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第百三十六話 ルドルフへの緊急依頼

「ルドルフ!?ルドルフはいるか!?」

「爺か。なんだ?余り興奮すると頭の血管が切れるぞ?」

演習場でウィンストンの訓練をしているとフィルが駆け込んで来る。

なぜか後ろにはマット達が付いて来ている。

そして全員顔を紅潮させて目がキラキラと輝いている。



「うぉぉぉ!噂の謎の金級冒険者ルドルフさんだ!」

「ほう?背丈はわしらとおんなしくらいなんじゃの?」

「へぇ?強そうに見えないねぇ?」

「想像と全然違うわね・・・」

マット達が俺を見て何やら興奮している。

だがフィルは嬉々として騒ぐマット達とは対照的に顔面蒼白で非常事態なようなので、相手をする暇は無さそうだ。


「(なぜアランがいない今日なんだ!)」

思わず心の中で叫ぶが、愚痴っても仕方ない。

俺は出来る限りいつも通りにフィルに尋ねる。


「フィルなんだ?俺の仕事を邪魔する程の事なのか?」

「東の湿地で魔物の異常発生だ!ロックリザードが約三百!そのど真ん中に冒険者約百人が取り残されている!」

そういえば討伐隊が出発したとは聞いていたが、帰還したとは聞いてないのを思い出す。

出発してから一週間経ちかなり大変な事態になっていたようだ。

だが何をどうすればロックリザードが三百体もひしめく湿地のど真ん中で百人もの人間が取り残される事態になるのか不思議で仕方が無い。

それよりも大きな疑問が浮かび上がる


「ロックリザードで溢れかえる?ウランの話しでは()()()()()()()()がいると聞いたぞ?」

「それはワシも思ったがロックリザードしか目撃できなかったそうだ。」

ウランは()()()()()()()()と言っていた、ロックリザードではまんま蜥蜴だ。

ロックリザードではそんな表現はしないはずだ。

俺は不思議に思いながらも次の質問をする。



「俺への依頼は救助か?それとも討伐か?」

「両方だ!頼めるか?」

「サミュエルはどうする?今日はアランがいないぞ?」

「む・・・そうか今日はオークションの日だったか!ワシが面倒を見る!ウィンストンとフォルナの世話は任せろ!」

今日はタイミングが悪い事にアランが留守なのだが、フィルが全てを面倒見てくれると言う。

今までのフィル達の実績を考えるといまいち信用出来ないが仕方ない事だろう。

だが俺もアランの行動からは常に学ばして貰っているので、フィルは話は終わったとばかりに真剣な顔で訓練をするウィンストンとフォルナを見ているが一番大事な話が残っている。


