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第四十六話 水竜の住処と天敵

「綺麗だな。」

空からの王都は魔力灯(ライト)や人々の生活の明りによって色とりどりの光っていてとても綺麗だ。


「ニィィィィコォォォォォ!!!」

「煩いな・・・水竜?連れが落ちそうだ。どうにかしてやってくれないか?」

「ん?おぉ!わかったのじゃ!」

「ぬぅぅぅおぉぉぉぉぉぉ!!!」

水竜が尻尾にしがみ付くフィルを振り落としてフィルが涙の粒を残しながら落下する。



「すこし揺れるでのっ!掴まるのじゃ!」

「承知した。」

そう返事をすると水竜が一つ頷いて急降下からの宙返りをしてフィルを背中に乗せる。

「(器用な事だ。)」

「ニ・・・ニコォ・・・」

俺が感心しているとフィルが涙を浮かべながらしがみ付いてくる。



「邪魔だ!羽に掴まれ!そして俺はルドルフだ。」

「ん?羽に掴まったら竜が飛べないじゃないか!?」

「羽はいわば飛ぶためのマジックアイテムのような物だから問題ない。」

「そうなのか・・・助かったぁ・・・」

フィルが感心しながら水竜の羽の根元に掴まる。

安心したのか深く溜息を吐いている。



「すぐに着くでの?ゆっくりしてたもぉ!」

そう言って水竜が飛び続けるので闇に覆われた大地にポツンポツンと見える暮らしの灯りを見つけながらまったりと景色を眺める。

「ニ・・・ルドルフ?なぜそんなに落ち着いてる?」

「知らん。フィルが驚きすぎだ。」

「そんな事ないだろ・・・」

フィルが小声で呟くが風は水竜が魔法で風を避けてくれているので丸聞こえだ。

さすがは結界魔法が得意と言うだけはある。かなりの速度で飛んでいるのに風切り音は一切聞こえない。

それどころか水竜の背中は快適温度で風呂上りの今なら寝られそうな程心地よい。




「着いたのじゃ!降りるでの?」

水竜が止まりゆっくりと下降し始める。

だが降りる先と思われる場所へは何もない山だ。

念のために魔法で目を強化して確認しても何も見当たらない。

心配になって水竜に問いかける。

「おい。何もないただの山に見えるが?」

「ヒョッヒョッヒョッ!大魔法使いにそう見えるならば人間には見えないのじゃろうな?安心したのじゃ!」

俺は大魔法使いでは無いのだが水竜は楽しそうに言っているので言葉を飲み込む。

しばらく降りると結界を抜けたのだろう景色が変わり巨大な家が立ち並ぶ集落が見える。



「家の一つ一つがでかすぎだろう・・・」

「ひょっひょっ!人間の村を見て真似たのじゃ!竜の大きさに作ったが良く出来ておろう?」

水竜が俺の言葉に自慢げに言うが、立ち並ぶ家々は屋根が付いただけのわらぶき小屋でとてもみすぼらしい。

だが俺は人間社会に溶け込んだので嘘と言うものを学んだ。

大人な対応と言うものをする。


「そうだな。フィル?今度家とはどういう物か教えてやれ。」

「・・・生きて戻れたら喜んで。」

「びびりすぎだ。」

俺が言うと羽にしがみ付いたままのフィルが真顔で睨んできながら言って来る。



「さぁ大魔法使いと騎士の人間よ!歓迎するのじゃ!申し遅れたがわらわはこの村の長を務めるウランと申すのじゃ!」

そう言って水竜は俺達を降ろして人型の美しい黒髪の女性へと変化する。

布一枚を羽織っているだけでとても妖艶な雰囲気を纏っている。

「さっさと帰りたい。で?ダンジョンはどこだ?」

「美しい・・・」

「むぅ・・・では案内するのじゃ。すぐなのじゃ!」

フィルは虚ろな表情でウランの後ろ姿を見つめながらふらふらと歩み寄り始める。

「(まるで誘蛾灯に集まる蛾みたいだな。)」

ウランはそれを無視歩いて行きフィルがその後ろをふらふらと付いて行く様を見て思う。

そしてダンジョンは本当にすぐだった。

集落の出口を曲がると洞窟の入口だ。



「ここなのじゃ!憎きアークデーモンがいる洞窟は!」

「ふむ。ここまで来てなんだが出て来ないなら問題無いんじゃないのか?」

「この洞窟に湧く魔物を食べて過ごしていたのじゃが・・・アークデーモンが出現してから魔物が湧かんで我等は飢えておるのじゃ!そんな時に川から尋常ならざる魔力を感じたのでわらわが長として救世主を迎えに出向いたのじゃ!」

