第三十二話 帰還そしてアランの揉め事
夕暮れになり馬車が止まる。
「では料理はお任せします!」
「わかった。」
フォルナに言われ馬車から降りて料理を始める。
「(今日は村で手に入れた食材で作ってみるか・・・)」
そう思ってパエリアを作る。
「はえー・・・手際いいですねぇ。」
「この肉はソードベアか?」
「ミノタウロスだ。牛のような味だからバターとチーズに合うだろうと思ってな。」
料理にも慣れてきたのでそういう気を使う余裕も出てきた。
スープはすこし濃い味付けのパエリアにあわせてあっさりとシンプルな野菜スープにしている。
「そんな考えで魔物肉を使い分ける人は宮廷料理人くらいですよ?ね?先輩?」
「そうだな、楽しみだ。」
呆れた様子の二人に凝視されながらパエリアを作る。
「出来たぞ。」
「では私が取り分けましょう!」
「頼む。」
俺が言うとアイリーンがすぐに手馴れた様子で取り分けて食事が始まる。
「美味い!夜営でこんな料理が食べれるとは有り難い!」
「そうですね!しかもミノタウロス肉ですよ!」
二人が大絶賛しながら料理を食べてくれている、嬉しいものだ。
食事を食べ終わり食器を洗う。
「・・・水魔法まで使えるのか。」
少し離れた場所で食器を洗っていたのだが、フォルナが様子を見に来たのだろう。
俺が作り出した水玉を見て、すぐに振り返り呟きながら焚き火へと戻って行く。
「(不味いか?いや今はルドルフなので問題ないはずだ・・・)」
食器を洗う手は止めずに自分に言い聞かせる。
食器を洗い終わり焚き火を囲んで筋トレをしている二人に声をかけて馬車に乗り込んで鍛錬をする。
念のため扉に施錠をかけて眠る。
朝日に照らされ目覚めて、昨日の野菜スープの残りを温めていると鎧姿の二人がテントから出て来る。
二人に変わった様子は見られないので施錠は杞憂だったようだ。
マジックバッグから三人分のパンを取り出し朝食を食べて馬車に乗り込む。
馬車に乗り込む際にフィオナが扉を念入りに調べながら乗り込んでいる。
「(夜来て開かなかったんだな・・・施錠しておいてよかった)」
気付かずに寝ていたようだがフォルナは何かしらの用事で馬車を開けようとしたようだ。
「どうした?何かあったのか?」
「いえ!・・・アイリーン出発だ!」
俺が言うとフォルナは慌てて馬車に乗り込み取り繕うようにアイリーンに向かって声を張る。
「アルフォンス達に何を言われているかは知らんが諦めろ。」
「貴殿は何者なのだ?」
「謎の金級冒険者だ。」
「フフフ、自分で謎と仰るか。」
勉強しながら答える俺をフォルナが面白そうに眺めている。
「王都が見えましたよ!」
アイリーンに言われいそいそと馬車から出る準備をする。
フォルナはそんな俺を朝からずっと眺めている。
行きは景色を眺めて帰りは俺を眺める、眺めるのが好きな女である。
しばらくして門の目の前で馬車が止まる。
「ではルドルフ殿どうぞ!」
「あぁありがとう。」
フォルナが扉を開けてくれるので外に出る。
「では次の任務で会いましょう!」
「ルドルフ殿お疲れ様でした!」
「あぁ、またな。」
馬車の前に並んで敬礼をするフォルナとアイリーンに見送ってくられながら王都の門へ向かう。
急がないと日が暮れそうだ。
「(出る時にルドルフだったから入るのもルドルフの方がいいんだろうな。)」
意味があるのかはわからないが合わせておくに越した事はないだろう。
門兵にはルドルフのカードを提示して王都の中へ入る。
やはり王都の門付近は酔いそうになるほどに人が多い。
よく見ると門へ行く方向と中心に向かう方向へと人の流れがあるようだ。
学校へと進む中心への人の流れに入って進んで行く。
「(フフフ!俺も人間社会に大分馴染んだな。)」
そんな事を思ってほくそ笑みながら王都の中心に建つ城へと向かって行く。
学校は城の隣なので城を目指せば迷う事はないので便利だ。
無事学校に辿り着き、マスクを外して学校の中に入り校長室へ直行して扉をノックする。
「ニコだ。」
「入れ。」
フィルの許可を得たので扉を開けて中に入る。
「早かったな?依頼は終わったのか?まぁ座れ。」
「問題無い。」
フィルが持っていた書類を机の上に置いてソファに座り対面のソファに促してくるので、ソファに座りながら答える。
「ふぇっふぇっふぇっ!ならいい!今日は入学式だったから明日から普通の授業だ!これが制服と教科書だ頑張れよ?」
「わかった。」
そう言ってフィルが皮袋を机の上に置くので受け取ってマジックバッグに入れる。
「で?マットとシャルルはちゃんと食べれてるのか?」
「・・・アランが解決して食堂の飯を食べてる。」
一瞬フィルが目を伏せたので何かあったようだ。
めんどくさい予感しかしないのでこれ以上聞くのはやめておくべきだろう。
「俺は巻き込まれないだろうな?」
「大丈夫・・・だろうニコなら。」
「巻き込まれるんだな。」
