第百七十三話 人生初の金庫破り
バタバタしていて投稿空きました!
今日明日と二話投稿します!
こちらは5月6日一話目です!
「おい!次は何番っすか!?」
「0771っす!」
「おっし!さっさとやるっすよ!」
カウンターを越えて扉に手をかけると懐かしい声が聞こえてくる。
感慨にふけそうになるがそれよりもコボチョウ達がやっている途方も無い作業を終わらせよう。
「久しぶりだな?」
「ニ・・・ニコ様!?お久しぶりっす!」
俺が扉を開けるとコボチョウが飛びついて来て押し倒される。
こうやって飛びついて来るのは予想していたので身構えていたのだが、コボチョウは犬人間のハイコボルトから狼っぽいウォーウルフに進化し、俺の記憶よりも一回り大きくなっていた。
予想外の衝撃で力任せに押し倒されて顔を舐め回される。
ウォーウルフの舌はとてもザラザラしていてとても痛いので本当にやめて欲しいものだ。
「コボチョウ。コボチョウ聞け!」
「何っすか?」
「進化おめでとう。」
「ニコ様に付いて行ける日は遠いっすよぉぉぉぉ!」
コボチョウを落ち着かせようと言ったのだが、逆効果だったようだ。
コボチョウは泣きながらさらに激しく顔を舐め回され俺の顔はびちょびちょのヒリヒリで大変不快である。
「コボチョウ落ち着け!そこにいるのはコボイチとコボサンだな?が見ているぞ?」
一応俺の眷属なので間違えては無いと思うのだが、魔族の見分けは付きにくいので少し自信が無い。
俺とコボチョウとのやりとりを微笑ましく見つめる二体のハイコボルトは俺の問いに対して嬉しそうに尻尾を振りながら頷くので間違ってなかったようだ。
「そ、そうっすね!これはゴブチョウが羨ましがるっすよぉ?」
「それよりも状況を説明しろ。金庫はどうやって解除するんだ?」
「はい!この金庫はまずこの魔法陣のここから魔力を流すっす。それでクネ様お手製のマスターキーを回してから・・・ここに四桁の数字を撃ち込むっす!数字を間違えると開けられなくなるっすが、クネ様が初期化の魔法陣を描いてくださったので何度でも挑戦できるっす!ただ初期化の魔法陣を発動するのに結構な魔力を使うので一日百回くらいしか打ち込めないっす!」
コボチョウが部屋の奥にある巨大な扉の前で説明してくれる。
一日に百回挑戦出来て、もし正解が9999だった場合は単純計算であと三ヶ月はかかると言う事だ。
「現状はわかった。どけ。」
「はいっす!」
コボチョウをどかせて、目に魔力を集中させてみんなが一生懸命に打ち込んでいた数字盤を凝視する。
0~9まで規則正しく並んだ数字盤にはコボチョウ達の魔力では無い跡を探す。
「2と8の二箇所だな。」
「お前ら!その二個の数字を使って打ち込むっす!」
「待て!82・・・82だ!」
「わかったっす!コボイチ?」
なんともアホらしい話だが、なんとなく語呂合わせでバッツバッツである。
コボイチが打ち込むと、ガチャリと鍵の音がして扉が鈍い音を上げながら開く。
本当にあほらしい話しだが一発で正解の番号を当ててしまった。
「(バッツよ・・・自分大好きすぎるだろう・・・)」
バッツが単純そうだったから適当に直感で言ったが大正解だった。
「開いたっすよぉ!クネ様開いたっすよぉ!?」
「さすがはニコね!さっ中身を確認しましょ?」
興奮気味のコボチョウに呼ばれてクネがやってくる。
余程嬉しいのだろうクネがここまで興奮しているのは始めて見る。
「了解っす!メドゥーサ!おい蛇女!?いないっすか!?」
「我が君よ私はここに。」
「我々はこっちに専念するっす!見張りをしとけっす!」
「かしこまりました我が君。」
コボチョウの声に反応してギルドの二階から下半身が蛇の女性が降りてくる。
頭に髪の代わりに何十匹と言う蛇が付いていて、目を閉じているがとても顔の整った美人である。
そしてトップレスで乳房はモロ出しである。
おそらくメドゥーサは目から石化効果のある魔力を放つのでそれを防ぐために目を閉じているのだろう。
