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第二百十四話 みんなに守られて復活

「おはようございます!師匠!」

「お寝坊さん何か食べる?」

死を覚悟した俺だったが再び目を覚まし、今タルトとアンジーに抱きつかれている。

とりあえずわかる事はどうやってかはわからないが俺は助かったという事だけだ。

「おはよう。俺はどうやって助かった?いや・・・それよりもどれだけ寝ていた?」

「丸二日間寝っぱなしでしたよ?」

「そうよ?丸焦げで息をして無いんだもんタルトが口移しで完全回復薬(フルポーション)を飲ましてなかったら確実に死んでたわよ?」

俺の問いにタルトとアンジーが答えてくれる。

タルトがアンジーに「口移しの件は内緒って!」っとぽかぽかと叩いて喧嘩を始めているが、完全にお遊びの喧嘩なので問題無さそうだ。

タルトとアンジーに何かあったらと思って完全回復薬(フルポーション)を渡していたおかげで命拾いをしたらしい。



「だが・・・なんで俺が倒れている事に気付いたんだ?」

「レタスが師匠を抱き抱えて騎士団支部まで走ってきたんです!」

「そうよ?雌のミノタウロスが丸焦げのリーダーを抱えて街を走り回ったもんだから中々の大騒ぎになったわよ?」

俺は本当に家族に恵まれている。

あれほど入念に調査をした、作戦だったのに敵の魔法の威力を見誤って死に掛けてしまい、結局家族に助けれつというとても情けない結果となってしまった。

自分が情けなくなりいつ振りかわからない涙が溢れ出してくる。


「師匠?どうぞ私の膝を枕にして感情を吐き出して下さい?」

「タルトずるい!リーダー?私の胸の方が吐き出しやすいわよ?」

二人の言葉に甘えタルトの膝で、そしてアンジーの胸で子供の様に泣き喚く。

我ながら情けない主だとは思うがタルトとアンジーは何も言わずに俺が泣き止むまでずっと優しく撫で続けてくれる。







時計が無いのでどれだけ泣いたかわからないのだが、足るだけ泣きじゃくって気持ちが落ち着いた。

気恥ずかしくてタルトとアンジーの顔を直視出来ないのだが、感情を思い切り吐き出したら腹が減ったので食事の準備をする。

勿論食事に集中すればタルトとアンジーの顔を見なくて済むという算段もある。

少し煤けているが腰のマジックバッグが燃えずに残ってくれていて本当にラッキーだ。

「師匠?申し訳ないですが我々の分もお願いします。」

「二日ぶりの食事ね?」

「お前ら・・・俺が寝ている間何も食べてないのか?」

「師匠が心配で喉を通らなかったもので・・・」

「先輩のタルトが食べないのにあたしは食べられないじゃない!」

どうやら俺が意識を失っていた間二人は何も食べなかったようだ。

アンジーは何やらタルトのせいにしているが恥ずかしいのでタルトをだし使っているのは丸分かりだ。

さっさと作り置きの料理を机に並べて三人で食事にする事にしよう。


「それにしてもそのマジックバック達と刀は大事な品なのですね?」

「ん?なんでだ?」

「師匠はそのマジックバッグ達と刀を抱き抱えて丸焦げになってましたよ?」

「そうだったのか。結界が割れそうで必死だったから覚えてないな・・・」

