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第百四十七話 王都防衛戦 上

すぐに空がストームクロウの群れによって真っ黒に染まって行くので用意していた魔法を発動する。

発動する魔法は雷大網(サンダーネット)といって、設置型の雷魔法である。

この魔法に触れると感電するというわかりやすい魔法である。


飛行系の魔物は基本的に真上から急降下して襲ってくる場合が多い。

なので頭上に雷大網(サンダーネット)を出来る限り広範囲に展開しておく。

「(これでどれだけ倒せるかな・・・)」

もしあの魔物の群れの中に指揮官がいて雷大網(サンダーネット)にかからなければかなり拙い状況になってしまうので、しっかりと目に魔力を込めてストームクロウの群れを隅々まで確認する。



「ルドルフ殿まだ待機ですか!?」

「弓に自信のある者を数人連れて来てくれ。」

「かしこまりました!」

下の窓からフォルナが叫んでくる。

見間違いで無ければストームクロウの群れの中に数体厄介な魔物を発見したので弓師の派遣を頼む。

数秒でフォルナが三人の騎士と冒険者を連れて上がって来る。

一人はブランで残りの二人は白銀の鎧を身に纏った騎士だ。


「お待たせしました!こちら銀級冒険者のブランと「今は時間が無いお前らはあの群れの中にいるグリフォンが見えるか?」

フォルナがしっかりと敬礼をしながら連れてきた人間の紹介を始めるが、今はそんな時間は無いので申し訳ないが遮る。

俺の言葉に連れてこられた三人が目を凝らしてストームクロウの集団を見つめ始める。

グリフォンとは鷹の頭が付いた体長三メートルの四足歩行の魔物だ。

今はストームクロウの飛ぶ速度に合わせているが、本来は目にも止まらない速度で宙を飛び交い、尖ったクチバシと鋭い爪を持ち、人間だろうがお構いなしに抱えて巣へと持ち帰る魔物だ。



