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第十五話 新しい本と新しい街

二日経ち村に入り馬車がたくさん並んだ広場に馬車が止まる。

「ニコ!一時間待機だで!好きに過ごしてな?」

「わかった。」

フィリップは俺の返事を聞くと笑顔で頷いて馬車から降りて体操をして体を伸ばし始める。

「フィリップ?この村の商店はどこにある?」

「えーとそこの通りにあったはずだで!」

「わかったありがとう。」

「一時間後には戻ってこいよぉ!」

体操をしているフィリップに聞いた通りを歩く。

通りの建物はリオルゲンに戻ってきたのかと錯覚するほどに一緒だ。



「(やはり村を興そうとなると手順が決まっていて似てくるのだろうか?)」

村を観察しながら通りを歩いていると、商店らしき建物を発見する。

中に入り商店の一角にある本売り場で本を見繕う。

店員が訝しそうに俺を見ているが、おそらく子供が高価な本を買う訳がないので冷やかしだと思われているのだろう。

クネ達には申し訳ないが、料理の本を買う事にする。

服などはクネに貰った物で事足りているので、生活を豊かにするためには料理が必要だと判断したからだ。



本とカードを出すと驚いた表情をしながら店員が会計を済ませてくれる。

買った本を片手に馬車に戻る。

馬車の中で料理の本を頑張って解読()んでいるとフィリップが声を掛けてくる。

「どうやら、貸し切り旅は続くみたいだでふぇっふぇっふぇっ!」

「客は来なかったか。」

「出発だで!」

フィリップが言って馬車が出発する。



「フィリップ?これはなんと書いてある?」

馬車は平原を進む。

今は御者台と言われるらしい場所で馬を操縦するフィリップの隣で料理本を読んでいる。

わからない言葉が多すぎてフィリップに聞いていると、隣に来いと言われたからだ。

「これか?沸騰しないように煮詰めると書いてあるだ!」

「なるほど。」

「今日はニコの料理が食べれるだか?ふぇっふぇっふぇっ!」

「ふむ。練習でよければ作るが?」

「なら任せるだで!」

「ならばフィリップが体調を崩してもいかん。しっかりと理解しないとだな。」

「ふぇっふぇっふぇっ!安心しな、俺は体が丈夫なのがとりえだで!」

突然のフィリップからの申し出に本を読む手に力が入る。



夕暮れ時になり馬車が止まるので、すぐに火をおこして料理を作り始める。

「じゃあ今日の分の材料だで!」

「わかった、俺の食材も足していいんだろ?」

「そこらは任したでよ!」

そう言ってフィリップは馬を引いて木へと歩いて行く。



俺は本を読みながらポタージュスープを作る。

肉はミノタウロスを使用した。

「良い匂いだ!出来たか?」

「あぁ。多分出来たはずだ。」

フィリップが取り分けて料理を食べる。


「(美味い!納得の出来だな。)」

自分のスープに納得しているとフィリップがスープを眺めて神妙な顔をしている。

「フィリップ?不味かったか?」

「ニコ?この肉は何の肉だで?」

「あー偶然手に入れた魔物の肉を使用した。」

「偶然か・・・ミノタウロスかと思ったがそんな肉が偶然手に入るわけねぇやな。」

さすがは元金級冒険者だ。

ミノタウロスの肉を食べた事があるらしい。


「まっ!美味いからなんでもいいべや!」

「美味いならよかった。」

フィリップが笑顔でポタージュスープを食べる。

「明日からは夕食を頼んでもいいだか?」

「なら俺も明日も本を読むのを手伝ってもらいたいがいいか?」

「あぁ!問題ねぇ!」

「なら練習台になってもらおう。」

明日も料理を作れるようだ。

しっかりとフィリップに教わろう。


「ふぇっふぇっふぇっ!食べ終わったら子供は寝るべ!」

「わかった。」

後片付けをフィリップに任せてテントに入って就寝する。




一週間が経ちフィリップのおかげで一人でもレシピを読めるようになり、大分レパートリーも増えた。

太陽が真上に昇った頃、フィリップから声を掛けられる。

「ニコ?街が見えたで!」

「街?村とは違うのか?」

「ふぇっふぇっ!見るのが早いで!」

フィリップに言われ前方の窓から御者台へと出て、前方を見ると壁がそびえ立っている。


「あの中に人が住んでいるのか?」

「そうだで!ネルグの街だ!明日の朝出発だから観光してくればええ!」

「ふむ。」

「迷子になるなよ?」

「わかった。」

「じゃあ馬車の中に入っとれ!」

「わかった。」

フィリップに言われ馬車の中に戻り読書を再開する。





しばらくすると馬車の中が暗くなる。

馬車が門を通っているようだ、今までの村の土の道と違い。

レンガのような物が敷き詰められており、馬車は全く揺れずに進んで行く。

馬車の中から見えるネルグの街は今までみた村とは全然違った。

建物はとても背が高く、通りも広くて人で溢れかえっている。

「・・・フィリップ?何か騒ぎが起きたのか?」

「あん?なんでだ?」

「だってこんなに人が集まってるぞ?」

「ふぇっふぇっふぇっ!これが街の日常だで!」

