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第五十四話 深まるダンジョンへの謎そして肉の使用量

「滝まであるのか・・・」

地底湖を進むと崖が現れ地底湖の水が下へと落ちている。

「(この落ちる水はどこから補充されているのだろうか?)」

ダンジョンの中は考えるとキリが無い。

崖の下を見ると十メートルほどの高さで水が落ちる音が聞こえる。


「ここから先は梯子も無いしいよいよもって進んだことのある人間は数人だと思うよ?」

「その数人にはアランも入ってるのか?」

「もちろん!二十五階まで進んだのもあたしだもんね!」

「そうか。ならもっと行き来しやすい様にしておこう。」

土魔法で地面を削り崖下に続く階段を作る。


「・・・精密な操作出来るじゃん。」

「こんな適当な階段で精密だと?笑わせないでくれ。」

アランが俺の魔法を見て羨む様な表情で言うので思わず鼻で笑ってしまう。

魔の森にいるハイコボルトの魔族であるコボチョウ達の土魔法ならこの階段に片手間に手すりをつけて彫刻まで施した上で俺よりも早く頑丈な階段を作り上げる。



「こんな階段を作り上げられる人間は見た事ないけどねぇ?」

「前来た時はどうやったんだ?」

「普通に飛び降りて帰りはロッククライミング。」

「難儀な事だ。」

アランと話しながら階段を降りて崖下へと行く。


「なんか前よりも魔物増えたなぁ・・・」

「ふむ。だが崖付近に魔物がいないのが気になるな?」

階段を降りきると滝つぼから水が溢れて出来たのだろうか?湿地帯のようだ。

見晴らしのいい湿地帯には大量の爬虫類系の魔物が闊歩しており、ちらほらとリザードマンも確認できる。

だが崖の周りには一切の魔物の姿が見えない。

不思議に思って滝つぼに近づいてみる。



滝つぼに近づくと巨大な首長竜、水竜系統の亜竜であるサーペントがシャワーを浴びるかのように滝に打たれていた。

サーペントを恐れて魔物達は崖付近には近づかないようだ。

「アラン?今日の晩飯が決まったぞ。」

「なんで十六階にサーペントがいるのよ・・・」

「これでしばらくは魔物肉には困らないな。」

「ルドルフにかかったらサーペントも食材扱いなのね・・・」

サーペントが俺達に気付いて水浴びを止めて滝つぼから這い出て来る。

胴体だけでも二メートルはあり、長い首も合わせるとゆうに三メートルを越える巨体が四本のヒレを器用に使って滑るように口を開けて突っ込んでくる。


「魔法で地面に流れを作っているのか?滑らかに滑ってるな・・・」

「のん気に分析してないで来るよ!?」

「サーペントは初めて食べるから楽しみだな。」

アランが後ろから俺の両肩を掴んで揺さぶってくるので、サーペントの突進を止めるために魔法障壁を張る。


ドゴンッ!サーペントが魔法障壁にぶつかる。

「きゃっ!!」

衝突音でアランが驚いてピョンと飛び跳ねながら可愛い声を上げる反面俺の両肩を掴む手に力が入る。

ミシミシと音が聞こえてきそうな程の可愛くない力だ。


「離してくれるか?」

「あ、ごめん。」

アランが慌てて俺の両肩から手を話すので刀を抜いてサーペントへと走る。

サーペントは頭から魔法障壁にぶつかったので脳震盪を起こしたのか、目をパチクリさせながら長い首をふらふらと振っている。


「今までの竜の狩りでは一番楽だったな・・・」

思わず一人ごちながらサーペントの首を切り落とす。


「アラン?血抜きを手伝ってくれ。」

「わ、わかった!」

アランに担いでもらってサーペントの尻尾を持って血抜きを施す。


「ニコ?血があたしにかかってるけど?」

「あとで洗ってやるから我慢してくれ。」

「洗うって・・・血が落ちるわけないじゃん・・・」

アランが自分の着ているローブを見ながら嫌そうに顔を顰めている。

後で強めの洗浄魔法(クリーン)をかければ問題ないだろう。


「よし。降ろしてくれ。」

「あいよ!」

「じゃあ約束だからな・・・洗浄魔法(クリーン)!」

普段は無言で使うのだが少し気合を入れて洗わないと駄目なので、魔法名を唱えてイメージをはっきりさせる。

一瞬でアランのローブと靴にかかっていた血が消えて新品と見間違う程に綺麗になる。


「あんたどれだけ隠し玉持ってんのよ?」

「別に隠してはいない。あと俺はルドルフだ。」

「・・・ごめん、つい。」

全然納得がいってないといった様子のアランが謝ってくるが俺は無視してサーペントを捌き始める。

中々の巨体なのだがデコボコしてなくて流線型の形をしているのでとても皮を剥ぎやすい。



「アラン?サーペント肉以外だと何が売れる?」

「全部。」

「内臓もか?」

「亜竜だけど竜だからね?血も内臓も薬の材料になるから。」

真顔のアランが俺に冷たい視線を向けながら言って来る。

なぜそんな目を向けられるのか全く理解が出来ない。

首を傾げながらサーペントの解体を進める。



「そうだ。そこの魔族にも料理をしてやるか?」

「はっ?見つけたの?」

「滝の裏にある洞窟の奥にいる。このサーペントは眷属で滝を浴びてたんじゃなくて洞窟の入り口を守ってたみたいだな。」

「・・・危ないかもしれないしそっとしておきましょう?」

「そういうものなのか?なら今日のうちにもう少し進んでおこう。」

