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第八十話 フィルへのお仕置きと試験結果

「さっ!?みんな自己採点しましょ!?」

ターニャが洗い終わった食器を置いていそいそと席に戻ってみんなで頭を付き合わせてテストの採点を始める。


「ニコ?勝負!っと言いたい所だけど今日は疲れたから失礼するよ?」

「わかった。なら俺は図書室にでも行くかな?」

「ならあたしも部屋に戻ろっと!」

「ワ、ワシもテストの採点を手伝って来るかな?」

サミュエルが空気を読んで食堂から出て行くので、俺達もそれに乗っかって食堂から出る。

みんなは筆記試験の答え合わせに一生懸命で俺達を気にする余裕も無いほどに忙しいようなので一切怪しまれること無く食堂から出て行くことが出来た。



「じゃあフィル行こうか。」

「そうね?下手な動きを見せたら殺すよ?」

「は、はい!」

俺とアランで滝のように汗を流すフィルを見張りつつ校長室に向かって歩いて行く。


「すすすすすまんかった!!」

「何がだ?」

「さぁ?あたしにはわからないわ?さっさと扉を閉めてね?」

校長室に入ると同時にフィルが振り返って土下座をする。

俺のそこまで怒ってはいないのだがアランは違うようでフィルの頭と背中を踏みつけながらソファへと歩いて行く。

しかもよく見るとローブの裾からは普段履いてないピンヒールが見える。

「(いつ履き替えたんだ?)」

そう思いながら俺もアランに倣ってフィルを踏みつけながら歩いて行きアランの隣に座る。



「ハハハみなさんの力関係がいまいちわからないねぇ?」

対面のソファに座るサミュエルが俺達のやり取りを見て乾いた笑いをしながら言う。

「で?王子はなぜここに?」

「王の代理として聞く権利はないかな?・・・嘘だ、ただの興味だ。僕はここに置いてある石像だ。」

「俺は構わん。」

サミュエルには全部話しているのでここで話を聞かれても遅かれ早かれと言うレベルだろうから問題ないと思う。


「ふむ・・・いや待てよ?ふむ・・・じゃあ石像は黙っててね?」

アランが何やら考え込んでから言うと安堵の表情を浮かべたサミュエルが無言で何度も頷く。

今までの付き合いでなんとなくわかるのだが今のアランの表情は絶対に俺にとって面倒臭い事を考えている時の顔だ、嫌な予感しかしない。

「アラン?変な事は考えるな?俺だって怒る時は怒るぞ?」

「へぇ?あたしが何を考えてるって?怒るってあたしに?へぇ成長したねぇ?」

アランが俺だけに見えるようにウィンクをすると殺気を含んだ霧が噴き出し部屋の空気が一瞬にして凍りつく。

「(今回のフィルへのお灸は・・・そういう事か。)」

おそらく二人で喧嘩をしてフィルを脅かすのだろう。



「アラン?俺だけじゃなくてサミュエルまで利用するのか?」

「ん?あたしはいつニコを利用したの?いつでも協力していつでも助けてたつもりだよ?」

「それも否定はしない。だが見方次第でどうとでも変わる事だ。」

「サミュエルを巻き込むのは反対だよ?でも元々はニコが巻きこんだんじゃない!もっと上手く立ち回れば巻き込まずにダンジョンから出られたんじゃないの?」

「そうかもしれんな?だがそれよりも安全を取ったんだ。アランならわかるだろう?あの場所がサミュエルの協力無しに抜けられる場所かどうか。」

「あらぁ?あたしがニコを過大評価しすぎてたのかなぁ?」

口喧嘩の最中もアランから霧が噴き出し、魔力にアランの感情が伝わり本や小物達が凍り始めている。

サミュエルとフィルはアランの霧を凝視したままがっちりと固まったままピクリとも動けなくなっているようだ。



「過小評価と言ったか?つまりアランは俺を評価できる程強いのか?」

「試してみる?」

「なら小手調べしてやる。」

「御託を並べるのは雑魚のする事よ?さっさと来なさい?」

アランに言われて魔法を発動させた振りをするために幻影魔法で部屋の中に積層魔法陣を出現させる。

少し大げさすぎてばれるかと不安になったがフィルとサミュエルは部屋の中に現れた積層魔法陣を見て顔を青褪めさせているので大丈夫そうだ。

それよりもアランが笑いを堪えすぎて涙目になっているのでそっちでばれそうだ。



「へぇ?この部屋ごと吹っ飛ばすつもりなのかな?」

「ちょっとお前がいる場所を消滅させるだけだ。」

「それは楽しみだ!さっさと発動しな!」

アランが立ち上がり防御体勢になって言うので俺は態々(わざわざ)大振りに手を振り降ろしながら口を開く。



「あの世で後悔し「まままま待て!待ってくれ!ワシが・・・ワシが悪かった!本当に申し訳なかった!ワシが軽率にニコの料理をワシが用意して振舞うかのような言動で本当に申し訳なかった!」