ウランが胸を張って言っている。

どうやら俺の雷龍の電気はしっかり制御できていたが魔力を放出した時に出る魔力波で水竜達に気付かれたようだ。



「てっきり魔力量の多さに魔族と思って勇んだのじゃが・・・人間と分かった時はさすがに尻ごんだが頑張って人間と会話してよかったのじゃ!」

「それであんなに興奮してたのか。」

最初は怒っていると勘違いしてしまうような剣幕だったが、ただ興奮していただけだったようだ。


「んむ、敵対はしたくなが舐められるのも嫌なのじゃ!」

「そんな貴女のような美しいかたと敵対などありえません!」

ウランが胸を張って言うとフィルがウランの前に跪いて(のたま)っている。




「爺・・・色気づいても無理だ。」

「なっ!?わかんらんだろうが!?何か?わしが年寄りだからか!?」

「いや、ならがんばれ・・・」

竜は長生きだ。

その竜の村長をしているウランはおそらくフィルよりかなりの年上だと思うので丁度いいかもしれないので肩を叩いて言う。

そして洞窟を歩いて行くウランの後を付いて行く。



「ダンジョンだろ?魔物はいないのか?」

「それなのじゃ。魔物が湧かんから不思議に思って洞窟を進むと最奥にアークデーモンがおったのじゃ!それから魔物は湧かんようになってしもうたのじゃ!」

洞窟の中を進むウランに尋ねるがアークデーモンが現れてから魔物は一切湧かないそうだ。

俺は不思議に思ってフィルに尋ねる。


「フィル?普通のことか?」

「いや。ダンジョンの最奥には強い魔物が発生し易いが途中の魔素溜まりまで無くなるのは聞いた事がない。」

フィルが真顔で答えるので普通ではないようだ。

フィルと共に身構えながらウランに付いて洞窟を進んで行く。




「あの部屋なのじゃ」

ウランが小声で言うので覗き込むと角が生えた人型の魔物。

アークデーモンが五人佇んでいた。

こんな狭いダンジョンで唯一の攻撃手段であるブレスを放てば洞窟は崩壊するだろう。

アークデーモンを倒せる攻撃魔法が使えないウラン達では到底太刀打ちは出来ない相手だ。


「五人いるぞ?」

「わらわ達が入らないうちに増えたようじゃの?いけるか?」

「どうだろうな?」

そう言って自分の指を筆に、魔力をインクにして空中に魔法陣を描く。


「ほう?結界系の魔法陣じゃの?」

「ニコは精霊系以外の魔法陣にも明るいのだな?」

「そうだ結界を張る。そして爺俺は今ルドルフだ。」

俺の描く魔法陣を見ながらウランとフィルが感心しているがフィルが俺の事をニコと呼んでいるのでキッチリと念を押しておく。


「ほう?吸収するのかの?面白い魔法陣じゃ!」

「そうだ。あいつらは魔力を使いきれば存在を維持できずに消滅するからな。真正面から挑むよりも時間はかかるが安全だ。」

「ほぅ?ならばここをこうすれば・・・」

ウランが俺が書いている魔法陣をいじる。

驚くことに数箇所の回路を書き換えただけで展開時の消費魔力が半分になった。


「さすがは竜種だな。」

「これなら次アークデーモンが出てもわらわ達で対処出来るのぅ?」

「そう思ってこの方法を選んだ。発動するぞ。」

「ほう?人間にもお主のように魔族に配慮出来る者がおるんじゃの。」

俺は完成した魔法陣に魔力を流して結界を張っているとウランが嬉しそうに言っている。



「じゃあ行くか。」

「ルドルフ?大丈夫なのか?」

「あいつらは魔法しか撃ってこないから問題ない。」

「では積年の恨みを晴らすのじゃ!」

心配そうな顔で俺とウランの後ろをフィルが付いて来てアークデーモン達がいる部屋に足を踏み入れる。



「いぎゃぁぁぁぁぁ!」

俺達に気付いたアークデーモン達が数え切れない数の魔法を放ってきてフィルが両手で頭を抱えてその場にへたり込む。

アークデーモンの魔法は結界に当たると静かに吸収されて消えてなくなる。


「さて。しばらく時間がかかるから晩飯を作るか。」

「ほう?わらわも食べさせてもらえるのかの?」

マジックバッグから燃料を取り出して焚き木を熾していると興味津々といった様子のウランが座り込んで言って来る。

大股を開いて荒々しく座っているので見えてはいけない場所が見えそうだ。


「人間の食事でよければ、だがそのつもりだ。」

「楽しみじゃの!」

俺が食材を切りながら言うとウランが鼻息を荒くしてガッツポーズをしている。

勢いよくガッツポーズをしたせいで纏った布が捲れてウランの下半身が顕わになりフィルが耳まで赤くさせて鼻を手で押さえている。



「フィル?生きて戻ったら服の概念も教えてやれ。」

「わ、わひゃっひゃ。」

一つ溜息を付いてフィルに言うとフィルは指の隙間から血を流しながら答える。


「そういえばこの人間はなんで付いてきたのじゃ?」

「俺の保護者だな。おそらくこの人間でもアークデーモンは倒せる。」

「ほう?見た目によらず強いのじゃのぅ?」

「お、おう!本気を出せば倒せるぞ!・・・一体だけなら。」

鼻血を拭いたフィルが胸を張って答える。

最後の小声で一体だけと言ったので五体纏めては無理なのだろう。



「にしてもこいつら・・・無駄なのに魔法を撃ち続けるのだな?」

「自我をもたないアークデーモンと言われるだけの精神体(マナス)の魔物だからな。」

フィルが結界の外で延々と魔法を放ち続けるアークデーモンを眺めながら言っている。

アークデーモンは悪魔界から魔素溜まりから顕現した魔物と言われているが、自我を持たないただの精神体(マナス)の魔物だ。

こうやって対処してしまえば何一つ脅威ではない。



「さぁ料理が出来たぞ。」

「美味そうな匂いじゃ!早く食べさせてたもぉ!」

「わしが取り分けよう!」

フィルが自分とアランの分だけを取り分けて料理を食べ始める。



「爺・・・俺の分も用意しろ・・・」

夢中になって料理を食べるウランにパンを渡したりして甲斐甲斐しく世話をするフィルには俺の言葉は聞こえないようだ。

溜息を吐いて自分で準備して晩飯を食べる。

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