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第百七十四話 アランの手紙

本日二話投稿です。

これは二話目です!

「街丸ごと手に入れたからこんな物は珍しくもないだろうが・・・」

昼食を終え、机の上に将棋盤や本などのルル達への御土産にと思っていた物を次々と乗せて行く。

街丸ごとの物資を手に入れた今、これっぽっちの物などいらないだろうと思ってやめようかとも思ったのだが一応渡しておく。


「ニコ?珍しいとかじゃないのよ?あたし達の事を考えてニコが選んだと言うのが大事なのよ?」

「ならばよかった。」

クネが嬉しそうに俺が渡したファッション誌を読みながら嬉しい事を言ってくれる。

これならばルル達も同じように喜んでくれそうなので一安心だ。


「そういえば街の様子だけを見れば魔物に占拠されて結構な時が経ったように見えるが?」

「少なくともあたし達が大迷宮に入ったのは十日前ね?魔物達が住みやすい様に作り変えたんじゃない?」

最後の最後に気になっていた事をクネに尋ねておく。

やはりダンジョンの中でも思ったが魔物達の力はすごいの一言だ。

たった十日でドランブの街を森で覆いつくせる程までとは思ってもいなかった。



「じゃあ俺は人間社会に戻るとする。」

「では我々も見送りついでに表に行くっす!」

「「ニコ様こちらっす!」」

クネ達に渡そうと思っていた物も渡せたので、大満足で席を立つとコボチョウ達がキビキビとギルドの外へと案内してくれる。


「ニコ?あたし達がして上げられる事は少ない・・・だけど何でも頼りなさいね?」

「言われなくても頼りっぱなしだ。また帰る。」

クネはファッション誌で顔を隠して手を振っている。

隠しているつもりなのだろうが、机の上にはぽたぽたと雫が落ちているので泣いているのはまるわかりである。

クネは表情筋が退化してしまっている上に、ルルほど騒いだりしないので感情が無いと思われがちだが、実はルル以上に激情家なのだ。

思わずクネに抱き付きたくなるがここで抱き付けば面倒臭い人間社会に帰る気が無くなりそうなのでグッと我慢してコボチョウ達と共にギルドを後にする。




「さすがだな?もう俺よりも強いんじゃないのか?」

「まだまだっす!ニコ様が帰ってくるまで勝ち続けて久々に勝負したいっすね!?」

「出来ればごめんだ。」

襲い掛かってくる魔物達を軽々と蹴り飛ばしながら進むコボチョウ達を見て感心する。

コボチョウは楽しみな様子だが、正直な所本気で戦えばどちらが勝つか全く予想できない。

そして一番重要なのがブールニア騎士団や聖騎士達が観戦する中、手の内を隠しながらコボチョウ達に勝つ自信は無い。

しかもこいつらは俺の眷属なので主人が負けるのは許されないという無駄にハードルの高い戦いとなってしまうので避けたいものである。




「我が君よ。あれから侵入者は来ませんでした。」

「御苦労っす!では我々が侵入者の対応をするっすからクネ様のサポートをお願いするっす!」

「かしこまりました。では御健勝をお祈りしています。」

メドゥーサは恭しく頭を下げて街の中へと進んでいくので、見送ってコボチョウ達と街の外へと出る。


「ではニコ様お気をつけて下さいっす!」

「あぁ。コボイチとコボサンも頑張れよ?怪我をしたらこれを使え。」

コボチョウ達がやる気満々といった様子で陣を張る騎士達に向かって挑発するようにシャドーボクシングをしながら言ってくる。

俺はコボチョウに特級回復薬(ハイポーション)を渡してから、騎士団の陣を抜けて更に後方にある冒険者達の野営場所に戻って認識疎外魔法を解除する。



「パンジークリスティアナ待たせたな?」

「ルドルフ殿!?今までどこへ?」

「お帰りなさいませ!これからどう動くか決まりましたか?」

俺が姿を現すとパンジーは焦った様子だが、クリスティアナは即座に何か納得したような顔をしてこれからの予定を聞いて来る。

パンジーはまだまだだが、クリスティアナはフォルナやアイリーンの域へと達しつつあるようだ。


「予定通りヴァドールの村に行って海の幸を食べるぞ?海女体験も出来れば言う事無しだ。」

「かしこまりました!では明日朝一で出発ですね!」

「聖騎士様二人はどうなさいますか?」

「戻ってくればいいし、戻ってこなければ俺達は別行動だ。」

戻ってくるな。祈りにも似た気持ちでクリスティアナに返答する。

出来れば聖騎士達抜きでゆっくりと観光を楽しみたい。







「おい!ピエロが引っ込んでウォーウルフとハイコボルト二体が出てきたってよ?」

「そうか・・・ならば踏み込める様になるのも時間の問題かもな?」

「いや・・・騎士達が向かったが一瞬だったそうだ・・・」

「それはそれは・・・強いハイコボルトがいたもんだな?」

夕食を作っているとバッツが駆け寄ってきて報告してくれる。

ブールニア騎士を歯牙にもかけずに一蹴したようで一安心だ。

同時に、観光を終えて帰ってきた時に勝てるか不安になってくる。



