第二百二十六話 ライネン出発前夜
今まで一日あいたら、翌日は二話投稿してましたが、仕事が忙しくてストックを作れてません・・・
なので本日は一話投稿です・・・ごめんなさい!
「師匠おはようございます!」
「リーダーおはよ・・・う?」
結局眠れずに魔力の鍛錬をし続けて朝を迎えた。
先に目覚めたタルトの元気一杯な挨拶に反応してアンジーも目を覚ました。
挨拶は大事だが、今日ばかりはさっさとベッドから解放して欲しい。
人(厳密には魔族だが)の温もりを感じられるのは、大好きなのだが本気で解放して欲しいと思う日が来るとは思わなかった。
「師匠?今日は何をなさるんですか?」
「そうだ!とりあえず今日の分だけだけど、元奴隷達の食事は騎士団の食堂で一緒に作ってくれるらしいわよ?」
いつもならすぐにベッドから出て俺が用意した朝食を食べ始めるのに、二人はベッドから出ずに話しかけてくる。
とりあえず一睡もしてないのでとても眠たい。
とりあえず俺は少しでもこいつらから離れてどこかでのんびり寝られる時間を作りたいので必死に一睡もしていない頭を働かせる。
「お前らにはアイテムボックスを渡しておく。中に聖騎士勇者や反乱軍の武具が入ってるからみんなに配ってやれ。
そしてタルトは文字の読書きを、アンジーは戦闘訓練を教えてやれ。」
「え・・・師匠は何をなさるんですか?」
「そうよ!あたし達と離れて何かあってからじゃ遅いわ?」
俺は二人に元奴隷達の教育を一任する。
勿論二人は俺が別行動する事を良しとしないのは当然予想していたので、上手く働かない頭をフル稼働させて言い訳も考えてある。
「俺はこれからレタスが俺達と一緒に行動出来る様にする。これなら眷族が一緒だから大丈夫だろう?」
「むぅ・・・仕方ありませんね・・・」
「ちっ!リーダーの好きな適材適所って事ね・・・」
二人が悔しそうに顔を顰めながら抱き付いて来る。
さっさと離れて欲しいのだが、二人共アランになったのかと錯覚したくなるくらいに顔を擦り付けてくる。
普段なら二人の気が済むまでほおっておくのだが、今日は別だ。
とにかく俺はレタスの元に行ってゆっくりと朝寝をしたいのだ。
「という訳で・・・さっさと出発するぞ?」
「え・・・朝食は・・・?」
「そうよ!朝食抜きって事!?」
「煩いっ俺は寝れてないんだ!こんな時間まで寝ていたお前らが悪いっ!」
二人が文句を言うので、思わず苛立ちをぶつける。
有無を言わさずに狭いベッドに一晩軟禁されたのだ。少しくらいは怒っても許されると思う。
「師匠・・・大人げ無いですよ?」
「そうよそうよ!普通の人間ならこんな状況泣いて喜ぶわよ?」
「俺はまだ九歳の子供だ。そしてこういう状況を楽しむのは成人してからが常識だから、俺にはまだ早い!さっさとベッドから出ろ!」
二人が両脇からジト目で反論してくるのでばっさりと切り捨てておく。
少々無茶苦茶な言い分かもしれないが、頭が働いていないので仕方ない。
さっさと二人をベッドから追い出して、各々の仕事場へと向かう。
「ぶもっ!」
牛舎に着くと当たり前のようにチーズを作るレタスが俺を見て一鳴きする。
おそらく俺への挨拶なので、俺もレタスに手を振りながら挨拶をしておく。
「俺は少し眠る。本当に申し訳ないがチーズを作り終えたら起こしてくれないか?」
「ぶもっ!」
レタスは嬉しそうに敬礼して答えてくれる。
眷属が頑張って働いてくれているのに本当に心苦しいが、甘えて少し眠らせてもらう。
レタスに優しく揺さぶられて起こされる。
「ん?あぁ・・・そうだった。ありがとう。」
一瞬状況が飲み込めなかったが、一瞬考えてレタスがチーズを作っている間に寝させてもらっていたことを思い出す。
