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第百五十四話 勲章授与と褒美の確認

アレクとサミュエルに連れられて玉座の間に着く。

玉座の間は長方形で豪華な飾り付けをされた部屋で壁際には大勢の貴族達が控えて俺達の到着を待っていたようだ。

そして部屋の最奥には豪華な椅子が三つあり、一つには美人な女性が座っているのでおそらく彼女がサミュエルの母親、王妃なのだろう。

「四人はここで待て!サミュエルは余の隣に座するように!」

「はっ!」

アレクが貴族の前だからだろう。

先程までのフレンドリーな雰囲気が無くなり、王らしく威厳のある様子で玉座まで歩いて行き腰掛ける。



「では大臣!この騎士三名に名誉勲章の授与を!」

「え?功績は述べられないので?」

「それは褒美を授けるにあたりしっかりと功績を称えた!今回は最略式で行うのだ!」

「か、かしこまりました!」

大臣が大慌て駆け寄って来て俺達の左胸に勲章を付け始めるので少しでも付けすいようにと胸を張る。


俺達に勲章を付け終わるとアレクは満足そうに笑いながら頷いて

「よし!これで勲章授与式は終わりである!フィル・バダンテール!アラン!ルドルフ!誠に大儀であった!では下がってよいぞ?」

早口でアレクが宣言する。

どうやら勲章授与式は終了したようだ。

俺が読んだ勲章授与式に関する本とは違いすぎて唖然としてしまう。

周りの貴族達もサミュエルさえも皆一様に呆気に取られた表情をしたまま固まっているのでやはり俺の認識は間違っていないようだ。

ただ一人王妃だけは広げた扇で口元を隠して楽しそうに笑っている。



「では失礼します!」

いち早く再起動したフィルが言って玉座の間から出て行くので慌ててアランとタルトを連れて後ろを付いて行く。


「これが勲章授与式なのか?」

「まぁ楽でいいじゃん?」

「わしはこんな授与式初めてだ!アラン!勲章授与とはとても栄誉ある事なのだぞ?それをこんな・・・こんな適当にされてわし悲しい!」

俺の疑問にアランがあっけらかんと答え。

それを聞いたフィルがアランの胸倉を掴んで怒ったり泣いたりととても大忙しな様子だ。

確かに王に対して一度も跪かない謁見など異例どころの話しでは無いのは俺でもわかるが終わった事であれこれと話しても仕方のない事だ。




「もう終わった事だ。俺は魔王の手斧の性能を調べたいから森へ行くがみんなはどうするんだ?」

「とりあえず付いて行く!」

「ならわしも昼食を食べる!せめてルドルフの飯でも食べんとやっとれんっ」

アランとフィルは即答で俺から昼食をたかると言い放つ。

こいつらはいつもいつも俺から飯をたかって恥かしくないのかと聞きたくなるが、おそらく平然と恥かしくないと言い切るのが容易に想像出来てしまうので、一つ溜息を吐いて王都の外へと向かう。