「余裕そうだな?噂のルドルフ殿はどうなんだ?勝てるのか?」

「さぁな?どっちにしろ俺達は明日からヴァドールの村に観光だ。」

「ヴァドールに行くんなら気を付けろよ?稼げないって痺れを切らした冒険者が数人森に入ったが・・・戻ってきてねぇ。」

「御忠告ありがたく受け取っておく。」

バッツがニヤリと笑って離れて行く。

もしかすると確認されて無いだけでオーバーフロー時に強力な魔物が勢い余って街を出て森に逃げたのかもしれない。

そしてヴァドールに行くためには東の森を抜けなければいけないのでかなり危険なようだ。


「ルドルフ殿?ヴァドールの村観光はやめますか?」

「なぜだ?海の幸を食べたい。それに素潜りで魔貝を取る女性達がいるのだろう?魔貝など食べる機会はそうないぞ?」

「パンジー?こうなったらルドルフ殿は止まらない。」

「先輩方の言っていた通りですね・・・」

二人が諦観の笑みを浮かべて何やら話している。

一体フォルナとアイリーンから俺の事をどう聞いているのか気になるが聞いた所ではぐらかされるのだろう。

そしてそんな事よりも普通の貝であんなに美味しいのに魔貝になるとどれ程美味しくなるのか気になって仕方が無い。



「さ?もう少しすれば夕食だぞ?一応聖騎士の分も作るが帰ってこなかったら明日に備えて動けなくなるまで食べろ?」

「ありがとうございます!」

「楽しみであります!」

今日の夕食はピザだ。

ピザ釜を熱々の状態で時忘れのマジックバッグに入れているので、取り出して中に薪を追加すればすぐに使える状態だ。

明日の森での狩りに備えて少しでも時忘れのマジックバッグを空けようと思ったのだが、折角なら使ってから普通のマジックバッグに移動させようと思ったのだ。





「クルックゥゥゥゥ!」

「タルトか?どうした?」

ピザを焼いているとベビードラゴンが飛んで来て首に付けたマジックバッグから一枚の紙を取り出して渡してくる。

紙を広げて見るとアランからの手紙だった。


ルドルフへ。

ウィンストン優勝したよ?

んでもってニッグ達は九番隊に入って活動する事になって今は訓練中だよん!

九番隊の詰め所は王都内の屋敷を買ったから今度お金頂戴ね?

後ジャックに賭けてたのにあいつ五位だってよ?

おかげで今回の儲けを全部すった!あいつマジ最低!

こっちは学校も始まって最初はみんなニコのメイドに驚いてたけど今

はみんな一緒に仲良くやってるよ?

後少しばかり肉を分けて欲しいです!

あんたがいなくて忙しくて肉の補充に行けないの!

                  あなたのアラン




「ほう?ウィンストンが優勝したか。」

「クルックゥ!」

それ以外にはどうでもいい情報ばかりだ。

とりあえずタルトが首から下げているマジックバッグに燻製など日持ちしそうな食材を見繕って放り込んでおく。


「ピザ食べるか?」

「キュイッ!」

ベビードラゴンがやけに凛々しい顔で鳴く。

是非とも食べたい様だ、ピザを焼きつつ追加のピザ生地を作らなければならないので一気に作業量が増える。


「お前ら俺は気にせず食べていてくれ!スープはそこから勝手に取れ!あとベビードラゴンのスープも頼んだ。」

「はい!」

「かしこまりました!」

配膳をしている暇は無いので焼けたピザを取り出しながらパンジーとクリスティアナに指示を出す。

二人は慌しく動き、タルトは目を細めて美味しそうにピザを食べ始める。





「やっと解放されました・・・」

「間に合ったぜ!」

ピザを焼き終わってやっと俺も夕食を始めるとヴィンガとロンヴァルトが戻ってきた。

帰ってこなくていいのにと心の底で思うが二人は当然の様に俺の隣に座ってピザを食べ始める。


「美味しい!美味しいのですが・・・喉が渇きますね・・・」

「そうだな?ルドルフ?スープはねぇのか?」

「お前らの分はベビードラゴンが飲んだ。」

ピザは追加で作ったが、スープの追加までは手が回らなかった。

二人は俺の言葉が理解出来ないのかピザを持ったまま動きを止めているが本当の事なので仕方が無い。


「従魔など・・・どこにもいませんが?」

「そうだそうだ!それに魔物を優先して聖騎士がスープを飲めないなんて冗談にしてもおかしいぜ!?」

「食事を終えてエスガルドに帰った。あとお前らの料理を当然のように作っているがなぜ作らないと駄目なんだ?嫌なら監視も勧誘もやめて帰れ。嫌じゃなくても帰れ。」

二人の言い分も尤もなのかも知れないが、申し訳ないが俺の優先順位は眷属>>>>>>>エスガルド騎士>聖騎士なのだ。

二人は怒るかと思ったが意外にも申し訳無さそうに顔を伏せて食事を再開する。


「・・・このピザ美味しいですね?さすがはルドルフ殿です。」

「そ、そうだな!?戦闘の腕もいいし料理の腕も大したもんだぜ!」

「褒めなくていいから帰れ。」

そして二人のこの褒めようである。

褒めなくていいから諦めて帰って欲しいのだがそれはまだ叶わないようだ。

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