「コボチョウ?こいつは何だ?」
「我が君に失礼な口を聞くこの人間は何でしょうか?」
「ドラゴンケイブで出会ってボコボコにしたら付いてきたっす・・・メドゥーサ?この方にもう一度失礼な口の聞き方をしたら食うっすよ?」
俺とメドゥーサはほぼ同時にコボチョウに尋ねる。
いつも通りに俺に対して笑顔で応え、メドゥーサには今にも噛み殺しそうな顔で言っている。
コボチョウのこんな顔を・・・野生的な部分は始めて見るのでかなり違和感がある。
「(それにしてもコボチョウも多種族の眷属か・・・)」
思わずシンパシーを感じてしまう。
「失礼しました。では見張りに行って参ります。」
「頼んだっす!ではニコ様色々見ましょう?」
「わかった。」
ギルドを出て行くメドゥーサを見送ってコボチョウと二人でギルドの金庫へと入る。
「思ったよりいい物は無いわねぇ?」
「いや・・・この箱はアイテムボックスじゃないのか?」
金庫の中は一辺が五メートルの正方形の部屋で、扉が無い三方向の壁には所狭しと鍵付きの棚が設置してある部屋だった。
クネは詰まらなさそうに棚の鍵を糸で解除して物色しながら言っている。
俺は部屋の真ん中に備えられている木箱に目を付ける。
昔アランと一緒に買物した時に見たアイテムボックスにそっくりだったからだ。
もっともあの時に商店で見たアイテムボックスはこのアイテムボックスの倍は大きかったが。
「アイテムボックス?マジックバッグとどう違うのかしら?」
「持ち運びが大変な代わりに容量が段違いらしいぞ?」
クネと話しながら木箱を開けると中にはとんでもない量の物が入っていた。
「ほう?どんな効果かはわからないけどニコ持っていったら?」
「いいのか?エドが欲しがりそうな物ばかりだぞ?」
「あたしにこの仕事を押し付けた罰よ。それに知らなければ悔しがる事も無いわ?」
「・・・それもそうだな。」
クネの言葉に甘えてアイテムボックスの中身を物色する。
物々しい雰囲気を放つ槍と槌をまず選んで自分のマジックバッグに放り込む。
「ニコが選んだマジックウェポンっぽい物以外は魔物の素材ばかりね・・・」
「そうだな?」
おそらくかなり貴重な魔物の素材なのだろうが、俺達の食指を動かす物は無い。
棚の中もクネが全部開けたのだが、土地の権利証などばかりで全く面白そうな物はなかった。
「ニコ様?アイテムボックスはマジックバッグには入らないっすか?」
「入れば俺でもクネ並の容量を手に入れられるな・・・」
コボチョウの素朴な疑問に成程と思いマジックバッグを近づけると吸い込もうとしているのだが、俺のマジックバッグの容量が足りないようだ。
マジックバッグの中身を全てアイテムボックスへと移すと問題無くマジックバッグに入った。
「コボチョウ?街の中に同じような箱なかったかしら?」
「あったっす!取ってくるっす!」
クネの言葉にコボチョウ達がギルドを出て行く。
金庫も開き一段落して、今日はまだ昼食を食べていなかった事を思い出したので、ギルドの食堂で料理を始める。
「ニコ?人間社会はどうなの?その変てこな仮面は人間社会の常識なのかしら?」
「この仮面はな?認識疎外魔法が発動するマジックアイテムでな。」
「なぜそんな事をしているのかしら?」
「魔の森では弱かった俺だが、人間界では桁違いに強かったようで色々あってな?謎の冒険者ルドルフとして活動している。」
「あらあら・・・人間って面倒臭いのね・・・」
クネと話しながら遅めの昼食を作る。
俺も人間社会に出て色々学んで魔の森にいた時には疑問にも思わなかった事がたくさん出来ていたのでクネに色々と疑問が溜まっている。
今日解決出来るのは本当に僥倖だ。
「俺はクネを魔王種だと思っていたが違うのか?」
「種では無いわ。もう芽吹いてるもの。」
「やはりな。エドもか?あとハッピーはハーピィの魔族だと思っていたのだが違うのか?」
