第五十三話 王都のダンジョン
あけましておめでとうございます。
本年も、本年からの人もどうぞよろしくお願い致します。
こういう時は季節感を出したいなと思って頑張って見たのですが如何せん私の文章力では無理でした。
「アラン?ダンジョンはどこだ?」
「ギルドの近くだよ!」
アランに案内されるままにギルドの前を通り過ぎてダンジョンへと向かう。
しばらく王都を歩いていると道行く人々が腰に剣を差した冒険者ばかりになる。
おそらくダンジョンは近いのだろう。
「あの塀か?」
「そうそう!魔物が出てこないようにしてるんだよ?っても基本的にダンジョンで生まれた魔物はダンジョンから出てこないから、念のためにって感じだね?」
大人の身長を軽く越える頑丈そうな塀が見えるのでアランに聞くと親切に教えてくれる。
「(にしても長い行列だな・・・)」
入り口には入場待ちであろう長蛇の列が見える。
「金級以上はこっちだよ!」
「ふむ。」
俺が行列に並ぼうとするとアランがそんな事を言って手を引いてくる。
並ばずに済むのならありがたい話なので素直にアランに手を引かれるままに付いて行く。
行列を横目に見ながらズンズンとダンジョンを囲む塀へと進んで行くと二つの受付が見えた。
片方は長蛇の行列に対応していて忙しそうだが、もう片方の受付には誰もおらず受付のおっさんも暇そうに頬杖を付いて呆けている。
「二人お願い!ルドルフもカード出して!」
「あぁ。」
アランに言われカードを出すとおっさんは一瞥してカードを返してダンジョンの中へと手で指し促す。
「ルドルフ行くよ?」
「あぁ。」
アランと一緒にダンジョンへと入る。
ダンジョンの中は建物の中に入ったかと錯覚してしまいそうな程に壁も床も綺麗に成型された廊下で壁に生えた苔のような植物が光って明るく照らし幻想的な雰囲気がする場所だった。
俺が光る苔を調べていると後ろからアランが説明をしてくれる。
「それはヒカリゴケだね。魔素に反応して光るんだよ?」
「ほう?その調子でこのダンジョンの事も教えてくれると助かる。」
一応図書室で王都のダンジョンの本もあったので知っているのだが、本の情報が全て正しいとはいえない事を学んだのでアランの実際に体験した情報と擦り合わせておきたい。
「コボルトロードが作った巣穴って言われてるね!元々は十階層だったけど長い時間をかけて魔物達が穴を掘って今は何階層まであるのかは謎だね。」
「本の情報と一致するな・・・最高到達階層は二十五階で魔物はケルベロスか?」
「そうだね!今回はどこまで行くの?」
「なら二十五階を目指そう。強い魔物を食べたいだろ?」
「明後日までに帰れる?」
「帰れるかじゃなくて帰るぞ。」
そう言ってアランに認識阻害魔法をかけてダンジョンを走る。
廊下を抜けて部屋に入ると等間隔に何本もの石柱が立ち並んでいた。
時折石柱の間に魔物がいるがとても走りやすいので難なく避けながら進んでいく。
「さすがは元コボルトロードの巣、階段まであるんだな。」
「ハイコボルトからの巣穴は階段があるダンジョンが多いね?コボルトの巣だとただの洞窟みたいなダンジョンばかりだけどね?」
感心しながら階段を降りてアランと一緒にダンジョンを走りぬけて行く。
「この魔物でもまだスルー出来ちゃうのか・・・」
「俺程度の魔力じゃケルベロスまで直行とは行かないだろうが、こいつくらいなら俺のほうが魔力は上だ。」
「多分あたしの魔力だったらもうばれてるっしょ・・・」
アランが飛び越えた魔猪を見ながら呆れ顔で言う。
ルル達の魔力で認識阻害魔法をかけたならケルベロスでも認識されずに仕留められるだろう。
もっともその狩り方法は獲物に対する最大の侮辱と教えられているので絶対にやらない。
しばらくアランと一緒に魔物と戦闘を行う冒険者達の邪魔をしないように進んで行くとダンジョンの雰囲気が変わる。
階段を降りると森の中だった。
ダンジョン内の魔物が自分の住みやすい形に変えたのだろう。
本では読んで知っていたが実際に見ると驚くものだ。
「ここから十一階よ?ここからは階段は無くなるわよ?」
「ふむ。死角も多いし気をつけねばな。」
アランと共に生い茂った草を掻き分けながら森を進んで行く。
しばらく進むと草がない道のようなものを見つける。
おそらく魔物達が作った獣道だろうが歩くのが楽になるのでありがたい。
「なぁアラン?ダンジョン内なのになんで明るいんだ?」
「天井にヒカリゴケがびっしりだからねぇ?」
「ふむ。誰か戦ってるな・・・」
二人でのん気に話していると二人の男女が魔猪と死闘を繰り広げていた。
男は頭から血を流しながら魔猪に斬りかかり女は必死の形相で杖を掲げて詠唱をしている。
「あれ大丈夫か?」
「多分大丈夫よ。それに下手に手を出すと獲物の横取りと思われるわ。」
「なるほど。一理あるな・・・じゃあ進もう。」
