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第三十四話 放課後の決闘?

午後からの魔法学が始まる。

先生は午前中と同じくバルテ先生だ。

「(座学はあの先生が全科目なのだろうか?)」

魔法の基礎授業なのでそんな事を考えてしまうほどに退屈だ。

一応マット達が書き写すだろうと思いノートをとっているがノートをとる必要が見当たらないくらい初歩の初歩だ。


マットとシャルルは横から俺のノートを覗きこんでは自分のノートに書き込んでいる。

マットとシャルルは両手にノートとペンを持ってグニャグニャの魔法陣を描いている。

「(その魔法陣じゃ魔法は発動しないだろうな・・・)」

思わずにやけながら二人が一生懸命描いた魔法陣を眺める。




そうやって暇を潰していると終了の鐘がなりバルテ先生が教室から出て行く。

「ニコお前魔法陣描くの上手すぎだろ!」

「うんうん!どうやったらこんなに綺麗に丸を描けるんですか?」

「知らん。運動場に行くぞ。」

マットとシャルルが俺に言って来るが次の授業までの時間は少ない。

特に常に最後尾を歩かされる俺達はギリギリだ。

みんなに遅れないように早歩きで寮に戻って運動着に着替える。



「急げ!遅れているぞ!」

最後尾の俺が運動場に出ると奥の方から声が聞こえてくる。

「よし!最後が入ったな?自分の剣を持っていない物は助手が持って行くから手を挙げて待つように!!」

「手を挙げてればいいのか!親切だな!」

「そうだね!・・・ニコ君は持ってるの??」

女性の声でマットとシャルルが手を挙げて聞いてくる。


「心配ない。俺は自分の分を用・・・」

「はいはーい!自分の剣を持ってない人はいませんか?」

こんな時のために用意していると言おうとすると、見覚えのある白銀の鎧を着た茶髪の女性が刃引きした剣を載せた荷車を押して歩いてくる。

アイリーンだ・・・即座にマジックバッグに入れた手を出して挙手する。


助手がアイリーンという事は指導員はフォルナだろう。

二人の前で二人に選んでもらった武器など使えるわけが無い・・・この巡り合わせには騎士団長アルフォンスの悪意を感じざるを得ない。


「はいどうぞ!先輩終わりました!」

アイリーンが俺に剣を手渡すと、振り返って手を振りながら大声で言う。

「わかった!ではみんな運動場を全部使って広く離れろ!アイリーン頼んだぞ!」

「わかりました!君が最下位かな?奥に行くよ?順位順に付いて来てねぇ!」

アイリーンの誘導で入口とは反対の壁際に並ぶ。



「はい!これから一ヶ月間はこの場所で始まります!」

「各々剣を用意して今の場所に行くように!では始める!」

まずは柔軟体操のようだ。

俺達の位置からフォルナは見えない。

座学の時と同じように伝言のように前の生徒の動きを真似をしてみんなで柔軟体操をする。


「では正眼の構えから上段へ!この流れで素振りを三十本!」

フォルナの声が運動場に響き渡る。

最前列との時差が酷すぎて俺達最後尾の柔軟体操は終わっていない。



柔軟体操を終えて前の生徒が素振りを始める。

伝言が何度も何度も続いたせいで前の生徒はフォルナの指示からは程遠い構えで素振りをしていた。

俺は前の生徒を無視してフォルナの言葉通りに素振りをする。

「ニコ?前の人と動きが違うぞ?」

「そうですよ前の人を真似しないと!」

「正眼の構えから上段に構えて素振りだろ?こうだ。」

マットとシャルルが顔を見合わせて頷いて俺の真似をする。


「シャルル。剣の握り方が違うぞ。アランに特訓してもらってたんじゃないのか?」

「え・・・何も言われなかった」

「マットはクワじゃないんだ振り下ろすな。」

「え?あ・・・癖で・・・」

二人にアドバイスをするがアランは何を特訓していたのだろうか?

