第八十二話 手作りピザと怪しすぎる補充兵
「リクエストしましたが・・・本格的すぎる・・・」
「これは楽しみですねぃ!」
俺がピザを焼いていると隣で二人が覗き込んでくる。
フォルナは驚き、アイリーンは口の端から垂れる涎を拭っている。
「さぁ出来たぞ。」
「ほう?ソーセージとベーコンの二種類ですか。」
「まだまだ焼くから食べてろ。」
二人の前にピザを置いてからピザ釜に戻る。
「これ美味い!」
「このソーセージもベーコンもおそらく店売りの物ではなさそうですねぇ?」
二人の弾む声が聞こえるので次のピザを用意してピザ釜に放り込む。
「ルドルフ殿?このソーセージは何の肉ですか?」
「サーペントと鵺の合挽きだったと思う。」
「このベーコンは豚ですかぁ?」
「それはサーペントのベーコンだ。」
二人がピザを片手に話しかけてくるのでピザを焼きながら答えると静かになる。
不思議に思って振り返ると二人はピザを大事そうに抱えて無言で食事を再開する。
「次が出来たぞ。」
「これも美味そうだ。何の肉ですか?」
「美味しそうですぅ!」
焼けたピザを持って行くと二人がピザを受け取りながら食い気味に聞いてくる。
「鵺の肉を使ってみた。豚っぽいサーペントを使ったほうがよかったかもしれんな。」
「そんな気遣い・・・本当に普段どのような食生活を送られているのだ・・・」
「先輩?これ店で頼んだら一枚いくら取られますかね?」
なぜか質問に答えるとファルナは呆れてアイリーンは興奮し始める。
フォルナが「給料を使い切る覚悟は必要だな」などと言っているがピザ釜に戻って新しいピザを焼き始める。
「(騎士とはそんなに薄給なのだろうか?それともこのピザが高いのか?)」
考えるが全くわからない。
「ルドルフ殿は食べなくてもよろしいのですか?」
「そうですねぇ?」
「大丈夫だ。実はこのピザ釜は三枚焼けてな?二枚と共にハーフ&ハーフを一枚焼いて食べている。それよりもこのピザは店で食べれば高いのか?」
ピザを食べ終わった二人が声をかけてくるので先程の疑問をぶつける。
「鵺にサーペントをふんだんに使ったピザか・・・」
「私なら一枚十万ゴールドって言われても納得ですねぇ?」
「それはかなりの高級品だな。さぁ十万ゴールドのピザが焼けたぞ?まだ食べれるか?」
いいタイミングでピザが焼けたので皿に乗せて二人の渡しながら尋ねる。
「まだまだ食べたいですが私はこれでお腹いっぱいです。」
「私もですねぇ?」
「無理をせずに遠慮なく残してくれ。お望みなら明日も焼くからな?」
「ありがたいお言葉感謝します!」
「前から思ってましたけどルドルフさん優しいですねぇ!」
ピザを載せた皿を持った二人が恭しくおじぎをして焚き火へと戻って行く。
「俺も作ったはいいが腹がいっぱいだな。」
思わずハーフ&ハーフのピザを眺めながら1人ごちて時忘れのマジックバッグに入れてフォルナ達がいる焚き火へと行く。
「すまんが、この焚き火で料理をしてもいいか?」
「まったく問題ないです!どうぞお使い下さい!」
「ですですぅ!明日の朝食ですよねぇ?是非お願いしますぅ!」
二人の了承を得たので二人であたっていた焚き火でスープを作る。
「ほう?それが鵺の肉ですか?」
「先輩?サーペントかもしれませんよ?」
「ケルベロスだ。」
「貴殿のマジックバッグには何が入っているのだ・・・」
「鵺、サーペント、ケルベロス・・・王都の最高級店にも並ばない魔物肉ですねぃ?」
二人が鎧を磨きながら呆れた様子を隠しもせずに言って来る。
「すまなかった。非常識だったな?明日からは・・・豚肉が入っているのでそれにする。」
「そういう意味ではない!」
「そうですよぅ!ルドルフ殿のマジックバッグは王都の最高級店以上と褒めたんです!」
豚肉など入っていないのだが二人は焦って騎士の命である鎧を投げ捨てて迫ってくるのでささやかな仕返しは大成功のようだ。
「冗談だ。帰りはミノタウロス尽くしになればいいな?」
二人は俺の言葉に胸を撫で下ろしてから鎧を拾って磨き始める。
「そうですね!しっかりとミノタウロスを狩って国民の安寧を守りましょう!」
「ミノタウロスのローストビーフ・・・一回でいいから食べてみたいですねぃ。」
アイリーンはミノタウロスのローストビーフ・・・ローストミノタウロスをご所望なようなので覚えていれば作ろう。
毎日毎日料理を作っていると献立を考えるのが一番大変なのでどんな料理であろうとも指定して貰えれば考えなくていいのでありがたく候補の一つに入れておく。
「では失礼する。」
「ゆっくりお休み下さい!」
「おやすみなさい!」
筋トレをする二人に言って馬車に乗り込んでから鍛錬をして横になる。
「(そう言えば施錠をしてないな・・・)」
そう思って念のために馬車の入り口に魔法の施錠をかけて眠りに着く。
「なぁ?本当に補充兵の事は何も聞いてないのか?」
