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第百七十話 リーオの街、そして謁見へ

「エスガルドを出るのは始めてと言っていたな?」

「はい!我々二人は始めての外国です!」

リーオの街に入っても二人は迷い無く馬車を進めるので疑問に感じたのだが、エスガルドから出るのは始めてのようだ。

なのに二人はこれと言って地図を見る様子も無く馬車はリーオの街を進んで行く。

やはりフィルナとアイリーンの代わりなだけあって優秀である。



「お待たせ致しました!宿はクリスティアナでとってありますので!」

「ありがとう。本当に助かる。」

「いえ!仕事ですから!」

すぐに馬車が止まり御者台から降りたクリスティアナが扉を開けてくれるのでいつも通りに労いながら馬車から降りる。


「ありがとうございます。若いのに素晴らしい働きで感心します。」

「そうだな?顔も可愛いし二人共俺達の専属で働かねぇか?」

「勿体無い御言葉ありがとうございます!ですが我々如きでは聖騎士様の足を引っ張るのは目に見えておりますので御遠慮させて頂きます!では失礼致します!」

ロンヴァルトが騎士二人を勧誘しているが二人は軽くかわして馬を引っ張って(うまや)へと消える。

ヴィンガは俺を勧誘して、ロンヴァルトはクリスティアナとパンジーの勧誘と大忙しだ。


「(どうやったら勧誘を諦めて帰ってくれるだろうか?)」

なぜ成功すると思っていたのかは不明だが、ロンヴァルトが悔しがっている。

控えめに言って聖騎士二人は足を引っ張っているし邪魔なのでクリスティアナのように謙虚な気持ちが少しでもあるのであればさっさと帰って欲しいものである。



「こんばんわ。クリスティアナで予約しているはずだが?」

宿屋のスイングドアをくぐりながら帳簿をつけていた受付のお姉さんに声を掛ける。

「はい!伺っておりま・・・聖騎士様!?拝見出来て幸せでございます!」

お姉さんは帳簿から目を上げると同時にヴィンガ達を見て流れるようにカウンターから出て跪いて祈り始める。

ヴィンガとロンヴァルトを見るが平然とした様子でお姉さんの祈りが終わるのを待っているので、女性にもてると言っていたのは嘘では無かったようだ。

だがこれは日常であるならば、まともに街を歩くことが出来なさそうなので更に聖騎士という職業の魅力度が下がった。



「お嬢さん?その調子で信仰を深めて下さいね?」

「おかげで明日からもみんなのために戦えそうだぜ!ありがとな?」

「いえ!勿体無い御言葉でございます!・・・失礼致しました!では御案内をさせて頂きます。」

お姉さんが祈りを終えると同時に二人が声をかける。

お姉さんは感極まった様子だが、仕事は忘れてなかったようで一安心だ。


「ではこちらがルドルフ様。こちらが聖騎士様御二人の部屋でございます。」

「ありがとう。ではまた明日。」

案内された部屋の扉を開くと見慣れたワンルームにベッドと簡易型の机と椅子が見える。

さすがにエスガルドを出たら寝る時の監視はなくなるようで一安心だ。


「あの、あの!祝福の言葉を頂いてもよろしいですか?」

「いいですよ?では・・・万物にまします我らの精霊王よ願わく」

お姉さんが再び跪いて祈り始めヴィンガがいつも小脇に抱えている教典を広げて祝福の言葉を唱え始める。

あの教典は戦闘以外でも使い道があるという事に感心するが、それ以上の興味はわかないのでさっさと扉を閉めて寝支度をする。




「(もう少しからが長いな・・・)」

強欲の壷の中身を確認するがまだ瓶一本分に少し足りない。

恐らく一週間後くらいなのはわかっているのだが、聖騎士二人がいて好きな時に確認が出来なくて気になって仕方が無かった。

普段なら全く気にしないのに、確認が出来ないとなると中身が気になってしょうがなくなるのは人情である。

強欲の壷の中身を確認して気が済んだので鍛錬をして布団に入る。

寝る時は聖騎士二人に安眠妨害され、起きてからも色々とあって疲れていたのでまどろむ暇も無く意識を夢の中へと手放す。







日の光を浴びて目を覚ましいつも通り普段着に着替えて読書を始める。

久々に朝食を作らなくてもいいので、とてものんびりと落ち着いて読書が出来て今日の一日の始まりは最高である。


「ルドルフ殿おはようございます!」

「ありがとう。すぐに出る。」

クリスティアナが俺を起こしに来てくれたので、本を閉じて一緒に食堂へと向かう。

「聖騎士様達は教会に報告に行くそうで今日は別行動であります!」

「ほう?それはいい事を聞いた。」

廊下を一緒に歩いているとクリスティアナが教えてくれる。

別にあの二人がいて困る事は何も無いのだが、監視の目が無いと言うのはとても気持ちが楽になる。

