第二十六話 エスガルド王国トップ会談
「さぁ行こうぜ!」
「ニコ君ご馳走様でした。」
「すまんな。」
マットとシャルルが洗った食器を受け取り食堂を出る。
アランとフィルは昼食を食べ終わるとまた言い合いを始め、一触即発の雰囲気のまま食堂から出て行った。
後片付けが嫌で出て行ったような気がしてならないのだが、マットとシャルルはそんな訳ないと言うので、二人を信じる事にする。
教室に入るとみんな席に座り俺達が最後だったようだ。
時計の短針が1の文字を指すと同時に鐘がなりバルテ先生が教室へ入ってきて授業が始まる。
午後からは単語を覚えるようだ。
「では今日はここまでです!」
時計の短針が4の文字を指すと同時に鐘がなりバルテ先生が言うとみんなが一斉に勉強道具をしまい始める。
「では明日も八時開始ですからね!」
そう言ってバルテ先生は教室から出て行く。
「さて・・・俺はここでお別れだ。」
みんなは寮に戻って今日の授業のおさらいをするらしいが、俺は晩飯を作らないと駄目だ。
みんなと別れて調理室へ行く。
「始めるか・・・」
アランからの要望でオーガステーキだ五人分のオーガ肉を切り分けてひたすらハンマーで叩く。
「ズダンッ!ズダンッ!・・・」
まだ早い時間だからか調理室にいるのは俺だけなので遠慮無く肉を本気で叩く。
時折調理室の前を歩いていた人間が肉を叩く音に驚いたのだろう、覗き込んで来るがさっさと下拵えを終えたいので気にせず肉を叩く。
音を気にして時間をかけるとステーキの準備で日が暮れてしまう。
「(そうでなくてもフィルとアランの様子を見る限りすぐに終わる話じゃなさそうだ。)」
急いで料理を作る。
「ニコ手伝うことあるか?」
「ぼ、僕も来ました!」
使用人達が調理室にやってくる前に肉を叩き終え、スープの具材を切っていると使用人達に紛れてマットとシャルルがやってくる。
「いいタイミングだ。スープを頼む分かってるな?」
「沸騰させるな。だろ?」
マットがニヤリと笑って鍋をかき混ぜシャルルが火の調節を行う。
昨日教えたばかりなのに要領のいい二人でありがたい限りだ。
俺は二人の隣でステーキを焼く。
「ニコ君は料理上手ですねぇ?家でも作っていたの?」
「いや。人里に下りてから学んだ。」
「人里?」
シャルルが首を傾げている。
「シャルル?ニコは今まで山奥で---」
マットがシャルルに説明をしてくれている。
手間が省けて何よりだ。
「同じ歳なのにニコ君はすごいねぇ!」
なぜかマットと話し終わったシャルルが目を輝かして俺を見る。
「普通だ。」
「そろそろだな?パン買ってくるよ!」
「金はあるのか?」
「昨日のお釣りで十分だよ!」
そう言ってマットが食堂へと走って行く。
「じゃあ僕は取り分けるよ!」
「頼む。」
シャルルが手際よく料理を取り分けて二つのお盆に乗せていく。
片方のお盆はマットとシャルルの分でもう片方のお盆は俺とフィルとアランの分だ。
マットが帰ってきてお盆に買ってきたパンを乗せ晩飯が完成したので二人と別れてお盆を持って校長室へと向かう。
場所は学校玄関の目の前なので迷う事は無い。
片手にお盆を持ち直して扉をノックするとアランが扉を開けてくれる。
「待ってたよ!」
「まずは飯だな!俺達がするからニコは座ってろ。」
笑顔のアランがお盆を受け取って部屋の中央にある机に持って行き、疲れた表情のフィルと一緒に配膳を始める。
俺は大人しく対面して置かれているソファに腰掛ける。
「・・・おいアラン!お前のステーキでかくないか?」
「何言ってんの?同じよ!」
「いや絶対大きい!同じなら交換しろ!」
「やーだーっね!」
隣に座ったアランと対面に座ったフィルが低レベルな争いを始める。
「どれも一緒だ。」
「いや!アランのは一回り大きい!」
「爺は胃もたれするからその小さいので我慢しときな!」
「あーっ!小さいって言った!今小さいって認めた!」
「うーるーさーいっ!」
アランがステーキにかぶりつく。
不満そうなフィルが自分の前にあるステーキを食べる。
「こいつら何歳だ・・・」
思わず心の声が漏れてしまう。
「おっと食事中でしたか・・・出直しますか?」
三人で晩飯を食べていると一人の男が部屋へと入ってくる。
男は四十台くらいだろうか?短髪で口元には上品に整えられた髭が特徴的な男性だ。
体は衣服を着ていても鍛え抜かれているのが分かるほどに逞しい。
「構わん!少し待っていてくれ。」
「わかりました。」
男は笑顔でお辞儀をして静かにソファへと歩く。
歩き方がとても大股なので普段は鎧を着ていて、鎧が擦れない様に歩くのが癖になっているのだろう。
「ほう?豪華な夕食ですな?」