「アランが下位三名は食堂を使えないなんて伝統を作った生徒に喧嘩を売ってな?育ちを見るための入学試験で差別をするのはおかしい!とマットとシャルルが決闘をする事になって今アランが二人を特訓中だ。」
「俺は説明を求めてないのだが?」
俺が言うとフィルがニヤリと笑っているので俺を巻き込む気満々なようだ。
「いや・・・アランもニコが帰ってくる前に決着をつけるつもりだったようだが、お前が早く帰って来すぎだ。」
「フォルナ達ともう少し遊んどけばよかったな・・・」
「明日の放課後に勝負を決めるようだぞ?」
「俺は何も聞いてない。」
楽しそうに笑いながら勝手に説明するフィルをほっといて、マジックバッグから料理を出して食べ始める。
「ニコ?ワシの分は?」
「あるわけないだろ。」
「ならここは校長室だ!帰れ!」
「はぁ・・・」
フィルが子供の様な事を言い出すので大きく溜息を吐いて昨日のパエリアの残りをフィルに出してやる。
「ほう?新しい料理だな?」
「子供か・・・?」
一瞬で機嫌を直してパエリアを食べるフィルを見て心の声が漏れる。
パエリアも二日連続は嫌だから出さなかっただけで食べたいなと思っていたのにこんな爺に食べられるとは非常に残念である。
食事を終えて図書室へと向かう。
学校が始まったからだろう、前回までは誰もいなかったのに今日は数人の制服を着た生徒が本を読んでいる。
「ここで勉強してから返しておくぞ?」
「わかりました!」
フィオナに声を掛けてから空いてる席に座って勉強を再開する。
人はたくさんいるが静かなのでとても勉強が捗る。
なんとか今日中に辞書の書き取りを完了する事が出来た。
辞書を元あった場所に戻して寮へと戻る。
寮に入ると一番に傷だらけでぐったりと死んだようにハンモックで眠るマットとシャルルが目に付いた。
「(アランの特訓のせいか?何をしているのやら・・・)」
出来る限り関わりたくないので二人を決して起こさないように鍛錬を終えて俺もハンモックに乗って寝袋に入る。
「(今のうちに抜け出して一週間ほど王都で遊ぶか?)」
関わるのだろうな・・・分かっているのでそんな事が頭をよぎる。
とはいえフィルにあっている時点でここで抜け出すとアランにばれるのでもうなるようになるしかないのだろう、諦めて自分に睡眠霧をかけて眠る。
朝目覚めて朝食を作りに調理室に行く。
朝日が昇る前なのでまだ使用人達はいないので一人でのびのびと料理をする。
マット、シャルル、フィルにアランと俺の五人分だ。
昼飯の分も合わせて十人前作る。
「おかえりぃ!」
調理が終わる頃に計ったようにアランが現れて抱きついて来る。
突然の出来事に周りの料理中の使用人の視線が集まるが俺は気にせずにアランを話して問う。
「おい、マットとシャルルの件を説明しろ。内容如何では俺の料理は食べさせない。」
「・・・ニコが任せたって言うからね?言い出したやつを見つけて締め上・・・お話した結果ね?ワースト三位の平民共に魔物肉を食べさせるのは国を預かる貴族の人間としては見過ごせないって言われたから・・・教育さえ受ければお前よりもずっと優秀だ!って・・・なっちゃったの。」
俺の言葉にアランはすぐに離れてもじもじとしながら説明をする。
「・・・それは最下位で平民の俺もか?」
「帰って来ちゃったからね。」
「任せるとはお前が料理を作れと言う意味だったんだが?」
「料理なんて作れないよ!」
アランが胸を張って言う。
心の底からこいつに料理を食べさせたくない。
だが・・・こいつのアドバイスに助けられたのも事実だ。
「・・・プラマイ零だ。食堂に持って行っとけ。」
「あたしも零?てか零って何?」
アランがそう言いながら鍋を持って調理場から出て行くので調理場を片付けて寮に帰って制服に着替えて食堂へ行く。
食堂へ行くとマットとシャルルが配膳を済ませて笑顔で机に座っていた。
アランとフィルが座っているのは予想通りなのでいい。
「おいお前らはなんでいるんだ?」
机に座っているエミール、ターニャ、ロジェ、シモンヌに尋ねる。
「校長がキャラバン仲間だからって誘ってくださったんだよ。お邪魔だったかな?」
エミールが言ってみんなが頷く。
「ん?見たところ大体九人前入っていたからそういう事じゃなかったのか?」
フィルは真面目に答えているので本当にそう思っているようだ。
「昼飯の分も一緒に作ったんだ。とりあえずフィルとアランの昼飯はなしだ。」
「えー!なんであたしまで!?」
「八つ当たりだ。」
アランが立ち上がって抗議するのが理不尽とわかっているがアランも昼飯抜きにする。
「じゃあみんな朝飯にしよう。」
「「「「頂きます!」」」」
みんなが一斉に手を合わせて食事が始まる。
「今日の授業予定はどうなってる?」
「午前中は座学で午後から演習場で魔法で次が剣だよ?」
隣のマットが答えてくれる。
決闘は今日の最後の剣の授業からの流れになりそうだ。
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