第六十九話 暗殺阻止の後始末
サンドラの部屋に付いてソファに座って話す。
アランがしがみ付いたままなので大変座りにくい。
「なるほど二十六階の氷雪地帯に転移させられたと?」
「そうだ。それで八歳の俺とサミュエルが脱出するのはあまりにも不自然だと思いサミュエルに一芝居打ってもらった。」
「ではダンジョンへの入場記録をいじってルドルフ殿はダンジョンを攻略中に見つけたとしておきましょう。」
「そこら辺はサンドラ達に任せる。アラン落ち着いたら離れてくれないか?」
「・・・分かったわよ。」
アランが不満そうに離れて俺の隣に座る。
「まぁあたしは言う事は少ないよ。あの後シモンヌと例の男の二人と戦ったけど逃げられた。その後は寝ているチームメンバーを騎士に預けて王子の目撃情報が寄せられた場所を虱潰しに探してた。」
アランの目の下には隈が出来ているのでかなり必死に探してくれていたのだろう。
よく見るとサンドラの頬もこけて顔に刻まれたシワ深くなった様に見える。
「もっと早く脱出できればよかったがサミュエルの体力的に無理は出来なくてな・・・」
「分かってます。二十六階から脱出を・・・しかも八歳の子供を護衛しながら四日間で成した時点で十分な偉業です。」
「さすがルドルフだよぉ!いい子いい子よぉしよしよしっ!」
サンドラが安心したように深く息を吐いてから言い。
アランが頭を乱暴にわしゃわしゃと撫でてくるのでとりあえず払いのけておく。
「で?学校はどうなってる?」
「教師や教官が王子捜索で手一杯だから休校だよ?」
「安心した。あとの細かい報告はサミュエルがする。」
「さすがはルドルフ。王子を顎で使うのね・・・」
アランが面白そうにからかってくる。
「あいつから提案してきたからお願いしただけだ。」
「かしこまりました。では帰って頂いてゆっくりと休んでください。」
サンドラが俺の報告書を書きおえたのだろう。
書き込みをしていた紙を机の端に置いて深く溜息を吐いて言う。
「では素材を売却してから帰るとしよう。」
「ほう?何があるのでしょうか?」
「アイスゴーレムのコアにケルベロスの肉と内臓以外と魔猪が丸々三頭だ。」
「さらりと言いましたがケルベロスですか・・・いや二十五階を通ったのですから当たり前の事ですね・・・ではこちらにどうぞ。」
立ち上がって言うとサンドラが驚きながらも納得した様子で案内されるままにアランと一緒にこの前と同じ解体場で素材を取り出す。
「今度は傷1つないケルベロスかよっ!!」
解体場の親父がケルベロスの素材を鑑定しながら大声を上げる。
「こちらの頭に穴がありますが・・・矢?でもケルベロスの骨を貫通する矢なんて聞いた事が・・・しかも一つの頭を黙らせた所で・・・いや、全部に穴がありますね。」
「三本射ちで同時に仕留めた。」
「はぁ。」
サンドラが頭の毛皮を見て言っているので俺がどうやって倒したか説明するとなぜか俺を見て呆れたような声を出す。
「ニコ?ケルベロスは神銀級成なりたて当時のあたしが倒せなくて諦めた魔物だからね?・・・まっ!今は余裕で倒せるけどね!」
サンドラの反応を俺が不思議に思っているとアランが教えてくれる。
最後の言葉は強がりでは無いと信じたいものだ。
「これは査定に少々お時間を・・・」
「わかった現金で頼む。急がないから頼んだ。」
「わかってるわね?適正価格よ?」
「・・・もうこの間で懲りたから安心して下さいな。」
サンドラが疲れたように言うのを見てアランが満足そうに笑顔で頷いている。
「じゃあニコ行くわよ?」
「どこに行けばいいんだ?」
「きっとあそこの騎士が教えてくれるわ。」
アランが演習場の端、ギルドへの入り口に立つ騎士を顎で示す。
二人でギルドの方へと進むと騎士が佇まいを正しているのでアランの言う通りに俺達を待っていたようだ。
「御二方共お疲れ様です!王よりの勅命で参りました御同行願います!」
「謁見でしょ?パスパス。それよりも王子達の医務室に案内しなさい。」
騎士が敬礼しながら言いアランが軽く手を振りながら言う。
「(王からの勅命なのに断わってもいいものなのか?)」
俺はそこらへんの常識が全くわからないので静かにアラン達の会話を聞くだけだ。
「なっ!?それは・・・」
「煩い!アレク王にはアランが拒否したって言えばそれで問題ないからさっさと案内しろ!」
「か、かしこまりました。おい?」
「はっ!どうぞ付いて来て下さい。」
結局アランに押し切られた形の騎士に先導されてサミュエル達の下へと向かう。
「ルドルフの英雄譚のページが増えたね?」
「そんな物断固として阻止してやる。そういえばアランの英雄譚を読んだぞ?」
「ほう!どうだった?」
