第二十ニ話 受付、試験へ
みんなと城へと歩を進めると城門の前に兵士と一緒に簡易型のカウンターに老婆が立っている。
あそこが受付のようだ。
「身分証を確認します。」
受付でギルドカードを提出する。
「ニコ・・・君・・・名簿に無いですね・・・保護者は?」
「保護者?」
「はい。身元引受人がいないと学校には通えません。」
まさかの事実に固まってしまう。
「入学金だったか?金はあるぞ?」
「保護者がいない人を入学させるわけには・・・」
受付の女性が困った様子で答える。
「(俺も困ってるのだがな。)」
「ワシが身元引受人だ!」
そうやって受付の女性と二人で固まっていると高らかに宣言しながら白銀の鎧を着たフィリップがこちらへと歩いてくる。
粗末な服を着ていた好々爺といった様子が全く無く歴戦の戦士のような雰囲気を身に纏っている。
「校長!?」
女性が驚いて言う。
なんとフィリップ爺さんは校長だった。
「ふぇっふぇっふぇっ!バルテよニコの身元引受人はワシだ!ニコ?金を出せ!」
フィリップがそう言って俺に向かってウィンクをする。
よくわからないが俺の身元引受人はフィリップ校長になったようだ。
俺はよくわからないまま大金貨を取り出して受付のバルテに渡す。
「ふむ・・・少し足りないようだな・・・バルテ先生?足りぬ分はワシ宛に請求書を頼むふぇっふぇっふぇっ!」
フィリップはそう言って城の中へと去って行く。
「で、ではこちらが受験票ですので失くさないで下さい。」
「わかった。」
緊張した面持ちの女性から百九十二と書かれた札を渡される。
「ねぇ・・・ニコって何者なの?フィル校長が身元引受人なんて普通じゃないわ?」
ターニャが肩を掴んで話しかけてくる。
指が食い込んで少々痛い。
「フィル校長?フィリップだろ?」
「フィリップって御者係をしていたお爺さんでしょ?全然違うわよ!」
「そうだね?剣聖であるフィル校長とあの御者係を間違ったりはしないね?」
エミールもそんな事を言い出す。
「(どういう事だ?瓜二つの別人か?)」
ターニャとエミールの言葉に混乱してしまいそうだ。
「ほら!受け付け終わったんでしょ?試験会場に行くわよ!」
「そうじゃ!さっさと行くぞ!」
考えているとターニャとロジェに引っ張られて歩いて行く。
丁寧に文字と矢印で案内されて付いた場所はとても広く、とても長い机が並び数えるのも億劫になる数の椅子が並んでいる部屋だった。
椅子に番号が書かれている。
「ここが教室の一つよ。」
俺がよほど困った顔をしていたのだろう、ターニャが耳打ちをして教えてくれる。
「ほう?こんな広い部屋で勉強をするのか・・・」
「姉の話じゃ鉄クラスになったら勉強にならないみたいよ?」
「どういう意味だ?」
「まぁその時になればわかるわ!」
ターニャはそう言って椅子に座る。
みんなで一緒に受付をしたので試験でも六人横並びで受けるようだ。
みんなに習ってペンとインクをカバンから取り出して試験が始まるのを待つ。
「なぁ?いつ始まるんだ?」
「もう少しよ!黙って待ちなさい!」
「すまん。」
隣のターニャに声をかけるとなぜか怒られた。
「始めと言うまで触らないように!」
しょうがないのでそのまま待っていると先生と思われる女が入って来て紙の束を配り始める。
「神銀級冒険者のアラン様よ。」
「(この国唯一のエンチャンターと言われる女か・・・)」
ターニャが耳打ちしてくれるので、改めて見るが蒼色の長い髪をなびかせた美人でジャック達よりも若そうだ。
「ニコは字は書けるのかしら?」
アランが俺の前に紙の束を置きながら話しかけてくる。
「書けません。」
「じゃあ魔法と剣で頑張りなさい?」
「わかった。」
「じゃあ金クラスで待ってるわ?」
そう言って紙の束を配りながら離れて行く。
周りを見るとみんな目を見開いて俺を見ている。
「なんなんだ・・・」
「ニコ?知り合いなの?」
「あんな女は知らん。」
「受付の時の校長といいさっきのアランさんといいあんた何者?」
「普通の一般人だ。」
「では始め!」
椅子にもたれかかってアランが言い、教室内で一斉に紙を捲る音がする。
アランはみんなを油断無く見つめている。
壁際にも何人も先生らしき人間が教室内を見ているので、恐らく不正をしないか見張っているのだろう。
俺もみんなに習って問題を見てみるが、エスガルド王国建国の王の名前は?などと言った教育を受けていれば常識問題なのだろうが俺には全くわからない。
そもそも誰か分かってもそれを文字にする事が出来ない。
「(いや・・・本の文字を真似すれば書けそうだが・・・)」
そんな考えが一瞬よぎるが分かる問題が無い。
一通り目を通して次のページを見る。
「(なんだ?数字と数字の間に十字や棒があるがどういう意味だ?)」