土下座をしながら俺の言葉を遮って必死に謝るフィルを見てアランと顔を見合わせて笑いあう。

「だってニコ?」

「まぁ顔を見る限りかなり反省したんじゃないか?」

二人で同時に魔力を静めてソファに座りなおす。


「へ?」

「さて。フィルへのお仕置きは終了!さ、話をして頂戴?」

「しかしだ。やはり俺はサミュエルがいるのは頂けない。」

「え?」

フィルが素っ頓狂な声を上げているのでアランと一緒になって得意気な顔でソファに寄りかかるが、サミュエルが巻き込まれるのが反対なのは本心なのだ。

石像のはずのサミュエルが声を上げるので睨んでおく。



「本当にあたしが利用すると思ってるの?」

「どうだろうな?利用でなく助けるという形で何をするか分かったもんじゃない!」

「ならあたしがサミュエルを利用したらあたしを好きにすればいいよ?」

「その条件に俺にとって得はどこにある?」

アランがローブをはだけさせながら言って来るがどこにそそられるのかが理解が出来ないのできっぱりと断わる。

アランはわかりやすく頬を膨らませて不満そうにはだけさせたローブを直し始める。



「もう!いけず!」

「知らん。フィルさっさと本題を話してもらえるか?」

俺が言うとフィルはその場で直立して大声で話し始める。

「は、はい!ルドルフ殿には「声が大きすぎるボケ爺!」はい。」

アランに怒られてしょぼんとソファに座って小声で話し始める。


「ルドルフ殿には学校が休みの間に南の国境に行って頂きたい。」

「国境ですって?どんな依頼?人相手じゃないんでしょうね?」

フィルの言葉にアランが冷たい笑みを浮かべながら矢継ぎ早に問い始める。

「依頼がきているのは南の国境の街で・・・ミノタウロスの異常発生だそうだ、そしてその西の村でミノタウロスの異常発生で・・・その反対側の東の村でミノタウロスの異常発生・・・つまり南の森でミノタウロスが異常発生している。」

「なんだ?この国はミノタウロス祭りでもしてるのか?」

「ニコ?それは無理矢理過ぎない?」

「(いやいや。ミノタウロスを操ってリオルゲンを襲われそうになったばかりなのに今度はミノタウロスが異常発生なんて何も無いわけが無い。)」

アランが呆れているがそう思わずにはいられない。



「で?いつ出発だ?」

「出来れば・・・明日から?」

「疑問系で言われると困るんですけど!?」

「ひっ!?ごめんなさい!」

フィルが俺の問いに疑問系で答えるので思わずアランが声を荒げ、フィルがソファの上で子供の様に身体を丸めながら謝る。

少し怯えすぎな気がするので脅しすぎたかもしれない。


「だが・・・それで俺の順位と引越しはどうなる?」

「フェッフェッフェッ!ニコ?いい報せだ。ダントツの金級とギリギリの銀級どっちがいい?」

「どういう意味だ?」

フィルの言葉が理解出来なくて思わず聞き返す。

まずなぜ選択肢があるのかもさっぱりだ。



「お前さん筆記試験で名前を書いてなかったぞ?それを入れればダントツぶっちぎりの首席で金級だ。入れなければ恐らくギリギリ銀級だ。」

「なっ!?僕よりも上なのですか!?」

まさかのフィルの発言に驚いているとサミュエルが思わず立ち上がってフィルに食って掛かる。

それよりも筆記試験の紙には名前を書かなければならなかったのか・・・てっきり自分の場所に置いておけばそれでいいと思っていて今まで気にした事が無かった。


「大急ぎでニコの採点しかしてないから断言は出来ないが、ニコは剣の試験が百五十点、魔法が百五十点、身体能力強化魔法が百二十点で筆記試験抜きで四百二十点だ!筆記試験を入れれば六百二十点でおそらくダントツ首席だろうで!ふぇっふぇっふぇっ!」

「なんだって!?百点満点でなぜ百五十や百二十って数字が出るのですか!?というか四科目で五百点満点でしょう!!」

「誰か一人でも百点()()と言ったか?満点ではなくあくまでもその歳の子が出来る限界の平均値を百点に設定してるだけだ!ちなみにサミュエルは身体能力強化魔法試験百五十点だ!」

サミュエルがフィルに飛び掛るがすぐに納得して大人しくソファに座りなおす。


「くっ・・・将棋だけじゃなくて点数でもニコに負けるのか・・・」

「悔しがってるところすまんが俺は銀級か銅級で構わん。」

「くっ・・・すまんが失礼する!」

余程悔しかったのだろう俺の言葉を聞いてサミュエルが部屋から飛び出して行く。


「では明日だな?何時にどこに行けばいい?」

「明日の朝六時に校門で待ち合わせよう。」

「わかった。じゃあ明日の朝六時に会おう。」

「勿論だ!待っているぞ?」

フィルとの連絡事項は終わったのでアランへと向き直ってしっかりと釘を刺しておく。


「なら問題ない・・・一応言っておくがアラン?明日一緒の馬車に乗ってたらぶっ飛ばすからな?」

「あいあいさ!」

俺が念のために聞くとアランが敬礼をして自信満々に答える。

なぜか全く不安が拭えないのだがとりあえず納得して自分の寮に戻って引越しと明日の準備をする。


「(まぁ物は全部マジックバッグに入れてるから準備も糞もなかったな・・・次戻ってきた時はベッドのはずだから布団を買わないとだな。)」

そんな事を考えながらおそらくみんな答え合わせや今日の試験の話で忙しいのだろう。

誰も戻ってきてない寮の中で一人鍛錬を終えてハンモックに乗ってさっさと意識を手放す。

面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。

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