第二十一話 試験場へ。
三人で小鳥のさえずりに戻る。
一応雑魚寝部屋を見てから食堂に行くが、マット達はまだ戻ってきていないようなので三人で食事にする。
「私は・・・久々にパスタにしようかな?」
「僕はパエリアだね。」
「なら俺はこのセットにしてみるかな。」
すぐに手を挙げて店員を呼ぶ。
記念すべき始めての注文を滞りなく終え食事が運ばれてくるのを待つ。
「にしても・・・ニコ?さっきの曲刀は本当に扱えるの?」
「あぁ山ではずっとあの刀を使っていた。基本は弓だったがな。」
「へぇ・・・あんな長い刀をあんたがねぇ?ふーん?」
ターニャが机に肘をついてニヤニヤと俺を見つめてくる。
とりあえず良い気分とはいえない状況だ。
エミールは俺の言葉を聞いてなにやら考え事をしている。
すぐに料理が運ばれて来てみんなで食事にする。
「なぁ?そういえば入学試験って何をするんだ?」
「午前中は筆記、午後からは魔法と剣の実技よ?」
「筆記はこの国の歴史や計算に魔法の知識だね?」
「文字が書けないな・・・しかもこの国の国名すら知らんな。」
「え・・・この国はエスガルド王国よ?」
「本当にニコ君はどういう生活を送っていたんだろうね?」
二人が呆れているが、そこはこれから勉強すればいいだろう。
「こりゃニコは鉄スタート確定ね?まぁ半年後には上がるんだろうけど?」
「そうだろうね・・・だけどニコ君なら上がるだろうね?」
思った以上に二人からの俺の評価は高いようだ。
だが試験と言うものが皆目検討も付かない。
三人で料理を食べて雑魚寝部屋に行くと部屋の中は同じくらいの歳の男女でいっぱいだった。
本を読む子供もいれば、隣の友達と話す者や抜き身の剣で素振りしている者までいる。
「みんな明日の試験を受けるのか?」
「でしょうね。他のキャラバンで来た人達でしょ。」
「だが長男や有力な貴族なら自分の馬車で来るはずだから、僕とターニャと同じような境遇の人達だろうね。」
ロジェ、シモンヌ、マットの姿は無いので横並びで六人分空いてる場所を探して横になる。
布団は白狼の巣と同じくらいに汚く、この布団も寝る気にはなれないので畳んで部屋の隅にまとめる。
エミールとターニャはその布団に嫌な顔をしつつも横になっている。
俺は寝袋を広げて鍛錬を開始する。
「ニコ?何してるの?」
「魔力の流れを感じている。」
「へぇ?感じてどうするんだい?」
「魔力の流れを感じれば、魔法の発動がスムーズになる。」
「へぇ?どうやるの?」
「面白そうだ!僕にも教えてくれよ。」
興味津々の二人にせがまれて、座禅を組んで集中しながら教える。
「魔力とは血だ。血の流れを感じる所からだな・・・目を閉じて全身の血の流れを感じるんだ。」
「地味ね・・・」
「これで本当に魔法が強くなるのかい?」
「地味だが毎日の積み重ねが重要だ。」
二人が座禅を組んで集中し始める。
俺が鍛錬を済ませ集中する二人を見ているとロジェとシモンヌが部屋に入ってきて俺達を発見して寄ってくる。
「おいニコ?二人は何しとるんじゃ?」
「目を閉じて何をしてるんでしょう?」
「集中させてやってくれ。」
二人はロジェとシモンヌの声も聞こえないほどに集中しているようだ。
良い事である。
しばらくして二人が静かに目を開ける。
「あら?ロジェとシモンヌじゃん?どうだった?」
「いやぁ?無事に帰ってきたんだね?」
「おう!二人で二万ゴールド稼いできたで?」
「二人で分け合って一人一万ゴールドになりました。」
ロジェとシモンヌが嬉しそうに言う。
一万ゴールドと言えば登録料だ。
二人の喜び方をみると中々の額なようだ。
しばらく四人と他愛も無い話をしていると店員がやってきて部屋の灯りを消していく。
「もう消灯時間か・・・」
「消灯時間?」
「寝る時間ってことだよ?マットはまだ働いてるのかな?」
「あいつは逞しいやつだから大丈夫だろう。」
「そうだね。じゃあみんなおやすみ?」
「「「おやすみ」」」
「おやすみ?」