「さて、まずは性能テストからだな。」

王都近くの森に着き、魔王の手斧をマジックバッグから取り出して魔力を流してみる。

突然手斧から水が吹き出して振ってもいないのに水の推進力によって斧に振り回されながらその場で一回転する。

手斧を離さなくて本当によかった。

離していたらどこまで飛んでいたか予想も付かない程の力が加わった。



「(成程、これは扱いが難しいな。)」

今は驚いて斧に振り回されたが、上手く水の推進力を利用出来ればとてつもない破壊力が出そうである。

次はワイヤーを引っ張り出して魔力を流してみる。

斧から水が吹き出し回転しながら飛んで行くので、ワイヤーをしっかりと掴んで操ってみるが、予想以上に制御が難しく全くもって思うように動いてくれない。


「さすがは魔王の名前が付いた武器ね?あんな手斧をヨーヨーみたいに飛ぶなんてね?しかもルドルフが振り回されるなんてびっくりだわ?」

「危ないから離れていろ。」

「へいへい。」

アランが近づいてくる。

恐らく結界を張っているのだろうが、もし斧が直撃すればアランの結界は簡単に割れ大惨事になる可能性がある。離れさせて斧の制御に集中する。




一時間程魔王の手斧を制御しようと頑張ったが無理だった。

休憩がてらに昼食を作る。

今日の献立は風竜とティラノサウルスの唐揚げに野菜スープだ。

「あれ?諦めたの?」

「いや休憩だ。」

「何が原因かわかったの?」

「繋がってるとはいえワイヤーが長すぎて魔力の伝達が難しすぎる。」

「へぇ?なら魔力伝達のいい物・・・にしたら強度が足りないか・・・」

「成程!魔力伝達のいいワイヤーにすれば違うかもな?」

アランのおかげで魔王の手斧をどうにか出来るかもしれない光明が見えた。

今すぐは無理だが、魔王の手斧を改造すれば操作難度が下がって扱えるようになるかもしれない。

そして何よりもワイヤーの代わりになるぴったりの物に心当たりがある。


「アラン?いい話をしてくれたお礼にサービスしてやる。昼食楽しみにしていろ?」

「マジで!?やった!」

アランのおかげで解決の糸口が掴めたかもしれない。

俺は大量の唐揚げを作り、続いてドラゴンカツを作りサンドイッチにして行く。



「出来たぞ。」

「待ってました!」

「まってましたー!」

俺が声をかけると発声練習をしていたアランとタルトが満面の笑みで駈け寄ってくる。

たった二時間程の訓練でタルトの滑舌が格段によくなっているので驚いてしまう。


「すごいでしょ?やっぱりドラゴンってすごいね?頭もいいし滑舌もこの通りよ?」

「たるとはすごい!」

「あぁ大したものだ。飯にしようか?」

アランが机を取り出すので俺は出来上がった料理を並べる。


「よし!タルト?ナイフとフォークの使い方を教えよう!」

「はい!」

アランがタルトに食事の作法を教え始める。

タルトは始めて使うナイフとフォークに最初はとても苦戦していたが、サンドイッチを一個食べ終わる頃には慣れた手つきで問題無く昼食を食べ始める。


「本当に竜種は優秀だな・・・」

「教えれば一瞬で覚えちゃうもんね?」

「お前ら・・・呼んでくれよ・・・」

アランと一緒にタルトの成長速度に感心していると、悲しそうな表情のフィルが森の中からやってくる。

フィルは恨み節を言っているが、一応探したが見つからなかったので、どこで何をしているか言わなかったフィルが悪い。



「ししょう!これみんなにたべさせたい!」

「わかった。焦らなくても時間はある。これから少しづつ覚えていけばいい。」

「たのしみ!」

「なんだと!?滑舌が・・・」

タルトが唐揚げを食べて興奮気味に言って来る。

当初の目的は俺に付いて料理などを教わるために来たので、教えるつもりではあるが、タルトは料理を覚える余裕は無いほどに別に覚える事がたくさんあるのだ。

まずはアランに人間界の常識やルールを教わってから、城でメイドの仕事と礼儀作法の勉強・・・普通の人間ならば一年かかっても覚えられないであろうと思われる程の量だ。

あとフィルがタルトの滑舌に驚いているが、そのやり取りはすでにもうやったので俺もアランも無視して昼食を再会する。




「よし!タルト?このまま発声練習するよ?」

「はい!おねがいします!」

「どっこらしょっと・・・わしはギルドに行くかな?」

昼食を食べ終えてアランは机を片付けてタルトと一緒に森の中に消えて行き。

フィルは王都へと返って行く。

俺は食器に洗浄魔法(クリーン)をかけてエアーバッシュと言う名前の空中を歩ける靴を試してみる。

靴のサイズは合うのかと少し不安だったがさすがはマジックアイテムだ。

俺が足を入れると靴は俺の足に合わせてサイズが変わる。

まさかの機能に思わず期待が膨らませながら靴に魔力を込めて空中へと踏み出してみる。



「これは便利だ。」

靴に魔力を込めれば空気が固まりその上を踏んで魔力が続く限りどこまでも空を駆け回れる。

ただ足元の空気は一秒程しか固まらないので、常に魔力を込めて走り続けないと駄目なので戦闘での使用は少し使い方を考えないと難しそうだがとても便利だ。

だが転んだりすれば森へと一直線に落下してとても危険だ。

慎重に高度を下げて元いた場所へと向かって降りていく。



「ルドルフ助けてー。」

地面に着地するとアランが助けを求める声が聞こえる。

幾分棒読みな気がするがとりあえず声のした方へと駆け出す。


「ルードールーフー?やーばーいー!」

「気のせいじゃないな。」

アランの声が再度聞こえるが完全に棒読みだ。

何かしらの緊急事態なのだろうが、こんな森でアランが対処出来ない事態など想像できないので、おそらく俺に助けられたいとかそんな理由で呼んでいるのだろう。

しばらく進むとアランとタルトがゴブリンに囲まれて震えていた。

「(違うな。恐くて震えているんじゃなくてアランが必死にタルトを押さえつけて震えているように見えるのか。)」

恐らく大量発生したゴブリンの生き残りだろう。

さくっとゴブリンを倒して猿芝居をするアランを助ける。


「あーん!恐かったん!」

「あーん!こわかったん!」

ゴブリンを倒し終えるとアランが抱き付いて来てタルトも真似をして抱き付いて来る。

「アラン?タルトにいらん事を教えるな。タルト?今のような状況になったら自分の身は自分で守るんだぞ?」

「わかった!」

しっかりとアランの間違った教えを信じないようにタルトに教えておく。


「まぁ俺が本気で襲ったとしても勝てないだろうから問題ないだろうがな?」

「え?ルドルフならグレートドラゴンでも倒せるんじゃないの?」

「獣同然の魔物と魔族を一緒にしていると痛い目を見るぞ?」

「魔族とは戦った事ないからねぇ・・・しっかりと胸に刻んでおくね?」

アランがいつも通りの軽い調子で言っているが、魔物と魔族を一緒と思っていると本当に危ないのでしっかりして欲しいものである。

魔物は人間を軽く凌駕する力を持っているがその力のみで戦う。それに対して魔族は魔物の力を人間と同じように研鑽する。

その違いは戦えば一瞬で分かる程の差が出る。


「じゃあゴブリンをギルドに持っていこうか?タルトにギルドの事を説明もしたいしね?」

「成程。じゃあギルドへ行こう。」

「ぼうけんしゃぎるどー!」

ゴブリンをマジックバッグに入れて楽しそうなタルトを連れて王都へと戻る。

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