見た事も無い記号に目を見開き、そのまま次のページを見る。
次のページはいくつもの魔法陣が描かれていた。
おそらく何の魔法が発動するのかという問題なのだろう。
魔法陣なら精霊魔法とは言え、ルルから教えてもらっているので大体わかる。
だが料理の本を真似して書こうとするが魔法を表現する文字がわからない・・・ただただ紙に描いてある魔法陣を眺めて分析する。
隣のターニャからはカリカリと字を書く音が途切れる事無く聞こえる。
「そこまで!」
アランの声が教室内に響き渡る。
暇すぎて周りの人の真似をしてペン回しを練習していたら五周出来る様になった。
「では一番から順番に教室から出て実技試験だ!」
アランがそう言いながら教室から出て行くとみんなが荷物を纏めて動き始める。
ターニャ達も動き始めるので俺も付いて行く。
番号順に並んでいるのだろう、教室の出口に向けて列が並ぶ
「ねぇ試験出来た?」
「僕は半分くらいだね。」
「ワシも半分は解けたで?」
「私も同じくらいですね・・・」
「魔法で取り返さないとね!」
みんなはテストは中々出来たようだターニャが鼻息を荒くしてガッツポーズをするとそれにならって三人が同じようにガッツポーズをする。
マットは少し面白く無さそうな顔で四人を見ている。
順番が近づいて来るとみんな順番にギルドでお馴染みの水晶玉を触らされていた。
ターニャが触ると緑色に光り奥の部屋へ通される。
「次!百九十二番!」
「はい。」
受付の女は最初に俺の受付をしたバルテと呼ばれていた先生だった。
俺が水晶玉に触れるが思ったとおり水晶玉は反応しない。
それを見たバルテは哀れみのこもった目で俺を見てみんなが入って行った扉とは違う扉を手で指す。
「魔法は使えるが?」
「わかりました。次!百九十三番!」
そう言って後ろに並んでいた人が水晶玉に触る。
「(あの女は何がわかったんだ?)」
俺は疑問に思いながら扉を開ける。
扉の向こうは外だった。
「(非常識だろうが知るか!)」
少々腹が立ったので運動場のような場所で焚き火をして料理をする。
「あら?美味しそうな匂いがすると思ったらニコじゃない?」
「・・・アランと言ったか?俺は知合いか?」
運動場の端で料理をしているとアランがやってくる。
ターニャに言われ試験の間考えていたが全くアランの記憶が無い。
「フフフ!さぁね?これ私も食べていい?」
「俺の質問に答えたらな。」
アランは笑顔で鍋から俺が作っていた芋のポタージュスープをマジックバッグから出したのであろう自分の器に注いで食べ始める。
「美味しい!ニコはいい旦那になるわね?」
「そうかそれはよかった。だが食べたのなら俺の質問に答えろ。」
「・・・そうねぇ?結婚出来る歳、十二歳になったら教えるわ?」
アランがスープに舌鼓を打ちながら笑顔で言い放つ。
「・・・今すぐ教えて欲しいのだが?」
「今すぐ?せっかちさんね?」
アランが俺のポタージュをかき込みながら言う。
「美味しかったよ!金クラスで待ってるよ?」
「おい!俺の質問に答えろ!」
思わず声を荒げるがアランは後ろ手を振って学校の中に入って行く。
「やれやれやっと行きおったか・・・」
そう言って後ろからフィリップがやって来て俺のポタージュスープをコップに入れている。
「・・・俺の分が無くなるからやめろ。」
「ふぇっふぇっふぇっ!注いでしまったからには食べないとな?」
「お前はいつかぶっ飛ばす。」
「ならこれを飲んだら行こうかの?」
「剣の試験か?」
俺のポタージュスープを食べるフィリップが食べる手を止めて俺を見てニヤリと笑う。
「で?なんで俺の身元引受人になったんだ?」
「学校生活は長いんだぞ?焦らずに知っていけばいいだろう?」
「アランと言いお前らは何も言わないな?フィル校長だったか?フィリップでいいんだな?」
「ふむ・・・待て!美味い料理を食べてからだ!」
フィリップがそう言うのでイライラしながら食べ終わるのを待つ。
「で?アランとはどういう関係じゃ?」
俺のポタージュを食べ終わったフィリップが言う。
ちなみに鍋の中身は空っぽだ。
「知らん!お前も俺の質問に答える気が無いなら帰れ。」
そう言って剣の試験を受けるために鍋を洗ってカバンに入れる。
「ふぇっふぇっふぇっ!ワシはお前の身元引受人であるフィル校長であり謎の御者人フィリップじゃ!秘密じゃぞ?」
「どうやってエミール達を勘違いさせたのか気になるがそこは聞かないでおく。」
「ふぇっふぇっふぇっ!片付けは終わったな?では行くぞ!」
「わかった。」
フィルと一緒に運動場の隣に建つ箱型の建物へと歩く。
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