第三十三話 初めての授業
マットの話を聞いて思うが俺はあえて触れないようにする。
「二人共!今日が決闘の日よ!?私の弟子として不甲斐無い結果は許さないよ!」
アランが触れないようしたのに触れるどころが核心を突いてくる、昼飯抜きにして正解だった。
マットとシャルルを見ると自信に満ちた目でアランに頷き返している。
俺がいなかった一週間で信頼関係を築いたようだ。
ターニャ達は何が何かわからないようすでアランやフィルとマットやシャルルの顔を見ているが誰も何も言わない。
「さて、授業に行こうか?アラン食器を洗っといてくれ。」
「えー!?なんかあたしに当たりきつくない!?」
「先生!僕が洗います!」
「ぼ、僕も洗います!」
俺が言うとアランが嫌がり、マットとシャルルが自らアランの代わりにテキパキと食器を集めて調理室へと運んで行く。
「(にしてもアランを先生と呼び出したのか・・・)」
そんな事を考えながら満足そうに二人に手を振るアランを眺める。
「アラン・・・今日の動向次第では今後お前の飯は作らんぞ?」
「ふぇっふぇっふぇっ!上手く行くことを願うばかりだな?」
「監督責任でアランの身元引受人も同罪だな。」
フィルが衝撃を受けて真顔になって固まっているが勿論アランを止めなかったボケ爺も道連れに決まっている。
「アラン!?ワシらで治めるぞ?」
「そうねっ!」
二人が固く握手を交わして熱く誓っている。
「(にしてもこいつら、こんな所にいて仕事は大丈夫なのか?)」
だが二人は決闘の事でだろう何やらひそひそと相談をしているが大丈夫なのだろうか?
心配はしてないが気になってしまう。
「ねぇ?昨日の入学式でニコの姿が見えなかったけど何してたの?」
「そうじゃの?最近寮でも見てなかったのぅ。」
「色々とな。」
ターニャとロジェが聞いてくるので適当にはぐらかしておく。
「お待たせ!」
丁度いいタイミングでマットとシャルルが帰ってきた、渡りに船とはこういう事を言うのだろう。
「さぁ、教室に行くぞ。」
洗い終わった食器を受けとりマジックバッグに入れて立ち上がりマットとシャルルと教室へと歩き始めるとターニャ達も立ち上がって付いて来る。
七人で教室に入ると語学授業の時に俺達が座っていた教壇の前の最前列は金と書いた立て看板が置かれているので金クラスの席のようだ。
その後列に銀でその二列後ろに銅と立て看板を置いてあり鉄クラスの立て看板は見当たらない。
「鉄の看板がないぞ?」
「鉄クラスは銅クラス全員が座ってから順位順に座るんだよ?」
「そうか。なら俺達の席は分かりやすくていいな。」
そう言って教室最奥の机に座る。
教壇は見えるが板に何か文字を書かれても読み取るのは難しい距離だ。
分析をしていると続々と生徒が入ってきて順位確認をしながら騒がしく席に座って行く。
「ニコ?俺達の席あるのかな?」
心配そうにマットが言ってくる。
「ん?試験の時に座れたんだから問題ないだろ?」
「試験の時は二つの教室でやってたらしいぜ?」
「なんだと?」
ならば席は足りない可能性が高い。
とりあえず席から立ち上がってマットとシャルルと一緒に端に立って席に座って行く生徒を眺める。
「なぁ?いっぱいになったな?」
「そうだな。収容人数は三百人のようだな。」
「じゃあ五十人以上が立って授業かよ・・・」
俺は大急ぎでマジックバッグから木の板と縄を取り出す。
「何してんだ?」
「簡易机を作っている。」
木の板と縄を繋いで首にかけて板を腹の位置で固定させる。
辞書で見た画板を想像だけで作り上げる。
おそらく大体の構造は問題無く真似れている自身はある。
そのまま五十人以上が教室の奥の壁際に並んで立ったまま授業が始まる。
俺は画板に教科書とノートを広げてバルテ先生が書いた板の文字をひたすら書き写す。
声などはバルテ先生は金クラスだけしか見えてないのか?と思うほどの声量なので遠すぎて全く聞こえない。
俺以外の人間は本とペンを両手に持って授業を受けるが、黒板の文字が見えないので白紙のままだ。
机に座れた生徒達も中段くらいからの生徒はもう文字が読めないようで前の机のノートを見て書き写して、また後ろの生徒がそのノートを書き写している。
最後尾が書き写すのを待っていると日が暮れそうだ。
「(これがターニャの言ってた鉄クラスは授業にならないって事か。)」
納得しながら身体能力強化魔法で視力を強化してバルテ先生が次々に書いては消して、消しては書いていく文を書き写して行く。
鐘がなり昼食の時間になる。
バルテ先生が教室から出て行き、生徒達はみんなでノートを見せ合い出す。
「昼休みの間に俺達は書き写せるのかな・・・」
「マット。俺は昼食を作りに行くからこれを使え」
そう言ってマットに俺が黒板を書き写したノートを渡す。
