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第三十八話 アランの実力と新しい住民

鬱陶(うっとう)しいな。」

ゴーレムの頭を砕きながら思わず心の声が口から漏れる。


「四十八体目!」

アランがゴーレムコアを取り出してカウントするが、本当にどうでもいい。

「全長一キロの洞窟だろ?まだか?」

「もう・・・そろそろだと思うんだけどね?」

アランと話しているとまたゴーレムが現れるので飛び上がり頭を槌で砕く。



「四十九・・・あ!ゴーレムじゃない魔物が見えたよ?」

「ふむ。鎧蜘蛛だな。」

大人と同じくらいの大きさで体が鎧のように硬い殻で覆われた蜘蛛の魔物だ。

「お!生物ならお姉さんに任せない!」

「じゃあ任せた。」

そう言ってアランがキラキラと魔力灯(ライト)の光に乱反射する霧を作り出して鎧蜘蛛の方へとゆっくりと魔法で流して行く。



「なぁ?気付かれてないからってゆっくりしすぎ・・・気付かれたぞ?」

鎧蜘蛛が俺達に気付いて牙をカチカチと鳴らしながら猛スピードで走って来る。

「フリーズ!」

アランがそう言うと鎧蜘蛛の動きが止まり動かなくなる。



「ほう?霧を凍らせたのか?」

「あたしの魔力特性は凍結。あたしの魔力に触れたものは全て凍結させる事が出来るのよ!」

つまりアランの魔力にレジスト出来ない生物は全て凍るという事だ。

しかも使った魔力は霧を生み出してそよ風を送っただけ、燃費もいい。



「こういう魔力の使い方もあるのか。勉強になる。」

「あたしとしてはニコの魔法を見れると思って楽しみにしてたんだけどね?」

「苦手ですまんな。」

「魔力が多すぎるのも考え物だねぇ?」

本当に楽しみにしていたのだろう、アランが残念そうに俺に言う。

鎧蜘蛛をマジックバッグに入れて奥の部屋に進むと行き止まりだった。


「・・・ゴーレムマスターがいない?」

「待て、ここら辺から反応があるぞ?」

捜索魔法(サーチ)に反応があった辺りの壁を調べる。


「ニコ?ここの壁の色が違うよ?」

「ほう?」

指で叩くと反響音が聞こえる。

槌で叩くと壁が壊れダンジョンの続きが現れる。



「よし行くぞ。」

「そうね・・・ゴーレムマスターとのご対面ね?」

アランと油断無く通路を進んで行くとすぐに小さい小部屋に辿り着く。

洞窟の中なのに不自然に四角い部屋だ。


「ニコ?そこの影動いてない?」

「影じゃない・・・人だ。」

真っ黒なローブに真っ黒な三角帽を来た黒髪の人型の何かが部屋の隅で倒れていた。

駆け寄って抱き上げると年頃の女性のようだ。


「おい。大丈夫か?」

治癒魔法を施すが反応は無い。

「ねぇ?こんな所にいるって人に見えるけどそれ魔族?」

「ただの人嫌いかもしれないぞ?」

「とりあえず洞窟から出ますか。」

「そうだな。」

女をお姫様抱っこして洞窟を出る。



「眩しっ!・・・外!?鎧蜘蛛は!?私助かったの?」

俺の胸の中で気を失っていた女が日の光を浴びて目覚める。

「助かったかは知らんが生きてるな?」

「あなた魔族かしら?」

「な、何か食べる物を・・・」

女はそう言ってまた気を失う。



「とりあえず今日は夜営か?」

「そう・・・なるわね。」

アランが半分以上地平線に沈んだ太陽を見ながら言う。


「こいつは任せた。」

アランに女を渡して夕暮れの森の中で料理を始める。



「おい起きろ。」

料理を作り終え女を揺さぶるとゆっくりと目を開ける。


「ほら食べな?」

アランがパンとコップに入ったスープを差し出すと目を見開いてパンを奪うように取って口に押込む。

「んーっ!んーっ!」

「ほらスープ飲みな!」

パンを喉に詰まらせて首を押さえて呻いているのでアランがコップを差し出して一息で飲み干す。

適度に冷ましたとは言えそんなに一気に飲んで火傷はしないのか心配になるが何か言う前に飲みきってしまったのでもう遅い、とりあえず女の様子を見守る。




「っぷはぁ!生き返ったぁ!」

笑顔の女がコップから口を離して叫ぶ。

「で?お前はなんであんな所で行き倒れてたんだ?」

「・・・やば・・・人間じゃん・・・」

女が俺とアランを見てわかりやすく顔を青くしながらポツリと呟く。



「大丈夫だ。お前を殺すつもりはない。」

「そうね。もうこのダンジョンでゴーレムを作らないならね?」

「あ!それは鎧蜘蛛がいなくなったからゴーレム作る必要ないから大丈夫!」

「そうか・・・なら食事をしながら話すか。」

「そうね?まだ食べるでしょ?」

「いいの?食べます食べます!」

三人で食事をしながら女から事情を聞く。



女はハイウィッチと言う人型の魔族で使える魔法はゴーレム創造(クリエイト)だけ。

ここのダンジョンに隠し部屋を作って魔物を食べながら平和に暮らしていたのだが半年ほど前に突如隠し部屋の出口に鎧蜘蛛が生まれてのでそいつを倒すためにゴーレムを作りまくったそうだ。

