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第百九十話 ヴィンガとロンヴァルトの結婚式

女王の下へと向かっていると、街の中に雪崩れ込んで行った人々が次々と魔物を担いで出て来て、バッツとギルド職員の前に積み重ねている。

二人は慌てた様子で紙にあれこれと書き込んでいるので、おそらく誰がどの魔物を持ってきたのか記帳しているのだろう。

「(にしても全て頭を吹き飛ばしているのか・・・)」

積み重なる魔物は見事に全てが頭が吹っ飛んでいる。

そして魔物が襲って来たという警笛も声も聞こえてない。

御使いと名乗っていた二人は先程の数秒で街中を偵察して、完璧に魔物の頭を撃ち抜いたようだ。

にわかに信じがたいが実際に目の前で起こっていることなので信じざるを得ないのだが、聖騎士はただ面倒臭い存在だと思っていたが、評価を改めねばならないようだ。



「あの?ルドルフ様?」

「ん?あぁセシリア女王か。俺の仕事は終わりだ。そしてピエロを追い払った名誉と褒章は聖騎士御使いのアルテミスと言う人物に出してやってくれ。」

「やはり先程の天使様は御使い様でしたか。かしこまりました。」

「御使いとはなんだ?」

「御使い様とは聖騎士様が様々な功績を重ねられ、人と言う存在から昇華なさった方々だと伺っております。」

「成程。では俺の仕事は終わりでいいな?」

セシリア女王は俺の言葉に黙って頷くので、さっさとエスガルドに帰るべくヴァドールに向けて走り始める。

セシリア女王はまだ何か話したそうな感じだったが、どうせ城に顔を出せとか森にいた魔物の素材売却を、とかだろう。

バッツならまだしも、リーオのギルドに素材売却など絶対に嫌なので無視する。

そしてバッツへの売却も、バッツの目の前でアイテムボックスを取り出して俺が火事場泥棒をした事がばれてしまったら目も当てられないので却下である。



「(ついでだし適当に木を切って持って行くか。)」

森を抜ける時に思いついて適当に木を切ってアイテムボックスに入るだけ突っ込む。

村の再建にどれだけの材料があっても足らない状況なので少しでも手伝える事は手伝っておくべきだろう。

二十本近くの木を入れた所でアイテムボックスが一杯になったので再びヴァドールに向けて走り、家を建てている村人達の下に行き木を取り出して一緒に家を建てる。

一週間遊んだりもしながらだが、手伝っているので慣れたものだ。



「ルドルフ様は村に残ってくれないんですか?」

「「は」とはどう言う意味だ?」

「聖騎士様達はツツジとウツミと結婚してこの村で住むそうですよ?」

「ほうっ!?それはそれは!いい話を聞けた。何か祝いをしないとな。」

作業をしていると村人が嬉しそうに話してくる。

何がどうなってそうなったのかさっぱりだが、なんとも目出度い話が聞けた。

是非ともお祝いをしなければならない。


「村長が大層喜びまして、式は急遽ですが明後日ですよ?」

「成程・・・村長も必死だな。」

「ハッハッハッ!その通りでさぁ!聖騎士様達の気が変わらない内にって事ですね!」

「この村の結婚式とはどんなものなのだ?」

村人と楽しく話をしながら作業を進めて行く。

どうやらエスガルドで主流の結婚式と同じで純白のウェディングドレスを着た新婦がタキシード姿の新郎と誓いの言葉を結ぶようだ。

ただこの村では、ウェディングドレスとタキシードを長年使い回しで使っているので純白とは言い難いですが・・・っと村人が笑っていたのでヴィンガとロンヴァルトに送るプレゼントは決定した。

