第六十三話 初温泉で初混浴
「この建物はルドルフの魔法によって湧いた温泉に入るためにルドルフが作ったこの荒野に転がっていたの木を使って作った浴場だよ!今日はこれから温泉に入ってから夜営にするからね?みんなルドルフに感謝するように!」
「「「「「「はい!」」」」」」
アランがルドルフルドルフと連呼している。
みんなの返事に気をよくしたアランが笑顔でタオルを配り始める。
「タオルは学校からのプレゼントだから!じゃあ一時間後にここに集合!」
「「「「「「はい!」」」」」」
アランの言葉にみんなが返事をして一斉に建物の中に入って行く。
相変わらず俺の事は無視のようだ。
「じゃあニコ?あたし達は特別室に行きましょ?」
「まさか・・・本当に一緒に入るつもりだったのか。」
「フフフ!本当はフィルが王族とか用に作ったらしいわよ?あたしが言ったら快く了承してくれたわ。」
アランと一緒に歩くが脳裏にはアランが無理矢理フィルに了承させている絵しか浮かばない。
入口ではなく建物の脇に行き鍵付きの扉を開けて入って行く。
「ふむ。地下か。」
「魔法で強化してあるからまず崩れないはずよ?って言っても、ニコなら破壊できるだろうけど?」
階段脇の土壁をぺしぺしと叩きながらアランが言う。
確かに土壁は手で触っても崩れる気配は無く手にも一切土は付いていない。
確かに俺の地上の滅びを発動すれば破壊することは可能だろう。
しばらく階段を降りると質素な造りの脱衣所に出る。
「さぁ服を脱いで!温泉に入るわよ!」
「・・・もう少し恥じらいを持て。」
アランが一張羅のローブを脱ぎ捨てて裸で風呂であろう奥の扉へと駆けて行く。
アランは気付いてないようだが脱衣所の棚には誰かの服が置いてある、おそらくフィルの物だろうが。
「きゃあぁぁぁぁぁぁっ!!!」
全裸のアランが叫び声を上げながら全力疾走で戻ってくる。
「だから恥じらいを持てと言ったろ。」
「クソ爺に裸見られた!最悪!」
「俺にはいいのか?」
「未来の旦那だから問題ないでしょ。」
「まだ言ってるのか・・・」
体にタオルを巻いたアランと一緒に扉を通って奥の部屋に入ると王都の浴場程ではないが大きな湯船が湯気を上げていて奥ではフィルが気持ち良さそうに浸かっている。
さすがは王族が使うと想定されている風呂だ。湯船の隣には書物でしか見た事のないシャワーが備え付けられている。
「待ってたぞぉこっちだ!」
俺を発見したフィルが股間も隠さずに立ち上がって手を振る。
「体を洗うから待ってくれ。あと爺も恥じらいを持て。」
「うえ・・・汚いのが見えた・・・」
「煩い。お前の裸もフィルの裸も男か女の違いしかないだろう。」
「それはさすがに言いすぎよ!男ならあたしの裸を見て欲情しなさいよ!」
「八歳児に無理言うな。」
アランと話しながら体を洗う。
というかアランは何を考え、何を期待しているのかサッパリ理解が出来ない。
「ふぅ・・・」
「ニコどうだ?自分で掘った温泉は?」
「俺は掘ってないが気持ちがいいな・・・」
フィルの隣で温泉に浸かると笑顔のフィルが俺の肩を叩いてくる。
「爺?ニコのいじめが酷いんだけど?みんなニコがいないかの如く無視よ?」
「ふむ。あまり気にしてなさそうな者を選んだのだがな。」
「あとなんで高学年がいないの?やりやすいと言えばやりすいだろうけど・・・」
「そうだな?あと一年が一人多いのは一年生が多いからだろうがなぜ四年生から上がいないんだ?」
「四年生に、働ける歳の十二歳になると優秀な人間は騎士団や軍隊に引き抜かれて行くから残っているのは就職先が決まっている貴族の長男か変わり者か落ちこぼれだから人数が少ないのだ。」
「なるほど。それで学校でも高学年の生徒を余り見かけないのか。」
「まぁこの後の試験もニコなら余裕だろうから護衛を頼んだぞ?」
俺は学校を出てからいつこの前逃げられた魔法陣を描いた男が襲ってこないかと神経を尖らせているというのにフィルはのん気に言う。
「爺?あたし達の気もしらずにいつもいつものん気な事言ってんなよ?」
「アラン同じ事を考えていた。」
「待て待て!ワシだって裏であれこれとやっているんだ!子供のように思っているお前達だからこうやって安心して任せてるんだぞ?ふぇっふぇっふぇっ!」
フィルの言葉にアランが微笑みながら降参と言わんばかりに両手を上げて首を振っている。
ジェスチャーで伝えるのはいいが手を離して体にかけているタオルが外れてまた大騒ぎしないか心配になる。
すぐに手を下ろして固定するのでホッと胸を撫で下ろす。
「ニコ?そろそろ時間だから上がろっか?」
「いや・・・俺はずっと待っていたが?」