太陽の位置を見ると、大体二時間くらい寝たようだが、たったそれだけでも結構頭がスッキリするものだ。
レタスが作ってくれたチーズを時忘れのマジックバッグに放り込んでレタスのための作業を始める。
これからはレタスは俺の従魔という体で連れようと思っている。
そのためにもまずはレタスに豊満な胸を隠すための布を渡して、ジェスチャーで胸に巻くように教えると、レタスは一枚の布を器用に体に巻きつけて行く。
「うむ。首にまで回して見事だ。」
「ぶもっ!」
俺は胸に巻けとしかジェスチャーしてないのに、レタスは首にも布を回して隠すだけでなく、見事に胸を支える機能までつけて見事に一枚の布をブラジャーにした。
見た目はこれで問題無いだろう。
次はザッシャ達に従魔の事を聞いた所、首輪が必須らしい。
なのでレタスの首輪を作る。
「ぶもっ?」
「お前も女性だ。無骨な首輪じゃ嫌だろ?」
「ぶもっ!」
「あとこのキラキラしているのは魔法陣が入った魔石だからな?」
魔石に魔法陣を刻んでいるとレタスが目を輝かせながら声を掛けてくる。
見た目はミノタウロスだが、魔族なので無骨な皮の首輪では嫌だろうと思ったので、首輪に魔石を散りばめようと思ったのだ。
これなら見た目も良くなるし、なによりレタスの戦闘力も上がり機能的だ。
五個の魔石に魔法陣を刻み終わり、魔力成型を駆使して黒い皮の首輪に魔石を埋め込んで行く。
「ぶもぉ・・・」
「なんだ?気に入らないのか?」
俺が首輪を作っているとレタスが落胆したような鳴き声を上げる。
どうやら俺の美的センスでは、レタスを満足させる事は出来ないようだ。
「どうしたものか・・・」
俺が作りかけの首輪を眺めて途方に暮れていると、レタスが地面に絵を描き始める。
どうやら希望のデザインを描いてくれているようだ。
レタスの絵を参考にしながら首輪に魔力成型を施す。
「これで・・・どうだ?」
「もっ!もっ!もっ!」
完成した首輪を渡すと、目を輝かせながらレタスは上機嫌な様子で自ら装着する。
大変悔しいのだが、レタスがデザインした首輪は俺が作ろうとしていた首輪に比べて格段に見栄えがいい。
「レタスも見てみろ。」
「も?」
レタスが首輪をべたべたと触って、とても気にしているので鏡を渡すと不思議そうに受けとる。
すぐに自分の姿を映すものだと認識して、うっとりと首輪を見つめ始める。
一応二人から離れるための口実だったが、しっかりとレタスを連れて行くための準備も終わらせたし、鏡に見惚れるレタスの隣で昼食を作り始める。
「ほぅ?可愛いチョーカーですね?」
「そうね?にしても器用にブラジャーしてるわね・・・リーダー手伝ったの?」
「レタスが自分一人で器用に巻いた。」
昼食を作っているとタルトとアンジーがやってきて、レタスの様子を見て驚いている。
ひとしきりレタスの首輪・・・改めチョーカーを眺めて二人が半眼で詰め寄ってくる。
「師匠なら一時間程の作業量ですよね?」
「そうね?それ以外の時間何をしていたのかしら?もしかしてあたし達が働いてる間に寝たのかしら?」
「そのチョーカーな?いっぱい石が付いてるだろ?全部魔法陣を刻んである。」
二人は俺の言葉に目を見開き、再びレタスの下に駆け寄ってチョーカーを食い入るように観察し始める。
寝たのがばれても全く問題無いのだが、アンジー辺りが煩そうなので、出来るなら隠しておきたい。
一応レタスのチョーカーは午前中だけの短い時間では、作れるような物では無いと自負している。
「昼食が出来たぞ?」
「かしこまりました!」
「確かに丸一日はかかりそうな作業量ね・・・。」