そのまま二人で食堂に入ると三人分の朝食を用意されている机の前でパンジーが直立不動で待っていた。


「待たせたな?クリスティアナも改めて迎えありがとう。」

「いえ!全然待っておりません!」

「御付として当然の行動であります!」

「それならいい。じゃあ朝食にしよう」

「「はい!」」

朝食は目玉焼きにトーストと野菜スープそしてオレンジジュースというお馴染みのメニューだ。

実は外国なので見た事も無い料理が出て来るんじゃないかと期待していたので少しがっかりしてしまう。



「ルドルフ殿?今日の予定なのですが、朝食を食べ終わったら城へと赴いて女王様との謁見ですのでよろしくお願い致します!」

「ふむ?謁見だけでギルドはいいのか?」

「ギルドは我々だけで問題無いでしょう。」

「それはありがたい。では謁見が終わったら食料の買出しに行かせて貰おう。」

「「お任せ下さい!」」

俺は何も言ってないのだが、二人は進んでギルドとのやり取りを引き受けてくれるそうだ。

堅苦しい場は苦手なのでとてもありがたい事である。

さっさと三人で食事を終えて城へと向かうべく宿を出て城へと向かう。



「ほう?屋根が丸いのだな?それに土壁が多いな?」

「はい!屋根が丸いのはあの形にする事によって建物が熱を吸収しにくいみたいですよ?」

「土壁なのは海が近いので木だと腐食するからと伺っております。」

昨日は真っ暗でわからなかったが、リーオの街は木造建築がとても少なく、全ての屋根がドームのように球体をしていた。

不思議に思って二人に話しかけると、二人は淀みなく答えてくれる。

疑問が解決したのはとてもありがたいのだが、外国は始めての二人はなぜ知っているのだろうか?と新たな疑問が浮かぶ。


「勉強熱心なのだな?」

「先輩方からルドルフ殿はなんでも疑問に思われる方なのでしっかりと調べておけと申し付けられております!」

「丁度勉強した所を質問されたのでよかったです!」

フォルナ達に言われて勉強していたようだが、俺がニール連合国へ向かうのはアレク達がタルトから事情を聞いて急遽決まったはずなので、勉強する時間などほとんど無かったはずである。

俺は試す意味も込めて色々な質問をしながら城へと向かう。


「この国の人間は・・・」

「はい!我々の肌はペールオレンジですがこの国は褐色が目立ちますね?北の大陸は人形のように真っ白な肌がいっぱいだそうですよ?」


「この国の服装は・・・」

「はい!綿花の織物を使用しております。綿花ならば厚手でも風通しがいいので熱もこもりにくく、海風でベタベタしにくいそうです!」

「ですが脆いので戦闘には不向きです!」

その後も気になった事を聞いてみるが、全て淀みなく答えてくれる。

本当に優秀だなとただ感心するばかりである。




「申し訳ありません!エスガルド王国第九番隊々長、兼金級冒険者ルドルフ殿をお連れしたエスガルド王国第四番隊々員クリスティアナ・ジャフルです!ブールニア女王国からの救援要請を受けて参りました!」

「え?エスガルドから?」

「はい!ドラゴンケイブ大迷宮のオーバーフローにより救援要請を受けて駆けつけました!」

クリスティアナが門兵に身分証を差し出して言うが、門兵の顔は兜の隙間からしか見えないのにパッと見で困惑しているのがわかる。

そしてクリスティアナの家名はジャフルと言うそうだ。

「(隣でいつも料理をしているクラウスさんの主人なのか?だがあそこは一年生の調理場だったはずだしな・・・)」

そんな事を考えながらクリスティアナと門兵とのやり取りを眺める。


「ちょっと待て!確認する!」

「はっ!よろしくお願い致します!」

門兵が慌てて監視小屋へと戻って行く。


「外交上の社交辞令って聞いたぞ?」

「嘘だろ!?あんな田舎から出てきたのかよ!?とりあえず外務大臣に取り次いどけ。」

「わかった!」

門兵が何やら話をして城へと駆けて行くが、大変失礼な話が丸聞こえである。


「なぁ?社交辞令とか言ってたぞ?」

「救援要請をしても普通に来れば三ヶ月かかりますので、普通に考えれば到着する頃には解決しております。」

「なので救援要請とは、内外に友好関係をアピールする政治的パフォーマンスという意味合いが強い・・・というよりそのためだけに出しているような物です。」

納得したのだが友好国からの使者を前にして、社交辞令とか田舎とか言っては駄目だろうと思うのだが、監視室にいる門兵は気にした様子も無く寛いでいる。

とりあえずこの国への評価は一つ下げておく。

平成最後の投稿です。

皆様令和もよろしくお願い致します。

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