第三十話 事後調査もやる
「さてっ・・・と。」
日が完全に暮れたので辞書を閉じて鍛錬を行う。
鍛錬を行っていると誰かがノックする。
「誰だ?」
「フォルナです。」
「(今マスクを外している。急に入られなくてよかった。)」
急いで顔に認識阻害魔法をかける。
「鍵は開いてる。」
「失礼します・・・」
フォルナが部屋に部屋に入ってくる。
薄目を開けて見るとフォルナはとても薄着だ。
「なんだ?」
「・・・一緒に寝ても?」
「すまんがそういうのは興味が無い。自分の部屋に帰れ。」
「そうですか・・・」
「(アランの言ったとおりだな。にしても八歳の子供にする事だろうか?)」
今日の一件で俺は国に繋ぎ止める存在だと認識されたのだろう。
俺がバッサリと切り捨てるとフォルナは大人しく部屋から出て行く。
鍛錬を終え部屋の鍵を閉める。
少し不安なので魔法でも扉を施錠しておく。
「(これで扉を破壊しようとしても周りの壁が先に壊れるだろう。)」
安心してベッドで眠りにつく。
翌朝朝食を三人で食べて荷馬車で森へと向かっている。
「あの!ルドルフ殿。」
「なんだ?昨夜の事か?俺は忘れっぽいから気にするな。」
フォルナがわざわざ兜を外して俺に話しかけてくる。
神妙な面持ちなので恐らく昨日の一件の謝罪だろう。
「そうか・・・アイリーンが好みか・・・」
「騎士って大変なんだな。」
違った。謝罪以前に悪いと思ってさえないようだ。
思わずフォルナの呟きに反応してしまう。
そのままフォルナは遠くの景色を眺める。
馬車に揺られ、昨日と同じくらいの時間に森の入口に到着する。
「昨日のスープを温めなおして昼飯にするか?」
「食べられるのか!?昨日気になってたんだ!」
「そうですね!食べたいです!」
今日は二人が肯定的なので焚き火を起こして鍋を火にかける。
やり易くてありがたい限りだ。
「雷だけじゃなくて火魔法まで使えるのか・・・」
「あ!ルドルフさん弓を撃たせてください!」
「いいぞ?」
アイリーンに言われてマジックバッグから弓を取り出して渡す。
アイリーンが必死の形相で弓を引いているが弦は少ししか動いていないあれでは矢は放てないだろう。
「(中々がたいのいいブランでピクリともしなかったから細身のアイリーンで少しでも動くのはすごい事か。)」
鍋を混ぜながらアイリーンを眺めてそんな事を考える。
「不甲斐無いぞ!貸してみろ!」
「先輩めっちゃ硬いです!」
次はフォルナが弓を引くようだ。
フォルナも必死の形相で引く。
中程まで引けたが最終的に力尽きて弦が元の場所に戻る。
「ルドルフ殿!これは本当に昨日の弓か?昨日の弓は簡単そうに引いていたではないか!」
息を荒げたフォルナが弓を持って迫ってくる。
「貸せ。」
フォルナから弓を奪って矢を放つ。
矢は木を貫通して森の中へ消える。
「・・・確かに昨日の弓だ。」
「金級冒険者ってすごいんですね・・・」
フォルナとアイリーンが見て納得して焚き火の近くに座る。
百聞は一見に如かずとはよく言ったものだ。
スープが温まったので食器を取り出して二人に渡す。
「ではありがたく頂く。」
「いただきます!」
「あとこれもだ。」
スープを飲む二人にパンを渡して自分の分の昼飯を用意して食べる。
「パンが湿気てない・・・」
「スープも美味しいですね?」
二人は満足そうに昼飯を食べている。
「(今日はスムーズに事が進みそうだな。)」
そんな事を思いながらスープをすする。
昼食を食べ終わり森の中を進む。
「ゴブリンは無視すればいいんだな?」
「ああ、騎士が冒険者の仕事を取るわけには行かないからな。」
「ちなみにどこですか?」
フォルナの言葉に成程と納得して、アイリーンが持つ地図にゴブリンのいる場所を指で示すとアイリーンが地図に書き込みをする。
その後も森の中を歩く。
フォルナとアイリーンは剣の柄に手を置いて油断無く辺りを警戒しながら進んでいるが、俺は捜索魔法によって魔物がいないことを確認済みなので歩きやすいように整地を意識して進む、もちろん途中で弱い魔物の反応があればアイリーンに教える。
三時間ほど進むと森を抜ける。
「これで調査は終了か?」
「そうですね。」
「調査まで一日で完了ですか・・・」
「なら戻るぞ。」
「了解だ。」
「また森の中ですか。」
アイリーンが嫌がるが森を迂回するとなると日が暮れるので元来た道を進む。
これを考えて整地しながら進んだのだ。
帰りは道にもなってすいすい進む。
帰りは何事も無く二時間弱で荷馬車の元へ着いた。
昨日の捜索魔法で熊型の魔物は全部引き寄せられていたようで安心する。
「よし帰るぞ!」
「そうだな!アイリーン頼んだ!」
「はい!」
