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第三十六話 これが友達らしい

授業を受ける場所は昨日と同じ場所なのでスムーズに授業が始まる。

今日はマットとシャルルだけじゃなくてみんなが代わる代わるに俺のノートを見て書き写す。

おそらくバルテ先生からの視点だと最後列の壁際に人だかりが出来ていて異様な光景になっている事だろう。




授業が終わり、ノートをマットに預けて調理室へと向かう。

朝に多めに作っていたスープを元にパスタソースを作る。

これなら十分程で出来上がるはずだ。

麺が茹で上がるまでに大急ぎでソースを作る。


「早く作りすぎたか・・・」

エミールとロジェが来ない、だがすぐに持って行かないと麺が伸びてしまうので茹で上がった麺とソースを持って食堂へ向かう。

食堂ではみんなが俺のノートを机の中心に置いて書き写していた。


「出来たぞ。」

俺のノートを閉じて鍋敷きにしてソースの入ったフライパンを置いて、その隣に麺が入った鍋を置く。


「ニコ!あたし達のバイブルに何してんのよ!?」

「俺のノートだ。どう使おうが俺の勝手だろ。」

驚くことに俺が鍋敷きに使ったノートをみんなはバイブルとして扱っているようだ。


「シャルル配膳だ!」

「わかった!」

マットとシャルルが大急ぎでノートをカバンに入れて配膳を始める。

「すまないね?まだ早いと思ってたんだ。」

「ほんまに申し訳ない。」

「気にするな。」

エミールとロジェが頭を下げるが、ただめんどくさくてサボったわけでもないので全く気にしていない。


「昨日ターニャが言ってたけど確かにニコのノートは読みやすいわね?」

「そうだな?しっかりと要点を抑えてバルテの好きな無駄話は綺麗に省いておる。」

「教科書は大体覚えたから要点を押さえてるだけだ。」

「さすがはニコだね。」

「そうだな。」

アランとフィルが諦観の笑みを浮かべて俺を見る。


「ニコ?教科書を覚えたって冗談よね?」

「魔法学はまだだがこっちの歴史と薬草学は大体覚えたぞ。」

「あんたの頭の中身どうなってんのよ・・・」

「コツがあるんだ。身体強化魔法でな?脳も強化すると記憶力が飛躍的に上がるんだ。」

なぜかみんなが俺の言葉に反応してすごい速度で一斉に振り向く。



「アラン?そんな事出来るか?」

「ハハハ。少なくともあたしは出来ない。」

「非常識だったか・・・嘘だ。みんな忘れろ。」

フィルの問いにアランが首を振って答える、全てを悟ったので遅いだろうが嘘だったと言っておく。


「・・・どうせ聞いてもアラン先生に出来ない事が出来るとは思わないから嘘でいいわ。」

「そうだね・・・アラン先生で出来ない事を出来るなんてニコ君は本当に何者だい?」

「山育ちの少々常識がわからない普通の子供だ。」

みんなはとても優しい目で微笑んで俺を見つめてくる・・・よくわからないがとてもいたたまれない雰囲気だ。


「配膳できました!」

「でかしたマットシャルル。じゃあ食べよう。」

パスタに食いついてとりあえず食事に逃げる。

ミートパスタは納得の出来で我ながら美味い。



「ふぅ!もうニコはなんでもいいわ!さっさと洗って書き写しましょ!」

「そうですね!」

ターニャが失礼な事をいいながら腕まくりをしてシモンヌと一緒に食器を洗いに食堂から出て行く。


フライパンがどかされた途端にみんなは俺のノートを開いて一心不乱に書き写し始める。

「このノートで勉強すれば次の試験は大波乱が起きそうね?」

「ふぇっふぇっふぇっ!そうだの?剣の実技でもマットシャルルニコは筋がよかったとアイリーンが褒めてたしな?」

笑顔のアランとフィルがみんなを見て満足そうに頷きながら話している。


「本当ですか!?」

「僕なんかが筋がいい?」

「アイリーンがの?構えも動きも無茶苦茶な後列の中で唯一綺麗に素振りをしていた三人がいたと言っていたぞ?」

「俺ワーストスリーでよかった!ニコと友達になれたしな?」

「そうですね!僕もニコ君と友達になれてよかったです!」

「そんな感謝することでも無いだろう・・・にしても友達か・・・」

フィルが自慢げに言ってマットとシャルルが俺の手を握りながら今にも泣き出しそうな顔で頭を下げてくる。

友達と言う言葉に思わず表情が綻んでしまっているのが自分でもわかる。

エミールとロジェが悔しそうな顔をしているがなぜなのだろうか?


