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第二十八話 ルドルフは馬車に御満悦

アランとフィルと一緒に王都の門を出ると、アルフォンスと二人の騎士が馬車の前で待っていた。

騎士は鎧を着てフルフェイスの兜を被っているので顔が見えないが胸の所が曲線を描いているので、アランの言ったとおり女騎士のようだ。


「待たせたな!」

「いえ!我々も今着いたところです!」

フィルが手を振って言うと、アルフォンスと二人の騎士は姿勢を正して左胸に拳を当ててお辞儀をする。

確か敬礼という挨拶の一種だったはずだ。


「その二人が御目付け役か?」

「ハッ!フォルナ・ロヴネルです!フォルナとお呼び下さい。」

「御者を勤めさせて頂きますアイリーン・パルムです!同じくアイリーンでお願いします。」

フィルの問いに敬礼をしながらはきはきと答える女騎士達。

家名があるという事は二人共貴族の出なのだろうが、騎士団は家の格よりも己の力量が重要なので、家名はほぼ使われないそうだ。



「いい?絶対に手を出されるんじゃないわよ?寝る時は絶対に離れて寝なさい?」

アランが二人を見て耳打ちしてくるので黙って頷く。

「こいつが金級冒険者ルドルフだ!頼んだぞ?」

「「ハッ!宜しくお願いします!」」

「こちらこそ宜しく頼む。」

フィルが俺の背中を叩きながら言うと二人は先程と同じように敬礼しながら言う。

騎士なので堅苦しい挨拶の訓練などもしているのだろう。

二人は息ピッタリで同時に頭を下げる。




「じゃあルドルフは馬車に乗っていろ。雑事は全部あいつらがしてくれるはずだ。」

「わかった。」

俺が馬車に乗り込むとフィルとアランはアルフォンスと一緒に王都へと帰って行き、フォルナとアイリーンが出発の準備をし始める。

馬車は箱型の客車で椅子にはクッションも付いてあり簡易ではあるが机も付いていて、キャラバンの馬車とは雲泥の差だ。

俺は辞書を取り出して単語の勉強を始める。



すぐに片方の女騎士が馬車に乗り込んで来て兜を脱ぐ、茶髪のセミロングで少し釣り目な女性だ。

アイリーンは御者をすると言っていたのでフォルナだろう。

「改めてフォルナだ!約二週間の予定だが宜しく頼む!」

フォルナであっていたようだ。


「二週間?森までは二日なのだろう?」

「森での魔熊狩りに最低で一週間を予定しているのだ。」

「なるほど。そういう事か。」

「食事は各自でいいんだったな?」

「食べたいならついでに作るぞ?」

「問題無い。我々は騎士だから食事にも気を使うのでな!」

「騎士とは大変だな。」

必要な事意外は話す気は無いようでもう窓の外を眺めて返事をする気はないようだ。



「(にしても、もう出発していたのか。)」

全然揺れないので気付かなかった。

本当にキャラバンの馬車とは雲泥の差だ。

これならインクが倒れたりもしなさそうなので、ノートと筆記用具を取り出して辞書の単語をひたすら書き出して行く。

フォルナは俺に興味が無いようでずっと窓の外を見続けているので場車内はとても静かで勉強に集中できて学校よりもいい環境だ。




「夜営地点に到着しました!」

夕暮れになりアイリーンが言う。

馬車がいい物だからかアイリーンの腕がいいのか止まった事にも気付かなかった。

「じゃあ俺は料理をさせていただく。」

「森が近い。匂いはあまり出さないで頂きたい。」

「そこは心配無用だ。」

魔法で匂いを消せばいいだけの話だ。

魔の森の真ん中でいつも肉を焼いて食べていたので問題ないだろう。



馬車から出て焚き火をして料理を始める。

フォルナ達は少し離れた所で焚き火をして干し肉のような物を食べている。

「ルドルフ殿そのお肉は何肉ですか?」

「リザードマンだ。」

食材を切っているとアイリーンが声をかけてくるので答える。

アイリーンはそのまま無言で自分の焚き火へと戻って行く。

適当にリザードマン肉を焼いてパンで挟んで食べる。


「(ネルグで食べたバーガーを模したがタレが無いのでいまいちだな・・・)」

そういう物も見てみたいのだが、如何せん次々と予定が入って碌に観光出来ていないのが悔やまれる。

長い間風呂にも入れていない、ジャック達の言っていた王都の大浴場を楽しみにしているのに歯がゆい事だ。


「俺はどこで寝ればいい?」

「我々はテントで寝るので貴殿は馬車で寝てもらえるか?」

「わかった。」

料理を食べ終わり鎧のメンテナンスをしているフォルナ達に聞くとテントで寝るそうで俺はすぐに馬車に入って寝袋に入って眠る。

椅子はふかふかなのでとても寝心地がいい上になんといっても人の気配が無いのでぐっすりと眠れそうだ。




翌朝窓から差し込む朝日で目が覚める。

予想通りにぐっすりと眠ることが出来た。

外に出るとフォルナとアイリーンは昨日と同じように干し肉のような物と水を食べているので、俺はそれを見ながらマジックバッグから昨日作ったリザードマンバーガーとスープを取り出して朝食を食べて勉強を始める。