不思議になるほどに二人は基本が全く出来ていない。



その後もフォルナの指示通りに前の生徒とは全く違う素振りをし続ける。

「はい君!素振りが違うよ?今はねこうやって・・・こう!だからね?あと肘をもっと使って柔らかく振ろうね!」

「ありがとうございます!」

前の列でアイリーンが間違いを正したりアドバイスをして生徒がお辞儀をしている。

おそらく最前列から順番に見て行っているのだろう。



「今日はここまでだ!」

一人また一人と剣を振れなくなってその場に座り込み半分以上が座り込みフォルナが見えた頃に声が聞こえる。

アイリーンが俺達の所に来る前に実技授業は終わる。

順位が低いと剣の振り方もまともに教えてもらえないようだ。



「えーリュカ!ジョスマン!シモン!シャルル!マット!ニコ!以上六名は演習場へ行くからその場で待て!」

剣の返却をしているとフォルナが言うが嫌な予感しかしない。

学校に入って行く生徒達を見送りながら待つ。


「あ!あの!」

「ん?俺か?」

昼にマットに俺のノートを返していた女性徒が話しかけてくる。

目的は魔法学のノートだろうマジックバッグからノートを取り出して渡す。

「ニコ君ありがとうございます!」

「あぁ、俺が見当たらなかったらマットかシャルルに渡してくれてもいいから。」

「はい!」

女性徒が大事そうに俺のノートを抱えて学校の中へと走って行く。



運動場にいる人間は八人だけになりフォルナとアイリーンを先頭に演習場へ向かう。

「(こいつらが勝手に伝統を作り出したやつらか・・・確か試験後の立食パーティの時にエドワール達の机で一緒に食べていたな。)」

俺達をニヤニヤと見ながら歩く三人を見て思う。

それにしてもイラッとするやつらだ。



演習場の中にはフィルとアランが立っていて舞台の前に椅子が並べられている。

「生徒六名連れて参りました!」

入口でフォルナが敬礼をしながらフィルに向かって言う。

「御苦労!お前らは上がっていいぞ!生徒はこちらへ来て椅子に座りなさい!」

「「はっ!失礼します!」」

二人は敬礼をして演習場から出て行き、俺達はフィルとアランが待つ舞台へと行く。

相変わらず三人は俺達を見下すようにニヤニヤと見てきて、マットとシャルルは緊張した面持ちだ。

舞台の前に並べられた椅子に座る。



「勝負はこの刃引きした剣で行うよ!一人づつ戦って二勝した方が勝利だから頑張りなさい!」

「ではさっさと済ませよう、一人目上がりなさい!」

アランとフィルがそう言って舞台から降りてシャルルがアランから剣を受け取り舞台に上がる。

三人は一瞬相談して金髪デブが舞台に上がる。



両者が向かい合って剣を構える。

「(シャルル剣が震えてるが大丈夫か?)」

「はじめっ!」

心配に思っているとフィルが手を挙げて号令をかける。



「精霊よ!我に力を!」

シャルルが詠唱省略して魔法を放つ。

今まで気付かなかったがシャルルはいつの間にか手袋をしている。

手の平に魔法陣が描かれているのでそのおかげで詠唱省略を出来たのだろう。

そのまま対戦相手のデブが場外へと吹き飛ばされる。



「それまで!勝者シャルル!」

「はぁ!?なんだよ今の!!」

フィルが判定すると即座に金髪ロン毛が立ち上がって抗議する。

「ん?魔法を使ってルールに則って勝利したけど?」

「なんだよそれ!ずるいだろ!」

「あん?順位が総合点なんだから決闘も剣だろうが魔法だろうが勝った方が総合的に優れてるってことなんだよっ!」

「っぐ・・・」

アランに凄まれ気圧された金髪ロン毛は何も言えずに唇を噛みながら椅子に座りなおす。

耳まで真っ赤になってアランを睨み続けている。



「次の者舞台へ!」

「ニコ?俺で二勝してこの問題は解決だぜ!」

フィルの言葉にマットが立ち上がって笑顔で言う。

「頑張って来い。」

マットも手袋をしているので魔法を使うのだろう。

マットとガタイのいい丸坊主が相対して剣を構える。



「はじめっ!」

「うぉぉぉぉぉ!」

フィルの号令と共に丸坊主が上段に剣を構えてマットに駆け寄る。

詠唱をさせる暇を与えないつもりだろう。

「(魔法師相手なら有効な手段だな。魔法師相手ならな・・・)」

あのアランが考えた戦法だ、そんな同じ戦法を使うわけがない。


マットは地面を蹴り出して普段のマットでは信じられない速度で一瞬で間合いを詰め丸坊主の鳩尾に拳をめり込ませる。

一瞬で目の前に現れたマットに驚いた丸坊主は何も反応することが出来ずにその場に崩れ落ちる。

「(多分戦闘が始まる前に身体能力補助か強化魔法を使ってたんだろうな。)」



「それまで!勝者マット!」

フィルの声が演習場に響く。

マットがこちらに向かって満面の笑みで手を振っている。

手袋の手の平には魔法陣が描かれているので恐らく間違えていないだろう。

足元ではデブが丸坊主を介抱している。



「こ、こんな結果納得出来るか!」

金髪ロンゲが目を血ばらせて抗議する。

「そうは言ってもねぇ・・・?」

「最初に決めたルール通りに決闘は行われたもんなぁ?」

アランとフィルが顔を見合わせて話している。


「おい!串団子も勝負しろ!」

「・・・面倒臭い。俺は伝統に則って食堂の飯は食わない。それでいいんだろ?」

「ふざけるなぁっ!」

なぜかリュカは怒って腰の剣を抜いて切りかかってくる。

「(俺はこいつの言い分を全て受け入れたのになぜだ?)」

俺は不思議に思いながらも椅子に座ったままリュカの剣を摘んで止める。



「ぷっ!くくくっ・・・」

後ろでアランが堪えきれなかったのであろう笑い声が聞こえる。

「リュカよ・・・今のは戦闘行為だな?」

「いや、戦闘とは呼ぶには危険が少なすぎる。」

後ろのフィルが低く通る声で言うので俺はそう言って摘んだ剣を横に放り投げる。


「じゃあ俺は行ってもいいか?」

立ち尽くすリュカは無視して振り返ってフィルに言う。

「ふむ・・・ニコに免じて今のは見なかった事にする。」

「じゃあ俺は失礼する。」

フィルが一考して言うので俺は演習場の出口に向かう。


「ニコ待って!」

「ぼ、僕も行くよ!」

「じゃあニコ!晩御飯よろしくね?」

「あぁ。」

マットとシャルルが走って来て、アランがすれ違いざまに行って来るので返事をして寮へと歩いて行く。

「(さていらない時間を食ったので晩飯を急いで作らないと。)」

鼻息の荒いマットとシャルルと一緒に演習場から出て行く。

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