部位ごとに大まかに解体したサーペントをマジックバッグに入れてダンジョンを進む。


「ねぇ?さっきのサーペントでどれくらいもつの?」

「大体一トンて所か?なら四ヶ月くらいはもつじゃないか?」

「え?普段の料理にそんなに肉が入ってるの?」

「朝飯は少なめだが昼と晩飯は最低で一人三百グラムは使ってるからな。」

「気付かなかった・・・」

魔物に気付かれない様に小声で会話しつつ歩きにくい湿地帯を進んで行く。

一歩進むごとに足が沈み込みとても歩きにくく見た目以上に体力を奪われる。

リザードマンを初めとした爬虫類系の魔物は湿地帯が得意な魔物だ。

足に付いた水かきで沼地を普段と変わらない速度で動き回ることが出来る。

こんな満足に動けない上に踏ん張りもきかない状態で戦うなど考えたくもない。



「アラン?この湿地帯はまだ続くのか?」

「あたしの記憶が正しければこの階だけで次の階からはまた森になって虫系の魔物が出るはずよ?」

「この階だけなら残り少ない魔力を使い切るか・・・俺と全く同じ動きをしろ。」

「わかった。」

アランに言って魔法を発動させて沼の上を滑る。


「どうやってんの?これ?」

「さっきのサーペントの真似だ。沼地の水に硬質化と流動化の魔法をかけた。」

俺の足が触れる場所だけに魔法をかけて沼地を滑って行く。

後ろからアランの気配がするのでしっかりと俺と同じ動きをして付いて来ているのだろう。

自分で要求しておいてなんだが、背が違うので歩幅も全然違うのに器用なものだと感心する。



しばらくダンジョン内を滑って行くと突然沼地が終わり森が見える。

沼地の地面は足が沈むほどに柔らかいのにその数センチ横の森の地面は普通の地面だ。

沼地と森との境界がはっきりとしているのでとても不思議な感覚だ。

「ここから十八階だね!」

「・・・沼地が十六階だと思っていたが?」

「十五階が地底湖、十六階が滝、十七階が沼地で十八階からが虫系の魔物がいっぱいの森。」

十六階は滝つぼだけの数メートルの階層だったようだ。

ダンジョンの構造は本当に考える程にわからなくなる。



「まぁいい。飯にして夜営しよう。」

「待ってました!ダンジョン内は時間がわからないけど腹時計は夜の八時を指しております!」

「俺は七時前だと思うがな?」

二人で時間を予想しながら俺は料理の準備をしてアランはテントを組み立てる。


「じゃあ時計を見てみよう!・・・七時十分。」

「俺が近いな。」

「むぅ・・・今日の献立は?」

「サーペントのスープとステーキとパンだ。肉の使用量は一人五百グラムだ。」

内訳はスープに四百グラム入れてステーキは三百グラムを二枚焼く。

俺の言葉にアランが考えている。


「いつもと同じ夕食ね・・・本当にそんなに食べてるのね。」

「俺が嘘を言う理由が無いだろうに・・・」

「ねぇニコ?今日の空気を落とす魔法・・・なんて名前?」

「考えてなかったな。何か良い名前は無いか?」

死の落下(デスフォール)・・・違うな・・・地上の滅び(エアフォール)だね!フォールが古代語で滅びと落ちるって意味でかかってるんだよ?」

「なら次からは地上の滅び(エアフォール)と呼ぶことにしよう。」

「で・・・地上の滅び(エアフォール)は学校の図書室で学んで作ったんだよね?」

「そうだな。」

「他にどんな考えてるの?」

「基本的には自然の力を利用したものばかりだ。」

「だからどんなのよ!?」

待ちきれなくなったアランが食べかけの料理が乗った食器を置いて詰め寄ってくる。


「風が吹いてる時は風を利用して、寒い時は冷気を利用する。そんな感じだな。」

「ちっ!やっぱり教えてくれないか・・・」

アランが頬を膨らまして食器を持上げて食事を再開する。

「(全部話したのだがな・・・)」

アランには理解できなかったようで勘違いして拗ねている。

俺は一つ溜息を吐いて食事を再開する。



「フィルは今頃何をしているのだろうな?」

「ニコの地上の滅び(エアフォール)で吹き飛んだ野外実習地の後始末じゃない?」

「魔法陣も吹き飛んで描いた男も焦ってるだろうな。」

「野外実習をする場所も変わるかもね?」

「そうなると俺達も向こうも出たとこ勝負になる訳だな?」

「そうだね?その場の判断が重要になって来るよ?」

「常識的に対処出来ればいいのだがな・・・」

「無理でしょ。ニコ?頼りにしてるよ?」

食事を食べ終わって食器を洗いながら話しているとアランがもたれかかってくる。

食器が洗いにくいので本当にやめてほしい。


「邪魔だ。」

肘で押しのけてもくっ付いてくるので思わず声に出てしまう。

「こんな美女にくっ付かれて喜ばないのは非常識だぞ!」

アランが頬を膨らませながら言う。

人間の美醜がわかるようになったのでアランが美人の部類に入るのは分かる。

分かるようになったのだがそういう物には興味が無いので無視して肘で押しのけ続ける。

面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。

もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。



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