「念のため聞くがグリフォンはどんな魔物か知ってるな?」

「当たり前だっ!」

「問題無く!」

「三体いますね?」

一応聞くが弓を構えた三人が答えるので問題無さそうだ。



「ではグリフォンを落とせ!矢はこれを使え。あと俺の魔法が発動したらすぐに壁の中に逃げろ。」

「合点だ!へへっ!」

俺は魔力付与した矢を三人に渡す。

騎士の二人は呆気に取られた様子だが、ブランは慣れたもので俺から矢を受け取って即座に矢を射り始める。


「俺も始めるか。」

騎士の二人もブランを見て俺の矢を放ち始めるので俺もストームクロウの群れの隙間からたまに見えるグリフォンに狙いを定めて矢を放つ。


「お前らもっと気合を入れて弓を引け。」

「そんな事言われましても・・・ストームクロウが多すぎます!」

「こんな隙間を縫ってグリフォンに当てるなんて無理です!」

「無理とかじゃねぇ!騎士はそれでいいのかもしれねぇが、俺達冒険者はやるしかねぇんだっよ!」

当たりっこない。そんな声が聞こえてきそうなくらいに騎士達の矢の勢いが弱すぎて思わず声に出してしまう。

騎士二人が動きを止めて弱音を吐いてくるが、ブランは目を輝かせて弓を引き続けている。

騎士達は少しでもブランを見習って王都を守るために本気で撃って欲しいものだ。


「ブラン止めを刺せ!」

「了解だ!あんな大物を射れるなんて弓師冥利に尽きるぜ!」

俺の矢がストームクロウの群れを突き抜け命中し、グリフォンがジタバタともがきながら地面に落ちる。

ブランが俺の言葉に満面の笑みで地面に落ちてジタバタと暴れるグリフォンに狙いを定める。


「さて。無理と言ったのはどっちだ?隣に俺の矢を預けて壁の中に戻って震えてろ。」

俺は騎士に言う。

時間と俺の矢は有限だ、無理と思って俺の矢を放たれるのはただの浪費でしかないからだ。


「し、失礼しました!やります、いえ!やらせて下さい!」

「なら気合を入れろ。」

「はい!申し訳ありませんでした!」

「俺が確認しているのはあと四体だ。」

騎士の二人は目の色を変えて弓を射り始める。

ブランも地面に落ちたグリフォンを倒し終えてストームクロウよりも更に上空を飛ぶグリフォンに向かって矢を放っている。




「お前ら下がれ!撤退だ!」

「いいタイミングだ。」

ストームクロウが一斉に急降下を始めて雷大網(サンダーネット)が放電を始め、即座にフォルナが必死に弓を射るブランと騎士二人に指示を出す。

俺はフォルナの指示に感心しながら雷の雨(サンダーレイン)を発動させる。

ストームクロウとグリフォンからすれば下に下りれば雷大網(サンダーネット)が張ってあり、上からは雷が降って来る。

正に地獄絵図だろう。仕留めたストームクロウが雨のように王都へと降りそそぐ。



「(これで九割・・・いやグリフォン以外を倒せればいいが・・・)」

そんな事を思いながらどんどんと落ちて行くストームクロウの群れを眺める。

見る見る間にストームクロウの群れがいなくなり、青い空と四体のグリフォンが姿を現す。

グリフォンに向かって矢を射る。

しっかりと俺の矢はグリフォンの頭に刺さり絶命して王都へと落ちて行く残り三体。


「クゥアァァァァァァァッ!」

雄叫びを上げながら二体のグリフォンが二方向から同時に前足を振り上げながら雷大網(サンダーネット)もお構いなしに突き抜けて俺に向かって来る。

かなりの速度で弓を下ろす暇も無いので、そのまま弓を腕に通して刀を抜く。

「(やはり早いな、だが反応出来ない程ではない!)」

グリフォン達の前足を避けて一体の首を跳ねる。

首を跳ねたグリフォンはそのまま壁の外へと飛んで行く。

念のためにどこに落ちたか確認したいのだが、そうはさせてくれないようだ。

生き残ったグリフォンが一瞬で空中に静止して、前足を振りかぶったまま再び俺に向かって来る。


「舐めるな!獣風情が!」

さっき通用しなかった、速度任せの攻撃が当たると思っている時点で勝負はついた。

上段に構えて空気の刃(スラッシュ)を発動しながら刀を振り抜く。

空気の刃(スラッシュ)は問答無用でグリフォンを通り過ぎ、そのまま二つに分かれながら王都の中へと落ちて行く。残り一体。

俺は上空で俺の戦闘を見るグリフォンを確認する。

グリフォンは百体くらいのストームクロウの生き残りと共に空中に浮かんだままどうしようかと考えているようだ。

俺がグリフォンを仕留めようと弓を構えるとグリフォンが一目散に西の森に転進して逃げ始め、生き残ったストームクロウ達もそれを追って逃げ始める。



「(中々賢いようだな・・・だが判断が遅すぎだ。)」

俺の戦闘を見て獣なりに彼我の戦闘能力の差を理解したようだ。

だが理解するのが遅すぎたと言うしかない。

逃げるグリフォンとストームクロウ達は念のために張っておいた空気拘束(エアロック)の網にかかってもがく事も出来ずに空中で固まる。