「ニコが作ってくれたんだよ?何のステーキだと思う?オーガ肉だよ?」
「ほう?君がニコ君ですか!にしてもオーガ肉のステーキなんて食べられるのですか?」
「柔らかくて美味しいよぉ?」
アランが男にステーキを見せ付けながら食べている。
「アラン行儀が悪いぞ。食材に感謝して食べろ。」
「わかったわよ・・・」
俺が言うとシュンとなって食事をするアラン。
それを見て男が目を見開いている。
「ふぇっふぇっふぇっ!国崩しのアランもニコには勝てんようじゃの?アルよこれだけで十分じゃろ?」
「信じられないものを見ました・・・」
フィルが楽しそうに笑って、アルと呼ばれる男は驚愕の表情をしている。
「フィル失礼するぞ!」
また来客のようだ。
白髪交じりの男が部屋へ入ってきた。
シワ一つ無い綺麗な服を着ている。
アルが立ち上がりその男に対して恭しく跪く。
「アルフォンスよ、今はよい。」
「かしこまりました。」
「アレク早かったな?座って待っててくれ!」
アルフォンスと言う名前のようだ。
そう言って先程までアルフォンスが座っていた場所にアレクと呼ばれた男を座らせる。
アルフォンスはソファの横に立っている。
「ニコ?そこに突っ立てるのが騎士団々長のアルフォンスで目の前にいるのがエスガルド王国々王のアレク王よ。」
食事を食べ終わったアランが教えてくれる。
「そんな偉い人達が何の用だ?」
「フフフ、ニコのために集まったのよ。ご飯を食べたら話しましょ。」
「ふむ。」
微笑む男達に見つめられながら晩飯を食べる。
とても食べにくい。
「私が最後ね?お待たせしました。」
そう言って上品な老婆が部屋に入ってくる。
「サンドラか。大丈夫だ、まだ話は始まってない。」
「それはよかったわ。」
そう言ってアレク王の隣に腰掛ける。
「冒険者ギルドのエスガルド王都本部ギルドマスターのサンドラよ。」
「それはそれは・・・」
鉄級の俺では一生会えないような人物なのだろう。
「じゃあニコ?自己紹介の変わりに食器を洗ってもらえるか?」
「この場でか?」
「そうだ!」
食事を食べ終わり笑顔のフィルが言い。
アレク王、アルフォンス団長、サンドラギルドマスターが真剣な表情で俺を見る。
「精霊よ・・・」
偽装のために言って机の上に水玉を作り食器を洗う。
「詠唱省略もだがなんという精密な魔法だ・・・」
「筆頭魔法師でも無理だろうな・・・」
「この歳で・・・恐ろしい子だねぇ。」
三人が思い思いに呟く。
フィルとアランはなぜか胸を張って得意げだ。
食器を洗い終わり水玉を消すとフィルが口を開く。
「ニコよ。簡潔に言うぞ?我が国は今人手が足りんのだ。お前に謎の金級冒険者となって騎士団の代わりに働いて欲しい。もちろん報酬は十分に出すぞ!」
フィルが真剣な面持ちで突拍子もない事を言って来る。
「ニコ?実はあたしも爺に身元引受人になってもらって学校に通ってたの。そしてアランと言う冒険者になって学費を稼いだのよ?もっとも?偽名の冒険者アランとして有名になりすぎて本名は忘れ去られちゃったけどね。」
アランがフィルを睨みながら言う。
「だから今回は同じ事にならないようにしていると言ってるだろう!」
「じゃああたしからの条件ね?爵位や肩書きはいらない!金だけだしな!討伐した魔物は全てニコの物!代わりに騎士団は討伐した名誉でも貰っときな?あと最低依頼額は十万からだ!もちろんニコに拒否権があって強制は駄目だよ!?」
「「「なっ!?」」」
フィルの言葉を無視してアランが一方的に条件を言う。
三人が驚いた表情をしているのでかなり無茶苦茶な条件なのだろう。
「すまんみんな・・・これでもアランと話してかなり譲歩した条件だ・・・」
「なるほど・・・少し失礼するよ?」
肩を落としたフィルが三人に言い、四人で部屋の隅に行ってコソコソと話し合っている。
「ニコごめんね?最低百万ゴールドにしたかったけど無理だったよ。金はいくらあっても困らないからね!でも爵位とか肩書きは邪魔なだけだから絶対に貰うんじゃないよ?」
「全くわからんから任せる。」
隣のアランが俺に言ってくるが意味がわからないのでアランに任せることにする。
「(いよいよになったら森に帰ればいいだろう。)」
考えてもわからないので成り行きに任せよう。
しばらく四人が話し合っているのをアランと一緒に見る。
「さて・・・爺共がどんな条件を提示してくるだろうね?」
「楽しそうだな?」
「フフン♪国のトップ集団に無理難題を押し付けれるんだよ?楽しいに決まってるじゃん!」
アランが楽しそうにソファに深く座って四人を眺める。
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