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第二十話 王都観光?

手続きを終えた馬車が王都の門を通る。

門は五メートルほど続く。

つまり王都を囲む城壁は五メートルの厚みがあるという事だ。

そして王都の街はネルグの街よりも多くの人で溢れていた。

大通りをゆっくりと進んでいる。

乗り口でもある後ろからの景色は人の波しか見えない。



一時間程ゆっくりと馬車に揺られた頃にフィリップが窓から顔を出す。

「到着だで!今日はこの小鳥のさえずりって宿の雑魚寝部屋だで!」

フィリップに言われ全員で馬車を降りる。

馬車が止まった場所は宿の目の前だった。

辺りを見回すが人だらけで何が何やら訳がわからなくなる。


「ほれ!ニコ!」

フィリップが馬車の上に載せていた俺の背負いカバンを放り投げる。

料理のたびに降ろしていたので一番手前に積んでいたからだ。

そのまま次々と荷物をみんなに放り投げて渡している。

どのカバンが誰のか把握しているようだ。


「それじゃみんな頑張るだで!」

荷物を降ろし終えたフィリップが御者台に乗り込んで手を振る。

「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」

全員でお礼を言ってフィリップを見送る。

「じゃあ行こうか?」

エミールがそう言って宿の中に入って行く。

みんなも黙って付いて行くので俺も従って宿に入る。


「いらっしゃいませー!」

宿屋の扉を開くと店員の女性の声が聞こえてくる。

「すみませんキャラバンで雑魚寝部屋で泊まるのですが明日の朝まで荷物を預かって頂けますか?」

「はい!御一人五百ゴールドでお預かりしていますよ!」

「やっべ・・・」

店員の言葉に無一文のマットが呟く。

「・・・俺が出してやる。」

「すまねぇな・・・ちゃんと返すから・・・」

預けずに持ち歩いてもそこまで邪魔にはならなさそうな風呂敷に包んだ荷物を店員に渡しながらマットが言う。


「気にするな。」

俺は店員にカードと背負いカバンを渡しながら言う。

「へぇ?ニコ君はもうカード作ってるのか。」

「しかも支払ってるって事は入金済みよ?」

「やっぱニコすげぇな!いくら入ってるんだ?」

エミールとターニャが感心するように言って、マットが店員から俺のカードを受け取ってロジェとカードを見て固まる。


「は、八十万ゴールドじゃと・・・」

「そんなに大金が入ってるんですか?」

固まっていたロジェが言い、それを聞いたシモンヌが恐る恐ると言った様子で俺のカードを覗き込んでいる。

「君達?ニコ君のプライバシーだよ?」

エミールがロジェからカードを取って返しながら言う。

「すまんな。」

「僕らはカードを作りに冒険者ギルドに行くけどニコ君はどうする?」

いつの間にかみんなは話し合っていたようだ。


「俺の知らない所でみんな話してるんだな。」

「ニコ君が料理している間に王都に着いてからの事を話してたんだ。」

「ニ、ニコを仲間外れにした訳じゃないわよ?ね、みんな!?」

俺が言うとみんなが顔を見合わせてエミールが説明してくれる。

その後ろで慌てたターニャがみんなに言う。



「そ、そうだよ!と、とりあえず冒険者ギルドに行こうぜ!」

「そうじゃ!明日までに色々せにゃならんけん急ごう!」

「そうです!マット君は御飯代も稼がないと駄目ですしね?」

「(そんなに慌てなくても気にしてないのだが・・・)」

マットとロジェとシモンヌも慌てた様子で言いみんなが宿から出て行くので付いて行く。

そしてマットは今日の晩飯代を稼ぐそうだ。



みんなに付いて街を歩く。

やっと人の多さにも慣れてきた。

王都はネルグの街よりも建物の背が高く、建物一つ一つがとても綺麗だ。

「なぁ?あの奥に見える白い建物は何だ?」

「あ?あれは王城だよ?」

「ほう?あそこが王が住んでいる場所か。」

大通りの奥に堂々と見える王城に魅入ってしまう。


「ニコ?立ち止まってると危ないぞ?」

「ん?あぁ・・・」

マットに言われ我に返る、大通りのど真ん中で城を眺めて通行の妨げになってしまっていたようだ。

しかもマット達が人の波に飲まれて見失ってしまう。

慌てて人の波をかき分けてみんなを探す。

みんなが建物に入る直前で追い付くことが出来た。

「(建物に入られたら見つけられなかったな・・・)」


建物の中に入ると武装した人間・・・おそらく冒険者達だろう、でいっぱいだ。

冒険者達の奥に見えるカウンターに見覚えのある水晶が置かれているのが見えたので冒険者ギルドだとわかった。

みんなはカウンターへと進んで行き登録をする。

後ろで五人を見ていると肩を落としたマットがやってくる。


「ニコ・・・登録料の一万ゴールド貸して欲しい・・・」

「いいぞ。」

登録料がかかるとは知らなかった。

「(何も言わなかったがジャックが払ってくれてたんだろうな。)」

ジャック達への感謝の念が浮かぶ。

マットと一緒にカウンターに行く。

「登録料はカードで払えるのか?」

「はい!問題ありません!」

「じゃあこれでマットの登録料を頼む。」

