第百二十話 ベーコン作り、改めピクニック
本日二話投稿です。
この話は二話目ですのでお間違えの無い様にお願い致します。
「着いたぞ。」
「ウラン殿がいないじゃないか!?」
「余裕の無い男はもてないぞ。」
俺の言葉に待ちきれない様子のフィルが辺りを見回しながら不満そうに言って来る。
子供に対して余りにも大人気無い対応で思わず溜息を吐きながら森に向けて探索魔法ほどは強くない魔力を飛ばす。
「おそらくすぐにウランが森から出て来る。」
「何かしたのか?まぁいい待つとしよう!」
おそらくウランなら気付いて森から出て来るだろう。
俺はいそいそとベーコンを作るべくアランにせがまれて燻製箱の部品を取り出して組み立てる。
「ねぇ?なんでバラバラなの?」
「さすがに容量が足りなくてな。」
俺が燻製箱を組み立てていると、アランが尋ねて来る。
誰かさん達のおかげで家具を買う時間がなくてマジックバッグが一杯になったので仕方なくばらしたのだ。
「ふーん?そのマジックバッグには何が入ってんの?どうせいらない物いっぱいなんでしょ?」
「そうだな?今は必要のない成長した時のための服なども入っている。一人部屋になったしタンスなどを買って収納したいのだが時間が無くてな。」
しっかりと今は必要ないが将来的に必要になる物だと言う事をしっかりと強調しておく。
アランは何やら真面目な顔になって考え込んでいる。
「フィル?オークションって来週の金曜日だっけ?」
「第三金曜日だからそうだな。行くのか?」
「学校を離れるからサミュエルと相談しないとだけどねぇ?」
「しっかりと相談しろ?何か起こってからじゃ遅いからな・・・来た!」
アランとフィルが何やら話し始めるが、すぐにウランが森から出て来てフィルが駆けだす。
俺はその間に燻製箱を組み立て終わりアランがサーペント肉を取り出しやすいように地面に布を広げる。
「ちっ!色ボケ爺が!」
「アラン?サーペント肉を出してくれるか?」
突然話を切られたアランが怒っているが、俺もさっさと終わらせて日が暮れる前に作業を終わらせたいのでアランに指示を出す。
「ほい来た!じゃあニコ?変わりに酒を出してくれるかなぁ?あと一夜干し!」
「いいが、酔っ払って俺の邪魔だけはしないでくれ?」
アランが言うので一緒にそれぞれのマジックバッグから同時に物を取り出す。
アランはいくつもの部位分けされたサーペント肉を次々と布の上に放り出すので、俺も酒樽とイカの一夜干しを取り出してアランに渡す。
「ニコ?炙って?」
「ちっ!世話のかかる・・・」
アランがイカの一夜干しを差し出して言うので串に刺して火魔法を発動して炙ってから渡す。
「うーん!酒は美味いしイカも美味い!隣には愛すべきニコがいる!言う事なしの休日だ!」
「煩いお前の役目は終わっただろ?帰れ。」
アランが何やら耳障りな事を言い始めるので本心から言う。
俺がベーコンを作るためにサーペント肉の下拵えをしていると頬を膨らませたアランが絡みついて来て耳元で囁いてくる。
「ねぇ?ずっとあたしの隣でご飯お願いね?」
「八歳も年下からどれほどたかるつもりだ?」
「一生!」
「本当に勘弁してくれ・・・」
俺はアランの言葉に心の底から拒否する。
ミキサーを取り出してサーペント肉とミノタウロス肉を半々入れ、香辛料を放り込み発動させる。
「へぇ?計ったりしないの?」
「大体の目分量で問題無い。ソーセージを支えてくれるか?」
「へい!」
最初はレシピ通りに計量して作っていたのをアランが思い出したのだろう、聞いてくるが、一々全ての材料を計っていては日が暮れてしまう。
腸詰機のハンドルを回すと、肉の出口である突起から先程作ったミンチ肉がどんどん押し出されてソーセージが伸びて行き、支えるアランがそれを見て舌なめずりをしている。
一人だと途中で折れたりくびれたりして歪な形になってしまうのでとても助かる。
「アラン助かった。」
「でしょ!?ほらあたしは帰らない方がいいのよ!」
俺が何気なくお礼を言うと、アランは鼻息を荒くして一瞬で調子に乗り始める。
俺はアランにお礼を言った事を軽く後悔しながら、ソーセージを作る。
「ニコ?これは何なのじゃ?」
「ソーセージだ。話は終わったのか?・・・終わったようだな。」
伸びたソーセージを捻って区切っているとウランが興味深そうに眺めて言って来る。
もう話しが終わったのかと思って視線を上げると王都に向かって全力疾走するフィルの姿が見えたので終わったようだ。
「美味そうじゃの?」
「昼時は逃したがベーコンが出来るまで時間があるし昼食にするか。」
「おぉ!それは楽しみなのじゃ!」
「ウラン?あたしがいるからこそのソーセージだからね!?」
俺がソーセージをあらかじめ用意していた鍋に放り込んで、昼食の準備を始める。
メニューは丁度ミキサーを出しているのでハンバーグだ。
アランが何やらウランに対してドヤ顔であれこれと言っている。
大人なウランは笑顔でアランの相手をしてくれているので、俺は料理に集中出来るのでとてもありがたい。