上手く誤魔化せたようで、アンジーが椅子と机を用意してタルトがテキパキと配膳をしてくれる。
「それで?元奴隷達はどうだ?」
「はい!騎士団も協力的でとてもスムーズに進んでいます!」
「騎士団は全員が寝れる分のテントとかの野営道具と服を用意してくれたし、今からでも出発出来るわよ?」
昼食を食べながら二人から報告を聞くが、武器も問題無く配り終え、チーム編成や野営用道具の受け渡しも全く問題無く完了したようで、一安心だ。
そしてその道具は騎士団が倉庫から出してくれたらしく、予想以上に我々に協力してくれているので、とてもありがたい事である。
「昼から勉強と戦闘訓練か?」
「その予定ですが、私が戦闘訓練では駄目なのですか?」
「そうよ。あたしは戦闘よりも勉強を教える方が楽でいいわ?」
「駄目だ。」
二人は俺の指示が気に入らないようだ。
確かに二人の性格を考えれば逆の方がいいだろうが、タルトに戦闘を教えてもらうと、俺の覇道が!っとか言い出して無茶苦茶な訓練をしかねない。
だが俺は道中俺じゃないと出来ない仕事があるので仕方なくタルトには勉強を、アンジーに戦闘訓練を教えるように指示したのだ。
「それで・・・魔石はどうだ?」
「反乱軍達の余った武具などを全て騎士団に交換して頂きました!」
「本当に五百人分の魔道具作るの?」
「だからお前達に先生の役目を押し付けた。」
「師匠?魔道具作りは大変神経を使う作業と聞きました!無理なさらぬように!」
「リーダーがそう言うなら従うだけだわ。」
二人は反乱軍と聖騎士勇者の武具の代わりに魔石を詰め込んだアイテムボックスを置いて、元奴隷達の先生をするために街へと歩いて行くので、俺はその場に寝転んで食後のお昼寝タイムだ。
「ぶもっ!」
「おぉ・・・寝すぎたな。」
またレタスに揺さぶられて目を覚ます。
周りを見渡すと太陽が沈みかけているので、慌てて起きる。
魔道具を作っていないのはいくらでも言い訳できるが、夕食を一切作っていなかったらさすがに疑いをもたれてしまう。
「む・・・起こしてくれた上にすまんな?」
「ぶもっ!」
料理の準備をしようと立ち上がると、レタスはチーズ作り用の火と一緒に俺の料理用の火まで準備をしてくれていた。
レタスはこの街に来てから何回か暴走して叱ったが、基本的にはとても気の効く素晴らしい眷属である。
そして何よりもディアナに襲われた時は、レタスが気付いてくれていなければ俺は死んでいた。
「・・・レタス?済まないついでに寝ていたのは内緒にしてくれるか?」
「も・・・」
レタスは何を今更と声が聞こえてきそうな表情で小さく鳴く。
今までミノタウロスの見た目のせいか、なんとも思っていながったがレタスは思った以上に大人な女性だった。
そのままレタスと並んで料理を作っているとタルトとアンジーがやってくるので四人で夕食を食べる。
ちなみにレタスには口止めも含めてサラダを作っておいた。
「レタス?ドレッシングはいらないのですか?」
「ぶも?」
おもむろにタルトがレタスが食べているサラダにドレッシングをかけ始める。
「いやいやタルト?そのドレッシングお肉とか入ってないの?」
「そうだぞ?レタスが腹を壊したらどうするんだ?」
アンジーと俺の心配をよそにレタスはお構い無しにサラダを食べる。
一瞬味わった後に一心不乱にサラダを食べ始めるので気に入ったようだ。
「大丈夫ならいいか。明日は朝食を食べたらキーフに出発するぞ?」
「はい!準備は万端です!」
「元奴隷達にも周知させてあるわよ?」
「もっもっもっ!」
三人共気合十分なので問題なさそうだ。
こうして予想外の長期滞在となってしまったライネンでの最後の晩餐を四人で目一杯楽しむ。




