第三十九話 アランとデート
少し長めになってしまいました。
「ぐえっ!」
アランの蹴りを喰らって起こされる。
「(朝食の時に頭が爆発しているわけだ・・・)」
普段は大きな三角帽氏をかぶっているのでわからないが、たまに調理中などに寝間着で来るときは決まって頭が爆発しているアランの足をどけながらアランのせいで乱れた布団を整えて眠りにつく。
「ニコ・・・うんこしてる・・・」
「してる訳ないだろ。」
アランのとんでもない寝言に思わず返してしまう。
アランの寝相の悪さに何度も起こされながら朝を迎える。
「うーん!よく寝た!」
「・・・最悪の寝覚めだ。」
「どうしたの?布団が駄目だった?」
「布団は最高だった。だがアランの寝相が最悪だ。」
「そりゃ申し訳ない!」
頭を爆発させたアランが頭を下げてくるので一つ溜息を吐いてテントを出て料理を始める。
「ニコお腹減った!」
テントを片付け終わったアランが言って来る。
「とりあえず頭をなんとかして来い。」
「へいへい・・・ついでに体も拭きたい!」
更に一つ溜息を吐いて桶に魔法で作ったお湯を入れて渡すと鼻歌混じりにアランが離れて行く。
料理を作り終え、アランと食べる。
「うーん!ニコの料理は美味しい!」
「そうか。」
「私アランはニコの嫁になります!」
満面の笑みでアランがとち狂ったことを言い始める。
「本当にやめてくれ。」
「本気なんだけどなぁ・・・」
アランが俺の料理を食べながら眉を潜めている。
俺は何も聞いてない振りをして朝飯に集中する。
「さぁ帰って観光するぞ。」
「そうね!ねぇ?王都の手前まで競争しない?」
「いいが・・・いいのか?」
「じゃあスタート!」
そう言ってアランが地面を抉りながら走り始めるので俺も反射的に走りアランを抜き去って王都へと走る。
王都の壁が見える位置でアランを待っていると息を荒げたアランが走って来る。
「はぁ・・・はぁ・・・あんた大人げないっ!」
「俺は子供だ。」
「きぃぃぃぃぃっ!」
大人のアランが子供の俺を指差して言うので俺は正論を返すとその場で地団駄を踏んで悔しがる。
「・・・帰るよ?」
「わかった。」
不機嫌なアランが門へと向かって歩くので先に門を抜けてアランを待つ。
「アラン?まずはどこに連れて行ってくれるんだ?」
「ひゃっ!?あんた魔法を解除してから声掛けなさい!?」
「すまん。」
可愛く驚いたアランに怒られたので自分にかけていた認識阻害魔法を解除する。
「じゃあねぇ?寝具?いやいや・・・鍋?両方買える所に行くよー!」
「ふむ。さすがは王都だ。そんな大きい商店があるのだな?」
「驚くよ?」
「楽しみだ。」
「でもその前にぃ?・・・ギルドで報告だぁ!」
俺の言葉にニヤニヤしながら拳を掲げながら歩くアランに連れられて王都を歩いて行く。
アランがギルドへ入って行く。
俺は昨日みたいに注目を浴びるのはごめんなので外で待機する。
しばらくして皮袋を持ったアランが出て来る。
「はいニコ!」
「すまんな。」
そう言ってアランから皮袋を受け取りマジックバッグに入れる。
「中身の金額聞かないの?」
「聞いてもわからんからいい。アランを信じているから適正だと思う。」
「ならいいや!驚く場所に行くよ?」
「楽しみだ。」
笑顔になったアランに付いて王都を歩いて行く。
「ニコ?昼御飯食べよ!」
「ふむ。」
屋台がたくさん並ぶ広場に出てアランと一緒に屋台から屋台へと食べ歩きをする。
会計は全てアランがしてくれるようで、珍しく年上らしいなと感心しながら屋台の料理を食べる。
「じゃあ今度こそ商店に行くよ!っていってもすぐそこなんだけどね。」
満腹になったアランに連れられ広場を出るが、アランの言う通り歩いてすぐの商店に入る。
店は特に今まで入った商店と違いはない普通の店だった。
「ここは・・・普通の商店だな?」
「それが違うんだな?目当ての場所はこっちだよ?」