俺とフォルナは空の荷車に乗り込み、アイリーンが木に繋いだ馬の下へ行き荷車と繋ぎ始める。
「あとは王都に帰るだけだな?」
「そうだ。」
「簡単な依頼で助かった。」
「簡単だと?ハハッ!ルドルフ殿ならそうか・・・普通なら一個中隊を率いる任務なのだがな。」
「そうか。」
一個中隊とは約二百人程度の規模だったと記憶している。
中々の大事だったようだ。
「これだけ魔物がいないとなると食料が無くなって森から出て来るのも時間の問題だったろうな・・・」
フォルナがアイリーンが作った調査地図を見ながら呟いている。
どうやら熊がこの森を出て別の森か村を襲う直前だったようだ。
「ルドルフ殿フォルナさん準備完了です!出発しますよ!」
アイリーンの声で荷馬車が進み始める。
おもむろに荷台の上でフォルナが鎧を脱ぎ始める。
「すまんな・・・鎧は蒸れるのでな。」
そう言うが脱がなくてもいいと思われる上着まで脱ぎ始める。
「精霊よ・・・」
俺は魔法で風を起こしてフォルナの服に付いている水分を吹き飛ばす。
「・・・そんな事まで出来るのか。」
服が一瞬で乾きフォルナが驚いている。
「快適になったろ?せめて上着を着ろ。」
「・・・ルドルフ殿はガードが固いな。」
「ガードが固いのではなく女に興味が無いだけだ。」
「なら何に興味があるのだ?」
フォルナに言われて考え込む。
自分は何に興味があるのかさっぱりわからない。
言われて見ればクネやエドみたいに何かをやりたい訳でもないし、ハッピーみたいに料理が楽しくて仕方がない訳でもない。
さっぱりわからない。
「わからん。」
「では一緒にやりたい事を探そうか?」
「そうだな。」
「じゃあ村に戻ったら村を一緒に回らないか?」
「いいぞ。」
俺が言うとフォルナが小さくガッツポーズをする。
「(何がそんなに嬉しいのだろうか?俺にはさっぱりだ。)」
よくわからないがフォルナが黙って静かになったので、村まで静かにのんびりと進む。
「アイリーン!後は任せたぞ!ルドルフ殿!宿の前で待つ!」
村の門を越えると急いだ様子のフォルナが荷台から降りて矢継ぎ早に言って走って行く。
アイリーンは兜を被っていてもわかるほどに笑って走り去るフォルナを見ている。
「アイリーン?あれは何だ?」
「先輩にもとうとう春が来たんですねぇ。」
アイリーンがしみじみと言うが俺にはさっぱり何の事かわからない。
そのまま荷馬車は村の中を進んで行き宿の前で下ろされる。
「ま、待たせたか?」
普段の鎧姿では絶対に見えない鍛え抜かれた無駄な肉が付いてない綺麗な腕と足を露出させたワンピース姿のフォルナで宿から出て来る。
なぜか顔を赤くして恥かしそうだ。
「今アイリーンに下ろされた所だ。」
「ならよかった、じゃあ探しに行こう!」
「あぁ。どこに行くんだ?」
「と、とりあえずこういう時はどこだ?武器屋に行くのか?」
フォルナが普段の毅然とした態度からは考えられないほどにしどろもどろになっている。
「・・・とりあえず、飯を食べて落ち着くか。」
「あ、あぁわかった。」
俺は先日市場で小耳に挟んでいた料理屋へとギクシャクと動くフォルナと一緒に歩いて行く。
料理屋はとても落ち着いた雰囲気の店だった。
だが唯一つ落ち着かないものがある。
「アイリーン。お前も座れ。」
「はっ?アイリーン?」
フォルナと店の入口を見るとアイリーンが俺達を覗いていた。
すぐに俺達の下に駆け寄ってくる。
アイリーンも急いで着替えたのだろう鎧姿ではなくスタイリッシュな服装になっている。
「すみませーん!先輩の恋の行方が気になっちゃって。」
そう言ってフォルナの隣に座る。
小声で「私に怒って流れでルドルフ殿の隣に座るチャンスですよ!」と言っている。
「おい。俺はそんな気はない。これ以上続けるならアルフォンスに言ってお前らの同行を禁止させるぞ。」
冗談では無いので釘を刺す。
アルフォンスの名前は効果的だったようで二人は大人しくなって一様に目を泳がせている。
「店員さん。このお任せコースを三人前。」
「かしこまりました。」
そう言って店員が店の奥に消えて行く。
その店のお任せコースは順番に料理が出て来るもので大人しくなった二人と一緒に食事を楽しむ。
だが予想外に食事に時間がかかり食事を終えて店を出る頃には辺りは真っ暗になっていた。
「今日は帰るか。」
「残念だがそうだな・・・」
「美味しかったです!」
三人で宿に戻って鍛錬をしてベッドに入る。
勿論鍵と施錠はしてある。
安心して学校に戻ればしばらくは使えないであろうベッドを堪能する。
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