「(とりあえず合わせたが寝る時の挨拶なのか?)」
疑問に思いつつ寝袋に入って眠る。
寝ているとマットが灯りを持った店員の案内でやってきた。
「遅くまでしてたんだな?」
「大忙しで参ったよ・・・疲れたぁ・・・」
店の手伝いとは何をするのかもわからないが余程疲れたのだろう。
マットがそう言って布団に入ると同時に寝息を立て始める。
翌朝目覚めてみんなと一緒に食堂に行く。
「満員だね?」
「満員ね?」
「学園への道すがらに食堂を探しましょうか?」
シモンヌの意見を取り入れて預けていた荷物を受け取って宿を出る。
俺は背負いカバンでマットは風呂敷を肩に掛けているので楽だが、他の四人は中々の大きさの旅行カバンなのでとても重そうだ。
「シモンヌ?持ってやる。」
シモンヌが両手でカバンを重たそうに歩いている。
時折地面に引きずってないか確認しているのでシモンヌのカバンを持ってやる。
「・・・マット?マットはあたしの持ってくれないの?」
「え?あ、はい!」
ターニャがなぜか不満そうに頬を膨らませながらマットにカバンを持たせる。
シモンヌは嬉しそうなのになぜだろう?考えるが全くわからない。
「このお店にしましょう!」
「そうね!いいんじゃない?」
上機嫌のシモンヌと不機嫌のターニャが一軒の店に入って行く。
「なんともオシャレな店を選びましたね・・・」
「わしゃ入るのにためらうのぅ・・・」
「重い・・・ターニャはこのカバンに何を入れてるんだ・・・?」
「なんでもいい。腹が減った。」
店に入ると、店内はピンク色を基調とした内装でぬいぐるみや人形がたくさん飾ってある店だった。
メニューを見ても理解できない言葉が並んでいてちんぷんかんぷんだ。
「このくまたんの卵布団って何だ?」
「多分オムライスかな?」
「癒しの黄色いくまたんは?」
「多分・・・プリンかな?」
ターニャが教えてくれるがさっぱりだ。
「すまんが普通に食べられそうなものを頼んでくれ・・・」
「わかったわ。」
「申し訳ないが僕のもお願いするよ・・・」
「ワシもじゃガッツリ食べたいのぅ・・・」
「僕も千ゴールド以内で!」
ターニャがなぜか気合を入れて注文してくれる。
「どうぞくまたんランチですっ♪」
上機嫌な熊耳を付けた店員が料理を運んでくる。
どうやら俺とロジェの料理なようだ。
ハンバーグやパスタが一つの皿に乗っている料理で美味そうだ。
ただハンバーグが人形の熊に似せてあるのが理解出来ない。
「森でくまたんナーラですっ♪」
どこらへんが熊なのかさっぱりわからんが普通のカルボナーラだ。
ターニャとシモンヌの料理のようだ。
「毛刈りくまたん毛まみれですっ♪」
ただのカレーだ。
米が変わらず熊の人形をかたどっているのが気になるがカレーだ。
エミールとマットの料理なようだ。
みんなで料理を食べて店を出る。
ターニャとシモンヌは満足そうに大通りを歩いて、マット達は疲れた顔をしている。
「美味しかったけど雰囲気に飲まれて味がよくわかんなかった・・・」
「同じくですね。」
「ワシもじゃ・・・」
「(確かに変わった内装だったがそこまでか?)」
よくわからないが三人は疲れたようだ。
しばらくみんなに付いて行くと城がどんどんと大きくなって行く。
大きい建物だとは思っていたが近くに来ると見上げすぎて首が痛くなりそうだ。
学校が近くなったのだろう、通りには同じ歳ほどの人間が増えてくる。
みんな一様に城へと進んでいる。
「学校は近いのか?」
「ニコ君?目の前にあるじゃないか!」
「ん?あれは王城だろ?」
「学校は王城の隣にあるんだよ?」
「ほう?」
「本当にあんた何も知らずに山から出てきたのね・・・」
エミールの言葉に驚いているとターニャが呆れた様子で俺に言う。
「初めてだらけで、楽しいぞ?」
「どんだけポジティブなのよ・・・」
「さっ!受付に行こう?」
エミールの言葉に皆頷いて王城へと歩を進める。
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