そう言ってアランがカウンターの隣に置いてある本棚に行き、一冊の本をパラパラと捲りだす。
「それは何だ?」
「カタログだよ?」
そう言ってアランが本の中身を見せてくれる。
本には商品の絵と説明文がギッシリと書かれている。
「ねぇニコ?このハーピィの羽毛布団は?」
「ハーピィの毛だと?」
「最高級品だよ?」
「ふーん?」
ハーピィの毛などハッピーの季節の変り目にはかなりの抜け羽根が出るので珍しくも無いのだ。
そんな物を最高級品といわれてもいまいちピンとこない。
「布団はいらないみたいだね・・・じゃあ暴れ羊の寝袋買って上げるよ!店員さん?この寝袋見せて!」
「はい!」
そう言ってカウンターの店員に言うと店員は後ろにある巨大な箱から寝袋を取り出す。
「ほう?あの箱の中に商品が入ってるのか?」
「あれはマジックボックスって言ってね?かなりの容量が入るのよ。」
「となると・・・この本棚の本全部がカタログでその商品が全てあの箱に?」
「その通り!品揃えは王都一よ!寝袋の具合を確かめてなさい?」
アランがそう言って次のカタログを見ている。
俺は店員から渡された寝袋を手にとって感触を確かめる。
ハイウィッチに渡した寝袋よりもふかふかでとても手触りのいい寝袋だった。
「これ最高級品で二十万ゴールドですがお勧めの一品ですよ!」
「前の寝袋の十倍の値段なのか・・・」
「気に入ったならそれでいいじゃん!店員さん!あとこれとこれ!」
「かしこまりました!」
そう言って店員が黒光りする寸胴鍋とフライパンを重そうにカウンターの上に取り出す。
「ニコ振ってみ?」
「ふむ。」
アランに言われてフライパンを振る。
重たいと言われれば重たいが気になるほどではなく、取っ手は柔らかい素材で覆われていて手に馴染む使いやすいフライパンだ。
「ちょっと重たいですけどアダマントタートルの甲羅で作った一品ですよ!」
「いい感じだな。」
「じゃあこの三点買うよ!」
「ありがとうございます!」
アランがカードを差し出して支払いをしてくれる。
「いいのか?かなり高価な物じゃないのか?」
「フフフ!これからニコの料理を食べるための先行投資よ!」
「そういう事なら遠慮なく頂こう。」
アランが胸を張って言うのでいくらか気になる所だがあえて聞かずにありがたく商品をマジックバッグに入れる。
その後もアランが色々な調理器具を選んで大人買いをする。
「・・・ソーセージを作れと言う事か?」
「エヘヘへ!魔物肉のソーセージ食べたい。」
アランが腸詰め機まで買って渡してくる。
俺の料理にどこまでの物を求めるつもりなのだろうか?
呆れながら受け取ってマジックバッグに入れる。
「ニコ?他に欲しい物はない?」
本棚を眺めながらアランが言う。
俺は本棚の目録を眺めるがこれと言って欲しい物は見当たらない。
「今は特にない・・・あ、学校用の剣と弓が欲しい。」
「ふむ?なら武器屋だね!」
「前に買ったのだが問題があって使えなくてな・・・」
「ほう?晩御飯を食べながらその問題を聞こうじゃないか!」
そう言ってアランが店を出るので、付いて行く。
屋台巡りや商店でカタログをあれこれと眺めて買物をしたせいですっかり日が暮れていた。
腹の具合と体感的にはまだ夕方前だと思っていたが思った以上に買物を楽しんだようだ。
「このお店でお姉さんが話を聞こう!」
そう言ってアランが酒場に入って行く。
酒場の中は顔を赤らめて楽しそうに酒盛りをする大人達でいっぱいだ。
色々と勉強の合間に酒とはどういう物かは大体理解したのでジャック達の時のようにアランに酒とは何か尋ねる必要は無い。
「店員さん!エールとオレンジジュース!あと適当に料理持ってきて!」
「かっしこまり・・・アラン先生!?」
アランが注文した店員はマットだった。
よく見ると店の奥ではシャルルが料理を運んでいる。
「ここで働いてるのか。」
「うん!賄いも美味しいし、いいお店だよ!」
「うんうん。美味しいからここにしたんだもん!適当に頼んだよ?」
