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第四十四話 魔鼠大量発生

フィルを探しながら地上を走って山の入り口にむかって行く。

身体能力強化魔法で目を強化しているので真っ暗な森の中でもくっきりと見えるので昼間と変わらない速度で木々の間を駆け抜ける。

しばらく走っていると山の入り口で無数の灯りが見えるので近づくと水晶玉を覗き込むフィルとアランを先頭に数人の騎士達が見えた。


俺はベネチアンマスクを着けてフィルの前に出る。

「何やつだ!?皆散開!戦闘体制だ!」

「大丈夫!味方だよ!」

フィルの後ろにいた騎士が抜刀して言うと笑みを浮かべたアランが手で制して言う。


「ニ・・・ルドルフか。どうした?」

ボケ爺が驚いたのか思わずニコと言いかける。

隣に立つアランが笑顔で拳を握っているが殴っていないのでセーフなのだろう。

「お前ら監視されるぞ?あと山の反対側。森との境界近くにスパイの密会小屋を見つけた。」

俺の言葉に騎士達にどよめきが走り、フィルとアランはニヤリと笑みを浮かべている。


「ほう?何があった?」

「手短に話そう。まずは小屋でこの山に魔法陣を描いた男と戦ったが転移石で逃げられた。次は何やら下水道がいっぱいで大変な事になるって言ってたな。その次は娼婦が不満を持っている貴族のリスト。最後は学校の一年生が書き写したものだがこんな紙を置いていった。」