程なくしてフォルナが乗り込んできて昨日と同じように窓の枠に肘を着いて外を眺める。

「ルドルフ殿?」

「なんだ?」

「貴殿は毎食リザードマンを食べているのか?」

「最近はミノタウロスとオーガも食べている。お前らが食べている干し肉は魔物肉か?」

「・・・若そうなのに金級冒険者とはすごいのだな・・・あの干し肉はコボルト肉だ。」

「ぶっ!?」

思わず吹き出してしまう。



「(騎士とはコボルト肉で我慢しなければならないのか・・・)」

「昨日断わっていて恥かしい話だが、次の夜営からは料理を頂いてもいいか?」

「あぁ騎士だからコボルト肉を食べてる訳じゃないのか。構わんぞ。」

「恩に着る。勉強分からないところは無いのか?あったら教えてやるぞ?」

「問題ない。」

フォルナが外を見ながら言ってくる。

思ったよりも話しやすい相手なのかもしれない。



「なぁ?同音異語と言うのか?同じ単語で違う意味の言葉はどうやって書き分ければいいんだ?」

「ん?金級なのに子供のような勉強をしているのだな?」

フォルナは対面で文字を書いているのにそれすら見ていなかったようで、興味深そうに俺が書きこむノートに視線を落とす。


「今まで文字の必要のない生活をしていたものでな。」

「はは!それはどんな生活だい?前後で判断するんだよ。ボールを投げると書いてあれば、料理に使うボールは投げないだろ?なら球のボールの事だ。」

フォルナの説明は存外分かりやすかった。

俺が意味がわからずに躓いていた部分を簡単に説明してくれたのでとても助かった。


「なるほど。単語だけを覚えても駄目なのか・・・」

「単語を知らなきゃ文は作れないからいいんじゃないか?」

「わかった。ありがとう。」

お礼を言うとフォルナは一瞬だけ頬を緩めるが、すぐに真顔になり窓の外に視線を戻す。




勉強を続けていると馬車が止まる。

慣れたので昨日は馬車の揺れの少なさに感動して気付けなかった振動がわかるようになった。

「村に到着しました!」

「ルドルフ殿今日は宿でゆっくりして明日から森だ!」

アイリーンの声に反応してフォルナが言う。

「観光はしてもいいか?」

「問題ありません。宿は名前を言えば部屋に案内してもらえるようにしておきます。」

「すまんが頼む。」

予想以上に自由にさせてもらえるようでありがたい限りだ。

馬車を出て村を観光する。

と言ってもリオルゲンの村とさして変わらないので、市場に赴いて気になった食材を買う。



「なぁ?この村には風呂はあるか?」

「風呂?宿屋にあるよ?」

「そうか。ありがとう。」

野菜を買ったついでに露天の女性に聞くと目当ての風呂は宿らしいので、宿へと帰る。

宿のスイングドアを通ると店員が挨拶をしてくる。


「ルドルフだ。」

「ルドルフ様ですね?どうぞ案内致します!」

笑顔の店員に案内され部屋に行く。

「この宿に風呂があると聞いたのだが?」

「公衆浴場は隣の建物ですよ?千ゴールドです!」

「わかったありがとう。」

「では失礼します!」

店員がお辞儀をして部屋から出て行く。

俺もすぐに宿を出て隣の公衆浴場で風呂を堪能する。