翌朝朝食を終えて進む馬車でフォルナに尋ねる。
「何かありましたか?」
「約二名の補充兵がな?俺の料理をずっと見てきている気がしてならないのだ。」
「気のせいでは?我々は本当に何も聞いてませんよ?」
「そうか。なら俺の気にしすぎだな。」
あの兵士達はアランとサミュエルだろうと思っっていたが俺の考えすぎだったようだ。
「(あいつらなら・・・いやアランならピザに我慢出来ずにやってくるはずだしな。)」
「すまなかった読書に戻ろう。」
「構いません。いつでもどうぞ。」
そう考え直してフォルナへ声をかける。
フォルナは笑顔で言い、読んでいた本へと視線を落とすので俺も図書室で借りた本を読み始める。
「なんだ?」
晩飯になりずっとこっちを見ていたアランと思われる兵士が無言で歩み寄ってくるので声をかけるが返答は無い。。
すぐにサミュエルと思われる兵士が必死に引き摺って補充兵の集団へと帰って行く。
「やはりアランっぽいな・・・」
考えたくも無いがその可能性が高そうだ。
思わず溜息と共に心の声を漏らしながらフォルナとアイリーンに「今日も!」っと、頼まれたピザを焼く。
「サーペントと鵺のソーセージのピザですね?美味そうだ!」
「私のはサーペントベーコンですぅ!待ってましたぁ!」
「なぁ?さっき兵士が二人やってきたんだが・・・」
二人にピザを渡しながら聞こうとするのだが、俺が声を発する頃には二人はピザを持って離れた場所にある焚き火へと走って戻っていた。
「(次を焼くか・・・)」
焚き火の傍に座って満面の笑みでピザを食べる二人を見て自分用に作ったピザを摘みながら次のピザを作る。
「もう我慢できない!」
「駄目ですって!今回の任務を忘れたんですか!?」
ピザを頬張っているとアランとサミュエルの声が聞こえた気がするがあいつらがこんな場所にいるわけは無いので気のせいだと思う事にする。
補充兵の一人が暴れてみんなが頑張って押さえ込んでいるのが見えるが気のせいだろう。
「(今回の任務って何だ?いや・・・気のせいだから考える必要は無いな。)」
そんな事を考えながら焼き終わったピザを皿に載せてタイミングよくやって来たフォルナとアイリーンに渡す。
感想を言われるのも本当に嬉しいのだが、美味しそうに食べる二人を見てるととても嬉しくなる。
学校のみんなも美味しそうに食べるのだが当たり前になっているのかフォルナとアイリーンのように本気の表情をしてくれないのだ。
二人が美味しそうに食べながら伸びたチーズが顔に当たって熱がる姿を見て思わず微笑んでしまう。
先程の騒いでいた補充兵が自分の飯だろう。器とパンを持ってたたずんでいるが、しばらく自分の料理と料理をする俺の方に交互に兜を向けてからテントへ入って行く。
「次はケルベロスの肉を使ったミックスピザとあえて肉たっぷりのマルゲリータだ。」
「ミックスか!・・・さすがのルドルフ殿でも海産物は無いのだな。」
「トマトソース大好きですぅ!」
フォルナからの言葉を挑戦と受け取る。次の機会には絶対に海産物を用意していれてやろうと心に誓う。
「(一番近いのは王都ダンジョンの十五階か・・・だがあの地底湖は淡水魚ばかりでイカや海老どころか海水魚も見当たらなかったな・・・)」
長めの暇が出来たら海に行って釣りをしなければと思う。
「まだ食べるか?」
「大変満足であります!」
「満腹ですぅ!幸せすぎて今ルドルフ殿に口説かれればどこまでも着いて行っちゃいますねぇ?」
「アイリーン貴様!?」
「先輩!冗談ですよぅ!」
アイリーンの言葉にフォルナが猫パンチをしている。
とても微笑ましいと思うのだがこれ以上巻き込まれたくないのでさっさと離れることにする。
「では俺は馬車に戻って寝るから後の火の始末は任せたぞ?」
「ルドルフ殿!?遊び程度でいいので剣の稽古をお願いしたい!」
「先輩ずるい!私は弓を!三本射ちのコツを!」
二人に言われてとりあえずフォルナと模擬戦を行う。
「いいんじゃないか?」
「ルドルフ殿にそう言って頂ければ自信が出来ますね!」
フォルナと模擬戦を行って言う。
フォルナの剣は俺では何も言う事はないくらいに綺麗でむしろ模擬戦をしながら学ばせていただいた程だ。
「アイリーンは・・・三本射ちにこだわりすぎだ。」
「え・・・三本射ちをしたいのに・・・」
アイリーンは悲痛な顔になっているが三本射ちを使う場面などそうそう無いので、普通に弓を練習して合間程度に三本射ちを練習して欲しいものだ。
フォルナとアイリーンと一緒に練習をして夜が更けて行く。
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今更ですが1ゴールド=1円の価値でなんとなく設定しています。
魔物肉は大体の値段で設定してますが普通は命懸けで手に入れる物なのでかなり高めに設定しています。