フィルに書き写した見取り図を渡すとニヤリと笑って騎士達に振り返る。



「聞いたな?」

「ハッ!今すぐに下水道とこの地図の場所を調べます。」

「頼んだ。監視されているのなら魔法陣と小屋の確認は明日明るくなってからだ!」

「かしこまりました!灯りは?」

「いらん!ワシは適当に森の中をぶらぶらして帰る。」

「では失礼します!」

小声で会話をして騎士達が敬礼をしてガチャガチャと音を立てながら走って王都へ帰って行く。



「今は監視されてるのだろう?わしらは帰って報告を待つかな!」

「そうね。明日ゆっくりと見に来よっか?」

そう言ってフィルとアランが俺にウィンクをしてから踵を返して王都へと歩いて行く。

俺は認識阻害魔法を掛けなおして山を抜けて森へと帰って寝る。

「(先程のウィンクは恐らく明日案内しろって事だろうな・・・面倒臭い。)」

思わず明日の事を考えて億劫になってしまう。

虫たちの鳴き声を聞きながら目を閉じていると魔の森で過ごしているときを思い出しそんな事はどうでもよくなり心地よく意識を手放す。



朝起きて身支度を終えてからゆっくりと朝食を済ませて王都へと帰る。

「すさまじいな・・・」

ギルドに入ると冒険者達が我先にと依頼ボードに殺到していた。

おそらく割のいい依頼を取ろうとみんなが押しかけているのだろう。

「(あそこに入る気にはなれないな・・・)」

思わず後ずさりしながら考えて人が引くまでゆっくりと待つ。



しばらく依頼を受けた冒険者達がギルドから出て行くのを見守る。

「報酬はカードに頼む。」

人がいなくなったのを見計らって受付へ行き薬草とカードを差し出す。

「はい!受け付けました!」

そう言って受付嬢がカードと薬草を持って奥の扉に消えて行く。


「はい!完了です!依頼は受けなくても良いですか?」

すぐに受付嬢が戻ってきてカードを渡してくる。

「大丈夫だ。明日から学校なので今日はゆっくりさせてもらう。」

「ウフフ、王都を楽しんでね?」

カードを受けとりながら言うと、優しい笑みを浮かべた受付嬢が言って来る。

「ありがとう。では。」

「また来てね!」

笑顔の受付嬢に見送られながらギルドを出て路地裏に入る。



「(誰も・・・いないな。)」

周りを確認してマスクを装着して昨夜の山の入り口に向かう。

ニコの時は常識的な速度で帰ったので三時間近くかけて歩いて帰ったが、今はルドルフなので遠慮なく全力で走る。

三十分くらいで山の入り口に立つ二人を発見する。


「待たせたな。」

「あたし達も今来たところよ。」

「では案内を頼むぞ?」

「周りには誰もいないが念のために。」

捜索魔法(サーチ)には反応は無いが二人に認識素外魔法をかける。


「ほう・・・こんな簡単に・・・」

「スムーズね・・・さすがね。」

「時間が惜しい。さっさと行くぞ。」

感心する二人に言って山を進んで行く。



「ふむ・・・本当に魔法陣だらけだな。」

フィルが水晶玉を覗き込みながら言う。

恐らく魔力反応を見るためのマジックアイテムなのだろう。


「爺?それは騎士団に任せて行くよ!」

「お、おう!」

俺が無視してさっさと進んでいるとアランに急かされてフィルが水晶玉をマジックバッグに入れて慌てて走って来る。



しばらく歩くと遠くに昨夜の密会場所の小屋が見えた。

「あそこだ。」

「本当にあるな。」

「ここなら騎士団にばれなければ盗賊達も敬遠するしいい場所かもね。」

俺が小屋を指差すとフィルとアランは水晶玉を覗き込みながら話している。



「で?どうするんだ?」

「ふむ・・・あえて泳がせるか。帰るぞ!王都が大変なようだ。」

地図に書き込みをしたフィルがそう言って踵を返す。


「何があったのよ?」

「今連絡があってな?下水道を見に行ったら魔鼠(まそ)が大発生してるそうだ。」

「下水道だと?俺は絶対にごめんだぞ?」

二人の会話を聞いていると嫌な予感がするので先に言っておく。

下水道とは糞尿や生活排水が流れている場所のはずだ。

絶対にごめんだ、ルドルフの冒険者カードを返してでも拒否させていただく。



「ふぇっふぇっふぇっ!とりあえず行ってみるぞ!」

「あたしも下水道に入るのはごめんだからね?」

笑いながら言うフィルを先頭に王都へと向かって歩く。

アランは俺と同意見のようだ。



フィルに連れられ下水道の入り口に連れて行かれる。

下水道の入り口は巨大な半円形の入り口に川が流れ込んでいる場所だった。

そこにアルフォンスを先頭にたくさんの騎士達が並んで待っていた。

「御苦労!詳しい説明を頼む!」

「ハッ!魔鼠の数は数万は下らない数です!今にも溢れ出てきそうです!こちらが簡略ですが調査書です!」

敬礼をしたアランが簡潔に報告をして紙をフィルに渡す。

紙には下水道の地図に無数の×が書かれていてそれを繋げた大きな丸が描かれている。


「この丸は?」

「バツの位置が鼠の群れを発見した場所です!そしてその丸の中が魔鼠が隙間無くひしめいていると予想されます!」

「そんなに多いのか・・・にしても予想だと?」

「ハッ!これ以上奥に進めば弱い魔物とは言え多勢に無勢で・・・」

「ルドルフの情報が無ければ下水道から魔鼠が溢れる所だったな・・・」

悔しそうなアルフォンスの報告を聞いてフィルが考え込む。



「なぁアラン?下水道を霧に満たして凍らせられないのか?」

「そんな魔力あるわけないじゃない!」

「そうか。」

もしそれが出来るのなら下水道に入らなくても済むので名案だと思ったのだがアランに即答された。


「霧で覆うまでね。凍らせるには魔力が圧倒的に足りないわ。」

「霧さえあれば手当たり次第でいいのなら手はあるぞ?」

「ほう?ならばそれで行くぞ!」

アランと話しているとフィルが食い気味に言って来る。

まだどんな方法かも言っていないのにフィルはアルフォンスに指示をして騎士達が魔法で霧を作り出し下水道の中に流し始める。



「・・・どんな方法かも聞かないで行動早すぎないか?」

「それだけ緊急事態って事よ!あたしは楽しみにしとくためにあえて聞かない!」

そう言ってアランも騎士達と一緒になって霧を作り始める。

さすがはアランだ。ニ十人近くの騎士が作り出す霧よりも圧倒的に多い量の霧を下水道の中に流して行く。



「なぁ?ここから霧を流せば全体に流れるのか?」

「あぁここが下水道の始まりだからな!臭いが出口に流れるように設計されているのだ。」

「よく出来ているのだな。」

俺の疑問にフィルが答えてくれる。

入り口から霧を流せば下水道全体に流れるようなので霧を作り出すみんなを眺めて待つ。


「で?何をするんだ?」

「霧に電気を流すだけだ。」

俺が言うとフィルが一瞬驚いた顔をして、すぐに不敵な笑みを浮かべ始める。


「・・・どんな魔法で電気を流すのか楽しみだ!ふぇっふぇっふぇっ!」

「久々に全力で魔法を放つな。絶対に人が霧に触れないようにしてくれ?」

「わかってる。今アルフォンスが走り回ってる!」

「ならいい。」

フィル達に任せておけばよさそうなので霧を流すアランと騎士達をのんびりと眺めながら昼飯を作る。



「ワシの分はあるのか?」

「どうせ駄々をこねると思ったからフィルとアランの分も作ってる。」

「なら問題無しだ!」

俺の料理を見ながらフィルが満面の笑みで頷いている。



二人で昼飯を食べているとアランが大股で近づいて来る。

「何あたしに働かせてあんた達は楽しそうにご飯食べてんのよっ!」

「ふぇっふぇっふぇっ!終わったか?」

「終わって今は騎士達が霧を維持してるわ。」

「終わったのなら御褒美だな?」

「御褒美って俺のだろうに・・・」

フィルが俺に言うのでアランの料理を取り分けて渡すとアランが一瞬で満面の笑みになり俺の料理を食べ始める。



「ニコ?アルフォンスからの報告が入った。やってくれ!」

「わかった。」

「ちょっ!ご飯食べてからにしてよ!」

フィルと一緒に立ち上がると昼飯を食べているアランが慌てている。

そんなに俺が何をするのか楽しみにされても霧に雷魔法を放つだけなので別に見なくても問題は無いと思う。


「騎士団も霧が漏れていないか見続けるのは難しいからな?ニコ急げ!」

「わかった。」

フィルに急かされて下水道の入り口の前に行く。

下水道の中は霧がたち込めて数メートル先も見えない状況になっている。

「(おあつらえ向きな状況だ。)」

満足しながら集中して雷属性の魔力を練り上げて行く。

久々の本気で魔法を放てるので楽しみだ。

思わず笑みを浮かべながらイメージをして魔法を構築して行く。

面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。

もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています



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