マットは前の生徒のノートを書き写すのに夢中で後ろの俺が書いている事に気付いてなかったのだろうノートを開いて驚いている。
「シャルル!シャルル!?食堂に行くぞ!」
「えっ?まだノート書けてないよ?」
「へへへ!食堂の机で書き写すぞ?」
マットが俺のノートを自慢げに持上げながら言っている。
大丈夫そうなので俺は急いで調理室に向かう。
使用人達は昼休みの開始に合わせて料理をしていたのだろう料理を持った使用人達とすれ違う。
フィルとアランは抜きと言ったが、結局は七人分作らなければいけない急がないと昼休みはすぐに終わってしまう。
「(今度暇な時間があったら作り置きをしなければならないな。)」
そんな事を考えながら予想通り誰もいない調理室で料理を作り始める。
大急ぎで料理を作り終え食堂に行くがマット達の姿が見えない。
「ニコここ!ここだよ!」
俺が鍋を持ったままキョロキョロと食堂内を探していると、一つの机で人だかりが出来ていてその人だかりから俺を呼ぶ声が聞こえる。
少々億劫になりながらも人だかりへと向かって歩くと人だかりの中心には俺のノートが広げられており、生徒達が必死に書き写していた。
「すごいわね・・・銅クラスのあたしのよりもしっかりと書いてるじゃん?」
ターニャが机に片肘を突いて面白く無さそうに言う。
「なぜだ?銅クラスなら普通に見えるだろ?」
「バルテ先生はバッと書いてササッと消しちゃうから追いつかないのよ!」
「ふーん?とりあえず昼飯にしたいのだが?」
「はいはいはい!みんな図書室にでも言って書き写しなさい!」
ターニャが手を叩きながら言うとみんなが俺の本を持って食堂から出て行く。
「あれ・・・返して貰えるよな?」
「そりゃ返しにくるでしょ。次も借りないと駄目なんだから。」
ターニャが呆れたように言う。
「なぁ?ニコはなんであんな黒板に書いた豆粒が読めるんだ?」
「身体能力強化魔法で視力を強化してるからだ。」
マットが当然の事を配膳しながら聞いて来るので答える。
「え?ニコ君身体能力強化魔法使えるの?」
「使えるが?普通だろ?」
シャルルも当然の事を配膳しながら聞いてくる。
身体能力強化魔法が使えなければ人間如きのそれも子供の身体能力ではゴブリンにも対抗出来るか怪しいのだ。
「ニコ?それは非常識よ。身体能力強化魔法はこれから学ぶのよ?でも非常識だけど座学の時だけは使いなさい。」
「・・・わかった。」
ターニャが俺の考えを先読みして言って来る。
おそらく次からはターニャも俺のノートを書き写すつもりなのだろう。
エミール、ロジェ、シモンヌも同じ考えな様で俺を見つめながら黙って頷いている。
「にしてもだ。お前ら当然の様に俺の料理を食べるのはいいが、マットとシャルルばかりに働かせないで働け。」
「・・・そうだね。晩からの役割を決めておこうか?」
マットとシャルルが配膳をしているのを見て思わず言うとエミールが神妙な顔で言って三人は頷いている。
多分これで夜からは問題ないだろう。
マットとシャルルが配膳を済ませてくれたのでみんなで昼飯を食べる。
「にしてもニコが言うと本当にアラン先生とフィル校長来ないんだな?」
「今日のお前らの決闘次第じゃ、ずっと来ないぞ?」
「だ、だいじょうぶだよな?なっシャルル?」
「うん!ニコ君は何も心配しなくていいよ!」
「(あの二人だからな・・・どうだかな。)」
マットとシャルルは自信満々に言っているが、俺は不安でたまらない。
「マット君ありがとう!」
「え?あ!うん!はいニコ!ありがとうね!」
食事をしていると女生徒がマットに俺のノートを手渡しお礼を言っている。
マットは一瞬困った顔をしてノートを返すと笑顔だった女性徒の表情が固まる。
「え・・・串団子さんのノートだったの・・・」
女生徒が意味不明な事を言い残して食事を取りに厨房の方へと駆け出す。
「・・・団子とはなんだ?」
「串団子ってさ?丸い団子が三個刺さってるんだぜ・・・」
「すべて理解した。」
俺はみんなから串団子と呼ばれているらしい。
一緒に食事をしているターニャ達は俺と目を合わせようとしないのでみんな知っていたようだ。
「まぁ周りにどう言われようがかまわんがな。」
「そうじゃそうじゃ!わしやこぉ女子の中ではジャージャー君と呼ばれとるしのぅ」
ロジェの言葉にみんな苦笑いをしている。
女性とは中々的確にかつ厳しいネーミングをするようだ。
微妙な雰囲気のまま食事を終えみんなで教室へと向かう。
「魔法の授業とは何をするんだ?」
「精霊魔法の勉強よ?」
「なるほど。」
「(午前中はこの国の歴史に関することで面白かったが精霊魔法にはあまり興味が無いので退屈な立ち見の時間となりそうだな。)」
そんな事を考えながら教室へと向かう。
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