夕暮れになって作業が終わったので野営地点に戻って作業を開始する。



「あら?もう戻ってらしたんですか?」

「という事は大迷宮はもう解放ですか?」

「あぁ。聖騎士の御使い様が現れてな?すぐに解決した。」

クネの糸で出来た白い生地を使ってウェディングドレスを製作しているとクリスティアナとパンジーは帰ってきた。

まさか俺が一日で帰って来るとは夢にも思ってなかったようで、村で夕食を食べてから戻ってきたようだ。


「何をしてらっしゃるんですかぁ?」

「染み一つ無い白い布・・・まさか?」

「そのまさかだ。ツツジとウツミのウェディングドレスだ。」

「素敵です!是非お手伝いします!」

「私もお手伝いさせてください!裁縫得意です!」

「じゃあ三人で作って明日の朝一に渡そう。だがその前に夕食を食べる。」

二人が手伝ってくれると言うのはとてもありがたい。

だが二人が夕食を食べているのであれば待つ必要は無いので作り置きの料理を取り出して夕食を食べる。


「と言うか・・・このウェディングドレスって最新の形だね?」

「そうだよね?こんなの着たいなって商店で立ち読みした気がしたもん!」

俺が夕食を食べていると二人が興奮した様子で作りかけのウェディングドレスを手にとって話している。

クネに渡した服飾の本に載っていたドレスを元にして作っていたのだが、大成功だったようだ。

さっさと夕食を食べて三人でウェディングドレスを作って夜が更けて行く。









次の日は三人で一日中ウェディングドレス製作に使い、あっという間に結婚式当日になった。

三人で出来上がったウェディングドレスを持って結婚式が行われる村の集会場へと向かう。

集会場では村人達が慌しく動き回っていた。

そして集会場の裏にある控え室に行くと黄ばんだウェディングドレスに身を包んで念入りに化粧をするツツジとウツミがいた。

「ルドルフ様!?」

「帰って来とったんか!?ルドルフ様が手を出さんけん、うちらもう手が届かん所に行ったで?」

「それは大きい魚を逃したな?・・・これは俺達からの御祝いだ。ヴィンガとロンヴァルトを驚かせてやれ。」

「昨日ルドルフ殿と一緒に作りました!」

「これはエスガルドで・・・ですが最新のデザインです!」

俺の姿に気付いた二人の新婦に作りたてのウェディングドレスを渡す。

パンジーが胸を張り、クリスティアナは散々エスガルドが田舎扱いされたからか少し腰が引けた様子で二人に言っている。

クリスティアナの心配をよそに二人は俺達が作ったウェディングドレスを見るやいなや、先程まで宝物のように扱っていたウェディングドレスを乱暴に脱ぎ捨て始める



「だからお前ら・・・新婦なのだからもう少し恥じらいをだな・・・」

二人が下着姿になるので慌てて控え室から出る。


「純白・・・ありがとうございます!」

「こんなん着て結婚式とか村始まって以来じゃで・・・」

「手袋とヴェールも作りました!」

「あとブーケもルドルフ殿が花を摘んでくれたので作りましたよ!」

控え室の中から会話だけを聞く。

どうやら俺からの祝いの品は喜んでもらえたようで大満足である。

後はツツジとウツミの姿を見てヴィンガとロンヴァルトが驚いてくれれば言う事は無い。

新婦の相手はクリスティアナとパンジーに任せてもう一つの贈り物を作るために、今日の宴会に向けて料理を作っていると言う村長の家へと向かう。



「お前ら!今日は肉を大盤振る舞いじゃ!酒も取っておきがあったじゃろ?全部出せ!」

「「「はい!」」」

家に入ると村長の指示が聞こえる。

普段は杖を突いて歩くのもやっとの様子なのに元気な事で大変素晴らしい事である。

恐らく聖騎士が村に定住するという事でテンションマックスなのだろう。


「村長?済まないが手先が器用な人間を一人借りれないか?」

「これはルドルフ様!?・・・カイサ!ルドルフ様がお呼びだ!」

「忙しいのにすまないな?」

「いえいえ!問題御座いません!」

「そうだ。これは俺からの餞別だ。」

村長に呼ばれてツツジとウツミにも劣らない見目麗しい褐色の美女がやってくる。

お礼代わりにゲーテの町で貰った最後の酒樽を置いて村長の家を出る。



「カイサだったな?これから俺達はケーキを作る。食べた事はあるか?」

「ねぇです!どがいな物じゃろ?」

村長の家から少し離れた場所でカイサと話すが、やはり鈍っていた。

とりあえずケーキのスポンジを焼き上げている間にカイサに絵を描いて説明する。

俺の絵は酷いとしか言い様の無い絵だったが、カイサは大体把握してくれたようだ。


「つまりうちはクリームを塗って果物を飾りつけりゃえんじゃな?」

「そういう事だ。初めてで出来は悪いだろうが俺が作るよりは百倍マシだろう。頼んだ。」

「任せんちゃい!」

焼きあがったスポンジを型から取り出しながら言うと、カイサは両手の指をわしゃわしゃと動かして楽しみな様子だ。

そしてスポンジは完璧に焼きあがる。

俺がスポンジを焼けば、焦げるか膨らまないか生焼けになるのに、型に生地を流し込んで窯に放り込む作業をカイサにしてもらっただけでこうも違うのかと自分のデザート作りの才能の無さを痛感する。


「均等に塗るんが難しいのぅ・・・」

「大丈夫だ。俺が作るのに比べると百倍美味そうだ。」

カイサがクリームを塗っている間に果物を切る。

カイサはクリームを塗りながら不満そうにしているが俺が塗ったケーキに比べると塗厚は均等だしとても美味しそうだ。

その後も結婚式が始まるまでカイサと二人でケーキを作り続ける。



「ルドルフ様?鐘がなったけん結婚式が始まるで?」

「では行こう。」

出来上がったケーキを時忘れのマジックバッグに放り込んでカイサと一緒に集会場へと走る。

集会場の表へ行くとクリスティアナが待ってくれていて、そのまま案内をしてくれたので迷う事無く俺のために用意してくれていた席に着く事が出来た。

部外者の俺など末席の端っこで十分だったのに、よりによって最前列の内側である。


「急に消えて何をしてたんですか?」

「ちょっともう一つの祝いの品をな?」

「パンジー気にしすぎ!さぁ始まりますよ!」

パンジーと話していると集会場に法衣に身を包んだヴィンガとロンヴァルトが入ってくる。

二人共カチコチに固まっていてかなり緊張した様子だ。

続いて俺達が作った純白のウェディングドレスに身を包んだツツジとウツミが厳かに現れて、お互いの相手の手を握る。

二人共褐色の肌が純白のウェディングドレスによって際立ちとても綺麗だ。

ヴィンガは隣のツツジを見て目を見開き、ロンヴァルトは体を仰け反らせて驚いている。

「(聖騎士様のこの姿を見れただけで昨日頑張って作った甲斐があると言うものだ。)」

そのまま驚きを隠せないまま新婦達に誘導されて神父に扮する村長の下へとヴァージンロードを歩く二人を見て笑みがあふれ出てくる。

その後もヴィンガとロンヴァルトはツツジとウツミに先導されるままに式が進んで行く。


「やっぱりこういう時に肝が据わってるのは女だね?」

「そうだね?ヴィンガ様もロンヴァルト様もおどおどして可愛いね?」

二人がカチコチになった聖騎士二人を見て楽しそうに話している。

二人に可愛いと笑われても仕方ない程に新郎達は不甲斐無い様子で式は厳かな様子で進んで行く。

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