「すさまじいな・・・」

「ふぇっふぇっふぇっ!ほら着いたぞ?今日はあそこの宿の雑魚寝部屋で寝ればいいべ!」

「わかった。」

「白狼の巣って宿だ!迷ったら誰かに聞くだぞ?」

「わかった。」

本をマジックバックに入れて馬車から降りて街へと足を踏み出す。



人だらけで立ち止まると人にぶつかりそうな通りを歩いて行く。

しばらく歩いているととても香ばしい匂いがする。

匂いに誘われて行ってみると、通りの脇で確か屋台と言われる建物で料理が売られていた。

「坊主買うか?一本五百ゴールドだ!」

「貰おう。これは何だ?」

「焼き鳥だ!塩とタレ、どっちにする?」

「じゃあ両方だ。カードは使えるか?」

「あいよ!」

カードを差し出すと問題無く会計を終え、焼き鳥二本と一緒にカードを受けとる。


通りの隅に移動して焼き鳥を食べる。

「美味い。」

肉はジューシーで塩は肉の味を味わえ、焼き鳥はとてもタレが染み込んでいて美味い。

すぐに食べ終わり、次の屋台の匂いに誘われる。



「一つくれ。これはどういう料理だ?」

「これはハンバーグを歩きながら食べれるようにパンで挟んだ料理バーガーだ!」

片手で食べながら歩けるというのがコンセプトだそうだ。

確かに手が汚れる事無く美味しく食べきる事が出来た。


「パスタか?」

「あぁ!焼きパスタだ!特別製の麺だぜ?坊ちゃん一つどうだい?」

「ふむ。ならば一つ貰おう。」

木で作った簡易フォークで焼きパスタを食べる。

店主の言う通り、パスタの麺はちぢれていて具やソースが絡んでとても美味しい一品だ。

三品食べてとても満腹だ。



満腹なのだが甘い匂いに誘われて露天に足が向かってしまう。

そこの露天でははちみつを使ったパンケーキを売っているようだ。

「親父一つくれ。」

「あいよ!ジャムはどれにする?」

「ジャム?」

「これだよこれ!お勧めはブルーベリーだぜ?」

「じゃあそれで。」

パンケーキのような物に蜂蜜とジャムと言う物を挟んだ料理のようだ。


一口食べると、中から蜂蜜とブルーベリージャムが染み出してきてとても美味しい。

満腹だったはずなのにペロリと平らげてしまった。


「(街の入口で時間をかけ過ぎたな。)」

馴れない人ごみを歩きながら露天巡りをしていたらもうじき日暮れだ。

日が暮れて景色が変わらないうちに白狼の巣へと戻る事にする。



白狼の巣はリオルゲンの宿と違って入口が普通の扉だ。

扉を開けて中に入ると店員が挨拶をしてくる。

「いらっしゃいませぇ!」

「王都行きキャラバンの客だが、雑魚寝部屋はどこだろう?」

「雑魚寝部屋はこちらです!」

店員が笑顔で案内をしてくれる。


「この部屋です!好きな場所で寝てくださいね?あと荷物はしっかりと自分で管理してくださいね?盗難などに関しては宿は一切関与しませんので!」

「わかった。」

そういって店員が来た道を戻って行く。

部屋は等間隔に布団が敷かれているだけの大部屋だった。

正直布団はリオルゲンの宿とは比べ物にならないほどに粗末な上に汚くてとても使おうとは思えない。

布団を畳んで壁際に纏めて、魔力の鍛錬をする。



「ねぇねぇ?君はキャラバンの客かい?」

「そうだが?少し待ってくれ。」

座禅を組んで集中していると少年が話しかけてくるが、今は集中しているのだ。

鍛錬が終わってからなら相手をしよう。




少年が静か俺の隣の布団に座って待つ。

鍛錬が終わったので声をかける。

「待たせたな。なんだ?」

「俺マット!君も学校に行くんだろ?」

「ニコだ。そうだ学校へ行く。」

「へぇ?家名が無いの?って事は僕と同じ?僕はね貴族が遊び半分に農家に産ませた子なんだけど、その貴族の唯一の子供が不治の病にかかったとかで僕に白羽の矢が立ってね・・・昨日まで畑を耕すくらいしかしたことないのにいきなり学校だぜ?貴族って無茶苦茶だよな?そう思わないかい?」

矢継ぎ早に言われ何が何やらさっぱりだ。


「・・・つまりマットも学校に行くんだな?」

「そうだね。全く昨日まで畑を耕すくらいの事しかしてこなかったんだぜ?文字も読めないのに学校なんて無茶だよ!魔法も使ったこと無いし剣も振った事ないんだぜ?絶対に鉄クラスに決まってるぜ?」

昨日まで畑を耕していたのはわかった。

だが鉄クラスと言う興味深い言葉が聞こえた。

とりあえずこいつは喋りすぎだ。

明日からいくらでも話すタイミングがあるだろうし、一瞬でドッと疲れたので寝袋に入って寝る事にする。



「おい?聞いてる?いい寝袋使ってるんだな?いいないいな!俺なんてそんな物もたしてもらってないから、この汚い布団で我慢するか・・・知ってるか?素泊まり客はホームレスとか汚い客が多いから布団も汚いままなんだぜ?まぁ・・・綺麗な布団に替えたって客で汚れるんだから当然だよな。・・・うぇきたねぇ!この布団ダニとかいないよな?明日起きて体が痒いとか勘弁だぜ?」

「(煩いにも程がある・・・)」

寝袋を頭まで被って必死に眠る。

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