「かしこまりました!」

「ニコありがとぉ・・・絶対に返すから!」

店員にカードを渡すと今にも泣き出しそうなマットが腕にしがみ付いてくる。


「あぁ期待せずに待ってる。」

一万ゴールドがどれほどの値段なのかわからないので適当に答えておく。

程なくして登録を終えたマットが依頼ボードを眺めている。

「(そういえば晩飯代を稼ぐと言ってたな。)」


「俺は戦闘も薬草集めもわかんないから昼から出来る手伝いだな・・・出来れば賄い付きだといいんだけど・・・あった!」

マットはどこかの料理屋のウェイターをするようだ。

「じゃあ行って来るよ!夜に宿でね?」

マットはカウンターで依頼を受けてすぐに出発する。



「で?これからどうするんだ?」

マットを見送って言うが返答が無い。

振り返るとロジェとシモンヌはカウンターで依頼を受けていた。

「ワシらは小遣いがないけぇ一日薬草集めしてくるわ。」

「では夜に宿屋で会いましょうね?」

そそくさとロジェとシモンヌがギルドを出て行く。


「エミールとターニャも依頼を受けるのか?」

依頼ボードを眺める二人に尋ねる。

「いや・・・僕達は後々受けられそうな依頼を見ておくだけさ。」

「やっぱり討伐系が報酬もいいわね?」

「だけど僕達でゴブリンなんて危険だよ・・・しかもターニャが見てるのは魔猪の討伐じゃないか・・・」

「やっぱり無理だよね・・・」

エミールが呆れ顔で言い、ターニャがシュンとしながら依頼書をボードに戻している。

二人が真剣な顔であれこれと話しながら依頼ボードを見終わってエミールとターニャが振り返る。




「お待たせ!じゃあ王都を観光しようか?」

「そうね!学校が始まったらそれ所じゃ無くなるだろうしね!」

「それ所じゃないってどういう意味だ?」

「どのクラスになろうが死ぬ気で勉強しないと駄目って事だよ?」

「そうそう、上のクラスは落ちないように。下のクラスは上がるために死に物狂いよ?」

「なるほど。」

「じゃあとりあえず勉強道具を見に行こうか?」

「そうね。インク買わなきゃ。」

「付いて行く。」

二人に付いて行く。

冒険者ギルドを出て中心部へと歩く。

どうやら門の近くは人が多かったようで、慣れてない俺でも普通に歩けるくらいの人通りになり、三人で横に並んで通りを歩く。



一軒の商店に入る。

今までの商店に比べて倍以上広い店だった。

三人で本のコーナーへ行く。

「なぁ?なんでこの白紙の本は数千ゴールドなのに、普通の本は数万ゴールドなんだ?」

「ん?あぁそれはね?写本代が高いんだよ?」

「うんうん!その本一冊を手作業で書き写すなんてすごい大変だもんね。」

「なるほど。だがこれだけの本を買うのは骨が折れるな・・・」

「読むだけなら図書館でいいんじゃないかな?」

「学校の図書館でいいじゃん?」

「ほう?なら本は買わないでおこう。」

学校には図書館という物があるらしい。

そういえば学習本の中に書いてあったのを思い出す。

たくさんの本が置いてある場所だったはずだ。


エミールとターニャに言われるままに、白紙の本を一冊とペンとインクを追加で買っておく。

「次は武器屋だね?」

「そうね・・・自分用の武器を買っておかないとね?」

そう言って二人が商店を出て歩いて行くので付いて行く。



向かいの店が武器屋だった。

二人はずっと色々なロングソードを手にとっては素振りをしている。

俺は最初こそ色々な武器があるなと興味津々に見ていたがそれも飽きてしまい、今は店内に置いてある椅子に座ってボーっと二人が剣を選ぶのを眺めている。

「(観光って言ってたのにもう夕暮れだぞ・・・)」

ひたすら二人を眺める。


「やはり予算的にこれが限界か・・・」

「私もこっちね。」

やっと二人の剣選びが終わったようだ。

会計を終え剣を腰に下げた二人がやってくる。

「そういえばニコ君は武器は持ってるのかい?」

「そういえば見た事無いわね?」

「俺のはこれだ。」

そう言ってマジックバッグから刀を取り出す。


「刃がターニャの身長くらいあるけど扱えるのかい?」

「こんな長い曲刀・・・扱えるわけ無いじゃない・・・」

「そんな事よりももう日暮れだぞ?」

「もうそんな時間か・・・宿に戻ろう!」

「そうね!」

「やっぱり観光は無しか・・・」

がっくりと肩を落として店から出ると通りは等間隔に並んだ柱に魔力灯であろう灯りによって昼ほどでは無いにしても、歩くには支障が無い程度に明るかった。


「ほう魔力灯か?・・・これは便利だな。」

「光の届かない場所は危険だからいっちゃ駄目だからね?」

「そうそう!誘拐されちゃうよ?」

「肝に銘じておく。」

三人で人がまばらの通りを歩いて小鳥のさえずりへと向かう。


面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。

もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。


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