アランが服を着ながら言ってくるが、俺はアランの長風呂に付き合っていると逆上せそうだったので先に上がって脱衣所で読書をしていた。
「フィルは?」
「逆上せて湯船の隣で寝てるよ?」
「歳なのに無理をするからだ。」
「じゃあ課外実習・・・気合入れてくよ!」
「そうだな。」
アランと共に気合を入れ直して階段を上がって外に出るとチーム百が浴場の前で待っていた。
俺がアランと共に歩くのを見てあからさまに顔を顰めるチームと合流してアランに言われて点呼をする。
「おっけ!じゃああたし達の野営場所に行くわよ!道中で食べられそうなものがあったら各自採るように!晩御飯の材料は最低限の肉と水しかないからね?」
「「「「「「はい!」」」」」」
アランは変わらず威勢良く返事をするみんなを見て満足そうに頷いて進んで行く。
みんながキョロキョロして食材を探しながら森の中を進んで行く。
「(未だに俺は蚊帳の外だが・・・でしゃばっていいのか?)」
みんなが見逃したキノコを見つめながら後ろを付いて行く。
このまま俺がほっとかれたままなら別でマジックバッグの中身にある料理を食べればいいかと思っている。
「(そうならなかった時のためにも一応採っておくか・・・)」
みんなと同じくらいの量だけ採ってそれ以上は見逃す事にする。
「さぁ着いた!みんなここに採った食材を置いて一年生は焚き火を炊いて料理!残りはテントを設営しなさい!・・・あ!一年生は交代で見張りをしてもらうから交代で寝れそうな場所に焚き火を点けた方がいいと思うよ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
六人が道中で拾ったキノコや野草を置いてそれぞれ作業に行く。
俺もみんなと同じくらいの量を置く。
「アラン?この食材は半分以上が毒だ。」
「ちょっ!分けていって!」
「はぁ・・・こっちが食用でこっちが毒だ。」
適当に分けて火を熾すサミュエルとオスカーの下に歩み寄る。
「やぁこんな近くで会うのはバルテ先生の語学授業以来だね?」
「ニコ君か・・・君は火おこしは出来るか?」
「ほう?お前らには俺が見えるんだな?」
頑張って火をおこそうと木の棒を回す二人が俺に気付いて話しかけてくるので嫌味を言っておく。
俺だって感情があるのであんなことをされれば仕返しもしたくなる。
「ごめん・・・先輩達の手前何も出来なくて・・・」
「そうだね。それに僕達一年も妬んでない訳じゃないからね・・・」
「そうか。ならまだまだ距離をとる事にしよう。精霊よ・・・」
二人の言葉もわからないわけではない。
適当に詠唱して焚き木に火を点けてやり、少し離れた所でもう一つ焚き火をして自分の夜営の準備を始める。
「(さて・・・動き始めるかな。)」
手早くみんなが寝るテントとサミュエル達が見張りをする焚き火が入るように魔法陣を描きながら大きく一周して認識阻害を兼ねた結界を張る。
結界を張り終えて向こうを見るとテントを張り終えたヒューリー達が焚き火を囲んでわいわいと料理を作っていた。
俺が分けた毒キノコや毒野草ははねているようなので一安心して自分の料理を作る。
作るのは普段通りにマジックバッグから取り出した食材で料理を作る。
俺しか食べないので適当に手抜きをして野菜スープとサーペントのステーキを作る。
ステーキに至っては手を抜きすぎて下味もつけずに焼きながら塩コショウを振っただけだ。
これをアランやフィルに出したなら間違いなく文句を言うだろう。
「(あっちは騒がしいな・・・)」
アランが俺が食べる料理とみんなが作る料理を交互に見ているがみんなに味見を頼まれたりして忙しそうだ。
夜営をするみんなを見ながら料理を食べる。
「俺を気にする風もないな・・・考えようによっては結果オーライか。」
一人ごちながら料理を食べて腹ごなしもすんだので結界の周りに更に察知魔法をかける。
人や魔物が近づくと発動者である俺だけに聞こえる音で知らせてくれる魔法だ。
中々高度な魔法で魔力もかなり消費するのだが寝ずの見張りなど絶対にごめんだ。
だが王子の守りを疎かにする訳にはいかないので大奮発をする事にする。
魔法が全方位に発動しているかしっかりと確認をしてから木の上で鍛錬を行って魔力灯の灯りでゆっくりと読書をしてゆっくり就寝する。
「(・・・学校にいる時よりもゆっくり出来るな。)」
そんな事を思いながら寝袋に入って意識を手放す。
「煩いな・・・」
頭に鳴り響く鐘の声に思わず声に出しながら目が覚める。
俺が張った察知魔法が発動したので確認をしに行かなければいけない。
溜息を吐きながら寝袋から出る。
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