「ニコ君?放課後に剣の練習に付き合ってもらえないかな?」

「おぉ!エミール名案じゃ!」

「放課後は図書室だ。休日も好きに過ごさせてもらう。」

二人が言って来るがばっさりと切り捨てる。

二人はとても残念そうに肩を落としているがそこまでの面倒を見る気はない。



「ん?何かあったの?」

「ターニャ時間が無いわ?」

「そうね!」

ターニャとシモンヌが洗い終わった食器を机の置きながら落ち込むエミールとロジェに気が付いて心配するが、俺のノートを書き写すことを優先したようだ。

すぐに座って自分のノートを開いて書き写し始める。



なんとか魔法学の授業までにみんな描き終えたようでマットがノートを返してくる。

そして魔法学の授業になると俺のノートを書き写したターニャ達六人のノートが鉄クラスの生徒間を行き交いみんなが必死に午前中のノートを書き写している。

そして最後列の立ち見は俺の周りに人だかりが出来ている。

「(・・・これからはこれが日常になるのか?)」

代わる代わるに人が俺のノートを覗き込んで来て大変鬱陶(うっとう)しい。



「マットとシャルルは見ないのか?」

「魔法陣がぐちゃぐちゃになって分からなくなるから後で借りるよ。」

「僕もそうしようと思ってます。」

教科書と俺のノートを交互に見ている二人に聞くと自信満々に胸を張って言い放つ二人。

「(このノートは全部のページを書き終えるまでもつのだろうか?)」

思わず何度もみんなに触られて使い始めて二日目には見えない程度に痛んだ自分のノートを眺めて考えてしまう。



授業が終わり運動場で剣の実技授業になる。

運動場の脇に立てかけられた剣を持って昨日と同じ場所に立つ。

「なんでお前らがいるんだ?」

俺の周りに立っているエミール達に問う。

「いやぁ・・・ハハハ校長が順番を変えれば?っと提案してくださってね?」

「エミールに聞いてね?この場所の子と場所を代わって貰ったのよ?」

「そうじゃの前に行けるけん二つ返事で代わってくれたわ!」

「私もみんなに置いて行かれる訳には・・・」

どうやら並び順は絶対という訳ではないようだ。


「にしてもフィルはなんでもかんでも押し付ける爺だな・・・」

思わず愚痴をこらしながらフォルナの声を頼りに素振りを始める。

フォルナの声がするたびに俺に視線が集まりみんなが俺の動きを真似する。


「ロジェ。力任せに振るんじゃない。アイリーン先生は何も言わなかったのか?」

「ワシの所まで来る前に終わったわ!」

「そうか。シモンヌ?フラフラしすぎだもっと腰を落として重心を低くしろ。」

「は、はい!」

「ニコ?あたし達には何もないの?」

「先生がよかったんだろうな?俺が言う事はない。」

「それはありがたい事ですね。」

「(これが腐れ縁というやつなのだろうか?)」

そんな事を思いつつ気付いたことがあればアドバイスをしながら素振りを続ける。




「はいはーいお待たせ!やっと最後の子の所まで来ましたよ!君は綺麗過ぎる!もう少し崩した方がいいかな?」

「はい!」

「君はいい身体してるんだから腕だけじゃなくて体の筋肉も使って振るともっとよくなるよ!」

アイリーンがやってきてターニャやロジェに順番にアドバイスをする。

さすがは現職の騎士だ。

俺なんかよりも比べ物にならないほどに的確なアドバイスだ。



シャルルとマットにアドバイスをして最後に俺のところに来る。

「・・・君の剣は実戦的だね・・・」

それだけを言って踵を返して前へと帰って行く。

「俺へのアドバイスは・・・」

「今日はここまでだ!各自休みの間に体を休めておけ!」

フォルナの言葉に終わった途端にその場にへたり込む。

昨日よりも激しい動きの連続でみんなヘロヘロで大の字で地面に寝転びそのまま動かない生徒が大半だ。




「さて。晩飯だな。」

「なんで普通に歩けるんですか・・・」

「ニコに言っても無駄だよ!一日馬車を押し続ける人間だぜ?」

俺が歩いて剣を戻しに行くとその場に大の字になったシャルルとマットが話している。

さっさと料理を食べて図書室に行きたいので無視して調理場へと向かう。



「少年!」

学校に入ろうとするとフォルナに呼び止められる。

「何でしょうか?」

「ふむ・・・」

俺を足の先から頭の先まで舐めるように見る。


「適度に引き締まった身体だな。」

「この子逸材ですよ!今のうちに騎士団で予約しましょう!?」

身体をベタベタと触られアイリーンが冗談じゃない事をフォルナに言っている。

「・・・謹んで遠慮します。では。」

「あ!待っ!」

無駄に接触して俺がルドルフだとばれるのはごめんなので足早に離れて調理場へと行く。




「フィル。さっきフォルナ先生達に騎士団にスカウトされそうになった。」

「なぬ!?あいつらも目が高いな。」

晩飯を食べながらフィルに言うと嬉しそうに顎に手をやって笑っている。

「違う。そうじゃないだろう?」

「わかったわかった!任せとけぃ!」

フィルが両手で制しながら言うので大丈夫だろう。



「ニコ君は騎士団入りを蹴るのか・・・」

「なんだ?」

「僕ら貴族家の次男以下は相続権がないので騎士団は憧れの、最高の就職先なんだよ。」

「じゃあ尚更俺が貴族の貴重な就職先は一席だろうと潰せないな。」

「ハハハ!ものは言いようだね!」

エミールがお手上げとでも言うかのように両手を上げて笑いながら言う。



みんなで和気藹々と料理を食べ終え俺はマット達と図書室へ行く。

俺は教科書を熟読し、マット達は俺の魔法学のノートを書き写して教科書を見ながらみんなで理解を深め合う。

放課後は剣の練習と言っていたターニャとエミールも今日は疲れたらしくみんなと一緒に勉強をしている。



みんなと一緒に適当な時間で切り上げて寮に戻る。

「なぁニコ?明日はアラン先生と一緒に王都だろ?」

「その予定だな?」

「何する予定なんだ?」

「色々と買物をする予定だがそれ以外は未定だな。あ、王都の豪華な風呂に入りたいな。」

「アラン先生と!?」

「馬鹿か?なわけ無いだろ。」

マットと馬鹿話をして眠りにつく。


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