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第十七話 どこまで見抜かれているのか?

翌朝一人テントの中で目覚める。

やはりみんなはあのまま寝て一夜を過ごしたようだ。

素早く身支度を済ませてテントから出ると昨日と同じ場所で焚き火をするフィリップを囲んでみんなが朝食を食べていた。


「ニコ起きたか!さぁ朝食食って出発するでよ!」

笑顔のフィリップが野菜スープの入った器とパンを渡してくる。

「昨日の残りか?」

「そうだで!」

「やはり多いと思ったんだ。朝食の分もまとめて作らせたな?」

「ふぇっふぇっふぇっ!」

フィリップが笑いながら全員に配ってももう一杯づつは配れそうな量のスープが入った鍋をかき混ぜる。



「ニコ君の作ったスープは美味いな!お替りもらってもいいかい?」

「まだまだあるで!残しても川に捨てるだ、飲め飲め!」

笑顔のフィリップがエミールの器にスープを入れる。

それを見て全員が我先にとスープを飲み干しフィリップに器を差し出す。

最後のロジェの器にスープを入れて丁度鍋が空になり、フィリップが嬉しそうに小川で鍋を洗う。


「俺のお替りは無しか。」

思わず呟きが漏れる。

「食べたやつから馬車に行けよ!御者台に近い方が揺れは少ないぞ?」

フィリップがそう言うと、全員が一斉にスープを飲み干して馬車へと走って行く。


「そうなのか?俺には違いがわからなかったが。」

「ふぇっふぇっふぇっ!嘘だで!今日はお前さんにすぐ出れる位置におって欲しかったでな?」

フィリップがみんなが置いていった食器を拾い集めながら言う。

どういう意味かわからずに思わず腕組みをして考え込む。


「今日は森を通るで、王都までの道で一番危ない日なんだぁ。」

「それと俺が出れる位置と何の関係が?」

「ふぇっふぇっふぇっ!ミノタウロスを倒すニコにいざという時はみんなを守って欲しいでな?」

「何言って。」

「ニコの出発前夜の騒ぎ・・・収めたのはお前さんじゃろ?表向きはジャック達となっておるがな?あいつらでミノタウロスを二体も狩るなんぞ無理じゃ!その前の調査中のミノタウロス討伐もな。しかもそのミノタウロスは頭部だけ、そしてワシらの食事にミノタウロスの肉。ならば答えは一つじゃな?ふぇっふぇっふぇっ!」

「(この爺さんはどこまで見抜いているんだ?)」

元金級と言っていたがそこまで分かった上で俺に何も言わなかった。

それにミノタウロスは三体村へ来ていたはずなのにジャック達は二体しか倒してなかったのか・・・残りの一体は爺さんが?