アランの言葉に納得したので戦闘を邪魔しないように注意して進む。
「ねぇニコ?進みやすく出来ないの?」
「出来なくはないが・・・洞窟が崩れる可能性があるやつと魔物と一緒に冒険者達が全滅するかもしれないのと、どっちがいい?」
「ニコに期待したあたしが馬鹿でした!」
空気の刃で木ごと全てを刈ってもいいが力の加減を間違えると壁が崩れてダンジョンが崩壊する可能性があるので出来ればやりたくない。
それか火魔法で焼き尽くしてもいいが魔物と一緒に冒険者も焼き尽くす可能性が高い。
俺も出来ればやりたくない、アランもそれを察してくれて大人しく一緒に獣道を進んで行く。
しばらく進むと梯子がかけられた縦穴が現れる。
「これが階段変わりか?」
「そうだね?階段だったり縦穴だったりなだらかな坂だったり色々だね。」
「そうか・・・」
「ねぇ?今日はどこまで進むつもり?」
「何も考えてない行ける所までだな。」
梯子に手をかけるとアランに聞かれるのでそう言って梯子を降りて行く。
「ニコって案外出たとこ勝負なところあるよねぇ・・・」
アランが呆れたように言いながら俺の上をアランが梯子を降りてくる。
梯子がぎしぎしと怪しい音を立てていて恐いので出来れば俺が降りきってから来て欲しいものだ。
「ふむ・・・まだ森か。」
縦穴を降りると十二階も森だった。
ただ十一階のように背の高い草が生い茂る原生林ではなく草の背は低く木々もまばらでとても歩きやすそうなのどかな雰囲気漂う森だった。
「十四階までは森よ?」
「ふむ・・・そういえば本に書いてなかったな。十五階からは魔魚・・・海だったか?」
「地底湖よ?」
「本当にダンジョンとは何でもありなんだな・・・」
「ダンジョンってよりは魔物の力だね?一説には魔族がダンジョンを延長して自分が住みやすいようにしてどこかに住んでるって話もあるけどね?」
「なら魔族を探してみるか?」
「ルドルフなら見つけそうで恐いね・・・」
「本気で隠れてるのなら難しいだろうな。本当にいるのなら・・・だがな?」
アランと話しながら森の中を進んで行く。
この階層まで来ると表で列を成していた冒険者達は一気に少なくなり魔物の方が断然多くなってきた。
「アラン?一般的な冒険者は何階で狩りをしているんだ?」
「今の状況を見ればわかると思うけど十階までの階層ね。」
「なら先程の男女の冒険者やこの階層にいる冒険者は?」
「一般的に上級冒険者と言われる者達よ?」
「いい話を聞けた。それが常識と認識しておこう。」
思わず言い話を聞けた。
ターニャ達の様子を見る限りいつかみんなでダンジョンに行く日があるかもしれない。
もしだがその時が来たらこの常識を元に行動するようにする事にしよう。
そんな事を話しながら進んでいると十分もかからずに縦穴に辿り着く。
「もうか?」
「早かったわね?」
「まぁいい進むか。」
「そうね?さっさと下に進んで強い魔物を狩りましょ?」
魔素は空気より重たいので地上よりも低い場所にあるダンジョンの下層に溜まるので下層に進めば進むほど多くの魔素が溜まり強力な魔物が生まれると本には書いてあった。
あくまでも憶測の域を出ない話だがダンジョンの造りなどを鑑みるととても理に適っていた理論だったので覚えている。
「そうだな・・・今日のガルとの戦いで自分の魔力不足を痛感したからな。」
アランの言う通りに進んで強い魔物を食べててしっかりと自分の魔力を高めたい。
アランと一緒に縦穴を降りて森の中を進み十五階へと降りる。
十五階への道はなだらかな坂だった。
坂を降りきると地底湖が現れる。
「本当になんでもありだな・・・」
「一応言っとくけどこのダンジョンは特に歴史が長いからかなり特殊な造りだからね?あっちに石橋があるからそこを進むよ?」
「ふむ・・・」
湖はとても透明度の高い綺麗な水で中を泳ぐ様々な種類の魔魚が泳いでいる。
湖の上にかけられた石橋を進む。
「前にあたしが来た時は両側の湖から魔魚が飛び交ってマジきつかったのになぁ・・・」
普段なら湖の中にいる魔魚達が飛んで来て命懸けで進む道なのだろう。
アランが俺達に気付かずに悠然と泳ぐ魔魚をまじまじと見ながら呟いている。
「なら魔法を解いて正攻法で行くか?」
「思っただけで今のままで行きたいと思っております!」
振り向いて言うとアランが真面目な顔で敬礼をして俺に答える。
ただあまり大声を出されると魔魚達に気付かれる可能性があるので気をつけて欲しい。
のん気に鼻歌を歌うアランと一緒に湖の中を泳ぐ魔魚を眺めながらダンジョンを進んで行く。
面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。
もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。




