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第百四十二話 報酬という名の倉庫整理

二階のサンドラの部屋に入るとミスリルメタルサウルスと目が合う。

思わずギョッとしながらも部屋の中を確認するとミスリルメタルサウルスの頭が机の上に置かれていて、それを挟んでアランとサンドラとフィルの三人が話をしていた。

三人共真面目な顔で話をしている。

邪魔をしないようにそっと扉を閉めて話しが終わるのを静かに待つことにする。



「ルドルフ早く座りな?報告は終わらせたから!」

「すまんな?助かる。」

話しが終わりアランがいつも通りに自分の隣をポンポンと叩きながら呼ぶので、隣に腰掛けて真剣な表情で話しているサンドラとフィルの話しが終わるのを再び待つ。

「で?何をしてあげたの?」

「あのバカップルはな?俺の矢を槍代わりに使って魔猪を狩っているらしいから本物の槍を上げた。」

「へ?矢を槍代わり?それ絶対嘘だって!」

「そう思うよな?だが矢は皮を巻き付けて滑りにくくしていたし、矢の柄は血で染まって色が変わっていた。」

「へぇ?変わってるとは思ったけど本物の狂人だったんだね・・・にしてもなんで?」

「なんとなくだ。本当になんとなくなんだ。」

「なんとなくねぇ?まぁあたしに何かある訳じゃないしいいけどねぇ?」

小さな頃だがなんとなく普段と違う狩場に行きゴブチョウ達を助けたし、森から出る時も森の暮らしが名残惜しかったのか、なんとなく蛇行して外に向かっていたらジャック達に出会った。

そしてルルからもそういう時は自分の思いに素直に従うのだ!と教わったので今回のなんとなくも何か意味があると信じたい。





「お待たせしました!まずですね?ざっとですが、この度の討伐隊の予想総売却金額が一億二千万です。ミスリルは値段がわからないので入れていません。そして内訳がロックリザードが三百体で「あーいい!いい!大体は予想通りだから内訳はいい!」

フィルとの相談を終えたサンドラがリザルトを言い始めうんざりした表情のアランが割って入って止める。

俺としても詳しい話を聞いたところで計算するのも億劫なのでありがたい限りだ。


「では・・・討伐戦なので普通ならそれを全員で分けますが、お二人の功績を考慮して六千万ゴールドを二人で山分けと言う事でよろしいでしょうか?」

サンドラとフィルがアランの顔色を伺いながら聞いている。

アランは納得のいく金額だったようで腕組をしたまま満足そうに笑みを浮かべてうんうんと頷いている。


「それでいいわ?ミスリルメタルサウルスの売却金も討伐隊で分けていいわよ?あたし達は恩が売れるし、あんた達も顔が立つでしょ?」

「いいのですか!?本当にありがたい話です!」

「感謝する。」

こうすれば俺達は討伐隊の報酬が増えて感謝されるし、サンドラ達ギルド側は俺達と交渉に成功したと言えるからだろう。

アランの言葉にサンドラとフィルが安堵の表情を浮かべながら頭を下げる。



「で!ルドルフの報酬は金じゃないよ?わかってるね?」

「あぁ。六千万だから・・・これなんかどうだ?」

アランの言葉にフィルがソファの横に置いていた鞄から一つの古ぼけた壷を取り出す。


「強欲の壷ね?」

「知っていたか・・・」

「そりゃ、っね?十年前だったかな?発見された時は完全回復薬(フルポーション)を作れる壷が出たって大騒ぎになったからね?いざ使ってみたら百人の王国魔法師が・・・一ヶ月だっけ?かけて作れる程度の代物よね?いくらなのかな?」

「六千万・・・」

アランの説明を聞く限り魔力を注ぐと、薬が精製されるマジックアイテムのようだ。

ただ王国魔法師と言うと騎士団の中でも精鋭がなる職業のはずだ。

そんな人間の精鋭が百人もいて一ヶ月もかかるとなるとかなりの魔力が必要なようだ。

アランはフィルの六千万と言う言葉を聞いて呆れたように笑っている。



「この壷をその値段で買う人間がいるの?いいとこ一千万っしょ!それでも買い手が付くかってとこだろうがボケ爺!」

「グヌヌ・・・」

「ならギルドから一億ゴールド相当のマジックアイテムを出します!」

アランの言葉にフィルが何も言えずに悔しそうに顔を顰めていると、サンドラが中々大きい宝石のような物が付いた指輪を机の上に取り出す。

王都を歩いているとたまに見かける、大勢の護衛を引き連れたマダムが付けていそうな感じの豪華な指輪だ。



「これは何?」

「この指輪に魔力を込めておけば、いざという時に魔力を取り出せるマジックアイテムです!」

アランの問いにサンドラが胸を張って答える。

サンドラの言葉が本当であればとても便利なマジックアイテムだ。

もし本当に魔力を補充出来るのであれば、戦闘時に戦局を左右するほどの重要なアイテムであるのは間違いない。

「(そんなアイテムならばいくら出しても高いとは思わないな。)」

俺はそう思ったのだがアランは違うようだ。

不敵に笑みを浮かべてサンドラに向かって口を開く。


「へぇ?そういう系のマジックアイテム持ってるけどさ?補充できる容量が少ないのよねぇ?しかも満タンにしないと魔力を取り出せないし・・・一億なんて額にはならないわよねぇ?」

