第五話 誕生日会と出発
ハッピーの食堂に行くとルル、クネ、ハッピーが料理を囲んで座っていた。
机の上には記念日にしか出されない特別な料理である、ドラゴンの肉を使った料理が並んでいる。
「ニコ?お腹がすいたわ。早く座りなさい?」
「そうだ!俺と一緒に家を出たのに遅いぞ!」
「昼隠してたのはこの料理を隠すためだったんだよ!」
「なんだ?今日は何か記念日だったか?」
「ニコ?あなたの八歳の誕生日よ?」
「そうだぞ!この村に来て八年だ!ヌァッハッハッ!」
「うんうん!魔族は成長しないからニコの成長は見てて楽しいね!」
「そういう事か・・・なら言ってくれればいいと思うのだが?」
「「「・・・」」」
三人は無視して料理を食べ始める。
「なんか今日は違和感しか感じないな。」
「「「・・・」」」
三人は黙々と料理を食べるので俺もドラゴン料理を食べる。
さすがはレッドドラゴンの肉だ美味い。
ハッピーの料理も一緒に研究をして作ったりして、昔は焼くだけ煮るだけの料理だったが香草を加えたり茸を入れたりしてとても食べやすく美味しくなった。
終始無言の三人との食事が終わり、ハッピーがかちゃかちゃと皿を下げて机の上を片付けるとクネが机の上に服を何十着と出し始める。
明らかに今の俺では合わない大きいサイズの服もある。
「これは?」
「誕生日プレゼントよ?」
「・・・多くないか?」
「つべこべ言わずにマジックバッグに入れなさい!」
「はい。」
クネの言葉に体が反応して机の上にある衣服をマジックバッグに入れる。
母代わりのクネには逆らえない。
「次はあたしだよ!お姉さんからのプレゼントだよ!?」
そう言ってハッピーが料理を机の上に並べる。
「もうお腹いっぱいだが?」
「エド様から特別製のマジックバッグ貰ったんでしょ?それに入れればいつでもお姉さんの味を熱々で食べられるよ!」
「意味がわからんのだが・・・」
意味がわからないが、おそらくこの流れでは料理を受けとるまで話しは進まないのだろう。
料理をマジックバッグの中に入れる。
マジックバッグの中はどういう構造になっているのかわからないが、入れている物は独立しているようでクネの服に料理が触れるなどという事は起こらない。
「さて!次は俺だ!」
ルルが見た事もない柄の金で出来たコインを十枚差し出す。
「これは何だ?」
「ヌァッハッハッ俺の長い生で手に入れた金という物だ。」
「それを俺は貰ってどうしろというんだ?」
俺の言葉に反応して高笑いしていたルルが突然真面目な顔になり、クネとハッピーも緊張した面持ちで俺を見つめている。
「・・・お前は人間だな?」
「そうだな。」
「お前はこれから森を出て学校に行け!」
「学校?」
「人間が集まって色々な事を学ぶ所らしいぞ!」
「ふむ。そして人間の知識を得て帰って来いという事だな?」
「人間と生きるか、魔族と生きるか。好きな方を選ぶといいぞ!」
「どういう意味だ?」
「人間と生きるのが楽しくなったらそれでもいいと言ってるのだ!その金を使えばしばらくは生活出来る・・・と思う!ヌァッハッハッ!」
「わかった。この金という物は何に使う物だ?」
「人間はこの金を使って物々交換するのだ!」
「ふむ。」
「それを持って明日出発しろ!」
「急だな。」
「学校は六年あるそうだ!人間として生きれないと思ったらいつでも帰って来い!我等はいつでも歓迎だからな?」
「わかった。」
「では今日はゆっくり寝て明日に備えよ!」
「・・・ルルは?」
「俺は・・・魔王の仕事があるのでな!明日から忙しくなるぞ!さっさと帰って寝ろ!」
ルルの目が潤んでいる。
「(空気を読んで家に帰って寝るか・・・)」
ハッピーの家から出て扉を閉めると同時にルルの大号泣する声が聞こえた。
そのまま家に帰って、クネ謹製の寝袋に入って横になる。
「(明日から森を出るのか・・・)」
心配と期待で目が冴えてしまう。
「(睡眠霧)」
ルルが帰って来た時に起きているとめんどくさそうなので自分に睡眠魔法をかけて眠る。
翌朝目を真っ赤に腫らしたルルに起こされ門へと向かう。
「別れが惜しくなる!朝食は森で昨日貰ったハッピーの料理を食べるのだ!」
「あぁ。」
「寂しくなったら戻って来るのだぞ?顔だけでも出しに帰ってくるのだぞ?」
「近ければな?」
「遠くても帰ってくればいいではないか!」
「人間に恐がられない距離ならな?」
「グヌヌヌヌ!・・・人間に溶け込めるように頑張るのだ・・・」
「わかった。」
それ以上ルルは何も言わずに門に着いた。
門にはハッピーとクネにゴブチョウとコボチョウ達が待っていた。
ゴブチョウ達は深緑の皮膚をした二メートル弱の背丈の魔物ホブゴブリンの魔族で、コボチョウ達はルルと同じくらいの背で毛に覆われた犬の魔物ハイコボルトの魔族だ。
「ニコ様!これをどうぞ!」
「ニコ様!頑張って下さいっす!」
ゴボチョウとコボチョウが前に進み出て恭しく皮袋を差し出してくる。
中身ルルから貰った金と似た絵が描かれた銀や銅で出来た金だった。
「お前らどうやって?」
「森で人間に出会って素材と交換致しました!」
「話しのわかる人間で友好的に取引出来たっす!」
「そうか・・・大事に使う。」
「では我々一族御武運をお祈りしております。」
「我々一族も御健闘をお祈りしてるっす!」
ゴブチョウとコボチョウが恭しく跪き、後ろにいるホブゴブリンとハイコボルト達が倣って跪く。
「ニコ?嫌になったら帰っておいで?お姉さん待ってるからね?」
後ろからハッピーが抱き着いてくる。
「わかった。ありがとう。」
「帰って来た時には人間の料理を教えてね?」
「わかった。勉強しておく。」
「じゃああたしからは以上!頑張ってきな!?」
ハッピーに背中を叩かれ、クネの方へと押し出される。
そのまま流れるようにクネに抱かれる。
「ニコ?苛められたら言うのよ?私が国だろうが滅ぼしてあげるから!」
「クネ・・・食べないのに殺したら駄目だろ。」
「・・・そうね。頑張ってきなさい!」
「わかった!」
「帰ってきたら人間の服の技術を教えてね?」
「それも勉強しておく。」
「じゃあルルに引き止められる前に行きなさい?」
「え?」
クネに言われ後ろを振り返ると、背中を向けて肩を震わせるルルがいた。
「ルル?かならず帰ってくる。」
「・・・」
「じゃあ遅くとも六年後に会おう。」
「・・・んむ。」
ルルが精一杯捻り出したであろう言葉を聞いて森へと走り出す。
「必ずだっ!待っておるぞぉ!!」
ルルの言葉が森に響き渡る。
慣れた森を立体機動で駆けて行くこと数時間。
遠くから人間の叫び声が聞こえてくる。
近づいてみると、人間三人がリザードマンと戦闘していた。
人間の剣や魔法はリザードマンの鱗を貫けないようで、かなりの劣勢の様子だ。
「(手助けするか?だが魔族ならばここで手を出すと名誉を傷付ける事になってしまう。人間はどうなのだろうか?)」
悩んでいるうちに一人の人間が木に叩きつけられ気絶したようだ。
わからないのなら聞いてしまえばいいのだ。
そう思って人間の下へと向かう。
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