ベッドに立てかけられた刀を見るが、魔の森を出るときにゴブチョウ達とコボチョウ達から貰った金を入れた布袋も燃えずに残っていた。

どうやら無意識にみんなから貰った物を守っていたらしい。



「今だから言えますが丸まっていなければ確実に師匠は燃え尽きていたでしょうね。」

「そうか。」

タルトの言葉を受けて雷に打たれる。

俺はみんなからの贈り物を守ったのでは無くみんなに守られたのだ。

勝手な思い込みかもしれないが、俺はそう感じた。



「なぁ?今は何時だ?」

「今は夕方ですよ?」

「だから丸二日寝てたって言ったじゃない?リーダー馬鹿なの?」

アンジーは俺を馬鹿にしてタルトにアイアンクローをされている。

何でもないいつも通りに日常に戻ったなと実感する。


「タルト?アンジーを許してやれ。みんなに守ってもらわないとすぐに死ぬ馬鹿で儚い主だ。」

「そんな事はありません!我々が師匠を万能だと思い込みすぎていたので我々のミスです!」

「ふん!あんたも弱い人間なんだって知ったからね?あたし達が守ってやるわよ!」

タルトがアンジーの言葉にムッとした表情で反応するが、本当の事なので諌める。

アンジーは言い方は少し乱暴だが、俺の事を心配してくれているのは痛いほど伝わってくる。

今回の作戦は結果を見れば俺自身も自分の力を過信してしまっていたと言わざるを得ない結果となってしまった。

タルトかアンジーに陰ながら付いて貰っていれば、追加で結界か魔法障壁を張るなりの対応で無傷で済んだ可能性は高い。


「これからは常に一緒だ。しっかり守ってくれ?」

「勿論です!」

「仕方無いわね。」

二人はとても嬉しそうに答えてくれる。

折角こんなに恵まれた環境なのに、俺は一人であれもこれもと背負いすぎていたのだなと反省する。

これからはもっと周りを頼って生きていくようにしよう。



「それで?今作戦はどうなっている?」

「はい!予定通りに師匠の死がエスガルド、ハイゼンの両国に伝わってエスガルド王国各地でライネンを攻め落とすべく貴族達が集結しているようです!」

「タルトと一緒にリーダーの黒焦げの死体を作って騎士団に渡してあるわよ?自信作よ?」

最初は上手く行くか不安だったが、俺の死を偽装してエスガルド国内の反乱分子を一掃する作戦は驚くほど順調に進んでいるようだ。

と言っても偽装ではなく、本気で死にそうになったのは誤算だったが生きているので結果オーライだろう。

一通りの報告を受けて安心すると同時に死に掛けていた時に魔法が使えなかった事を思い出して胸がざわつき始め、咄嗟に胸の魔法陣を確認する。

どうやら完全回復薬(フルポーション)のおかげで胸元の魔法陣も復活したようだ。

魔法陣は全く問題無さそうなので次に空中に火の玉を作り出す。

魔法の発動も確認出来たので一安心である。


「リーダー何をしているの?」

「瀕死の時に魔法陣が焼け爛れていて魔法が発動しなかったからな・・・」

「魔法陣は魂に刻まれているので皮膚が戻れば自然と浮き上がってくるので大丈夫ですよ?」

俺の突然の行動にアンジーが不思議そうに尋ねて来る。

タルトの言う通り魔法陣は魂に刻んでいるので問題無いであろう事は俺自身わかっていたのだが、治癒魔法が発動しなかった時の虚無感を思い出して怖くなってしまい確かめずにはいられなかったのだ。



