第百七十五話 ヴァドールへの森
遅くなりましたが今日も二話投稿です。
(最終)見直しを済ませ次第にアップします。
「ルドルフ殿魔物です!またドランブサーペント、大迷宮の固有種ですね!」
「わかった。そのまま進め。」
翌朝朝食を食べてからヴァドールの村に向かっている。
分かっていた事だが森に入った途端に魔物に襲われ続けている。
森の中は馬車が通るのが一杯一杯で擦れ違うのはかなり厳しいだろうと思われる道幅なので魔物を避けようが無い。
今もパンジーに言われて御者台から飛び降りて二メートルの蛇へと走り寄る。
蛇が俺に向かって毒魔法を飛ばしてくるが狭い洞窟であれば脅威かもしれないが、今は森の中である。
俺が避けるまでも無く間にある木に当たって毒を撒き散らしている。
毒に触れないように近づいて首を切り落として血抜きを始める。
「ルドルフ殿新手・・・あれはやばいです!反転します!」
「問題無い進めろ。」
血抜きをしているので匂いに釣られたのだろう、森の奥からティラノサウルスが現れる。
血抜きが終わった魔蛇をマジックバッグに放り込んでティラノサウルスへと走る。
「ギャオォォォォォッッ!」
俺が近づくとティラノサウルスは体を回転させて周りの木々を薙ぎ倒しながら尻尾を振り回してくる。
「(遅すぎだ・・・)」
沼地での尻尾ならまだしも、今は森の中で障害物だらけだ。
木々を薙ぎ倒して速度が緩んだ尻尾など当たりようが無い。
尻尾の上に着地してそのままティラノサウルスの背中を駆け上がる。
「ギャッ?ギャオゥッ!」
俺の存在に気付いたティラノサウルスはピョンとジャンプして体を地面に叩きつけて、ジタバタとのた打ち回り始める。
恐らく俺を潰そうと思ったのだろうが、獣の考える事などお見通しだ、俺はすでに空中に飛んでいるので無駄な行動であるとしかいいようが無い。
そのまま重力に任せて落下してティラノサウルスの目に刀を突き立てて雷魔法を発動する。
「地竜が・・・マジスカ。」
「パンジー?地竜じゃなくて亜竜よ?」
「すまんが一分待ってくれ。」
馬車が追いついてパンジーとクリスティアナが唖然とした表情で話している。
俺は大急ぎでヴァンパイアニードルを使って血抜きを行い内臓と魔石を抜き取り、最低限の解体を済ませてアイテムボックスに放り込んで御者台に乗り込む。
「待たせたな?さぁ行こう。」
「かしこまりました!」
「さぁ行きましょう!」
二人はすぐに縄を引いて馬車が進み始める。
こんなに連続して魔物に遭遇したら、普通なら馬は興奮して使い物にならなくなると聞いているが、二人が操縦する馬は落ち着いている。
馬が御者に二人を信頼している証拠だろう。
「なぁルドルフ?」
「何だ?」
「もうちっとよぉ?刀以外の戦闘をするか苦戦してくれよ?強さが計れねぇ!」
「知らんがな。」
御者台の窓からロンヴァルトが顔を覗かせて言って来る。
お前らが見ているから出来る限り刀だけで戦っているのだ。
お前らさえいなければ馬車ごと認識疎外魔法をかけるとかやりようは色々とあるのに、戦闘にも参加しないし本当に邪魔な奴らである。
「魔物が三体近づいて来ているな・・・」
「またですか?しかもまたドランブサーペントじゃないですか!?」
「やはりルドルフ殿の予想通りにオーバーフローで森まで逃げた魔物がたくさんいるようですね?」
探索魔法に反応があるのでその方向を見ると木々の奥に二メートルの蛇が三体見える。
さっき倒したが、パンジーとクリスティアナから聞いた話ではドラゴンケイブ大迷宮にのみ生息する固有種らしいので、予想通りにオーバーフロー時に勢い余って街を飛び出した魔物がたくさんいるようだ。