そして鎧蜘蛛はゴーレムを無視し続けて洞窟内がゴーレムだらけになり一週間前に保存食も尽きて死を覚悟していた所に俺達が来たらしい。



「で?これからはどうするつもりだ?」

「どうしようかな・・・このダンジョンにいても同じ事になるだろうしね・・・」

「にしても鎧蜘蛛も倒せない魔族とは・・・」

「ゴーレム以外の攻撃手段を持ってない駄目ウィッチですから・・・」

伏し目でハイウィッチが自傷気味に言って笑う。



「ねぇニコ?あたしは興味ないから向こうでテント張ってるね?」

「わかった。」

そう言ってアランが離れた所でテントを張り始める。


「・・・お前少し遠いが魔族の村に行くか?」

「そんな所があるんですか!?」

ハイウィッチが前のめりになって聞いてくるので地図を取り出して今の場所と魔の森の村がある位置を教える。


「なるほど・・・是非そこで安全にのんびりと暮らしたい!」

「ならば、ついでに本などを持って行って欲しいのだが・・・」

だが本は何一つない。

俺が考え込んでいるとテントを張り終えたアランがやってくる。


「話付いた?」

「あぁ・・・俺の故郷なら魔族の偏見が無いからそこに行かせる事になったのだが・・・ついでに祖父達に本などを上げたいのだがどうしたものかと・・・」

「ふーん?・・・本ってこれでいいの?」

そう言ってアランがマジックバッグから料理や建築の本にファッション誌などの本を取り出して積み重ねる。



「なんでこんな本を持ってるんだ?」

「ん?あたしだって色々勉強してるんだよ?読み終わったやつだから上げる!」

「じゃあ俺はこれだ。」

ハイウィッチに地図とコンパスを渡す。



「ふむふむ・・・位置的に赤い針の方向に進めば辿り着くね!?」

ハイウィッチがコンパスの使い方を教えるとすぐに飲み込んで理解したようだ。



「アラン?保存食持ってるか?」

俺は時間が止まるマジックバッグを持っているので保存食を持っていない。

「持ってるけど・・・その子はもう出発するの?」

「動くのはゴーレムなので私は構いませんよ?」

アランの問いにハイウィッチはあっけらかんと答える。

むしろ何を言っているの?っと声が聞こえそうな表情だ。


「それ目立たないか?」

「大丈夫ですよ!認識阻害魔法は使えるので!」

「さすが魔族ね!じゃああるだけの保存食上げる!」

そう言ってアランがゆうに一週間は腹いっぱいに食べられる量の干し肉やドライフルーツをマジックバッグから取り出す。



「ありがとうございます!では行ってきます!」

そう言ってハイウィッチはゴーレムコアのような物を取り出して地面に埋める。

すぐに地面が盛り上がり四本足が生えた石の部屋が出て来る。



「へぇ?便利ねぇ?」

「色々詰めそうだな。ついでに色々と運んでもらってもいいか?」

「いいですよ!」

許可を貰ったので部屋の中に米や香辛料など保存の利きそうな食料を手当たり次第にマジックバッグから取り出して部屋の中に置く。


「最後にこれをやる。長い旅になるだろうが頑張れ。あ、森の手前に塀があるが壊さないようにな?あと人間ともめるなよ?」

「了解です!これ暖かそうですね?何から何までありがとうございました!では!」

寝袋を渡すと大事そうに抱いて部屋に入って行き、鈍重な動きだったストーンゴーレムからは想像出来ない中々の速度で走り出して暗闇に消えて行く。

一般人が長距離を走る時くらいの速度は出ているので予想以上に早くルル達の下に着きそうだ。



「解決だね?寝よっか!」

「あぁ・・・一緒のテントか?」

「一夜の過ち起きちゃう?あぁ男女が二人でテントで夜を越す・・・起きちゃうかもー!」

「興味ない。」

アランが何やらくねくねしながら言うのでばっさりと切り捨ててテントに入る。



「さぁ!鍛錬するよ!」

「なぜ知ってる?」

「あれ?前に言ってなかったっけ?」

「言ってない。」

すでにアランは目を閉じて鍛錬を行っていて返事は無い。

仕方が無いので一つ溜息を吐いて俺も隣で鍛錬を行う。



「さーて終わったし寝るよ!」

「そうだな。」

「さっきニコ寝袋渡してたけど布団あるの?」

「ない。今日は我慢する。」

そう言うといそいそとアランが布団を取り出して寝始めるなぜか枕を二個並べてある。


「ニコ?一緒に寝てもいいよ?」

「・・・恐いからいい。」

「何もしないって!」

「じゃあ失礼する。」

そう言って布団に入る。

ホテルの布団よりもふかふかでとても気持ちがいいし、枕も乗せた頭に合わせて丁度いい形へと変わり実に寝やすい。



「これ中々の値段だったけどいいでしょ?王都で買ったんだよ?」

「なら決めた。明日はこれを買う。案内してくれ。」

「はいはい!今日一日あたしのわがままに付き合せたから明日はお姉さんが色々買ってあげる!」

「なら遠慮無く色々買って貰おう。おやすみ。」

「素直でよろしい!おやすみなさい!」

アランと挨拶を交わして眠る。

今日は色々と疲れた上にとても心地良く、気持ち良く意識を手放す。

面白いと思ったり続きが気になると思った方はブックマークや評価を頂けると嬉しいです。

もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。



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