「さて、蹂躙の終わりだ。」

俺は一人ごちながらグリフォンに狙いを定めて矢を放ち俺の仕事を終える。



「フォルナ。約束通り一割を頼む。」

「かしこまりました!全員一体も逃がすな!」

俺が外壁から身を乗り出して壁の窓に向かって言うとフォルナが即座に答えてすぐにみんなが外壁を上ってきて空中で制止するストームクロウに向かって矢を放ち始める。

「(俺の仕事は終わりか・・・休みの日にと思っていたが今すぐにでも行きたいな。)」

最後の蹂躙を見ながらそんな事を考えて、西の森の中にある温泉施設を見てまさかの光景に固まってしまう。

温泉施設が崩壊し、温泉施設があった場所に緑色のグレートドラゴンが丸まって寝ている。



「ジャック?あれを見ろ。ここに来ると思うか?」

「ふ!?風竜だと!?腹が減ったら一番近い餌場。つまりここに来るんじゃないですか?」

「・・・なら行くか。他の門の状況はどうなってるかわかるか?」

「確認してきます!」

近くで指示を出していたジャックに今の王都の状況を確認してもらう。

今の西門の状況を伝えればみんながパニックになるのは分かりきっているのでジャック以外には風竜の存在はあえて伝えない。

周りのみんなはストームクロウに矢を放つので大忙しで気付く様子はないが

がずっと気付かないわけが無い。





「お待たせしました!」

「すまんが小声で頼む。」

「・・・わかりました。北門ではオーガジェネラルが出て来て剣聖も苦戦していて、南門でもゴブリンロードがいたようで統率されたゴブリンの動きに翻弄されて苦戦しているようです。」

「成程・・・どうすればいいと思う?」

「俺にはルドルフさんの戦闘能力は測れません。ルドルフさんは風竜を狩れるので?」

「勝てる。だが俺だけだと地図は変わるだろうがな?」

「ならば風竜はあの様子でしばらくは動きません!剣聖とアランさん、それに協力してくれるのなら・・・ですが十体のドラゴンと協力するのがいいかと!」

「ふむ。さすがはジャックだ!風竜に動きがあったらすぐに報せてくれ。」

「はい!王都に向かってきたら即座に魔法を撃ち上げます!」

「なら任せた!あとパニックにならないようにみんなにも伝えてくれ。」

ジャックとの話し合いを終え、大急ぎで南門へと向かう。

北門はウラン達水竜十体・・・十人がいるので問題無いだろうが、ゴブリンロードによって統率された万を越えるゴブリンの群れと戦うアランの方が心配だ。

王都の外壁の円周は約十六キロ。

西門から南門まで外壁を走れば、約四キロメートルだ。

息が上がらない程度に走れば五分だが、今は緊急事態なので本気で走る。

二分程でアラン達が守る南門に着く。



「これは酷いな・・・」

アランが必死に結界を張り、周りの人間が弓を打ち、外壁の下に岩を落としたりと奮闘しているが今にもゴブリン達は壁を登りきりそうな位置まで迫っていて、一目で劣勢とわかる様子だ。

そして壁の外は緑一色に染まった平原の中に無数の真っ赤な瞳が蠢いていて何体いるのか全く想像もつかない。


「ルドルフ!助けて!」

「どうした?アランがいてこの様はなんだ?」

「外壁の真下見てみて?」

「ん?」

必死に結界を維持するアランに言われて外壁から身を乗り出して真下を見ると、後一メートルという所までゴブリンが上ってきている。



「なぜこんな所まで攻められてるんだ?そして魔法師達はなぜ攻撃しない?」

とりあえず上っているゴブリンに雷魔法を発動しながらアランに質問する。

「みんな魔力切れ!こう見えても数千は倒したんだよ?あいつら最初は仲間の死体を壁の下に運び始めてさ?すぐに死体の山が出来上がって頂上からゴブリン梯子って寸法よ!しかもあたしが結界を張って無ければ一斉に投石されるのさ!結界もして攻撃もして指示もして・・・あたしの体は一つだっつぅの!」

アランがいつも通りに軽い口調で説明する。

軽い口調とは裏腹にとても悔しそうな表情をしているので接敵から色々とあったようだ。

俺が片付けてもいいがアランに鬱憤を晴らしてもらう方がよさそうだ。



「アラン?結界役を変わったら・・・処理出来るのか?」

「余裕余裕!軽く千通りは思いついちゃってる!」

アランが適当な事を言うが表情は真剣だ。

俺はアランを信用して新たに結界を発動させる。


「わかったわかった。なら暴れて来い。」

「ほい!あんがとね!?」

そう言ってアランが満面の笑みで魔法を発動し始める。

「(なんだかんだ言ってアランの戦闘を見るのは始めてだな。)」

アランがどんな魔法を使うのか。

とても楽しみにしながらアランの魔法の発動を眺める。

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