「かしこまりました!」
胸を張って自慢げに言うアランにマットが笑顔で返事をしてカウンターの奥へと消えて行く。
「で?何があったっての?」
アランが顔を近づけて小声で聞いてくる。
「ルドルフの時にな?俺は武器の選び方がわからないからフォルナとアイリーンに普通の剣と弓を選んでもらったんだ。」
「あっちゃー!そりゃ普通には使えないね。」
アランが頭に手を当てて言う。
フォルナとアイリーンは騎士であると同時に剣の授業で先生をしているので、そんな物を学校内で使っていれば俺がルドルフだと一瞬でばれてしまう。
「普通には?」
「わからないように装飾を変えちゃえばいいじゃん?」
「成程。」
「じゃあ剣と弓を出してみたまえ。」
アランに言われるままに机の上に剣と弓を取り出すとアランが手にとって品定めを始める。
「さすがはあいつらも騎士だ。いい物を選んだね。」
アランがそう言いながら鼻歌交じりに剣の取っ手の皮を取り、目釘を抜いて柄を取り替える。
「なんで柄があるんだ?」
「・・・元彼の刃に魔力付与した時に外してね・・・そのまま柄に刃をいれないままに別れちゃってね。」
「それは悪い事を聞いたな。」
「別に問題ないよ!もうとっくのとうに終わった話だしね?はい!剣は終わり!」
取っ手の皮を巻き直して柄が変わった剣を渡してくるので受け取ってマジックバッグに入れる。
「弓はどうしよっかな・・・もう似てるって押し切っちゃえば?」
「特徴的な装飾もないしそうするか・・・」
「適当にここら辺に皮でも巻いとけばいいんじゃない?・・・ほい!」
「すまん。助かった。」
アランが持ち手の辺りに皮を巻いて渡してくるので受け取ってマジックバッグに入れる。
「お待たせしゃっしたぁ!」
そう言って馴れた様子でマットがドリンクと料理を運んでくる。
「馴れたものだな。」
「生活がかかってるからね!じゃあごゆっくり!」
そう言ってマットは忙しそうにカウンターの中に消えて行く。
「ああいうのが常識か?」
「・・・っぷはぁ!剣を使った事の無い平民の子は常識ね?ニコは剣が使えるんだから今のままでいいと思うよ?」
「そうか。ならよかった。」
アランは美味しそうにエールを一気飲みしてから、俺の考えを察して言ってくれるので安心して料理を食べる。
「この店の料理は今まで食べてきた料理と全然違うな。」
「普通の料理屋と酒場じゃメニューは違うからねぇ・・・マットお替り!」
「かしこまりましたぁ!」
俺が料理に舌鼓を打っているとアランは上機嫌にエールをお替りする。
顔を真っ赤にしてだらしなく笑いながらエールを飲むアランを見ながらフライドポテトを食べる。
「次行くぞ!次ぃ!」
「次ってどこに行くつもりだ・・・学校に帰るぞマット会計だ。」
「わかった!」
ぐでんぐでんになったアランが椅子にもたれかかりながら言うのでマットにカードを渡す。
「ニコ?アラン先生大丈夫?」
「やばそうだな・・・とりあえず学校に帰る。」
マットが会計を終えたカードを返しながらぐでんぐでんのアランを見て心配そうに言うのでアランをお姫様抱っこして店から出る。
「こういうのもいいねぇ?ねぇ?ニコは学校卒業したらどうするんだい?」
店を出ても抱っこされたまま自分で歩こうとしないアランが俺の首に両手を回して楽しそうに笑いながら聞いてくる。
「何も決めてない。」
「じゃあさ?あたしと一緒に世界中を旅しない?」
「魅力的な話だな。考えておこう。」
アランにサポートされながら世界中を見て回れるのはとても魅力的な提案だ。
アランなら常識を知っているし戦力的にも申し分無い最高のパートナーだろう。
「(六年後の状況次第ではわからないな・・・)」
そんな事を思いながら抱っこするアランに絡みつかれながら学校へと歩いて行く。
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