「・・・美化されすぎていて笑わそうとしているのかと思った。」
「英雄譚っていうのはね?そんな物なんだよっ!」
俺が素直な感想を言うとアランがぶんぶんと手を振りながら声を張って抗議してくる。
「はいはいわかったわかった。絶世の美女にして偉大なる華麗な氷の魔法師にして国崩しのアラン様が言うのならそうなのだろうな。」
「もうルドルフの意地悪!」
適当に諌めるとアランが更に大きく手をぶんぶんと振りながら頬を膨らませている。
「国崩しになんて口のきき方をしてるんだ・・・」
「国崩しが怒って大惨事なんてないですよね?」
「知らん!俺達は案内するだけだ。さっさと案内して離れるぞ。」
先導する騎士達がなにやらひそひそと話しているので聞き耳を立てると震える声で会話をして騎士達の歩く速度が若干速くなる。
英雄譚に出てきた騎士団を壊滅させた話は本当のようでかなり恐れられているようだ。
そのまま足早に城門を通って城の中に入って行く。
「城だろ?こんなに簡単に通れていいのか?」
「あたしくらいになれば顔パスよ!か・お・パ・スッ!」
アランが得意げに言うが絶対に違うと思う。
「謁見に来たと思って通されたってところか。」
「あたしの言葉全部無視するのね・・・」
「お前がふざけた事しか言わないからだ。」
「そんな事言ってると怒っちゃうぞ?」
「あー恐い恐い絶世の美女にして偉大なる華麗な氷の魔法師にして国崩しのアラン様お許し下さいませ。」
「ルドルフ・・・いつ人をおちょくるって事を覚えたのかな?」
アランが声を震わせて言う。
それを聞いた先導する騎士の歩くスピードが更にあがり俺の歩幅では若干走らなければ追いつけない。
「アランが恐がらせるから・・・」
「いや!あんたのせいでしょうがっ!」
「俺はじゃれあっただけだ。」
「あたしもよっ!」
二人で責任を押し付け合っているとなぜか更に騎士の速度が上がり城の中を走って進んで行く。
「ハァハァ・・・サミュエル殿下とニコ君はこの部屋であります。」
息を切らせた騎士が扉の隣に直立して言う。
扉には面会謝絶と書いた札が貼られている。
「御苦労!じゃあルドルフ入りましょ?」
「面会謝絶と書いてあるが?」
「多分問題ないわ?」
そう言ってアランがお構い無しに扉を開くので一緒に部屋の中に入るとサミュエルが部屋の中央に置かれたベットに寝転んでいてベッドの脇でフィルとアレク王が椅子に座って談笑していた。
「お待たせ・・・ってなんで王まで?あたし達の謁見を待ってるんじゃ?」
「ハッハッハッ!アランが応じるわけ無いのはわかってるからな!?一応俺が呼んだがアランが蹴ったと言う風にしておかないと体裁的に悪いのでな?」
アランが驚いて問うがアランの行動は全て見通されていたようだ快活に笑いながらアレク王があっけらかんと答える。
ついでにサミュエルとフィルも悔しそうなアランを見てニヤニヤと抑えきれない様子で笑っている。
「まぁいいわ!お堅いのは苦手だからここで報酬の話をしましょう?」
「俺はよくわからないからアランに任せた・・・ニコ、リュックサックはどこだ?」
アランが椅子に乱暴に座って言うので、俺はアランに丸投げして幻影魔法をかけたリュックサックを探すが見当たらない。
「ニコはここだ。」
フィルがサミュエルの隣を指差すとサミュエルが掛け布団をはぐり背中を見せるとまだ背負ったままのリュックサックが出て来る。
「魔物の毒によって体が硬直していて離す事が出来なかったんだ。今は面会謝絶にして集中治療中だ。」
「・・・それは余りにも強引じゃないか?」
フィルが説明をしてくれるが無茶苦茶すぎて思わず聞いてしまう。
「仕方ないだろ!サミュエルから離す訳にも行かないが相応の理由が無ければ王子と一緒の部屋など許されるわけ無いだろうが!」
「まぁそれで収まるのなら何も言わないでおこう。」
サミュエルからリュックサックを受け取ってマジックバッグに入れる。
「で?ギルドへの報告は終わったのか?」
「あぁ簡単にだがな?後は申し訳ないが任せたぞ?」
「ふっ!僕が上手く纏めておくから安心してくれ。」
「すまんな。」
「仲良くなったようでなによりだな!」
サミュエルと固く握手を交わしているとフィルが嬉しそうに言っている。
「そういえば学校側に被害は?」
「ありがたい事にほぼ零だ。数人の騎士がスパイの確保時に抵抗されて軽傷をおっただけでスパイの確保は無事完遂だ。」
「なら問題ない。・・・そっちは問題有か?」
フィルの隣に座るアレク王が頭を抱えて項垂れていてアランがこれ見よがしにドヤ顔をしている。
よほどの無理難題をふっかけた様だ。
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