真っ直ぐこちらに向かって来るので弓矢を放つと三体は避ける素振りも無くそのまま突っ込んできて頭に矢が刺さり地面を転がる。
「こいつら避けると言う事をしないのだな?」
「大迷宮の中は暗闇と聞きます。固有種なので目が退化しているのでは?」
「さすがはパンジー!それなら矢が見えないし避けないのも説明がつくね?」
二人の言葉は妙に説得力がある。
俺は確認するべく今しがた仕留めたドランブサーペントの下に行き首を切り落として血抜きをしながら頭を確認する。
「(確かに目は真っ白で瞳孔も何も無いな・・・)」
蛇の目を開いて確認するがパンジーの推測が合っている可能生はかなり高そうだ。
さっさと最低限の解体を済ませてアイテムボックスに放り込んで御者台に戻る。
「多いな・・・あとどれくらいでヴァドールだ?」
「予定通りなら三時間程で森を抜けて、そこから更に三時間程でヴァドールです!」
予想以上に魔物の数が多すぎる。昨日の会話でこうなるとわかっていて行くと言ったのは俺なので文句を言えないのがもどかしい。
「(とりあえずあと三時間頑張れば魔貝を食べられる。)」
自分に言い聞かせつつ新手のドランブサーペントが近づいて来るので御者台から飛び降りる。
「おい!まだ森は抜けないのか!?」
「森の切れ目が見えるのでもう抜けるはずです!」
その後俺は御者台に戻る事なく森の中を駆け回ることとなった。
ドランブサーペントとか言う蛇をニ百体は倒した、というかドランブサーペントしか見てない。
街の中では虫の魔物ばかりだったが、森の中は蛇ばかりのようだ。
「ルドルフ殿!森の出口にドランブロックサーペントです!」
クリスティアナの言葉に反応して馬車の前方でシューシューと身を起こして威嚇している十メートルを超す大蛇に向かって走り出す。
「邪魔臭い!」
ドランブロックサーペントの首を横薙ぎに一閃する。
だが名の通りに鱗は岩のように硬く俺の刀は金属音と共に弾かれてしまう。
「ルドルフ殿危ないです!」
「ルドルフ殿は大丈夫だから馬車を止めるのよパンジー!」
「何を騒いで・・・?」
パンジーとクリスティアナの叫び声に反応して振り返るとドランブロックサーペントが大きく息を吸い込んでいた。
嫌な予感しかしないので即座にジャンプしてその場から飛び退く。
直後ドランブロックサーペントが口から土石流のようなブレスを吐きながら俺を追ってくる。
「あれはくらったらやばいな・・・」
ただ防ぐだけなら、魔法障壁と結界で防げるだろうがその後ブレスで出来た土の山から脱出している間に馬車を襲われてしまう。
一応馬車に聖騎士が乗っているので大丈夫だと信じたいが、彼らが二人を守ると言う保証はどこにもない。
土のブレスを避けながら大蛇を馬車から遠ざかるように誘導する。
「(そういえばこいつも目が見え無いのだろうか?)」
ドランブロックサーペントの目は真っ白だ。
ブレスを吐きながら追って来るドランブロックサーペントに向けて弓を射る。
俺が放った矢は土のブレスに巻き込まれて消えてしまったので、しっかりと風魔法で矢の軌道を作ってから再び矢を射る。
「シギァァァァッッ!」
今度は矢は土のブレスを避けた軌道を描いて、ドランブロックサーペントの目に矢が刺さり、大蛇が叫び声を上げ土のブレスが止まる。
そして馬車から遠ざかったのでここなら聖騎士の二人に俺の戦いを見られる事もない。
そうなればやる事は一つだ、本気で相手をしてさっさと仕留めてやろう。
刀を魔力特性で強化し、更に空気の刃を発動させる。
