの言い方が気になるが三人は大人しく武器を納めて村へと入る。


ジャック達に付いて村を歩いていると、宿を通り過ぎて三軒隣の建物へ入る。

建物の中は宿の食堂と同じような場所だったので、食堂だという事はすぐにわかった。

「っしゃぁーせぇっ!」

店に入ると同時にカウンターの奥から謎の言葉が聞こえてくる。


「姉ちゃん!ドリンク込みで一人一万で適当に頼まぁ!」

「かしこまりましたぁ!」

席に座りながらジャックが今まで聞いた事もない注文をする。


「お酒は飲みますかぁ?」

「三人は酒、この子はジュースだ!」

「かしこまりましたぁ!」

ジャックの言葉を聞いて店員の女性は店の奥へと消えて行く。



「ジャック?酒とは何だ?」

「酒か・・・成人の十五、いや十歳になってからだ。」

「そうそう。お子様はジュースを飲んでなさい。」

「ニコ君は楽しみにしておくべきですね。」

なるほど、成長する楽しみが出来た。

そんな会話をしていると飲み物が運ばれてくる。


三人の前には泡立つ飲み物が運ばれ、俺の前にはオレンジジュースが置かれる。

「「「かんぱーいっ!」」」

そう言って三人がグラスを合わせる。


「ニコ君?こういう時は乾杯と言ってグラスを合わせるんだ!」

「ほう?乾杯。」

「「「かんぱーいっ!」」」

そう言ってオレンジジュースが入ったグラスを掲げると三人が同時にグラスを俺のグラスに当ててくる。


「これが常識か。」

「そうだ!こういう祝いの席では常識だ。」

「お待たせしましたぁ!」

女性の店員がパンのような物を運んでくる。

「ニコ?これはピロシキって料理だ!食べてみろ!」

「ふむ。」

ブランに勧められるまま食べるとサクッとした食感の後に中に入っている食材が入っていて、とても美味しい。



「ほら?次はチキンキエフですよ?」

「ふむ。美味い!」

「ニコ君?パエリアも。」

「美味い!」

次々と見た事もない料理が運ばれて来て、その全てが文句なしに美味い。

段々と顔が赤くなり上機嫌になる三人と夕食を食べる。


「なぁニコ君?君はどこで育ったんだ?」

「あぁ俺も気になってた!ニコはどこで育ったたらそんなに非常識に育つんだ?」

「ブラン?言いすぎですよ!ですが気になりますね。」

「山奥で祖父に育ててもらいましたぁ!」

ジャックに教えてもらった通りに無邪気に答える。

三人が呆れているような気がするが気のせいだろう。


「・・・ニコ君が言いたくないならこれ以上は詮索しねぇ。」

「そうだな。俺達は生きてる。それで十分だ!」

「そうですね。ニコ君がどこで育っていようが関係ないですね!」

「じゃあ俺は腹いっぱいになったし帰るぞ?」

「おう!俺達はもう少し飲んでから帰るぜ!」

「わかった。」

三人は一様に笑顔でグラスを持上げる。

恐らくこういう場での手を振るのと同義の行為なのだろう。


宿に戻り、布団に入りたい気持ちを抑えて魔力の鍛錬を行い布団に入る。

「(今日も良い匂いだ。)」

毎日取り替えられているのだろう。

毎日布団は変わらず良い匂いで気持ちが良い。

今日もすぐに眠りに落ちる。

面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。

もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。


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