「フィル?依頼料と成功報酬はどうなってる?」

「え?ルドルフがそこ気にするのか?」

「大事な話だ。アランにも自分を安く売るなと言われている。」

「そこまでの話は出来ていない・・・」

やはり今日は俺だけなのでその話は全然掘り下げて無い様で、フィルが分かりやすく表情を曇らせる。

俺はアランに安売りは絶対にするな!安売りをすると次からどんどんその値段で依頼を詰め込まれる!と教えられている。

俺もそんな状況は絶対にごめんなのでアランの言葉に従う事にする。



「ではその話しが終わったらまた来てくれ。フォルナ力任せにしすぎだ。教えてるんだぞ?丁寧な剣術をウィンストンに見せて教えろ。」

「はい!すみません!自分も疲れが出てるようです!」

「そうか。だがフォルナ最初に比べたら動きは段違いに良くなってる。疲れた時こそ丁寧な闘いを心がけろ。」

「はい!ありがとうございます!了解です!」

フィルに言うだけ言って、ウィンストンとフォルナの訓練に戻る。

疲れたフォルナが格下のウィンストンに負けたくない一心で力任せに剣を降り始めるので注意をする。



「ルドルフ?今は緊急事態なんだ・・・なんとか報酬は後日談でお願いできんか?」

「なら報酬の交渉にはアランが来るぞ?今俺だけの時にした方が安くなると思うぞ?」

「ぐっ・・・それでもやむなしの緊急事態なのだ!この情報を伝えに来た者も昼から走り通しで持って帰ってきた情報なのだ!」

「わかった。なら後は任せる。しっかりと訓練してくれ?サミュエルの護衛も頼んだぞ?」

フィルが唇を噛んで俺に言って来るので、本当に緊急事態のようだ。

これはきっちりと依頼をこなして帰ったときにアランがどんな交渉をするのか楽しみだ。

フィルにしっかりと頷くのを見てから東の湿地へと向かうべく全速力で東の門へ向かう。



「ルドルフ殿ですね!?お待ちしていました!」

「誰だ?俺は急いでいるのだが?」

東門を出るとハゲ頭のおっさんが声を掛けてくる。

俺は急いでいる、どうせ俺の速度に付いて来れない人間に待っていた、と言われてもただただ困惑するばかりだ。

「パーヴォと申します!道案内をさせて頂きます!」

「いらん。俺より遅い道案内など邪魔だ。」

パーヴォと名乗るハゲはよほど自信があるのか俺の言葉を聞いてわかりやすく顔を顰めている。


「・・・では、出来る限りは道案内をさせて頂きます!」

「わかった。では行くぞ?俺を見失ったら諦めて王都に帰るんだぞ?」

「はっ!・・・了解です!」

パーヴォは俺の言葉に鼻で笑って答えるので、遠慮なく湿地帯がある方向に向かって走り始める、がさすがは自信満々に俺に言うだけの事はある。

本気で走ってないとは言え、余裕の笑みを浮かべながら俺のすぐ後ろを付いて来る。

「(今まで出会った人間の中で一番上手く身体能力強化魔法を使っているな。)」

思わず感心しながら森に入って行く。



「うおぉぉぉぉぉ!!」

森に入ってすぐにパーヴォの叫び声が聞こえる、おそらくパーヴォが足を踏み外したのだろう。

盛大に声を上げて枝を折る音を立てながら地面に落下している。

これで怪我をして王都に帰れずに死んだなどと聞いたら面白くないので、足を止めて地面に転がパーヴォの下へと駆け寄る。


「ぐっ!まだ行けます!」

「お前のために抑えているが?」

「・・・わかりました私は帰ります。」

「助かる。では王都での雑務を頼んだ。」

俺はパーヴォに一声かけて森を駆ける。

今まではパーヴォのために少し速度を抑えていたが、今は自分が安全に進める最高速で森の中を立体機動で駆け抜けて行く。

念のために探索魔法(サーチ)も発動させているが、討伐隊がしっかり仕事をしてくれたおかげだろう。

この前森に入った時と違い魔物の反応は一切無い。

森も魔の森に比べるととても手入れが行き届いた森でとても走りやすいので、とても快適に森の中を進む。





数時間森の中を進み冒険者達は夜営をしているのが見えたので寄っていく事にする。

見張りをする冒険者を発見したので地面に降りて近づいて行く。

「誰だ!」

「すまない。湿地にいる冒険者の救助依頼を受けたルドルフと言うものだ。責任者に話を聞きたい。」

「ディ、歩く災害(ディザスター)ルドルフ・・・さんですか?」

「その二つ名は認めてないがそうだ。カードを見てくれ。」

俺はいぶかしむ冒険者に対してルドルフのギルドカードを提示しながら近づく。

冒険者はカードを見てから、続いて俺を見る。

顔はマジックアイテムのベネチアンマスクによって認識出来ないが、背丈は八歳児の子供だ、俺を見て再度ギルドカードを穴があくんじゃないかと思うほどに確認する。



「・・・ルドルフさん申し訳無いが今この夜営にはリーダーはいない!リーダーは湿地だ。」

「そうか。湿地のどこら辺にいるかはわかるか?」

「それもわからん。湿地にはロックリザードで溢れかえっていて近寄る事も出来ねぇ!」

「そうか、見張り中にすまなかったな。」

俺は見張りの言葉を聞いてすぐに踵を返して湿地へと向かって行く。


「(本当にロックリザードだらけだな・・・)」

そんな事を思いながらロックリザードに触れると認識阻害魔法が解除されてしまうので、絶対にロックリザードに触れないように注意しながら湿地帯を進んで行く。

もし触れて認識阻害魔法が解除されて攻撃されれば他のロックリザード達にも解除されて一斉に攻撃される可能性が高い。




湿地を進んでいると一つの丘を囲むように群がるロックリザード達が見えた。

どうやら巨大な結界が張られていてそれを囲んでいるようだ。

今まで見てきた人間の力であんな大規模かつ強力な結界を発動出来るとは驚きである。

それに結界があると言う事は、発動した術師は生きていて結界の中に取り残されたと言う冒険者達と共にいる可能性が高い。

即座に結界の方へ進行方向を変え、ロックリザードの隙間を縫って進む。


「(壁面は無理だな・・・)」

結界に群がるロックリザードを眺めながらどうやって結界の中に進入するか考える。

俺は風魔法を発動させて魔物がいない結界の上部に乗るべく人間大砲のように飛び立つ。


「(本当に強力な結界だな・・・人間の戦闘能力を見直すべきだな。)」

結界に張り付いて一時解除するべく結界に触れて分析するがとても強力な結界だ。

だが俺が解除出来ない程ではない。

すぐに自分が通れる範囲だけを解除して結界の中へと入る。



「何者だ!」

「お前らの救援依頼で駆けつけたルドルフだ。」

地面に降り立つと着地した音に反応した二人の冒険者が抜刀した状態で駆けつけてくるので、俺は先程と同じようにギルドカードを提示しながら自己紹介する。


「おい!セルジュリーダー呼んで来い!ルドルフさんは申し訳ないが少しこのまま待っててくれ!」

「わかった!」

「ならば待とう。」

どうやらこの討伐隊の責任者はセルジュと言う冒険者のようだ。

二人の冒険者のうち一人が走って行き、もう一人は抜刀した状態で俺から離れようとしないので監視するようだ。

監視されるのは嫌だが何もやましい事はない、責任者が来るまで言葉に甘えさせて頂いて、寝袋を取り出して寝る。


「待つって・・・どんだけ危機感無いんだよ・・・」

何やら見張り役の冒険者が呆れているが、俺としては救助対象の冒険者が安全そうなので安心したのか、普段なら寝ている時間なせいか一気に睡魔が襲ってきた。

もし見張りの冒険者が切りかかって来たとしても結界を張っているのでこちらの問題は一切無い。

遠慮なく責任者が来るまで寝させて頂くことにする。

結界を張ろうと魔法障壁を張ろうと睡魔からの攻撃は防ぐ事が出来ないのだ。

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