「で?これからどうするの?」

「そうですね?師匠どうするのですか?」

「そうだな。夕食を終えたら俺の無事を伝えるためにもバンク隊長の部屋に行くか。」

ここまで作戦が上手くいっているのに俺が本当に死んだと思って騎士団が暴走したら全てが台無しだ。

せめてバンク隊長だけにでも俺が目覚めた事を知らせておかなければならないだろう。

三人で夕食を食べ、俺の姿を見られる訳にはいかないので俺も含めた三人に認識疎外魔法をかけて三人で擦れ違う騎士達とぶつからないようにしてバンク隊長の部屋へと行く。





「失礼します。」

「お邪魔するわ。」

タルトとアンジーはノックをするのだが返答を待つ事無く扉を開いてズカズカと部屋の中へと入って行く。

部屋の中では会議を行っていたようで、書類だらけの机を挟んでバンク隊長と兄の太守とザッシャ副隊長が頭を突き合わせているので、手間が省けて大変ありがたい。

俺は自分達にかけた魔法を解除して俺が目覚めた事を報告する。


「御心配をおかけした。二人のおかげで回復したので報告にきた。」

「御無事そうで何よりであります!では早速今の状況を説明致しますか?」

バンク隊長とイェルド太守は突然の俺達の出現に驚いて言葉を失っているが、ザッシャは当たり前のように受け入れて説明を始めてくれる。

俺の経験訓だがなぜかこういう時に受け入れて柔軟な対応をしてくれるのは圧倒的に女性が多い。

「すまんが頼む。」

「はっ!王都反乱の首謀者であるヘファイ・ムイワール公爵の一族が約五千の兵を引き連れて各地で貴族達を扇動しながらこの街へと向かっております!」

この状況でまたムイワールの名前を聞くとは思わなかった。

俺のせいで騎士団を追われ、武闘会でも俺が鍛えたウィンストンのせいで騎士団への再入団の道を経たれたマルス・ムイワールは記憶にも新しい。

そして確か前にこの街でボコボコにした冒険者がその兄であるギュスター・ムイワールだったと記憶している。

そして同級生のギャスパルもムイワールだったはずだ。


「作戦通りだな?」

「はっ!ですが・・・反乱軍は日々数を増しており、すでに反乱軍だけでも我々の手に負えない数になっております。」

「では予想でいい。いつ?何人だ?」

「約二十の貴族家が集まり三万を越える軍団が一週間後にここに到着すると思われます。」

予想以上の規模だ。

ここでの対処を失敗すればライネンの街は落ち、勢いもそのままにエスガルド王国は蹂躙されてしまうだろう。


「王都はどうなっている?」

「ムイワール家は北に向けての反乱軍も指揮しておりますがキーフの街に陣取って王都からの援軍を阻止するのに専念するようであります!」

キーフか・・・前回ここに来た時にアイリーンが行きたがっていたのを思い出す。

キーフとはライネンと王都の間にある街で芸術の都とも言われているエスガルド王国の流行の発信地だそうだ。

ちなみにクネの大好きなファッション誌の九割以上はキーフの街で製作されているらしい。


「動かないのならほっとけばいい。」

「最後にアラン殿からの伝言です!あんたが死ぬ姿は想像出来ないからさっさと起きて帰ってきなさい?んでもって帰り道にキーフで最新のドレス買ってきてね?」

「押し付けるつもりだったが失敗してしまったな。」

アランの伝言に思わず失笑してしまう。

反乱軍は王都とライネンを同時侵攻するだろうと予想していたが、キーフの街を占拠した事によって俺の仕事になってしまった。

さっさと用事を終えて王都でサミュエルとゆっくり将棋を指して過ごしたいものだ。


「では我々は反乱軍の到着まで身を隠す。」

「かしこまりました!では一週間後にお会いしましょう!」

作戦は大詰めなのに、俺が生きている事が露見してハイゼン軍と反乱軍が予想外の動きをしては台無しだ。

バンク隊長とイェルド太守はまだ状況が飲み込めていないようだが、ザッシャ副隊長のおかげでスムーズに話が終わった。

再び自分達に認識疎外魔法をかけて三人で騎士達にぶつかられないように注意しながら自分達の部屋へと戻る。



「ねぇリーダー?あたし達は本当に一週間後まで何もしないの?」

「アンジー?作戦を聞いてなかったの?師匠は死んであたし達はもう自分の住処に戻ったのよ?」

部屋に戻って鍛錬をしているとアンジーが話しかけてくる。

タルトは呆れ顔だが、アンジーの言いたい事もよくわかる。


「計画ではこのまま一週間ただ身を隠すだけだったが、俺も死にかけたし安全策を取る。タルト頼みだが、一週間かけてこの街を覆う結界を張るぞ?」

「へぇ?暇しなくてよさそうね?」

「この部屋は街の中心では無いので、かなり歪な形に設定しないと駄目ですね?」

アンジーもタルトも俺の提案に乗り気な様子なので大丈夫そうだ。

三人で協力して結界を張れば、前回攻めて来た程度の聖騎士勇者達ではまず破れない結界が出来るだろう。

ただ俺は瀕死の状態から目覚めたばかりで疲れているし、タルトとアンジーもほとんど寝ずで俺の介抱をしてくれていたようなので今日はゆっくりと寝て明日からの作業だ。

鍛錬を終えて寝ようと立ち上がるとそのまま二人に両脇を掴まれて、ベッドに押込まれる。

どうやら二人は川の字で寝たいようだ。

二人には迷惑をかけっぱなしなので何も言わずに自分に睡眠霧(スリーピングミスト)を発動する。

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