「ウランちなみに聞くがどれくらい食べたい?」
「この大きさならば・・・十個は食べたいのぅ?」
「(やはりよく食べるな・・・だが水竜時の大きさを考えれば小食なのか?)」
一応聞いておいてよかった。
普通なら一人二個焼こうと考えていたが、大食いのウランは五倍食べるようだ・・・美女のウランを見るとつい多すぎだろうと思ってしまう。
だが人型に変化してない水竜の大きさを考えると少ないような気もする。
「ならあたしはウランの倍よ!二十個食べる!」
「分かった分かった。一夜干し炙ったからこれを肴に呑んどけ。」
「わーい!ニコ?愛してるよ?」
「酒臭い・・・」
アランがウランの言葉になぜか張り合い始めるので、とりあえず片手間に炙った一夜干しを渡すと大喜びしたアランが唇を合わせてくる。
料理に集中していてアランの唇に反応することが出来なかった。
別にキスは嫌では無い、むしろ柔らくてとても心地よく好きな感触なのだがとりあえず酒臭い。
酒を飲んでいない俺が酔いそうになる程度には酒臭い。
「ほらこれでも食べてろ。」
「わーい!ニコ愛してるっ!」
「さっきからしつこい!さっさと大人しく食べろ!」
俺が出来上がった昼食を地べたで酒盛りするアランの前に置くと再び抱き付いて来ようとしてくる。
とても酒臭いので思わず声を荒げてしまい、アランはしょぼんとなって座り直してハンバーグを食べ始める。
「むぅ!わらわの分はまだなのかえ?」
「お前のは量が多いから待ってろ。」
「楽しみなのじゃ!」
ウランの分は量が多いので先にアランの昼食を作ったのだ。
ウランも理解して大人しくなる。
アランも大人しくなって昼食を食べ始めるのでやっと落ち着いて料理に専念できそうだ。
ウランの昼食はハンバーグを十個重ね、スープは器ではなく手鍋に注ぎ、トーストは二十枚だ。
「さて、そろそろ燻製を始めるか。」
まだまだ置いておきたい所だが十倍のマジックバッグから下拵えを施していたサーペント肉を取り出して燻製箱の中に吊るして燻す。
「ニコ?今から燻し始めて今日中に出来んの?」
「だから・・・こうする。」
燻製箱の扉を閉めて十倍のマジックバッグに入れる。
前作った時は三時間燻したので、これなら二十分で完了するはずだ。
とりあえず今出来る作業が終わったので、自分の分の昼食を用意して食べる。
「ニコ?ツマミが無い!」
「わかったわかった。」
茹でていたソーセージを取り出して捻った部分を切り分けアランの空になった皿に乗せる。
「おぉ!?美味そうじゃの?」
「ちっ!アランのせいで面倒臭いのに見つかった。」
ウランがくい付いて来るのでウランの空になった皿にもソーセージを乗せる。
先程作ったソーセージが全部無くなってしまった。
こいつらがいては保存食を作っているはずなのに、全く保存が出来そうにない。
そんな事を思いながら二人に気付かれませんようにと願いながら燻製箱から出来上がったサーペントのベーコンを取り替えて十倍のマジックバッグに入れて燻す。
「ウラン?そういえば東の森で異常を見つけてきたって?」
「そうなのじゃ!湿地での?中々強力な蜥蜴のような魔物が湧いたので心配で見に来たのじゃ。」
「なぜウランが心配するんだ?お前の集落には全く関係ないだろう?」
「んむ!ニコへの恩返しなのじゃ!お主が生きてる短い間だけでもこの街を守ろうと思っての?」
俺の素朴な疑問にウランがソーセージを頬張りながら答える。
俺がウランの集落でアークデーモン退治をした時に、お礼に集落の水竜をどれでも好きなのを嫁にと言われて断わったのだが、その時にとても困っていたのを思い出す。
竜の一生からすると人間が生きてる間などは一瞬なのだろうが、俺からすると途方も無い恩返しだ。
「ウラン?そこまでしてもらっては申し訳ないぞ?」
「何を言うか!お主はそれだけの事をしてくれたのじゃ!今も朝に続いてこんな美味い馳走を!」
「料理は気にするな。ただもう無いからな?」
「分かっておるのじゃ!フィル坊が持ってきてくれるもので我慢するのじゃ。」
とりあえずウランからの言質は取れたので保存食を作れそうだと一安心する。
それにしてもフィル坊とは、ウランの歳を考えればそうなのだろうが、フィルの恋は前途多難なようだ。
「ニコ肴が無い!」
「アラン?保存食を作ってる・・・なぜローブを脱いでるんだ?」
アランが大声で言う。
呆れながらしっかりと今何をしにここにいるのか説明しようと振り返るとローブを脱いでとても薄着になったアランがだらしなく座って幸せそうに酒を飲んでいた。
「っぷはぁ!こんな美味い酒は久々だにゃぁ・・・」
「語尾がおかしくなってる・・・言われた通りにしておくか・・・」
俺は何やら嫌な予感がするので、アランの機嫌を損ねないためにもベーコンを焼き始める。
ウランが興味津々な様子でベーコンを焼くフライパンの中を覗きこんでくるので、無言でウランの分のベーコンも足す。
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