「エドも芽吹いてるわ?ハッピーは・・・それはまた本人から聞きなさい?」
実はハッピーの事が一番気になっていた。
本でハーピィの事を調べたのだが、魔物のハーピィは背中から翼は生えておらず、両手が翼のようになった魔物だった。
ハッピーは足が鳥のように鉤爪が付いているが、人間と変わらない腕を持ち背中からは立派な羽が生えているので、ハッピーはハーピィの魔族では無いようなのだ。
クネがハッピーの事で言い淀んでいる。
今までそれこそ産まれてから俺の質問には何でも答えてくれていたのに初めての事だ。
そんなクネが言わないという事は何かしらの事情があるのだろう。
「後な?クネがクラウンズで聖騎士を殺しただろ?身体が消えたが何があった?」
「聖騎士の勇者はね?殺しても教会で生き返るのよ。そして何度でも向かって来る・・・面倒臭いったらないわ。多分今日の勇者達も一週間もしたら倍の数になってやってくるんじゃない?」
クネは何でも無い様に言っているが、全員が口を揃えて聖騎士は面倒臭いと言っていた意味がよくわかった。
今回勝てても次は勇者の数が増えて、それに勝っても次はまた更に増える。
何度勝っても次は数が増える・・・俺はそんな戦闘は絶対に御免である。
「勇者だけ?普通の聖騎士は生き返れないのか?」
「普通の聖騎士は死体が残るし、次に見た事無いから多分生き返らないんじゃない?」
とても有意義なことが聞けた。
おそらくクネが今回相手しているのは用事が終わったらさっさとドラゴンケイブ大迷宮の中から魔の森へと帰るつもりだからだろう。
「ねぇ?見た事ない料理だけど何を作っているの?」
「クネは海産物を食べた事無いだろう?カニとイカの料理だぞ?」
折角なのでクネ達が食べた事無い物を振舞おうと思って、最後の最後なので大事に残しておいたクラーケンの肉を大盤振る舞いだ。
「クネ様持ってきたっす!」
「ニコの料理を食べたらそれに全部詰め込んで撤収よ?」
「お二人さえよければっすが・・・我々の力試しをしてみたいっす!」
「ニコいいかしら?」
コボチョウ達がギルドの金庫にあったアイテムボックスよりもかなり巨大な箱を持ってくる。
箱と言うよりは物置と言ったほうがしっくり来る大きさである。
そんな事よりもコボチョウ達は暴れたいようだ。
「あぁ。俺は今回の戦いには一切参加出来ない。だからこれから街を出たら海女の村があるという村に観光に行くから問題無いぞ。」
恐らくだがコボチョウ達はこの町に来てから金庫に付きっ切りで鬱憤が溜まっているのだろう。
俺達は明日の朝から海女がいると言うヴァドールの村に行くので何一つ問題は無い。
むしろこれでクネ達がいなくなれば早々に大迷宮が解放されて観光出来なくなってしまう。
「それならゲームしましょう?ニコが再びここに帰ってくるまでコボチョウが勝ち続ければ御褒美を上げましょう。」
「ほう?それなら俺が帰った時にコボチョウ達がいなかったら?」
「弱すぎるのは駄目よねぇ?」
「ならばゆっくりと観光するとしよう。」
食堂の机に配膳をしているとクネが面白そうな事を言い始める。
コボチョウ達が聖騎士達相手にどれだけ戦えるのか楽しみだ。
クネの提案に乗る事にする。
「え・・・クネ様?ニコ様?」
「俺はコボチョウ達を信じているぞ?さぁ食べよう。」
「あたしも信じてるわ?ニコ料理も上手くなったわね?」
「「頂くっす!」」
コボチョウは困った顔であたふたしているが、構わずに昼食を始める。
コボイチとコボサンも覚悟を決めたようでとりあえず俺の料理を楽しむことにしたようだ。
「わかったっすよ!ニコ様が戻ってくるまで勝ち続けるっす!聖騎士なんてどんと来いっす!」
コボチョウも遅れて決意を固めて昼食を食べ始める。
「(これで安心してゆっくりのんびりと観光出来そうだ。)」
観光も楽しみだが、一年ぶりの母との食事を楽しむべきだろう。
美味しそうにかに玉を頬張るクネを見て表情が綻ぶ。