「(これを着けていると蒸れるな・・・だがアランが俺の顔を誰にも知られては駄目だと言っていたしな・・・)」

脱衣所でマスクを脱ぐべきか悩む。

数分悩んで風呂の間だけ自分の顔だけに認識阻害魔法をかければいいんだと気付いて自分に魔法をかけて風呂を堪能する。



久々の風呂は気持ちがよかった。

体から湯気を上げながら宿の食堂へ行くと同じく風呂上りなのだろう髪を濡らしたフォルナとアイリーンが座っていた。

「ルドルフ殿一緒に食べるか?」

俺に気付いたフォルナが声をかけてくるので無言で頷いてフォルナの隣に座る。


目の前にはアイリーンが座っている。

兜を脱いだアイリーンは茶髪で顔立ちの整った女性だった。

「ルドルフ殿も食堂で食べるのだな?」

「村の中で自炊など非常識だろう?それを言うならお前らも干し肉を食べていないのだな?」

「ハッハッハッ!その通りだ!こういう時くらい温かいものを食べたくてな!」

フォルナが俺の言葉に快活に笑いアイリーンは同意の意味を込めて笑顔で頷いている。


「店員!一人前追加で頼む!」

「かしこまりました!」

フォルナが手を挙げて注文をしてくれる。



すぐに料理が運ばれて来て三人で食事をする。

「ルドルフ殿?明日から森での作戦はありますか?」

「魔熊の情報を聞かせてもらえるか?」

「森までは村の入口から徒歩3時間ほどでワイルドベアが十体以上と二体のソードベアの目撃情報もある。」

ワイルドベアはヒグマとそっくりの魔物でソードベアはワイルドベアの毛が剣のように鋭く正に全身凶器という言葉が似合う魔物だ。


「森の広さは?」

「抜けるのに真っ直ぐ突っ切ったとして徒歩で半日だな。」

「そこまで広くはないのだな。」

森の中を普通の人間が半日という事がおそらく王都よりも小さい森だろう。


「荷物運びは頼めるのか?」

「もちろんだ!そのために同行しているのだからな?」

「ならば俺の予想通りなら午前中に終わらせるぞ。」

俺の言葉にフォルナとアイリーンは顔を見合わせて笑い始める。

おそらく非常識な事を言ってしまったのだろう。

だがルドルフの時は好きにすればいいとフィルとアランに言われているので自重するつもりはないので何日もかける気は無い。



「大量の熊を運べるように準備しておいてくれ。」

「・・・団長からの命令が無ければ一笑して無視するのだがな。」

「では頼んだ。」

フォルナが不満そうな顔をするが俺は気にせず言って食事を再開する。



「じゃあ明日は頼んだ。」

食べ終わったので無言になったフォルナとアイリーンに言って席を立つ。

ジャック達の真似をして銀貨を二枚机の上に置いて部屋へと戻る。

「(久々の綺麗な布団だ!)」

リオルゲン以来の布団に興奮してしまう。

はやる気持ちを抑えて、鍛錬をして布団に入る。

布団はふかふかでいい匂いだ。

すぐに意識を夢の中へと手放す。

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もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。


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