今回発動した空気の刃は飛ばすためではなく刀に纏わせて切れ味をアップさせるためだ。
そして纏わせた空気の刃も魔力特性で強化する。
前回ティラノサウルスを斬れなかった時に次は斬るためにと練習していた三魔法同時発動の複合魔法であり、俺の計算が正しければこれでティラノサウルスだろうがドランブロックサーペントだろうが余裕で斬れるはずだ。
「ギシャァァァァァッ!!」
「煩い!」
矢が刺さって地面をのた打ち回るドランブロックサーペントの首に向かって上段から全力で刀を振り下ろす。
刀は易々とドランブロックサーペントの鱗を貫き、骨ごと一刀両断して地面へと刀が吸い込まれる。
「(こいつで最後・・・だよな?)」
自分に言い聞かせながら息絶えたドランブロックサーペントに最低限の解体を施してアイテムボックスに放り込んで馬車へと戻る。
昨日クネの好意で貰ったアイテムボックスだが早速大活躍である。
アイテムボックスが無ければすぐにマジックバッグが一杯になって引き返していただろう。
「さすがはルドルフ殿です!お帰りなさい!」
「あぁありがとう・・・海の匂いがするな。」
俺が戻ると馬車は森を出た所で俺の帰りを待っていた。
近づくと馬車の横で待っていたクリスティアナが扉を開けてくれるので馬車の手すりに手をかけて乗り込もうとすると磯の香りがした。
「あと三時間ほどでヴァドールの村ですからね。」
「楽しみだ。」
馬車に乗り込むと聖騎士の二人は不満そうな顔をしていた。
どうせ俺の戦闘が早すぎるとか最後の戦闘が見れなかったとかそんな所だろう。
一切手伝おうともしなかったこいつらに対して正直思うところもある。
何も言わずに釣り道具を取り出してメンテナンスを始める。
「おいルドルフ!ドランブロックサーペントはどうやって倒したんだ?」
「煩い。お前に教える義理は無い。」
沈黙に耐えかねたのかロンヴァルトが口を開く。
どうやって倒したかなど教える訳が無い。
嫌ならば帰ってくれればいいだけの話である。
「一発目で弾かれたのに、なんで二回目は一刀両断したんだよ!?教えろよ!」
「見えてたのか?なら教えよう・・・誰にも秘密だぞ?」
「わかった!どうやったんだ!?」
もう見えないだろうと思っていたのに見えていたようだ。
俺が指で呼び寄せるとロンヴァルトは満面の笑みで耳を近づけて来るので小声で教えてやる事にする。
「気合だ。」
「はぁ・・・気合であんなに威力が上がるかよ!?期待した俺が馬鹿だった。」
ロンヴァルトが呆れながら席に深く腰掛ける。
この男はなぜ俺が手の内を話すと思うのか本当に不思議である。
「ほら秘密と言ったのにもう破った。そんな人間に本当の事を教えられるものか。」
「フフフ。ロン一本取られましたね?」
ありがたい事に俺の魔力特性は知られたからと言って対応策をとられる類のものでは無いのだが、知られていないにこした事は無い。
「逆にだ。ロンヴァルトお前は自分の魔力特性を俺に言えるのか?」
「知りたいか?」
「教えてくれるなら俺も教えよう。」
今度はロンヴァルトが指で来い来いとジェスチャーをするので耳を近づける。
「具現化だ。」
「なら俺も具現化だ。ロンヴァルト?嘘をつくならせめてヴィンガの魔力特性以外を言うべきだ。」
「そうです!もうばれているとは言え無用心がすぎます!」
ロンヴァルトはヴィンガの鉄拳制裁を喰らって膨れっ面になっている。
自業自得としかいいようが無い。
一番煩い人間が膨れっ面で静かに窓の外を眺めてくれているので車内はとても静かで本当にありがたい。
ヴィンガは教典を読み、俺は釣り道具のメンテナンスを始める。