「この指輪はかなりの貯蔵魔力量を誇ってましてね?補充できる量が少ないなんてクレームは出ないと保証しましょう!」

「さっき言ったけど満タンにしないと魔力を取り出せないんだよねぇ?で?どれくらいの人間がどれくらいで満タンになんの?」

ドヤ顔で説明していたサンドラがアランの質問でわかりやすく表情を曇らせる。

俺は意味がわからないのでアランに尋ねる。


「アラン?俺には意味がわからないのだが?」

「どうせあれでしょ?今までこの指輪に魔力を溜めきった人間がいないんでしょ?そんな誰も欲しがらないマジックアイテムで一億取ろうなんざふてぶてしい老人共だね?」

俺の問いに上機嫌なアランが答える。

フィルとサンドラを見ると顔を伏せて忙しなく目を泳がせている。



「それで?アラン完全回復薬(フルポーション)とはどういうものだ?」

「えっとね?死んでなければどんな怪我も治す魔法の回復薬だよ?」

「・・・本でそんな霊薬があったな。」

「霊薬は死人すらも生き返らせる空想上の代物で完全回復薬(フルポーション)は死人は無理だね?」

とりあえずフィルとサンドラがコソコソと話し始めたので俺は素朴な疑問をアランにぶつける。

完全回復薬(フルポーション)そんなにすごい物が出来るという物なら一億でも安いのではないだろうかと思えてならない。


「アラン?そんな物を作れるマジックアイテムが一千万か?」

「そりゃ完全回復薬(フルポーション)は普通に買えばニ千万はするわね?でも百人の一流の魔法師達が一ヶ月間毎日魔力切れになるまで魔力を注いで一回分よ?王国魔法師達が一ヶ月間つきっきりで魔力を注いで給料がニ十万ゴールドなんて事は無いのはわかるね?」

「なるほど。採算が取れないんだな?」

「そういう事!」

アランの説明に納得する。

だが人間の魔力量での話しなので、ルル達が使えばとんでもないものになるのではないだろうか?

俺はそう考えてコソコソと話し合うフィルとサンドラに声をかける。



「おい。この二つのマジックアイテム、俺の報酬の三千万円分でよければ頂こう。」

「いいのか?」

「是非どうぞ!」

俺の言葉にフィルとサンドラが満面の笑みでマジックアイテムを俺へと押し出して来るのでありがたく受け取ってそそくさとマジックバッグに入れる。


「いいの?一個一千万もしないよ?」

「どうせこのまま話してても平行線だろう?フィルとサンドラの様子を見てても他に用意してるとは思えん。」

「そう?絶対に隠し球を用意してると思うけどねぇ?」

「あるのか?」

アランが面白く無さそうに言うので、フィルとアランに聞いてみるが申し訳無さそうに笑うばかりで真意はわからない。

俺は困ってアランを見るがアランはアランで楽しそうな笑みを浮かべて二人を見つめている。

どうやら俺にはわからない攻防が始まっているようだ。



「ふぅん?次の緊急出動の時には覚えておきなさい?あたしの報酬は今度届けてくれたらいいわ?」

「わかりました!」

しばらく無言で見詰め合ってから、アランが口を開く。

なぜかアランは機嫌を損ねた様子だ。



「おっけ!じゃああんたら忙しいんでしょ?あたし達は行くから!ルドルフ行くよ?報告書も書かなきゃね?」

「お、おい待て。」

アランは機嫌が悪いまま足早に出て行くので慌てて後ろを付いて行く。




「アランどうしたんだ?」

「あの老人共がっ!ルドルフ?あんな報酬で満足してたら舐められるよ?」

「そう言われても、俺はそれだけの価値を見出してしまったからな?」

「あんな普通の人間じゃなくても持て余す物にそんな価値を見出すかねぇ?」

王都を歩きながらアランが呆れた眼差しで俺を見るが見出してしまったので仕方がない。

ルル達が使えば完全回復薬(フルポーション)を大量生産できると思うし、、もし俺の余った魔力を寝る前に込めて完全回復薬(フルポーション)が出来ると言う事になればそれだけでもかなりのお得品だ。


「なぁアラン?俺の魔力・・・いや話に出ていた王国魔法師はどれくらいの魔力量だ?」

「大体だけど・・・初級魔法を十分も発動し続けられたら上出来なんじゃない?」

試した事が無いのでなんとも言えないが、初級魔法火球(ファイアーボール)程度なら一時間は発動し続けられるので、俺の魔力量は魔法師六人分に相当するようだ。


「あたしでも十時間は撃てたからルドルフなら・・・一日中打てるんじゃない?」

「ふむ。今一時間は撃てるかと考えていた所だ。」

「冗談!!ルドルフなら少なく見て!一日よ?」

「過大評価しすぎじゃないのか?」

「むしろ過小評価してるよ?さ!どうせマジックアイテム試すんでしょ?帰りましょ?そして昼食を食べ損ねたから夕食は豪華なのお願いね?」

「さすがはアランだ。」

アランは俺の性格をよく承知のようだ。

そんなアランが過小評価し一日と言う事は俺の魔力量は王国魔法師百人分以上らしい。

壷を発動するのを楽しみにしつつアランと話しながら学校へと戻る。

面白いと思ったり続きが気になると思った方は評価や感想を頂けると嬉しいです。

もちろん誤字、脱字やお気づきになった矛盾点などの指摘もお待ちしています。

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