色々な考えが頭の中を駆け巡る。


「そう身構えんでいい!事情があるんじゃろ?何かあってもわしが名誉。お前さんには金を得るようにするでよ!」

「・・・ならいい。フィリップを信用する。」

そう言ってフィリップに空になった器を差し出す。

「ふぇっふぇっふぇっ!なら任せたでよ!」

フィリップが満足そうに笑いながら器を受け取って、小川で洗う。



「ほら!行くだで!今日の夕食も楽しみにしとるでな?」

「そういえばいつミノタウロスの肉だと気付いた?」

「リオルゲンを出発して三日目だったかの?この肉の味は!?っと閃いたんじゃ!ふぇっふぇっふぇっ」

「さすがは金級食べたことがあるんだな。」

「金級のワシでも自分で食べるだけでこんなに大盤振る舞いは考えられんかったがな?」

そう言って笑いながら御者台に乗り込むので、俺も馬車に乗り込む。

馬車に乗り込むと異様な光景が目に飛び込んできた。


ターニャとシモンヌは馬車の上部に積んでいた荷物を降ろしたのであろう、大量の服を木で出来た椅子との間に挟んでいる。

エミールは本を読むマットの膝に寝転びロジェは椅子と椅子の間にある通路にみんなに踏まれながら寝転がっている。

俺は何も見なかった事にしてターニャの横に座り、読書に勤しむ・・・が足元にあるロジェの顔が気になって仕方がない。

「ロジェ?頭を御者台に向けて寝てくれないか?」

「向こうは女じゃろう?恥ずかしゅうて無理じゃ。」

「ロジェ?その話し方はなんだ?」

「わしゃ訛りがきつぅてな。恥かしゅうて喋れんかったんじゃ。」

「今は恥かしくないのか?」

「酔わんための処置じゃ。恥かしいとか言うとる場合じゃなかろうが?」

「そうか、お前の顔を踏まないように注意する。」

「頼んだで。」

ロジェは中々感情表現豊かな人間だったようだ。

そして中々の行動派だ。

俺なら思いついてもみんなに踏まれながら旅は絶対にごめんだ。



馬車が動き出してしばらくすると思ったとおりに身動きがとれないロジェが暇を持て余して話しかけてくる。

「のうニコ?」

「なんだ?」

「ニコは学校に行く金は持っとるんか?」

「大金貨だったか?十枚持ってる。」

「大金貨じゃぁ!?ニコの爺さんは金持ちなんじゃのぅ?」

「どうだろうな?掴み所のない親だったからな。」

ルルは本当に掴み所がなかったなと心底思う。

母親代わりのクネも十分に掴み所がなかったが。


「ニコも掴み所がないけん似たんじゃなぁ?」

「俺はわかりやすい人間だぞ?」

「ハッハッハッ!自分の事を一番知らんのは自分じゃのぅ!」

ロジェの言葉に全員が一様に俺を見て頷く。

なんとなくイラッとしたのでロジェの顔をつま先で小突いておく。


「なんしょんなっ!痛かろうがっ!」

「う、る、さ、い、ぞっ!」

煩いので言葉に合わせて小突いておく。


「やめぇや!・・・ワレやめぇ言うとろぉが!」

ロジェが俺の足を掴むがロジェ如きの力では俺の足は微動だにしない。

「っち!この馬鹿力がぁ!」

「お前さんら仲がいいのはいいが、これから森だ!静かにしろ?」

フィリップが窓から顔を出して言うと、みんなの顔が強張り静かになる。

「やっと静かになった。」

俺は本に意識を集中する。




「ヒィッ!」

馬車が大きく揺れてターニャが小さく悲鳴を上げる。

顔を上げてターニャを見ると寝ていた。

「なんだ?」

異常な事態に思わず呟きを漏らして馬車内を見ると全員眠っていた。

「やっぱり抵抗(レジスト)したな?みんなは眠り粉で寝てるだけだから気にすんな!前方で馬車が襲われてる、ニコはこの馬車を守ってくれ?」

「わかった。」

おそらく俺が動きやすいようにみんなを眠らせたのだろう。

小声のフィリップに答えて、捜索魔法(サーチ)を五秒間隔に発動させて辺りを警戒する。

前方でオーガが馬を食べて、倒れた馬車の陰で御者係であろう人間が少女をかばって必死に隠れている。

オーガを警戒しているのか森の中にオーガ以外の魔物の反応は全く無い。



次の捜索魔法(サーチ)ではフィリップがオーガの首に切りかかっていた。

馬車まで百メートル近くあったはずなのにかなり早い。

普段好々爺のフィリップからは想像できない速度で走ったという事なのだろう。


その後フィリップがオーガを引きずって来る。

「お前さんなら捌けるじゃろ?任したで?ふぇっふぇっふぇっ!」

そう言って去っていくのでオーガを捌く。

硬いオーガの首を一太刀で切り落としている。

「(見事な腕だ。)」

思わず見惚れそうになるほどの切り口だ。

そんな事を思いながら捌く。


捌いている間も捜索魔法(サーチ)を発動して警戒はしているが魔物が寄ってくる反応は無い。

解体が終わる頃にはフィリップが倒れていた馬車を起こして俺達が乗っていた馬車に連結させ終わっていた。



フィリップと襲われていた馬車の中に大体の大きさに切り分けたオーガ肉を葉っぱで包んで乗せる。

「捌けといったが素材を剥げって意味だったんだがな・・・」

「ん?食べんのか?」

「オーガ肉は硬いで、出来りゃあ食べたくないでな・・・」

「大丈夫だ、楽しみにしといてくれ。」

「なら任せるだで!」

肉を乗せ終わり笑顔のフィリップが御者台に戻り、俺は馬車に乗り込む。





襲われていた馬車に乗っていたのは白髪の使用人と俺と同じ年齢くらいの白髪の女だったようで、眠っているみんなを詰めて馬車に座っていた。

八人掛けくらいの広さがあるとはいえターニャ達は大量の服を椅子と体の間に挟み。

エミールは席に横たわりロジェは通路に寝ている。

かなり席も足元も狭い。

いやロジェはしっかりと踏まれているので足元は問題無さそうだ。

「危ない所をありがとうございました。レナエル・パストゥールと申します。」

「私執事のオーギュストと申します。」

「ニコです。よろしくお願いします。」

三人で頭を下げて挨拶を済ませる。

「じゃあ出発するで!ニコ?後ろから押してくれんか?」

「なんで?」

「さすがに二台引くのは重くて馬がばてるでな?」

「・・・俺でも非常識な頼みなのはわかるぞ。」

「ふぇっふぇっふぇっ!ニコなら大丈夫だて!」

「ちっ!ならさっき言ってくれ。」

レナエルとオーギュストが申し訳無さそうな顔で頭を下げる中、馬車から降りて馬車を押して森を進む。




夕暮れまでになんとか森を抜けた。

少しだけ森から離れた所で馬車が止まる。

「今日はここで夜営だで!ニコ今日の分頼んだでよ!」

フィリップが歩いて来て笑顔で言うので溜息を吐いていつも通りに小川の近くで焚き火をして料理を始める。



オーガ肉を取り出して適当な大きさに切ってひたすらに叩く。

オーガ肉はとてつもなく硬い。

だが叩けば叩くだけ柔らかくなる。

ハッピーとどうにか食べられないかと試行錯誤して見つけた調理法だ。

馬車でレナエルとターニャ達が楽しそうに話す声が聞こえるが、黙々と料理を進める。

「今日は何を作るんだ?」

「オーガ肉のステーキ。」

「・・・ワシには硬すぎて食べられんって。」

「だから今叩いてるだろう。」

「ほう?楽しみだて!」

フィリップが俺が叩くオーガ肉を興味深そうに見つめてから、ニヤニヤとテントを張りに離れて行く。

そして俺はひたすらハンマーでオーガ肉を叩く。

面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。

もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。


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